軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第191話 オラシオンとの相談

その後はしばらく平穏な日が続き、金曜日の昼休み時のこと。

ライトはいつものように、図書室で本を読みながら昼休みを過ごしていた。すると、ライトの横に誰かが寄ってきた気配がした。

ライトがその気配のした横の方を見遣ると、そこには理事長であるオラシオンが立っていた。

「ライト君、こんにちは」

「……あっ、理事長先生!こんにちは……」

「お昼休みで寛いでいるところに押しかけてきて、すみませんね」

「えっ、あっ、いえ、そ、そんなことは……」

突然自分のもとに現れた理事長オラシオンに、戸惑いを隠せないライト。

そんなライトの様子に、オラシオンは微笑みながらライトの隣の椅子に座り話を続ける。

「今週の月曜日にお話した、神殿との会談の話なんですが……」

「……ああ、そういえばそんな話もありましたね……」

もとより昼休みの図書室に他の学園生などほとんどいないが、それでも無関係な人にはあまり聞かれたくない話なので小声で話すライトとオラシオン。

正直なところ、使い魔の卵のウィカチャの孵化やら何やらの後はすっかり平和な日々だったので、ライトはそんなことは半ば忘れかけてしまっていた。

「あの後、次の日にはすぐに神殿に返事と使いを出したんですけどね……あちら側の返答が遅くて、先程ようやく来たところでして」

「んー、そんなに対応したくないなら別にぼくとしては会談なんてしなくてもいいんですけどねぇ」

「そうなんですよねぇ、全く。あちら側から接触してきたくせに……コホン、失礼」

オラシオンが目を閉じ軽く咳払いをしながら、それ以上の言及は自重し慎むように控える。

そんなオラシオンの理事長らしからぬおちゃめな姿に、ライトはフフッ、と笑みを洩らす。

「で、あちら側の返事はどのようなものでしたか?」

「それがまたご丁寧に、ライト君宛の書簡で来ましてね。今回も神殿印入りの厳重な封蝋付きなので、私が勝手に開封する訳にもいかず……」

「ああ、それでぼくのところに直後届けに来た、ということなんですね」

「ええ。ライト君はいつも昼休みの時間を図書室で過ごしている、とフレデリク先生から聞きましたので」

オラシオンが一通の書簡をライトの前に差し出す。

それは月曜日に見たものと全く同じで、上質な封筒にしっかりとした封蝋がなされていた。

「理事長先生もお忙しいのに、ぼく一人のために時間を取らせてしまってすみません……」

「いいえ、いいんですよ。そんなことを学園生である君が気にする必要はありません」

「でも……」

「ラグーン学園の学園生達の日々を守る。それこそが、理事長たる私の務めなのですから」

オラシオンが穏やかな笑みを浮かべながら、ライトの謝罪をやんわりと否定する。

そしてその手で神殿からの書簡を再び手に取り、懐に仕舞った。

「もうお昼休みの時間は終了ですので、授業が終わって放課後になったら理事長室に来てくれますか?それまでこの書簡は私が預かっておきますので」

「はい、分かりました」

二人は図書室から出て、それぞれ分かれていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「はぁ……本当に、全く困ったものですね……」

「ええ……こんなのレオ兄ちゃんにはとても見せられません……」

「「……はぁぁぁぁ……」」

オラシオンは、机の上に肘をつき両手を組みながら大きなため息をつく。そのオラシオンの前には、授業を終えてすぐに理事長室に来たライトがいる。

二人して盛大なため息を何度も繰り返し漏らす元凶は、当然のことながら神殿からの書簡である。

理事長室でオラシオンからライトに改めて手渡された、神殿からの書簡。早速ライトがその場で開封し、中の手紙に一通り目を通してからオラシオンにも渡して読んでもらっていた。

その結果が、二人の盛大なため息の連発が止まらない元凶である。

書簡に書かれていた内容は、平たく言うと

『お前ら平民のくせに、何を生意気にも神殿に楯突いてんの?』

『俺様達ゃラグナ神の代弁者にして代行者よ?その俺らがこうして下手に出て真摯に頼んでんのに、何そっちからあれこれ指図してんの?お前ら図々しくね?』

『面と向かって俺様達に逆らうたぁいい度胸してんじゃねぇかコラ、そんな態度取ってっと後悔するよ?』

『つか、まだジョブ適性判断前の子供でしょ?そいつのジョブ適性判断してやらんよ?そんなことになってもいいの?良くないよね?』

『そうなりたくなければ、俺様達の言うことを素直にありがたく聞いとけや』

『ついてはとっとと神殿に来やがれや。あ、子供だから付き添いは一人だけくっついてきていいよ。俺達心広いからね!そんな俺様達に感謝しなさーい!』

……といったようなことを、小難しくも畏まった慇懃無礼な言葉でみっちりと書き綴られているのだ。

署名の主はイェスタ・リュングベリ大主教、ラグナ教のNo.3に位置する役職だという。上から三番目に偉い人、ということは神殿の中でもかなり力を持った人物だと思われる。

そんな上の方の人に直接目をつけられるとは、何とも厄介なことになってしまったな……とライトは内心困惑とともに辟易した。

そんなライトの表情を察してか、オラシオンが意を決したように口を開いた。

「こうなっては致し方ありません。私の知り合いの神殿関係者に連絡を取り、そちらから話をつけてもらうことにしましょう」

「理事長先生、神殿の人とお知り合いなんですか?」

「ええ、できることならこの手は使いたくなかったんですがね……こうなればこちら側も手段を選んではいられませんから」

「でも、書簡の主の大主教より偉い人でないと話は通らないのでは……?」

「問題ありません。その人はこの書簡の主である大主教より偉い人ですからね」

目を細めてニッコリと笑うオラシオンだが、その笑顔にいつもの穏やかさはなく何だか底知れぬ圧のようなものを感じるライト。

これは詳しく聞いちゃいけないやつかな……?とライトは思いながら、片頬を引き攣らせつつ笑うしかない。

「レオニス卿には、神殿との会談はもう少し先延ばしになった、日程が決まり次第またご連絡を差し上げる、とお伝えしておいていただけますか?」

「はい、分かりました……お手数かけますが、よろしくお願いします……」

ライトはペコリと頭を下げて、理事長室を後にした。