軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第49話 二人の出会いとおやつ交渉

「明日は、この家の周辺を歩いて見たり、学園までの通学路の確認するんだよね?」

「ああ、そうだな。他に何かしておきたいことはあるか?」

「うーん、そうだなぁ……ぼくの身を守る、防犯用の魔導具は必要、かなぁ?」

「防犯用魔導具か?」

ライト達三人は、ラウルが用意してくれたアップルパイと紅茶を堪能していた。

これがまた実に絶品かつ至福の味で、聞けばラウルはお菓子作りを含む料理全般が得意にして趣味だという。

お菓子も料理も、作るのも食べるのも全般大好きで、レオニスから出るお給料とは別に支給される食費を使い、日々様々な料理を作っては自分で食べてその腕を磨いているのだそうだ。

「うん、だってこの家から学園まで通学するのに、毎日レオ兄ちゃんに送迎してもらう訳にはいかないでしょ?」

「でも、ぼく自身はまだ身を守る術なんて持ってないし、学園までの治安状況も全然分かんないし」

「レオ兄ちゃんの関係者だってだけで、もしかしたら悪い人に狙われちゃう可能性だってあるし」

「もしそうなったら、レオ兄ちゃんにも迷惑かかっちゃうし。皆に心配させたくないから、防犯用の魔導具だけは欲しいなーと思って」

スラスラと理由を答えるライトに、レオニスは心底感心したように言う。

「はー、お前って本当に賢くてしっかり者だねぇ」

「俺がお前くらいの歳の頃なんて、今日のおやつの有無くらいしか考えてなかったわ」

「今日のおやつはラウルのおかげで、すんげー美味くて大満足だけどな!ハハハッ」

おやつが美味しくて大満足なのは、ライトも激しく同意するところである。

「おう、俺様の絶品アップルパイはそんじょそこらで売ってるもんとは訳が違うからな」

胸を張りながら、得意気に言うラウル。

普通は使用人?と雇い主が同じテーブルに着いてのんびりのほほんとお茶を堪能するなど、本来なら絶対に有り得ないことなのだろうが。

レオニスもライトも、そういう堅苦しい礼儀作法を身内のみの時にまで要求する気などさらさらないのだ。そう、いわゆるキニシナイ!のである。

「そういえば、ラウルはレオ兄ちゃんとはどういう出会いだったの?」

「「ん?」」

レオニスはラウルのことを妖精だと言っていたが、見た目だけでは普通の人間にしか思えない。

そんなラウルとレオニスは、一体どうやって知り合ったのかライトは純粋に気になったのだ。

「こいつも元は、カタポレンの森に住んでいたんだ」

「カタポレンの森には、妖精の集落や里と呼ばれる場所が何箇所かあるんだが」

「こいつは里に馴染めず、一匹で生きていくために里を飛び出したはいいものの、里の外はこいつの力ひとつで生きていくにはさすがに厳しかったようでな」

「森の中でズタボロの雑巾になっているところを、俺がたまたま見つけて拾ったんだ」

ライトの脳内で、何となくダンボールに入れられたズタボロの捨て猫を箱ごと拾うレオニスの姿が目に浮かぶ。

もちろんその捨て猫役は、綺麗なベルベット毛皮のズタボロにゃんこラウルである。

「優雅な生き方しか似合わない俺に、カタポレンの森は合わなさすぎただけだ!」

ん、元ズタボロにゃんこが何か言ってるぞ。

「まぁ、そんな状態の奴をそのまま見捨てる訳にもいかんだろ?」

「俺の方も、ちょうどその頃この屋敷を国から下賜されたんで、拾いついでに屋敷の管理を任せることにした、という流れさ」

「カタポレンの森の厳しい環境で生き抜く力こそなかったが、ラグナロッツァという都会の水は合うようだったしな」

「ラウルは家事全般一通りこなせるし、俺は俺でこっちの屋敷を任せる人手を探す手間も省けたし」

「お互いWin-Winてやつだ」

紅茶を啜りながら、レオニスは一息ついた。

「でも、こんな広いお屋敷にいつもたった一人だけなんて、ラウルは寂しくなったりしないの?」

ライトは、この屋敷の広さを見て一番最初に感じたこと『こんな広さの家に一人きりで住むなんて、自分なら寂しくて耐えられない』を思い出して、ラウルに聞いてみた。

「ん?別に寂しくはないぞ?」

「俺、1日誰とも喋らんでも全然平気だしな」

えっ、そうなの?そういう性格の人?じゃなくて、妖精さん?

だったら、もしかして俺がこの屋敷を平日毎日通学で使うようになったら、すんげー邪魔に思われるだけじゃね?

「まぁでも、作った料理の味の感想や評価を誰かに聞いてみたいな、と思う時がないこともない、がな」

ライトの困惑が思わず表情に出ていたのか、そしてそれを機敏に察してか、ラウルは軽く微笑みながら言った。

ラウルの言葉に、ひとまず安堵するライト。

「じゃあ、たまぁーにでいいから、ぼくが学校終わってこの家に帰ってきた時に、おやつ出してもらってもいい?」

ライトは目をキラキラと輝かせながら、ラウルに問うた。

こんなに美味しいおやつをちょくちょく食べられる、もし実現できるならそれは間違いなく至福の時の大増量である。

こんな絶好の機会、見逃す訳にはいかない。

「おう、たまにと言わず毎日でもいいぞ。毎日何かしらのおやつ作ってるしな」

「本当に?やったぁ!ありがとう、ラウル!」

交渉の成功に素直に喜ぶライト。

そこに、レオニスが突如参戦する。

「あっ、ライト、ずるいぞ!ラウルのおやつなら俺も食べたいぞ!」

「レオニス、お前ね……大人げないよ?おやつは子供の特権だろ、ずるいもへったくれもあるか」

「ええい、黙らっしゃい!美味しいものに、大人も子供もないの!大人差別反対ッ!」

レオニスが珍しく駄々をこねている。

そう、レオニスはお酒はあまり飲まない代わりにスイーツ系や甘いものは好きなのだ。

そんなレオニスの嗜好を知っているライトが、レオニスに救いの手を差し伸べる。

「レオ兄ちゃん、そしたらレオ兄ちゃんのお仕事が忙しくない日とか、時間に余裕のある時にはおやつの時間にこの家に来て、ぼくやラウルといっしょにお茶するってのは、どう?」

「おおッ、それいいな!」

「ただし、おやつを食べたいがために、お仕事を途中で放り出したりしちゃダメだよ?」

「もちろんだ!俺が仕事で手抜きをするような、そんな不誠実な男だと思うのか?」

レオニスはライトの提案に喜びつつ、その後しっかり釘を刺されたことにも機嫌を損なうことなく真剣な眼差しで問い返した。

レオニスらしい反応に、ライトは小さく笑いながら答える。

「ふふっ、レオ兄ちゃんに限ってそんなことはないって、ぼくは知ってるよ?」

「そうだろ、そうだろ?」

「レオ兄ちゃんが来れなかった日は、お持ち帰りにしてもらうよ。ラウル、お願いできる?」

「おう、俺はおやつの材料費を多めに貰えるなら、いくらでも用意するぜ?」

「もちろん食費の上乗せはするぞ!とりあえずは月額5000G増加でどうだ?」

「おお、ご主人様の頼もしいお墨付きと予算の大幅増額を得られたぞ。こりゃ腕によりをかけて、日々美味しいおやつを出せるように用意しとかなきゃな」

「わーい!ラウル、これからよろしくね!」

「畏まりました、新しい小さなご主人様www」

ラウルも会話に加わり、より賑やかで楽しい午後のひと時になった。