軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1678話 玉座の間での謁見

ラグナ宮殿行き専用の馬車に乗ったレオニス達。

ゴツい系のパレンとレオニスが前に座り、中肉中背のアレクシスとジョシュア、小柄なピースが後方に座って五人で謁見に関する話や事件に関する情報の共有等々、様々な打ち合わせをしていた。

そのうちに馬車はラグナ宮殿本正門前に到着した。

五人は馬車から降りて、正門前にて登城許可に関する手続きを済ませる。

アレクシスとジョシュアはそれぞれが治める都市の紋章が入った小型の許可証、レオニスとパレンとピースは各自のギルドカードを提出。それらが間違いなく本物という照合が得られてから門扉が開かれた。

本正門の巨大な扉を潜り、敷地内を進んでいくレオニス達。

レオニスも何度かラグナ大宮殿に入ったことがあるが、指折り数える程度なのでこの道を歩くのは久しぶりのことだ。

手入れの行き届いた道を進み、大宮殿内を入ってすぐにある第一控室に通された。

この第一控室で、五人は全員漏れなくボディチェックを受ける。

謁見の間には、当然のことながら武器に相当する物は持ち込めないため、全てここで外して預けなければならない。

レオニスの得物である大剣はもちろんのこと、パレンの刀二本とピースの魔杖も例外ではない。

パレンやピースはその役職上、他の三人よりも頻繁にラグナ大宮殿を訪れているが、その二人でさえも本正門前での身分証明とボディチェックは毎回欠かさず行わなければならない。

そしてそれは、名門貴族であるアレクシスやジョシュアも同じ。如何に侯爵という高位の肩書を持つ由緒正しい貴族であっても、国家元首であるラグナ大公との謁見に臨むには規則に従わなければならないのだ。

全員のボディチェックが済んだところで、五人は次の第二控室に移動する。

この第二控室は、玉座の間でラグナ大公に謁見するまで待つ待機室だ。

時間になったら係の者が呼びに来て、玉座の間の前まで案内してくれる。

レオニス達が第二控室に入ったのは、謁見予定の午後三時の十分前。

そして午後三時の五分前に呼び出しがかかり、レオニス達は第二控室を出た。

壮麗な建物の中を、五人は無言で静かに歩く。

レオニスは『あー、そうそう、ラグナ大宮殿の中ってのはこんな作りだったよなー』と昔の思い出に軽く浸り、パレンとピースはこれまで何度も通ってきた道に対して特に思うところなどなく平然としている。

一方でアレクシスとジョシュア、二人の表情は少々強張っている。

二人とも地方領主で中央に来る事自体滅多にないので、さすがにラグナ大公と謁見するとなると緊張するのも無理はない。

そうして午後三時ちょうどに五人は玉座の間の前に立ち、目の前にある大きな扉がゆっくりと開かれていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

扉が大きく開かれた後、アレクシスとジョシュアが二人並んで先頭を歩き、レオニスとパレンとピースが同じく横並びでアレクシス達の後ろを歩いていく。

中央を五人が歩き、その両脇には大勢の近衛騎士と数人の宮廷魔導師が立っている。彼ら彼女らは皆、ラグナ大公の護衛及び謁見者の監視のためにそこにいるのである。

そうして進んでいった先には、ラグナ大公その人がいた。

十段ほどある階段の上に玉座があり、その玉座にゆったりと座るラグナ大公。

見た目は四十代半ばで、肩まである輝くような黄金色の髪が眩く光る。

レオニスも金髪だが、その煌めきはレオニスを上回るというよりもはや別次元の代物だ。

瞳は鮮やかな青緑で背丈は中肉中背、衣装は王族然とした豪華なローブを身にまとっている。

目鼻立ちはそこそこ整っていて、軽めの短い顎髭がまたイケオジオーラをマシマシにしている、実年齢四十五歳の堂々としたナイスミドルである。

階段より少し離れた手前で跪き頭を垂れる五人に、ラグナ大公が徐に声をかけた。

「苦しゅうない。面を上げよ」

だだっ広い玉座の間にありながら、凛としたよく通る声で話しかけられた五人は即座に面を上げた。

そして順番に名乗り始めた。

「プロステス領主、アレクシス・ウォーベックにございます。ラグナ大公におかれましては、ご壮健を心よりお慶び申し上げます」

「ツェリザーク領主、ジョシュア・スペンサーにございます。ラグナ大公にお目通りが叶い、恐悦至極に存じます」

「冒険者ギルド総本部マスターを務めさせていただいております、パレン・タインでございます」

「魔術師ギルド総本部マスターを務めさせていただいております、ピース・ネザンでございます」

「冒険者ギルド所属、レオニス・フィア。今日はウォーベック候とスペンサー候の要請により、謁見に同行した次第……です」

淀みなく続く五人の挨拶に、ラグナ大公が満足そうな顔でうんうん、と小さく頷いている。

ちなみにこの挨拶の順番や仕方は、登城途中の馬車の中での打ち合わせできちんと確認して決めたものだ。

貴族であるアレクシスやジョシュア、パレンにピースはともかく、生粋の平民であるレオニスはそこら辺が疎くて分からないので、ラグナ大公の前で粗相をしないように!と四人が前もって懇切丁寧に指導してくれたのである。

