軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第194話 小人族の集落探し

目覚めの湖の畔に到着した、ライトとフォル。

いつも出入りする湖畔に着いたが、よくよく考えたらこの近辺で小人達の姿を見たことは一度もない。おそらくはこことは違う場所に集落があるのだろう。

さてそうすると、どうやって小人達の集落を探し当てればよいものか、ライトはしばし考える。

この目覚めの湖、ただでさえ巨大なイードが悠々と泳げるほどだだっ広い湖なのだ。歩いて湖畔を一周するとなると、どれくらい時間がかかるか予想もつかない。アテもなく適当に歩き続けたら、時間も体力も相当食ってしまいそうだ。

そんな事態は極力避けたいライト、まずはイードとウィカを呼んでみることにした。

「こんにちはー、ライトだよー。イード、ウィカ、いるー?」

ライトが桟橋の先端から大きな声で湖に向かって声をかける。

すると、湖面が泡立ちイードが静かに出てきた。そのイードの頭上には、黒猫の姿をした使い魔のウィカがちょこんとお座りしながら乗っかっている。

以前のイードは呼ばれる度に湖面から勢いよくザッパーン!と飛び出てきては、ライトやレオニスにプチ滝行を浴びせてびしょ濡れにしてくれたものだった。だが、最近はライト達に水飛沫がかからないようにゆっくりと登場してきてくれる。

イードは賢い子なので、日々学習しているのだ。

「イード、ウィカ、久しぶりだね。四日ぶりくらい?」

「キュイイィィ」

「ウィカも元気そうで良かった、この目覚めの湖での暮らしはどう?イードや他の先輩住民?達と仲良くやれてる?」

「うにゃぁーん」

「そっか、それなら良かった。あ、これいつものイードへのお土産ね」

今日は湖中央の小島に移動する必要はないので、そのまま桟橋での対話を続ける。

ライトは背中に背負ったアイテムリュックを下ろし、イードへの定番土産『魔物のお肉たっぷり激ウマ絶品スペシャルミートボールくん』をいそいそと出し始める。ちなみに本日のミートボールの大きさはサッカーボール大、これを10個である。

毎回毎度同じ手土産ばかりで、イードも飽きないのかな?とライトとしても思うのだが、手土産をもらう側のイードが都度嬉しそうに食べて一向に飽きる気配など微塵もない。

「あ、そうだ、まずはこの子の紹介からするね。イードも食べながらでいいから聞いてね」

「この子は幻獣カーバンクル、名前はフォルっていうんだ。ウィカの先輩でね、使い魔の卵から生まれた子なんだよ」

「フォル、この大きなクラーケンは目覚めの湖の主のイード。とっても優しくて頭も良くて親切な、ぼくの大事な友達なんだ」

「黒猫姿のウィカは、水の精霊ウィカチャ。フォルがお使いで持ち帰ってくれた使い魔の卵から生まれた、フォルの後輩だよ」

「イードもフォルもウィカも、皆ぼくの大事な友達だから、仲良くしてくれると嬉しいな!」

ライトが三者を紹介し終えるのとほぼ同時に、手土産のスペシャルミートボールくん10個を平らげたイード。今回も実に満足そうである。

そして食べ終わった後に、その触腕をライトとフォルの方に向けてそっと伸ばしてくる。

イードの頭上にいたウィカも、イードの身体に沿って触腕の上をトトト、と軽やかに伝い降りてきた。

「キュルルゥィ」

「うなぁーん」

「フィィィィ」

イードとウィカ、二体して人懐っこい笑顔を浮かべながらフォルに挨拶をしている。

対するフォルも、ウィカが自身と同じ使い魔同士だということが分かるのだろう。長い垂れ耳をパタパタと動かしながら、ウィカとイードの両方に向かって機嫌良さげな声音でにこやかに返事をした。

三者とも仲良くやってくれそうで、ひとまず安堵するライト。

それぞれの紹介を無事終えたところで、今日の本題に入る。

「この目覚めの湖の周辺に、小人達が住む集落があるはずなんだけど……イード達、知ってる?」

「もし知ってたらそこに案内してほしいんだけど、お願いできる?」

イードは『自分に任せて!』とばかりにライトの乗った小船を曳きながらスイスイー、とゆっくり泳いで沿岸沿いに移動し始める。

ウィカは軽やかなステップで、ご機嫌そうに湖面の上をトコトコと歩きながらライト達の小船の横に並行してついてくる。

ライトはイードに連れられるがままに小船の座ったまましばし待機していると、少し開けた沿岸部が見えてきた。ライトがいつも出入り口にしているボート小屋のある場所から、約1kmくらい離れているだろうか。

そこに静かに小船をつけるイード。どうやらここに、湖の畔に住む小人達の集落があるようだ。

船が流されないように、陸地に船体を揚げておくことも忘れない。さすがイード、気配りの達人ならぬ達イカ?である。

「ありがとう、イード。小人達を探してくるね!」

ライトは小船から降りて、少しだけ拓けた沿岸部をゆっくりと見回しながら奥の方へ歩きだした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「んーーー……」

