軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第469話 魔石の新たなる展開

翌日曜日。

今日の予定は午前中に幻の鉱山で採掘、午後は自由行動となっている。

「本当なら、次はフェネぴょんが行くはずだったのにね……」

「今はフェネセンの行方が分からんから仕方がない。……まぁあいつのことだ、そのうち何事もなかったような顔してひょっこりと帰ってくるだろうさ」

「だといいけど……」

ライトがしょんぼりとした口調で呟き、レオニスはその不安を払拭するように努めて平静を装う。

そう、本来なら次の幻の鉱山行きにはフェネセンが同行する予定だった。フェネセンがラグナロッツァを旅立つ前に「次に幻の鉱山に行く時は、吾輩も連れてって!」とレオニスにお願いしていたからだ。

そして、幻の鉱山へ行くための特殊アイテム『幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョン』の魔力の充填も既に完了している。

前回幻の鉱山に採掘したのは去年の九月一日、ライトがラグーン学園に途中入学した日の午後のこと。それから既に半年以上の月日が経過していた。

だから、本当ならレオニスもフェネセンを連れて二人で幻の鉱山に行くつもりだった。

だが今はそのフェネセンが行方不明で、未だに連絡が取れない。

そこへきて、ここ最近は魔石の消費が以前に比べてかなり早くなっている。ライトの通学や各都市間への移動回数が格段に増えたからだ。

また、増加したのは転移門の動力源だけではない。これからはアイテムバッグの動力源としての需要も新たに加わるのだ。

こうした諸事情により、魔石の増産が急務となっていた。

朝食を食べ終え、少し休憩してから準備を始める。

異空間である幻の鉱山には、前回同様居間から行く。

レオニスは外の倉庫に行き、幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョンを取り出して家の中に戻ってきた。

ライトはレオニスの腰にしがみつき、二人で向かう準備は万端整った。

静かに 得物(ツルハシ) を振り被り、閃光の如き一刀両断で次元を斬り裂くレオニス。

その姿は本当に荘厳で格好良く、まさに剣豪を思わせるような威厳溢れる佇まいだ。

手に持つ得物がツルハシなのと、お尻に 子猿(ライト) がしがみついた状態なので、実に、実に台無しの残念状態なのだが。

幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョンを用い、何もない空間を斬り裂いた瞬間から周囲は異空間である幻の鉱山に変わる。

早速レオニスはツルハシで岩肌をガンガン切り崩し、ライトはレオニスが足元に開いた空間魔法陣にせっせと切り出された鉱物を収納していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「お疲れさまー、今回もたくさん拾えたね!」

「ああ、ライトのおかげでまたたくさんの鉱物が得られたぞ」

幻の鉱山での採掘を終え、ライトとレオニスは現実世界へと戻ってきた。

鉱山内での活動可能時間は一時間。その間レオニスはずっとツルハシを振るい続けていたが、ほとんど汗をかいていない。

幻の鉱山内は暑くもなく寒くもなく、まさに適温というのもあるが、相変わらずレオニスの呆れるほどのタフさにはつくづく感心させられる。

ライトも幻の鉱山で手伝うのは二度目とあって、前回よりもさらに効率良くたくさんの鉱物が拾えた気がする。

そんなライトが、ふと思い出したようにレオニスに問うた。

「そういえばさぁ、レオ兄ちゃん。ぼく、一つ疑問があるんだけど」

「ン? 何だ?」

「魔石の素材ってさぁ、絶対に水晶じゃないとダメなの? 幻の鉱山で拾えるルビーやサファイア、エメラルド、ダイヤモンドなんかには魔力を貯めることはできないの?」

この疑問は、ライトが先程までいた幻の鉱山で各種宝石類を拾っている間にふと湧いたものである。

水晶以外の宝石じゃダメなのかな? 魔石の素材として、ルビーやダイヤモンドは不適切なんだろうか? つーか、水晶もだけどサファイアやエメラルドとかの宝石類だって立派なパワーストーンなんだし、普通にイケるんじゃね?等々、鉱山内でひたすら鉱物を収拾しながら考えていたのだ。

そんなライトの素朴な疑問に、レオニスは目を見開いた。

「ルビーやサファイアを魔石の素材に、か? 今までそんなこと考えもしなかった」

「え、そうなの?」

「ああ。これまで宝石類のほとんどは、カイ姉達のアイギスに格安で卸してたんだ。宝石はカイ姉達の仕事に欠かせない必須アイテムだしな」

「確かにアイギスでは宝飾品も作ってるし、貴族が仕立てるドレスにも宝石を使ったりしてるもんね」

レオニスの話に、ライトも得心する。

超一流ブティックとして名を馳せるアイギス、彼女達の作る装飾品やドレスには良質な宝石が欠かせない。

質の点で言えば、幻の鉱山から採れる宝石類は最高品質である。

さすがに採掘直後の時点では原石だが、アイギスの宝石研磨担当であるセイの手にかかればその原石はたちまちのうちに最高級の宝石に生まれ変わるのだ。

そんな最良の宝石類を、レオニスはアイギスにのみ格安価格で卸してきた。

レオニスとしては本当は無償で譲渡してもいいのだが、それはカイ達が許さなかった。『これは立派な商取引なんだから、レオちゃんもちゃんとお金を受け取って?』『でないと姉さん、レオちゃんからの宝石は受け取れないわ』と、特にカイが頑として譲らなかったのだ。

