軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第310話 アイギスでの相談

思わぬ怒濤の展開つきの昼食を終え、午後はライトとレオニスとマキシの三人でアイギスに向かう。

ライトはアイギス三姉妹に新年の挨拶その他、レオニスは仕事の相談、マキシはアイギスでの修行の申し込み、それぞれに目的は異なっている。

ちなみにラウルはフォルとともに屋敷で留守番だ。いや、留守番というより午前中に買い出しした食材を調理したくて屋敷に残った、という方がより正しいか。

アイギスの店の前に到着したライト達。今日はまだ三が日なので、店舗の扉には『休業日』という札がかけられていて休業中となっている。

レオニスが先頭に立ち、裏口の方に回る。裏口からは作業場に入る出入口があり、その奥に三姉妹の居住スペースがあるのだ。

「カイ姉、セイ姉、メイ、いるかー」

レオニスが大きめの声で居住スペースに向かって声をかける。

すると、しばらくしてメイが奥から出てきた。

「あらー、新年一番の客は誰かと思ったらレオじゃないの」

「おう、俺だけじゃなくてライトとマキシもいっしょに来てるぞ」

「メイさん、あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」

「僕も去年はメイさん達にとてもお世話になりました。今年もよろしくお願いします」

レオニスの後ろに控えていたライトとマキシが横に出て、ペコリと頭を下げつつそれぞれメイに挨拶をする。

「あらまぁ、二人ともご丁寧なご挨拶ありがとう。こちらこそ、今年もよろしくね!」

「外で立ち話も何だから、中に入って!カイ姉さんやセイ姉さんもいるから」

メイの提案により、作業場を通り抜けてアイギス三姉妹が住む母屋に向かうライト達。作業場の奥に、母屋と思しき建物が見えてくる。

二階建てのこぢんまりとした建物だが、中に入るときちんと手入れや整理整頓が行き届いていて清潔感のある良い家だ。

「カイ姉さーん、セイ姉さーん、レオ達が来たわよー!」

「お邪魔しまーす……メイさん達はここに住んでるんですね」

「ここでは寝食くらいしかしないけどね。皆だいたいお店か作業場にいることの方が多いし」

「皆さん仕事が大好きなんですねぇ」

「ええ、アイギスでの仕事は私達の天職ですもの!」

二階にいるらしいカイとセイに向けて、メイが大きな声でライト達の訪問を伝える。

しばらくすると、奥にある階段をトントンと降りてくる音が聞こえてくる。カイとセイが二階から下りてきたようだ。

「皆、いらっしゃい」

「レオにライト君にマキシ君もいるのね!どうぞ上がって!」

「お邪魔しまーす」

セイの言葉を受け、ライト達三人は遠慮なく家に上がる。

奥にある客間に通され、アイギス三姉妹 vs レオニス一行のように三人づつ向かい合う。

「カイさん、セイさん、メイさん、あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」

「レオちゃん、ライト君、マキシ君、あけましておめでとうございます。こちらこそ、今年もよろしくお願いね」

レオニス一行はライトが、アイギス三姉妹はカイが代表として新年の挨拶を交わす。

アイギス三姉妹の代表が長姉であるカイなのは当然として、レオニス一行の代表が何故に最年少であるライトなのか。その答えは社交性の高さと精神年齢に比例しているものと思われる。

「あ、これ、【Love the Palen】のお年賀セットです。去年はレオ兄ちゃんともどもすごくお世話になりましたので。よろしければ皆さんでどうぞ」

「あらまぁ、【Love the Palen】のお年賀なんて良いものをいただいちゃっていいの?」

「今年も大人気みたいね。私も買いに行こうと思ってたんだけど……結局家でゴロゴロしたまま買いに行かなかったのよねぇ」

「私達、アイギスのお仕事以外は引きこもりだもんねー」

挨拶に続き、手に持っていた【Love the Palen】の手提げ袋からお年賀Bセットを取り出し、両手で持ちながら恭しくカイに向けて差し出すライト。

桃色の愛らしいラッピングで【Love the Palen】のものとすぐに分かるようで、三人とも手放しで喜んでいる。やはり【Love the Palen】の人気は絶大にして不動のようだ。