歩きだして三歩ほどで、足を止めてしまったライト。

何故かと言えば、イベントでいうところの『小人達の集落』がどのようなものか、実はあまりよく分かっていないことに気づいたからだ。

いや、小人達の姿形だけなら分かる。ぱっと見可愛らしい妖精っぽい女の子とか、童話で七人出てきそうなとんがり帽子のドワーフ風のヒゲもじゃ小人等々、前世でスマホの画面越しに見ていた小人達のグラフィックなら何とか思い出せる。

だが、人間と並んで背丈や大きさを直接対比できるよう場面や詳細な解説は一切なかったため、小人達の実際の大きさが今ひとつ分からないのだ。

小人達というくらいだから、まず間違いなく子供のライトよりもさらに小さい。だが、その小ささにもレベルというかランクがある。

ライトの背丈の半分くらいなのか、あるいは膝よりもさらに下なのか、これだけでも大きさがかなり違ってくる。

まさか小指の爪の先よりも小さなミクロサイズではなかろうが、それでももし小指一本や手のひらサイズだったら―――彼らから見たら、子供のライトですら大型の巨人ということになる。

そうなると、不用心に歩いただけで知らぬ間に彼らの拠点を踏み潰してしまいかねない。故に、一歩二歩歩くだけでも慎重にならざるを得なかった。

だが、ここでじっと考えていてもどうにもならない。ライトはまるで『だるまさんが転んだ』をするように、足元や周囲の木々をよく見て確認してから一歩づつゆっくりと進んでいくことにした。

意を決して歩を進めてから十歩くらい歩いたその時。ライトの身体を拒むような感触の反動があった。

それは目に見えない壁のようで、感触は硬いものではなく非常に柔らかい。改めて手を伸ばしてみると、まるでウォーターベッドのようにぽよよん、ぽにょにょん、とライトの手を柔らかく弾き返す。

「これは……結界、かな?」

「小人達が周囲の脅威から身を守るために、侵入者を弾く結界を張っているんだろうな」

見えない柔らかい壁の向こう側を見ても、特に変わった景色ではない。だんだんと生い茂っていくだけの、ぱっと見ても何の変哲もない森が続くだけだ。

「んー、どうしよう」

「フォル、ウィカ、この先に行ける?」

「クルゥ」

「にゃう」

もしかしたら、小人達より大きな人間や凶悪な魔物を対象とした結界かもしれない。ならば、森の精霊に近しいカーバンクルのフォルや水の精霊ウィカチャのウィカなら通れる可能性はある、かも?とライトは考えたのだ。

ライトの右肩に乗っていたフォルが、壁に向かってスンスン、と鼻を鳴らして匂いを嗅ぐような仕草をする。

その直後、ピョイ、と地面に降りたフォルがトトト、と前方に数歩歩いた。

ライトの左肩に乗っていたウィカもフォルに倣い、地面に降りてフォルの後をついていくように数歩前方に進む。

どうやら彼らには結界は全く効いていないようだ。

するとその時、前方から大きな声が飛んできた。

「お前ら、誰だ!!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

突然の声にびっくりしたライトだったが、どれだけ前方や周囲を見回しても小人らしき姿が見えない。

え、ナニ、まさか幽霊!?とライトが内心怯え始めた頃に、再び怒号が飛んできた。

「お前ら誰だって聞いてんだろが!耳聞こえねーのか!?」

その怒号、よくよく聞くとどうも上の方から聞こえてきている。

ライトは上を見上げてみると、木の上の太い枝に小人がいるのが見えた。

「あっ、初めまして!ぼく、ライトっていいます!」

「目覚めの湖の畔に住む小人達の集落を探しに来たんだけど、ここがそうなんですか?」

ようやく小人を見つけることができた喜びに、ライトの顔はキラッキラの笑みで満ちる。

そんな無防備極まりない、喜色満面のライトを見てもまだ警戒を解こうとしない小人。

だが、結界内に入ったフォルやウィカの姿に気づいたようで、小人が木の枝から飛び降りてきて地面に降り立った。

身体の大きさは、ライトの膝と同じくらいであろうか。

彼は結界を見守る衛士なのか、革の鎧を着て槍を手に持ちライト達にその矛先を向けて構えている。

小さいながらも立派な勇姿を漂わせる、見た目は年若そうな小人の衛士。

「お前ら、何で結界内に入れてるんだ!」

「この結界は、邪悪な人族や魔物は決して入れないんだぞ!」

「特に邪悪な人族は、結界に触れただけで大火傷と落雷を浴びて真っ黒焦げになるんだからな!」

「そうなりたくなけりゃ、さっさとここから立ち去れ!」

大きな声で必死に威嚇し、懸命に外敵を追い払おうとする若き小人の衛士を前に、ライトはどう対応すべきか考えていた。