軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第262話 そろそろ到着

北レンドルーでの昼食後、出立すること二時間後。

予定通りにカタポレンの森の巌流滝に到着した。

荘厳な滝の水流から、それはそれは清浄な空気が流れている。

これはあれか、マイナスイオン効果ってヤツ?何とも気持ちの良い空間だなぁ……だが、そう思っているのは実はライトだけらしい。

元カタポレンの森住人のラウルやマキシは

「うへー、相ッ変わらず魔力の濃い空気だ」

「人族の街の薄くて軽い空気に慣れると、このカタポレンの森の濃い空気は本当に重たく感じますねー」

などとぼやいているし、獣人族のシグニスに至っては

「ンごぉぉぉぉ、カタポレンの森相変わらずキッツ!この空気ヤッバ!」

と半分目を回しかけながらフラフラしている。

やはりこのカタポレンの森に満ちる魔力は、獣人族他常人には相変わらずかなりキツく感じられるようだ。

ちなみに翼竜のプテラナだけはライト同様にピンピンしていて、巌流滝の澄んだ水をゴキュゴキュと美味しそうに飲んでいる。これも魔物の中では上位種にあたる竜種故のタフさなのだろうか。

だがシグニスのこの様子を見るに、プテラナが水分補給を完了した後すぐにラグナロッツァに帰る方が良さそうだ。

名残惜しいことだが、シグニスの体調をこれ以上崩さないためには致し方ない。

ライトはシグニスの体調が少しでも回復するように、アイテムリュックからハイポーションをひとつ取り出してシグニスに飲むように勧める。

シグニスもライトの勧めをありがたく受けて、ハイポーションをゴキュゴキュと飲む。

ハイポーションの回復効果により、シグニスも少し顔色が良くなり気分も落ち着いてきたようだ。

「ふぅ……良く効くハイポーションだな、助かったよ」

「いえいえ、これくらい何てことないです。シグニスさん、プテラナちゃん、今日は快適な空の旅をありがとうございました!」

「いやいや、オレの方こそ……今もらったハイポーションやら美味しい昼飯までご馳走になったりして、すっかりお客さん達の世話になっちまったな。ありがとう」

「またいつか翼竜籠に乗りたいです!その時はよろしくお願いしますね!」

「おう、お客さん達ならいつでも歓迎するぜ。今後とも我がドラグエイト便を是非ともご贔屓にしてくれな!」

シグニスはそう言うと、プテラナに跨りゆっくりと上空に飛んでいく。

ライトやマキシは大きく手を振りながら、ラグナロッツァの方向に飛んでいくシグニス達を見送っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さて。ここからマキシの故郷、八咫烏の里に向かう訳だが」

「あ、ラウル、ちょっとだけ待っててくれる?この巌流滝の水だけ先に汲んで、アイテムリュックに入れて持ち帰りたいんだ」

「おう、いいぞ。俺達も手伝うことあるか?」

「うん、そしたらぼくが出すバケツに滝の水を汲んでくれる?汲んでくれたら、ぼくがそれをアイテムリュックに収納するから」

「分かりました!」

ライトはそう言うと、アイテムリュックから木製のバケツを次々と取り出す。

ラウルとマキシはその木製バケツに滝の水を並々と汲んでいく。

木製バケツのその数30杯、これをライトは全てアイテムリュックに収納していった。

ぃゃー、ホントはそのままリュックに直接水入れちゃっても多分問題ないんだろうけどね?取り出す時に水が逆流したら超不便そうだし?

八咫烏の里の近くに巌流滝があるって聞いた時から、素材採取用に木製バケツの準備していたんだよね!

よーし、ようやくこれでクエストイベントの闘水を作れるようになったぞ!家帰ったらすぐに闘水作りしよう!

