軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第357話 今日の思い出の品

「はぁー……すっ……ごく楽しかったねぇ」

「うん……すっ……ごく楽しかったぁー」

ポーッと上気した顔で呟くライトとリリィ。

先程レインボースライムショーの演目が全て終わり、一旦幕を閉じる。その後観客の大拍手が沸き起こり、三度のアンコールを経て大成功のうちにショーは完全に終幕を迎えた。

ライトとリリィはまだその余韻に浸っているようだ。

「スライム達の動き、可愛いかったー!」

「伸びたり縮んだり、すごかったねー」

「世界中で大人気、という宣伝文句も頷けるものでしたわね」

ライトとリリィほどではないが、イヴリンやジョゼ、ハリエットも十分にショーを楽しめたようだ。

四人は後方席にいたウィルフレッドと合流し、五人で観客席から退出する。

「お?レインボースライムショーの売店があるようだぞ。君達も寄っていってみるかい?」

「「「「えッ!?」」」」

今日の保護者役であるウィルフレッドが、舞台の後ろ側にある売店の存在に気づきライト達に声をかけた。

興行ショーに関連グッズを売る店はつきものである。きっと様々なスライムグッズが売っているに違いない。

そうとなれば、ライト達の答えは一つ。『行くッ!!』以外の選択肢はない。

早速売店に行ってみると、かなりの人集りができていた。ライト達と同じく、先程までスライムショーの熱気に包まれていた観客だろう。

大混雑の中ライトが懸命にお店のグッズを見ていると、ふと見覚えのある人と目が合った。

「「あ」」

ライトと見覚えのある人が、二人して同時に少し間の抜けた声を出す。

その見覚えのある人とはスライム飼育場の職員、ロルフであった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ロルフさん、お久しぶりです!」

「ライト君、だったか。久しぶりだな、今日はレインボースライムショーを観に来たのか?」

「はい!学園の友達と観に来たんです!」

「ショーはどうだった、楽しめたか?」

「それはもう!すっごく楽しかったです!」

「そうか、それは良かった」

ライトはロルフのことを『スライム飼育場のカッコいい竜人族のお兄さん』として、ロルフは『とても熱心にスライム見学していた子供』として互いのことを覚えていた。思わぬところでの再会に話も弾む。

「ロルフさんは、スライムショーのお手伝いをしてるんですか?」

「ああ。このスライムショーはスライム飼育場と経営母体が同じでな。興行部門のひとつで、俺もその手伝いに毎年こうして駆り出されるんだ」

「そうだったんですかぁ。お祭り中にお仕事なんて、大変ですねぇ」

「そうは言ってもこうして裏で売店の手伝いしたり、警備に回るくらいなんだがな。ステージにいるスライム達にはあまり近づけないんだ、俺達飼育場職員が近づくと萎縮してしまうし」

ロルフの話によると、万が一にもスライム達が逃げ出したりしないようにステージから離れたところで他の仕事をこなしつつ控えているらしい。確かにこんな大勢の観客を集めるショーでスライムが逃げ出しりしたら、大変な騒ぎになりそうだ。レオニスのように、万が一に備えて詰めている、といったところか。

とはいえ、ステージに上がるスライム達は興行部門の中でもエリート中のエリート?だそうで、躾が完璧なのはもちろんのこと性格的にも人懐っこくて、決して人を襲ったりしない個体ばかりらしいが。

それでもやはり魔物を扱う興行なので、万が一の最悪の事態に備えて行動しなければならないのだ。ちなみにロルフがクイッ、と親指を立てて指差した先には、スライム飼育場の受付嬢のお姉さんが会計係をしていた。

あの受付嬢のお姉さんもロルフと同じく竜人族なので、万が一の事態への備えとして完璧の布陣ということか。

「ライトくーん、何か買わないのー?」

「……あッ、買う買う!ちょっと待ってて!」

「友達と来てるんだろ?早く行ってあげな」

「はい!またスライム飼育場にも遊びに行きますね!」

「ああ、待ってるぞ」

イヴリン達がロルフと話し込んでいたライトに声をかけてきて、慌ててライトがそれに応える。

ロルフとはまたスライム飼育場にて会うことを約束し、再び売店の中に戻っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「んー、どれにしようか迷っちゃうー」

