軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第312話 新しい装備品の作成依頼

「レオちゃんのサイズは分かってるから、とりあえずライト君のサイズを測らせてもらうわね。メイ、ライト君の採寸をお願いね」

「はーい。さ、ライト君、こっちにいらっしゃーい」

「セイはフォルちゃんの魔導具にモチーフをつけてあげて。そのついでに、マキシ君にアイギスの店内や作業場なんかも案内してあげてちょうだい」

「分かったわ。マキシ君、行きましょうか」

「そしてレオちゃん。貴方には引き続き仕事の内容のお話をしてもらうわよ?より万全な対策を取るためにも、ね?」

「は、はぃ……」

カイがセイとメイに仕事を振り分け、それぞれが動き出し部屋を退出する。

ライトはメイとともに採寸に行き、マキシはセイとともにアイギスを見て回るために部屋を出る。

そしてこの場に残ったのは、カイとレオニスの二人のみ。

いつもののほほんとしたカイの笑顔から、何やらものすごい圧が発せられているのを感じ震え上がるレオニス。

「具体的にはどういう風にライト君を守るつもりでいるの?」

「えーと、まずは俺と同じ防熱対策で炎の洞窟の熱をやり過ごして、魔物からの襲撃が回避できるように隠密魔法を付与したフォルの魔導具を持たせて―――」

「はい、レオちゃん、失格」

レオニスの語る対策に、何とカイはすぐさま失格の烙印を押した。

その容赦の無さと早々に落第点を得てしまったことに、レオニスはガビーン!顔になる。

「いつまでフォルちゃんの魔導具を間借りさせるつもり?本当にライト君の身を守るなら、ライト君用に新たな魔導具を持たせるべきでしょう?」

「ん……確かにカイ姉の言う通りだ」

「それに、レオちゃんにはいつも着ている深紅のロングジャケットがあるけど、ライト君にはそういった専用の装備品はないでしょう?その分ライト君の方が防御も弱いんじゃない?」

「あ、ああ、その差もあるかも……いや、確実に差が出るよな……」

カイからのいくつかの指摘に、レオニスはただただ頷くしかない。それらの指摘は全て正鵠を射ており、反論の余地などないのだから。

「ライト君はまだこれから大きく成長していくから、レオちゃんのロングジャケットのような専用装備を作るのは難しいと思うけど」

「例えずっと着られるものでなくても、大きめのマントとかにすれば数年は使えるでしょうし」

「今回のように危ない場所に行くなら、それなりにちゃんとした装備を仕立てるべきだわ」

「冒険に出ても怪我することなく、五体満足で無事に帰ってくる。それこそが一番大事なことなんだから」

確かに子供の成長は早い。今ライトの身体にぴったりサイズの装備を作ったとしても、それを使えるのはほんの一年くらいでとても二年以上は使えないだろう。

だが、ここで服や装備を買い替える金を出し惜しみすべきではない、とカイは主張する。

冒険者なんて生きて帰ってナンボ、命あっての物種なのだ。

「そうだな、全く以てカイ姉の言う通りだ。俺もケチってたつもりはなかったんだが……良い機会だから、ライトの専用装備も作ってもらうか」

「そうよ。レオちゃんには、ライト君に新しい魔導具を持たせてあげるだけの力は十分にあるんだから」

「いや、俺もまだまだだな。カイ姉に言われなきゃ分からないなんてな。未熟な俺に大事なことを気づかせてくれてありがとう、カイ姉」

「ふふふ、どういたしまして」

カイの笑顔にようやくいつもの温かさが戻ってきた。

そこでレオニスがふと何かを思い出したようで、カイに改めて話をする。

「あ、そういや新しい魔導具で思い出したんだが。マキシの羽根ってまだ在庫あるか?」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

突如マキシの羽根の在庫を尋ねるレオニス。

それまでと全く違う話に、カイはきょとんとした顔をしながらその問いに答えた。

「マキシ君の羽根というと、八咫烏の羽根のこと?ええ、未使用のものなら多分四枚か五枚残ってると思うけど」

「そしたら、その羽根で俺用のアクセサリー装備を何か作ってくれないか?ペンダントでもいいしブローチでもいい、とにかく付け外しのしやすいアクセサリーにして欲しいんだ。もちろん代金はきちんと払うし、宝石や金属が要るなら何でも提供する」

「お代は別に構わないけど……レオちゃんが新しい装備品を求めるなんて、随分久しぶりのことね。何か新しい付与魔法でもつけるの?」

レオニスの突然の要望に、カイがその意図を尋ねる。

「えーと、マキシの羽根を使ったライトの御守のラペルピンがあるだろう?あれに破邪効果があることが分かってな」

「まぁ、そうなの?八咫烏の羽根だからかしら?」

「そうだろうな。ライトのラペルピンには、おそらくフェネセンがかけた破邪系の付与魔法もついててかなり強力なものになっているが。それを差し引いても、霊鳥八咫烏の羽根の破邪効果自体それなりに高いはずだ」