巌流滝の水の採取をしながら、ライトは内心で小躍りしたいくらいにウッキウキで喜んでいた。

そう、闘水の作成に必要な素材は巌流滝の水以外は既に揃えてあるのだ。

巌流滝の水の採取作業をしながら、ライト達は今後の行動について話し合う。

「マキシ君の故郷の八咫烏の里は、ここからどれぐらいのところにあるの?」

「そうですね、この滝から東に歩いて1時間弱ってところですかね」

「まぁ今日は天気も悪くないし、途中で魔物に襲われなきゃそのくらいで着くだろ」

ここから歩いて一時間弱ということは、午後の三時半頃には八咫烏の里に到着できる計算になる。

まだ日の明るいうちに辿り着けそうなことに、ライトはほっとする。

「ここら辺の強い魔物って、何がいるの?」

「出食わしたらマズいのは 赤闘鉤爪熊(レッドクロウベア) くらいだな。俺がレオニスに拾われた時も、コイツにボッコボコにされた直後だったんだ」

「うへぇ、そんな強いのに遭遇したらどうしよ……」

「今回はレオニスから魔物除けの呪符を預かってる。これを使っていこう」

ラウルが空間魔法陣から取り出したそれは、縦長の手のひらサイズの御札のように見える。

これはラウルが話していた通り『魔物除けの呪符』という名の使い切りの消費系アイテムだ。これを真ん中から二つに破ることで呪符に込められた魔力が効力を発揮するようになる。

一度使用するとその後30分間、敵=魔物にエンカウントしなくなるというスグレモノである。

ライトも前世のゲーム中に、たまに使用していたアイテムだった。例えばイベントなどで冒険周回中の時など、目的地まで最短で行きたいのに雑魚モンスターにばかり出食わしているとちっとも進めない!となり、かなりイライラするのだ。

そういう時には出し惜しみせずに、この手のお助けアイテムをどんどん使うに限る!というのがライトの信条でもあった。

「じゃあ、これを使ったらまた30分後にもう一度使えばいいね」

「ああ、レオニスから一応この御守りを50個預かってるからな」

「50個……それだけあれば十分行き来できるっていうか、まぁ普通に余るよね」

「あのご主人様の過保護は今に始まったことじゃねぇけどな」

「それだけレオニスさんはライト君のことが心配で、とっても大事だってことですよ!」

レオニスの過保護ぶりに苦笑気味のライトとラウルに対し、マキシだけがニコニコしながらレオニスの行動を擁護する。

もしここにレオニスがいたら、マキシの心優しい擁護にさぞ涙を流しながら感激するところであろう。

「さ、じゃあこの御守りを使って八咫烏の里に向かうか」

「うん!」

ラウルの言葉をきっかけに、ライト達は八咫烏の里へと出発した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ところでさぁ。八咫烏の里には結界みたいなものはあるの?」

魔物除けの御守りの二回目の使用中に、ライトがふと思い立ちマキシに里の結界事情を聞いてみた。

ライトのその質問に対し、マキシがすぐに返答した。

「物理的に跳ね返すような強力な結界ではないですが、縄張り内に他者の侵入が発生したらそれを感知して中の者に知らせる仕組みはありましたね」

「そしたら、八咫烏のマキシ君はともかく妖精のラウルや人族のぼくが縄張り内に入ったら、すぐに迎撃されちゃうの?」

「治安部隊の兵士がすっ飛んでくるのは間違いないかと」

「そっかぁ、じゃあ気をつけて進んでいかないとね」

「ここからは僕が先頭で歩いていきますね」

「うん、お願いね」

小人族のナヌスほど強力な結界ではないらしいが、それでも外部の者が侵入したら感知する程度の結界を運用しているようだ。

八咫烏もまたオーガ族のような強い戦闘能力を持たない種族なので、非戦闘種族は防衛面での自衛手段が発達するのかもしれない。

ライトは道すがら目についた珍しい草花や石を眺めては、帰りにまた採取しようと考える。

巌流滝の水だけは何が何でも必要なので先に採取を済ませたが、今は八咫烏の里に辿り着くのが最優先なのだ。他の素材は帰り道でゆっくり採取すればいい。

普段カタポレンの森に住んではいても、少し離れれば植生や気候などだいぶ変わるものなのだということをライトは実感していた。

「……どうやら八咫烏の縄張りに入ったようです」

のんびりのほほんと歩いていたら、突如マキシが緊張した声で告げた。どうやらようやくマキシの故郷に到着したようだ。

ライトやラウルの目にはそれまでの森と何ら変わりなく思えたが、目に見えないセンサーのようなものでもあるのだろう。

いつ治安部隊のお出迎えが来るか分からない。一行は瞬時にして緊張に包まれる。

だが、ここでマキシが思わぬことを言い出した。

「大丈夫です。皆のことは僕が……必ず守りますから」

「ですから、安心してついてきてくださいね」

その力強い言葉に、ライトとラウルは思わずマキシを見た。

マキシは先程から先頭を歩いているので、その顔は見えない。だが、今の言葉に迷いや怖れは一切感じられなかった。

二人はマキシの頼もしい背中を見つつ、ライトは「うん!」ととても嬉しそうな返事をしたのだった。