「この箸置きとか可愛いねー」

「七色のコースターも可愛いですわね」

イヴリン達が売店の品物を見ながら、何を買うか悩んでいる。

それもそのはず、売店の中にはたくさんのスライムグッズがある。ジョゼが見ていた箸置きや、ハリエットが手に取っていた七色のコースターの他にも、マグカップやスライム型の小皿に小鉢、ペンダントやがま口財布なんてものまである。

どれもこれもお手頃価格で、今日の記念品として買い揃えたくなってしまう。実に充実したラインナップである。

また、グッズの他にもぬるぬるドリンクコーナーが併設されていて、そのラインナップが豊富で人気を博している。

普段から親しまれている橙や黄色、茶色等のド定番品はもちろんのこと、以前クレナから聞いた『紅白スペシャル』や『レインボーデラックス』まであるではないか!

どうやらこの二つは生誕祭の間のみ販売される、正真正銘レアな限定品らしい。メニューの看板にも『この二種類を飲めるのは、生誕祭の三日間だけ!』という売り文句まで書いてあるくらいだ。

紅白スペシャルは苺ミルク味だそうで、イヴリン他女子達三人が購入して一旦店の外に出て美味しそうに飲んでいる。だが、レインボーデラックスがどうにもその味の想像がつかない。

この場で買ってすぐに飲む勇気はライトにもジョゼにもないが、持ち帰ってラウルに飲ませてやろう!と思い立ったライトが一つだけレインボーデラックスを購入した。

そんな風にスライムショップを楽しむ中で、皆それぞれに思い思いのグッズを購入していく。

イヴリンはスライムの絵柄入りマグカップ、ジョゼはイヴリンと同じマグカップの色違い、ハリエットはスライムのイヤリング、ウィルフレッドは茶色のぬるぬるの素を購入した。

ライトはというと、マグカップに小物入れ、小皿に小鉢、がま口型の小銭入れを買った。マグカップはレオニスに、小物入れはマキシに、小皿と小鉢はラウルに、そしてがま口小銭入れは自分用である。

そして本日の主役、リリィが最後の最後まで悩んで一番最後にお会計に行く。

既に買い物を済ませて売店の外で待っていたライト達のもとに、ようやくリリィが戻ってきた。

「皆、お待たせー!」

「リリィちゃん、好きな物買えた?」

「うん!あのね、七色のコースター買ったからね、皆に一つづつあげる!皆、好きな色選んで!」

「えっ!?そんな、いいよ、リリィちゃんのお小遣いで買ったものなんでしょ?」

リリィが買った七色のコースターを、皆にも一つづつくれるという。今日の祭りのためにもらったお小遣いだってそんなに多くないだろうに、と思うとライト達はついつい遠慮してしまう。

だが、そこは何気に頑固なリリィ、一歩も引かない。

「ううん、いいの!今日のスライムショーを観れたのは、皆のおかげだもん!皆がお父さんとお母さんにお願いしてくれたから、こうしてショーを観に来ることができたの!」

「でもって、今日の思い出として、皆にもお揃いのコースターを持っていてほしいの!とっても楽しかった今日のことを、いつでも思い出してもらえるように」

「だから!皆遠慮しないで選んで!」

そこまでリリィに力説されては、もはやライト達に否やはない。

七色のコースターの中から、それぞれ好きな色を選んではリリィからもらっていく。イヴリンは橙、ジョゼは緑、ハリエットは紫、ライトは青、ウィルフレッドは黄色を選んだ。

同級生達だけでなく、ハリエットの兄ウィルフレッドにまでコースターを分け与えようとする今日のリリィはいつになく太っ腹だ。

ウィルフレッドの方も、最初のうちは『僕までもらっていいのかい?それでは君の持ち帰る分が減ってしまうよ?』とかなり遠慮していたのだが。そこはリリィの『いいの!お兄さんも私のために来てくれたんだから!』という押しの一手についに折れた形だ。