五人の形式的な挨拶が済んだところで、今度はラグナ大公が五人の挨拶に応えた。

「アレクシス侯爵、久しぶりだな。プロステスは長年の問題が解決されて、離れていた人々が徐々に戻りつつあると聞く。実に喜ばしいことだ」

「はっ、ありがたき幸せに存じます」

「ジョシュア侯は、領主就任の挨拶以来か。ツェリザークはもうとっくに寒いのであろうなぁ」

「はい。ツェリザークの冬は長く厳しいものですが……ウォーベック候からいただく熱晶石と領民達の日々の努力により、今年も憂いなく冬を過ごしております」

「ピース卿も久しいの。少し前に魔術師ギルドから出された、アイテムバッグ? あれは実に良い物だ。我が宮殿の中でも、所持者がぼちぼち増えてきたぞ」

「お久しぶりです!小生達が普及に努めているアイテムバッグ、ラグナ大公様達にも喜んでいただけて嬉しい限りです!」

まずは手堅いところから声をかけていくラグナ大公。

四番目に声をかけられたのはレオニスだった。

「そして、そちらにいるは当代随一の冒険者……レオニスか。其方もまた久しいの」

「あー、ここに来たのが何年前かも思い出せんが……ラグナ大公も元気そうで何よりだ」

「ハッハッハッハ!其方は相変わらずであるな!」

全くもって不敬なレオニスの態度に、玉座の横に控える宰相他数人の大臣達がギロリ!とレオニスを睨みつける。

しかし、ラグナ大公自身はそんなことなどキニシナイ!とばかりに笑い飛ばしている。

ラグナ大公はアクシーディア公国の国家元首にして一番偉い人なのだが、なかなかどうしてフランクな人柄のようだ。

そうしてラグナ大公の視線が必然的に最後の人物に移る。

一番最後に声をかけられたのはパレンだった。

「パレンよ、今日の其方はまた凛々しくも力強さに溢れておるな!」

「恐悦至極に存じます」

「それは確か『壬生浪士』と呼ばれし者達の装束だったか。身を挺して王を守る忠義の騎士達が着る装束……冒険者ギルド総本部マスターとして、日々人々を守るために粉骨砕身で働くパレン、まさに 其方(そなた) に相応しき出で立ちだ!」

「この衣装の由来までご存知とは……さすがはラグナ大公、博識でいらっしゃる」

「何、博識と褒められる程のことでもない。余は其方の華麗なる衣装を見るのが何より楽しみなのだ。これからも余の目を楽しませてくれ!」

「過分なお言葉を頂戴し、身に余る光栄に存じます」

壬生浪士に扮したパレンの出で立ちを、殊の外喜ぶラグナ大公。

頬を紅潮させながら、少し前のめりになって身を乗り出してパレンを絶賛するその様は、彼もまた千変万化のパレンに魅入られたファンの一人であることを雄弁に物語っていた。

そうして挨拶を一通り終えた後、ラグナ大公の方から本題を切り出した。

ラグナ大公が横に控えている大臣に話しかけた。

「して……本日は、プロステスとツェリザークが共同で進めている法案と、両者が抱える洞窟でそれぞれ起きた事件に関する報告、だったか?」

「はい、その通りでございます」

大臣の答えを聞いたラグナ大公、改めて前を向きアレクシスに声をかけた。

「ではまず、プロステスのウォーベック候から話を聞こうか」

「はい。ですが、時系列においてはツェリザークの氷の洞窟の方が先に事件が起こっております。ですので、ここはひとまずスペンサー候の話から聞いた方がよろしいかと」

「ふむ、そうなのか。ではスペンサー候、先に話を聞かせてもらえるか」

「承知いたしました」

アレクシスの進言が聞き入れられ、まずはツェリザークの氷の洞窟で起きた事件をジョシュアが話すことになった。

このラグナ大公という人物、臣下の進言をきちんと聞き入れる柔軟さをも持ち合わせているようだ。

そうしてジョシュアが氷の洞窟での事件を、そしてその次にアレクシスが炎の洞窟で先日起きたばかりの事件をラグナ大公に話して聞かせていった。