軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第463話 燃え盛る二つの魂

翌日の日曜日。

ライトはようやく材料を揃えることのできたグランドポーションのレシピ作成に取り掛かった。

まずは昨日の魔物狩りで手に入れたディソレトホークの解体作業からだ。

カタポレンの森の家の裏側にある解体作業場に移動したライト。

アイテムリュックからディソレトホークを一体取り出し、作業台の上に乗せる。

右手に解体専用特殊アイテム『解体千本刀』を持ち、生産職スキル【解体新書】を発動させる。

すると、解体スキルと特殊アイテムの相乗効果により、あれよあれよという間にディソレトホークの解体が進んでいく。

ディソレトホーク一体から得られるのは、爪、羽根、 嘴(くちばし) 、眼球などである。

鳥類型の魔物なので一応肉や皮も採れるのだが、BCOのゲームシステムの中で鳥類型魔物の肉や皮が素材として扱われることはまずない。少なくともライトの知識では覚えがない。

現実で使える用途があるとすれば、浄化魔法をかけた後に食用にするくらいか。

ディソレトホークの肉や皮が美味しい食材になるかどうかは、現時点では全くの不明である。

一体につき約三分でディソレトホークを次々と解体していくライト。

解体スキルで綺麗に取り分けられた各部位を、ひとまずアイテム欄に収納する。肉や皮、血液、内臓類はゲーム用素材としてカウントされないため、これらはひとまとめにしてアイテムリュックに収納しておく。

今回ライトが必要なのはディソレトホークの爪『荒原鷹の斬爪』である。

ディソレトホーク一体から得られる爪の数は八個。脚一本につき四個の爪、二本分で計八個になる勘定だ。

二十体も解体すれば百六十個、十分過ぎるほどの量が確保できた。

『荒原鷹の斬爪』が用意できたら、いよいよグランドポーションの作成だ。

ライトはマイページのレシピコレクションを開き、該当ページを開いた。

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☆グランドポーションレシピ☆

【材料】

荒原鷹の斬爪5個

イノセントポーション3個

エネルギードリンク2滴

闘水2個

巨大蜈蚣の硬皮3個

これらを混ぜ合わせて【遠心分離】1回かけて濃縮する

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必要な材料を全て揃えて、【遠心分離】スキルを発動させる。

瞬時にライトの目の前に大きな器が現れる。

その大きさは、もはやライトの自室を上回るくらいの大きさだ。

それもそのはず、ライトの【遠心分離】のスキルレベルはもうMAXに達していた。

回復剤を濃縮したり闘水や退魔の聖水などの、様々なレシピアイテムを日々作り続けてきた成果である。

器に素材を入れて、遠心分離の開始ボタンを押す。

超高速回転が始まったと思ったら三秒程度で終了し、もう遠心分離が完了してしまった。

この【遠心分離】というスキル。最初の頃は完了までに十秒程度かかっていたが、スキルレベルMAXともなると本当に瞬時に終了してしまう。スキルレベルを上げれば時間効率も良くなるのだ。

遠心分離器の中で取り出された、鮮やかな山吹色有効成分。

これがグランドポーションである。

グランドポーションをポーションの空き瓶に収納していくライト。瓶に詰めて蓋をすれば、グランドポーションのレシピ作成完了だ。

「ッしゃーーー!グランドポーションの完成でーーーすッ!」

「そしたら次はパラリシスパイシードリンクの作成だ!」

グランドポーション作成の成功に勢いづくライト。

クエストイベント8ページ目も残すところあと一つ、いよいよ大詰めである。

ライトは休むことなくイベントに夢中になっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

まずはクエストイベントの最新ページを開くライト。

お題の中に『砂漠蟹の大鋏』という、ライトにとっては超難題が出てきて以来このページを開くのは久しぶりのことだ。

月日にして二ヶ月弱ぶりである。

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★小人族の危機に備えよ act.5 【パラリシスパイシードリンク】を作ろう!★