ウィルフレッドとしても『皆と思い出を共有したい!』というリリィの気持ちが分かる故に、無碍にはできなかったようだ。愛する妹と同じ歳の幼い女の子のニコニコ笑顔に、保護者役であるウィルフレッドも自然と頬が緩む。

皆それぞれに選んで分けてもらったスライム型のコースターを、大事そうに鞄に仕舞う。そして残りの二枚、ピンクと赤のコースターはリリィのポーチにこれまた大事そうにリリィの手で仕舞われていく。

女の子の好きな色二色がリリィの手元に残ったのは、もちろん級友達なりの配慮である。

「リリィちゃん、ありがとう!」

「もらったコースター、大事にするね!」

「私もお部屋の中に飾りますわ!」

「また来年も皆でスライムショー観に行こうね!」

級友達が口々にリリィにコースターのお礼を言う。

ずっと満面の笑みだったリリィだが、特に最後の方のライトの言葉が気に入ったようで再び溢れるような笑顔になる。

「……うん!また来年も、皆でスライムショー観ようね!」

「行こう行こう!来年も再来年もその次も、ずーっと皆でいっしょに行こうね!」

「やったー!約束だよ!絶対に絶対に、約束だからね!」

「うん!!」

リリィの大親友であるイヴリンが、リリィと手を繋ぎながらともに大はしゃぎする。二人してその場でピョンピョンと飛び跳ねる姿は、何とも年相応でとても可愛らしい。

そんな二人の姿を、微笑ましく眺めるライト達。

しかし、時間は有限だ。そろそろ次の行き先を決めねばならない。

「さ、じゃあこの後はどうする?リリィちゃん、今日は夕方の五時まで遊んでいいんでしょ?」

「そしたらあと三十分くらい時間あるね。他のお店を見て回る?」

「うん!お祭りの屋台やお店、見てみたい!……あ、でも……」

「ン?リリィちゃん、どうしたの?」

ジョゼの問いかけを切っ掛けに、次はどうするかを決める一同。

とりあえず屋台や出店を回ることに決まったが、リリィがはたと動きを止める。

その突然の落差に、一体何事かと心配そうに問うたライトにリリィはもじもじしながらモニョモニョと答える。

「ンーとね、あのね?リリィのお小遣い、さっきのコースターでほとんど消えちゃった……だからね?」

「「「「???」」」」

「食べ物買ったら、一口だけでいいからリリィにも分けてちょうだいねッ☆」

もじもじしながら呟くリリィの言葉は、何とおすそ分けのおねだりであった。

今日はお土産のコースターを皆に分け与えるという、普段から締まり屋のリリィらしからぬ太っ腹だったが。やはりリリィはリリィである。

最後の最後になって、テヘペロ顔で級友達に甘えるところが実にリリィらしい。

そんないつものリリィに、イヴリン他級友達は一瞬だけ呆気にとられるも、すぐに笑顔に戻る。

「ンもー、リリィちゃんってば本当に面白いんだから!」

「え?私が面白い?どこが?」

「全部よ、全部!」

「うん、リリィちゃん、君は本当に期待を裏切らない面白い子だよね」

「え?ジョゼは私に何を期待してるの?難しいこと期待されても困るんだけど」

「リリィちゃんのそういうところだよ?」

「うん、意味分かんない。罰として、ジョゼの食べ物は一口じゃなくて半分ちょうだいね?」

「それこそ意味分かんないよ」

イヴリンがリリィをムギューッ!と愛おしそうに抱きしめ、ジョゼが冷静にツッコミを入れる。ラグーン学園の教室で繰り広げられる光景そのものである。

そのいつもの光景を、ライトやハリエットが楽しそうに眺めるのもまたいつもの光景だ。

「あッ、お店見て回る時間なくなっちゃうよ!?」

「ぃゃーん、皆、急いで歩こう><」

「あっ、イヴリン、リリィちゃん、待って!走って動くと皆とはぐれちゃうよー!」

バタバタと慌ただしい三人に、ライトとハリエットも慌ててついていく。

こうしてライト達は、生誕祭三日目の午後を日が暮れるまで楽しんでいった。