そこまでカイに言われては、レオニスも対価としてお金を受け取らない訳にはいかない。

ただし、幻の鉱山で得た宝石類で金を儲ける気はほとんどなかったレオニス。市場価格の半値以下、二割から三割程度の値で卸すことになったのである。

「今までは幻の鉱山で採掘した宝石は、全てカイ姉達だけに卸してきた。だが、ライトが採掘を手伝ってくれた時の宝石類がまだかなり残ってるんだよな」

「ぼくが鉱物を拾う手伝いしたからかな?」

「間違いなくそういうことだと思う。ライトの労力が加わったことで、掘るのと拾うのを役割分担できたからな。おかげで採掘量は全て二倍以上は増えたし」

レオニスが一人で幻の鉱山を採掘していた時は、水晶採掘が主目的だった。

なので、水晶は魔石用素材として自分の手元に置き、それ以外の宝石類は全てアイギスに卸していたという。

だが前回の採掘はライトが加わり、レオニスと合わせて二人分の労力になった。その結果、全鉱物において予想をはるかに上回る成果を得られたのだ。

「ふむ……今まで魔石の素材を水晶にしてきたのは、主に二つ理由があってな」

「まず一つ目は、幻の鉱山で採れる宝石類の中で水晶が最も量が多くて手頃だったこと。二つ目は、魔力を溜め込んだ時の色の変化が最も分かりやすいのが、地色が透明な水晶だったから。この二点なんだが」

「他の宝石類の在庫にかなり余裕が出てきた今なら、試してみてもいいかもしれん。他の宝石も水晶同様、魔力を溜め込んで魔石として使えるかどうかをな」

レオニスが顎に手を当てながら、真剣な様子で思案している。

今までは水晶も他の宝石類も、余剰分と言えるほどの量がなかった。だからこそ『水晶以外の宝石に魔力を溜め込んで魔石にする』という考えが、レオニスには一切浮かばなかったのだ。

そしてここで、ライトが新たな提案をレオニスに持ちかける。

「そうだねー、余ってるなら試しにやってみてもいいんじゃない? そしたら原石だけじゃなくて、研磨した後のルビーとか置いてみてもいいかもね」

「研磨後の石か? 何でだ?」

「透明な水晶と違って、色石は研磨の前と後ではかなり色の出方や見え方が変わるじゃん。原石の状態よりも、研磨後の綺麗な状態の方が色の変化とか分かりやすいでしょ? それに、アイテムバッグの動力源に使うにしても、水晶よりもルビーやエメラルドの方が受けが良さそうだし」

「ライト……お前、天才か?」

ライトの斬新な提案に、レオニスが大きく目を見開きながら感嘆する。

確かにライトの言う通りで、普段使いの魔石はともかく新たな魔石の需要であるアイテムバッグの動力源として各種宝石が使えれば、これ程魅力的な展開はない。

何故ならアイテムバッグ販売の最初の顧客は、王侯貴族や大富豪等の富裕層がメインターゲットだからだ。

そうした富裕層は、美しく稀少な宝石類を特に好む傾向がある。富裕層相手にアイテムバッグを販売するなら、動力源をより見栄えの良い宝石類にすればさらに受けが良くなること間違いなしである。

「そしたら今度……いや、今日の午後にも早速魔石用の魔法陣をいくつか新規に作ってくるか」

「いいね!魔法陣は何個増やすの?」

「そうだなぁ……幻の鉱山で採れる宝石ってーと、ルビーにサファイア、エメラルドにダイヤモンド、他にもトパーズ、トルマリン、オパールなんかがあるが……とりあえず五つ新設するか。最初は原石を置いてみて、魔力が溜まる二週間の間にカイ姉達に宝石の研磨依頼を出そう」

「また新しく作ったら、後で場所を教えてね。魔石回収はぼくの役目だからね!」

「おう、頼りにしてるぞ」

自由行動となっていた午後に、早速レオニスは魔石生成の魔法陣を新設してくるという。

思い立ったが吉日、成すべきことはすぐに行動に移すのがレオニスの長所だ。

そしてライトもまた魔石生成場所が増えることに無関係ではない。魔石回収はライトの日々の仕事、走り込みの修行も兼ねたライフワークなのだ。

一方でライトの本日の午後の予定も決まる。

レオニスが魔石生成用の魔法陣を新たに設置するために出かけている間に、まだ解体できていない魔物の解体作業をしよう!と思いついていた。

レオニスの目につかないように解体作業を進めるのも、なかなかに一苦労ではある。だが、こうして少しづつでも解体作業を進めて使える素材にしておかなければならないのだ。

「じゃ、早めに昼飯済ませて、午後の仕事もちゃちゃっと済ませるか」

「うん!」

二人は午後の予定を手早く済ませるべく、早めの昼食の準備に取り掛かっていった。