〔パラリシスパイシードリンク 原材料〕

【36.暗黒花の花粉10個 報酬:スキル書【金属錬成】 進捗度:10/10】

【37.グランドポーション1個 報酬:青竹色の香炉1個 進捗度:1/1】

【38.砂漠蟹の大鋏3個 報酬:エネルギードリンク1ダース 進捗度:3/3】

【39.コズミックエーテル1個 報酬:代赭色の香炉1個 進捗度:1/1】

【40.黒色のねばねば1個 報酬:錬金王の大鎚 進捗度:1/1】

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まずはこれらお題のうち、未受取のNo.37とNo.38の報酬を受け取ったライト。

特定モンスターが入っている香炉類はともかく、エネルギードリンク1ダースは非常に嬉しい。エネルギードリンクはレシピ作成アイテムの原材料として欠かせない存在だからだ。

また、エネルギードリンクにはSP回復効果もある。

エネルギードリンクを一口飲めばSP50回復、瓶一本で十口分くらいある。エネルギードリンク一本あれば、ライトのSPは500回復する計算だ。

SP500もあれば、手裏剣その他攻撃スキルも思う存分打ち放題である。

ライトが冒険者デビューしたら、いろんな場面でエネルギードリンクが活躍することだろう。

報酬受け取り後は、イベントページの最後の締めであるパラリシスパイシードリンクのレシピ作成に取り掛かる。

再び【遠心分離】スキルを発動させたライト。

ラウルから譲ってもらった砂漠蟹の大鋏を始めとして、今レシピ作成で出来上がったばかりのグランドポーションやスライム飼育場の売店で仕入れた黒色のねばねばなど、全ての材料を遠心分離器の中に投入していく。

全ての材料を投入し終えたら、後は遠心分離の開始ボタンを押すのみ。

そうして出来上がった薄桜色の液体、パラリシスパイシードリンクを空き瓶に収めていく。

パラリシスパイシードリンク入りの瓶をアイテム欄に収納すれば、クエストイベント8ページ目は完了だ。

「はい!パラリシスパイシードリンクの、完成でーーーッす!!」

「新しい9ページ目は何が出てくるかなー、早速チェックしないとね!」

8ページ目の右側に新しく現れた、最新ページに移動するための▶マーク。ライトはワクテカ顔で早速▶マークをタップする。

その顔は、久しぶりのクエストイベントを進めてクリアできる喜びに満ち溢れていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

二ヶ月弱ぶりにクエストイベントの最新ページに進むことができたライト。

これが前世のようなゲームだったら、一週間もあればクリアできるところだ。だがここは、BCOと似て非なるサイサクス世界。現実世界の生活もちゃんと過ごしつつ、並行して進めていかねばならない。単なるゲームとは訳が違うのだ。

しかも誰にも知られずに秘密裏に進めなければならない。大っぴらに協力を仰げずに、ソロプレイよろしく一人で黙々とこなさなければならないから大変だ。

とはいえ、新たなるステージに進めるワクテカ感が止まらない。ここら辺はゲームならではというか、ゲーム特有の楽しさといったところか。

その新たなるステージの内容は、以下の通りである。

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★小人族の危機に備えよ act.6 【深潭の微睡み】を作ろう!★

〔深潭の微睡み 原材料〕

【41.閃光草の針葉10個 報酬:500万G 進捗度:0/10】

【42.濃縮グランドポーション1個 報酬:マキシマスポーションレシピ 進捗度:0/1】

【43.氷蟹の甲羅3個 報酬:50CP 進捗度:0/3】

【44.濃縮コズミックエーテル1個 報酬:ギャラクシーエーテルレシピ 進捗度:0/1】

【45.青色のねばねば1個 報酬:100CP 進捗度:0/1】

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「……え? CP? この世界でCP使えるとこ、あんの?」

