軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第233話 神殿内部調査

「王族以外には門外不出と言われた、認識阻害魔法が付与された魔導具……そんなもんをラグナ教が持っているとはな……」

「いつからあるのか、現大教皇である私ですら分からないくらいはるか昔からラグナ教に伝わるもののようです」

レオニスが驚きの表情で首飾りを眺めた。

エンディの話によると、大教皇が巡礼の旅などで各地に移動する際に使用するらしい。

要人を暗殺や襲撃の危機から守り移動のリスクを減らすという、認識阻害魔法の唯一正しい使い方である。

「早速これをライトに着けてみてもいいか?」

「ええ、もちろんです」

レオニスがエンディから首飾りを受け取り、早速それをライトの首にかけた。

するとどうだろう、先程まで確かにレオニスの目の前にいたはずのライトの姿がまるで掻き消えたかのようにレオニスの視界から消えてしまったではないか。

「……オラシオン、ライトの姿が見えるか?」

「……いえ、先程の隠密魔法の付与された魔導具を着けていた時よりもさらにというか、完全に分からなくなりました……」

「こいつはすげぇな……」

レオニスもオラシオンも、ただただ驚愕する他ない。

二人とも魔力が高く、オラシオンに至っては賢者というジョブ持ちだ。そのオラシオンですら、秘匿の頸飾を着けたライトの姿が全く把握できないというのだから、認識阻害魔法の威力の凄さは半端ではない。

だがしかし、あくまでもそれは身に着けている者の存在認識を阻害するだけであって、実体まで透過するものではない。

現にレオニスがライトがいた場所で手探りするとライトの身体、腕や肩などを触ることができる。

「ふむ……これならライトを俺の後ろに立たせておけば、絶対に誰にも分からんな」

「レオニス卿、これでご納得いただけましたか?」

「ああ、ライトの身の安全が確実に保証されるならば協力するという約束は守る」

「ありがとうございます。では早速今から神殿内部の者を一人づつ、この執務室に順次入れていきますのでよろしくお願いいたします」

エンディはレオニスに頭を下げると、人払いで執務室の外に待機させていた従者二人を呼び入れた。

この二人が悪魔ではないことを確認すると、一人には各所の人間を呼んでくるように申し付け、もう一人には既に書き上げられた分の大教皇勅令書を転移門経由で各支部に配布するよう文書の入った封書の束を渡した。

こうして、ラグナ神殿の内部調査が始まった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

それから数時間かけて、ラグナ神殿に常駐する全ての者達を『面談』した。

その結果、破邪の力でその正体を暴かれた者が四名いた。

次期大主教と目されていた主教、中堅の司祭、見習い新人の輔祭、門番の衛兵である。

彼らが執務室に入室、大教皇が座っている執務机の前まで近づく。そこでライトの持つ破邪の力の効力を発揮する範疇に入り、正体が露わになっていった。

レッサーデーモン、紫葬鬼、ダークゴブリン、闇機兵。どれも人族とは違う異形の者達。

レオニスやオラシオンは、それら異形の者達を何とかして生け捕りを試みたのだがいずれも失敗に終わった。

ラグーン学園でのグレーターデーモン大主教のような自爆こそしなかったが、どれも服毒自殺のような事切れ方をしてしまったのだ。

しかも身体的特徴や服装だけでなく、改めて手元にある資料でそれまでの経歴を見ても特にこれといった手がかりは何も得られなかった。

これらの者達の背後にいる黒幕、よほど周到かつ狡猾だろうことが伺える。

「皆様、ご協力ありがとうございました」

「悪魔の炙り出しには成功したが、結局背後関係などの新たな情報は一切得られなかったな」

「ラグーン学園でのグレーターデーモンの例を見れば、それも当然というか致し方なしでしょうね」

エンディが皆の労を労う中、レオニスとオラシオンは冷静に現状分析をしている。

一方のライトは少し疲れたようだ。悪魔の炙り出しという大役を担った重責に加え、数時間立ちっぱなしだったのも影響しているかもしれない。

「ライトが疲れているようだから、俺達はもう帰っていいか?」

「はい、今日は本当にありがとうございました。申し訳ないのですがあと一日、ご協力いただけますか?」

「ライト、大丈夫か?明日もできるか?」

「……うん、今日早く寝てたくさん休めば大丈夫……」

ライトは気丈に振る舞うが、その声にいつもの快活さはなくやはりかなり疲れているようだ。

「じゃあとっとと帰るか。明日は何時にここに来ればいい?」

「ラグナ教全支部との面談という形になりますので、またかなり数や人数も多く……大変申し訳ないのですが、午前10時に来ていただけるとありがたいのですが」

「分かった。ただし、何が何でも明日一日で終わらせてもらうぞ?ライトにも学園生活があるからな、協力できるのは明日までだ」

「無論承知しております。明日中には必ず終わらせます。全支部に送付した勅令書にも『明日の招集に応じない者は、如何なる理由があろうとも破門』と書き記してありますし」

「おおぅ、そうか……」

エンディが涼し気な顔のまま、何気に恐ろしいことを言っている。だが、今回の事件の重大性を鑑みれば、喫緊の対応として持てる限りの強権を振るうのも致し方ないことである。

レオニスがライトの首にかけられた秘匿の頸飾を外し、エンディに返却する。

そして疲れきったライトをおんぶして「じゃ、また明日な」と一言だけ挨拶して、執務室から出ていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

レオニスがラグナロッツァの屋敷に着いた頃には、ライトはレオニスの背中ですやすやと寝ていた。

午前中はラグーン学園でいきなり悪魔と遭遇し、午後は午後でラグナ教神殿でずっと悪魔の炙り出しに協力していたのだ。疲れきって寝てしまっても当然である。

ラウルが二人の帰りを出迎える。

「おう、ご主人様達おかえり。……って、何だ、ライトは寝ちまってんのか?」

「ああ、今日はライトの初めての指名依頼を受けて立派にこなしたからな」

「そうなのか?よく分からんが……今日はこのままこっちの屋敷に寝かせてやるか?」

「ああ、そうしてやってくれ。俺も今日はこっちに泊まることにする」

レオニスはそのまま二階の寝室にライトを連れていき、ベッドの上に寝かしてやってから部屋を後にした。