「フェネセン閣下の破邪魔法……」

レオニスの説明の中に、久しぶりに聞く名前が混じる。

その名を聞いたカイが、嬉しそうに静かに微笑む。

「ふふふ……フェネセン閣下は本当にライト君のことが大好きなのね」

「ああ、あいつらしいよな」

「フェネセン閣下、今頃どこにおられるのかしら?フェネセン閣下のことだから、元気に旅しておられるでしょうけど」

「そうだなぁ……どこにいるんだろうなぁ……」

カイの笑顔につられて、レオニスも微笑む。

フェネセンの身を案じながら思いを馳せるカイに、レオニスは言葉を濁しつつ相槌を打つ。

本来ならフェネセンが残していった通信用魔導具で、容易に連絡が取れるはずだったのだが。フェネセンが戻ってくると言った日から 杳(よう) として行方が知れず連絡が途絶えたままだ。

そのことを知るのはレオニスとライト、ラウルとマキシ、そしてクレアの五人のみである。

そしてカイは、フェネセンに対して偏見を持たずに普通に接する、数少ない理解者だ。フェネセンが行方不明になったなどと知れば、それはもう心配するだろう。

レオニスとしても、カイに余計な心配をさせないためにフェネセンが行方不明だということは一切教えるつもりはなかった。

もともとフェネセンは風来坊で、このラグナロッツァにも年単位で帰ってこないことなどザラなのだから、行方不明などという事態を知らなければ「いつものこと」で済むのだ。

「……で?破邪効果がある八咫烏の羽根が、レオちゃんにも必要ということは?」

「ン?」

「破邪効果が必要になるような、とても危険なお仕事をしているってことね?」

「!!!!!」

カイの鋭さに、レオニスは驚愕させられる。

破邪とは文字通り、邪悪な存在を打ち破ること。その意味を知っていれば、自ずとその先も見えてくる。

レオニスが求める効果のその先、つまりは邪悪な存在が敵として存在していて―――それらと相まみえることを前提とした装備品であることを、カイは瞬時に理解したのだ。

「あー、えーと、こればかりはカイ姉にも詳細を話す訳にはいかないんだ……割とっつーか、かなりっつーか、ぶっちゃけ国家機密なんだ……」

「ええ、さっきのように怒ったり問い質したりはしないわ。レオちゃんだってもう立派な大人で、とても強い冒険者なのだし」

「すまん、カイ姉……」

そう、レオニスが八咫烏の羽根のアクセサリーを求めたのは、ラグナ教悪魔潜入事件の極秘調査時に用いるためである。

先程のフォルの魔導具同様、いつまでもライトからラペルピンをその都度借り受ける訳にもいかない。この御守はライトとフェネセンのお揃いで、二人にとって絆を表す大事な品なのだから。

だが、ラグナ教の事件に関することは箝口令が敷かれており、絶対に他言無用の国家機密案件だ。

例え相手がカイであっても、その詳細を語る訳にはいかなかった。

「レオちゃん、姉さんとの約束、覚えてる?」

カイが真剣な眼差しで、レオニスの目をじっと見つめる。

「もちろん覚えてるさ。俺が大きな怪我をせず冒険者稼業を円満に引退して、すんげー長生きするって約束だよな?」

「ええ、レオちゃんはその約束を絶対に守ってくれるのよね?」

「ああ、あの時も今も約束を忘れちゃいない。そもそも俺がカイ姉との約束を違える訳ないだろう?」

「そうね、昔からレオちゃんは約束したことは必ず守ってくれる子だものね」

力強く言い切るレオニスに、カイが安堵の表情を浮かべる。

「だったら姉さん、もう何も言わないわ。それでもレオちゃんが冒険者を続ける限りは、ずっと心配し続けるだろうけど」

「カイ姉には心配ばかりかけて本当にすまない。でも俺はいつだってカイ姉や皆のもとに、必ず生きて帰ってくる」

「ええ、絶対よ。姉さんとの約束、破ったら承知しないからね?」

「ああ、分かってるよ」

今日も先の見えない口約束を交わす、レオニスとカイ。

だが、レオニスとてその約束を口だけのものにするつもりはない。

どこに行こうとも必ず帰ってくる。俺の帰りを待っていてくれる人がいる限り、生きて皆のところに戻る。

カイと改めて約束を交わすことで、生還への思いを新たにしたレオニスだった。