新たなページ、9ページ目のお題と報酬を見て、ライトがまず真っ先に驚いたのはその報酬内容だ。

CPとはBCOの課金通貨のことである。

同じ通貨でもゲーム内通貨であるGとは違い、文字通りリアルマネーを課金して得る通貨のことだ。

Gでは買えないCP専用の課金装備や課金任務、ガチャなどが買える。

ライトも前世では少しだけ課金しては、それらの特殊アイテムを購入していた。いわゆる微課金者というやつである。

このCPとは、直接課金する以外にもイベントで入手することができた。例えば今回のようなクエストイベントでの報酬だったり、課金任務でCP箱と呼ばれるCP入りのボックスがもらえたり等々。

だが、今問題なのはそこではない。

ライトがぽろりと呟いたように『このサイサクス世界で、CPという課金通貨が使える場所があるのか?』である。

BCOのゲーム内通貨であるGは、このサイサクス世界でも通貨として日常生活で使われている。

だが、CPはGとは全く違う特殊な課金通貨である。これまでにライトはサイサクス世界での実生活において、CPを目にする機会は一度もなかった。

「えーーー……今までにCPが使われているところ、一度も見たことがないんだけど……どこで使えるの?」

「アイテム欄のショップ内で使えるようになるのかなぁ? それとも隠れショップみたいな隠しルートがあって、そのショップを見つけると課金アイテムを買えるようになる、とかなのか?」

ライトはうんうんと唸りながら考えるも、さっぱり見当がつかない。

「んーーー……さっぱり分からん!」

「まずはCPを手に入れてみてからだ!そしたらマイページ内に何か新しい表示が現れるかもしれないし」

「CPはひとまず置いといて、他のチェックだチェック!」

今全く手がかりのないCPのことを、ここであれこれ悩み考え続けても仕方がない。

ライトは気分を切り替えて、新しい9ページ目のお題を改めて見ていく。

「……マキシマスポーションに、ギャラクシーエーテル? 何ぞ、それ?」

「俺の知るBCOでは、グランドポーションとコズミックエーテルがHPMP回復剤の最高峰だったが……」

「それより後に出てきたってことは、それより上位品ってことか? つーか、そういうこと以外にない、よな?」

9ページ目の報酬の中に、マキシマスポーションとギャラクシーエーテルの名を見つけたライトはただただ驚く。

何故ならライトはそれらの存在を知らなかったからだ。

かつて前世でBCOを知り尽くしたライトですら、未知のアイテム名。驚愕するなという方が無理である。

「えー、こんなもんまでレシピで作れるの?……生産職コンテンツ、すごくね?」

「とはいえ、また材料がとんでもなく難易度高くなけりゃいいけどな……まぁ普通に考えて、それなりどころかかなり入手難易度高いのばかりなんだろうけど」

未知のアイテム相手に冷静に分析していくライト。

ライトが初めて目にする『マキシマスポーション』と『ギャラクシーエーテル』。それらはおそらく生産職コンテンツ用に用意された、新たな上位の回復系アイテムなのだろう。

BCOをやり込み続けて知り尽くしたつもりでも、所詮ライトはプレイヤー側。

創造神(うんえい) が計画している未発表のイベントや未実装の新システムなど、中の人でない限りどう足掻こうと知りようもないのだ。

「でも…………面白いな。こんな感覚は久しぶりだ」

まだ見ぬ新アイテムに、この先使えるかどうかも全く分からない課金通貨CP。

ライトの前に立ち塞がる、数々の新たな課題。

だがここで怯むようなライトではない。むしろ歓喜に満ちている。

創造神(うんえい) がイベントと称してユーザーに突きつけてくる、無理難題や課題。それらを見事突破して報酬や栄誉を得る、それこそがソシャゲの醍醐味というものだ。

ライトの顔からニヤリ、という不敵な笑みが自然と漏れる。それは金剛級冒険者であるレオニスが浮かべる笑みとよく似ている。

前世のゲーマー魂と今世の冒険者魂。ライトの中に渦巻く二つの燃え盛る魂に、更なる火がついた瞬間だった。