「今日は新年のご挨拶の他にも、アイギスの皆さんに相談したいことがいくつかあるんですが」

「あら、そうなの?いいわよ、何でも相談してちょうだい」

「えーと、まずはぼくとマキシ君の相談なんですが―――」

ライトの相談は、フォル用の魔導具にプロステス土産の小ブタのモチーフをつけてもらいたい、ということ。

マキシの相談は、アイギスで物作りの修行をしたい、ということ。

それらを順にアイギス三姉妹に説明していくライト。

「魔導具にモチーフをつけるくらいなら、今すぐできるわ。10分もかからないから、後でちゃちゃっとつけてあげるわね」

「これ、プロステス名物の『迷える小ブタ』のモチーフよね?噂ではよく聞くんだけど、品物はラグナロッツァにもあまり出回ってないから現物を見るのは初めてだわ」

「ホント、可愛らしい小ブタね!可愛さで言えばフォルちゃんの方が上だけど!」

テーブルの上にはライトが差し出したフォル用の魔導具と小ブタのモチーフが置かれている。

『迷える小ブタ』のモチーフを初めて見るというアイギス三姉妹、その現物を三人して順番に手に取りじっくり眺めながらきゃいきゃいとはしゃいでいる。

彼女達の作る品々はどれも華麗で美しい、いわゆる美麗なものが多いのだが、可愛いものも大好きらしい。

やはり古今東西異世界問わずで『可愛いは正義!』なのだ。

「で、マキシ君は私達の作るような綺麗なものを作りたい、と。そう考えている訳ね?」

「あ、はい。僕も八咫烏の里には帰らず、このラグナロッツァでずっと暮らしていけることになりまして。でも、ただお屋敷で居候しているだけではレオニスさん達に申し訳ないですし、僕でも何かできることがあれば、と思いまして……」

「そうねぇ……私達、今までずっと三人で全て賄ってきたし、今だって人手が足りない訳ではないから従業員募集とかもするつもりは全然ないんだけど……」

「そうですか……そうですよね……」

アイギスは、カイ、セイ、メイの実の三姉妹でずっと経営してした店だ。孤児院を一番最初に卒院したカイが、三人揃うまで仕立て屋や鍛冶屋で懸命に修行しながら働き続け、それらで得た技術と資金で開業した念願のブティック。

その確かな技術と美麗なドレスはまたたく間に人々を虜にし、爆発的な人気を得て今に至る。

血の繋がりだけでなく、心の繋がりもまた強固な結束を持つ三姉妹の間に他者の入り込む余地はないのだ。

「でも、マキシ君も働ければどこでもいいって訳にはいかないわよねぇ」

「そうねぇ、もし万が一八咫烏だってことが私達以外の人にバレたら大変なことになるもんねぇ」

セイとメイが心配そうに呟く。

そう、アイギス姉妹はマキシの穢れ祓いに関わった数少ない人物だ。それ故にマキシの正体も知っているし、八咫烏という存在が人族にしてみればどれほど珍しく稀少なものかも承知している。

「……いいわ。マキシ君、とりあえずうちに働きにいらっしゃい」

「えっ、カイさん、いいんですか!?」

それまで無言だったカイが、静かな口調でマキシを受け入れる旨を伝える。

それまで、やはり無理なお願いだったな……と俯きながらしょんぼりとしていたマキシは、カイからの思わぬ言葉に顔をバッ!と上げた。

「ええ。ただし、マキシ君の得手不得手は私達にはさっぱり分からないから、とりあえず一通りの作業をしてもらうことになるけれど」

「服飾ならデザイン、型紙起こし、裁断、そして裁縫」

「鍛冶なら延べ板からアクセサリー用の部品を作るための様々な工程」

「他にも接客や注文管理、店内の掃除、服飾や鍛冶で使う道具の手入れ、部品類を含む在庫管理などなど」

「未経験者のマキシ君でも試してもらえそうなことを、一通り経験してもらうわね。全部を見終えるまでは……そうねぇ、一ヶ月くらいはかかると思うけど。それでもいいかしら?」

カイの話に、マキシは目を輝かせながら勢いよく頷く。

「もちろんです!僕にどんなことができるか、どこまでできるか分かりませんが、全力で頑張ります!」

「ふふふ、頑張ってちょうだいね。期待してるわよ」

「はい!」

「じゃあ三日後の午後、お昼ご飯食べてからでいいからお店に来てくれる?私達あと二日はお休みの予定なの」

「分かりました!」

ひとまずマキシのアイギス入店体験が無事決まったようだ。

マキシがどれくらい働けるのかは全く未知の領域だが、何とか本採用になるよう頑張ってほしいものだ。

「で、最後の相談はレオちゃんね?レオちゃんはお仕事の相談と言っていたけど、今度はどこにお仕事に行くの?」

「ああ、近々炎の洞窟の調査に行くことになってな。だからカイ姉達に防熱性能の高い装備を作ってもらおうと思ってな」

一番最後になったレオニスの仕事の相談について尋ねたカイに、レオニスはプロステスでの炎の洞窟調査について詳細を語り出した。