軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1676話 炎の洞窟の現場検証・その二

「えーっと……ここにあったのがコレ、だよね?」

「そうそう。で、コレはこっち、ソレはそこ、コイツは一番向こう」

レオニスとピースが二人して相談しながら何やら進めている。

これは、一旦回収した侵入者四人組の遺留品を該当箇所に再び置いて検証しているのだ。

「この盾と鎧はミスリル製で、お揃いっぽいんだよねー」

「てことは、盾役の重戦士辺りか。フラムを引きつけて炎の女王と引き離して、戦力分断を図ったんだろう」

「そんなとこだろうねーぃ」

「で? あの短剣っぽい塊は何だった?」

「シーフ系ジョブが好んで持つ『疾風短剣』だってのは判明してる。普通の武器屋で買える、そこそこ良い品だけど……あの残骸には、敏捷や物理攻撃、体力回復だけじゃなくて複数の毒やら混乱等々、魔法と毒類の付与がゴリッゴリにつけられててね。なかなかにエグい性能してたよ……」

「ほう……そりゃ常人が持つには分不相応な品だな」

「全く全く」

ピースからの情報をもとに、二人は侵入者四人組の行動や特性を推察していく。

遺体こそ黒焦げの炭と化していたが、侵入者四人組が身にまとっていた金属製の装備品類は焼け残っていた。

それらの残骸を昨日レオニスがピースに渡し、魔術師ギルド総本部総出で解析したのだ。

「でさ、残りの二つ、長剣は多分戦士系ジョブの男ってことで、そっちはパレンちゃん任せになると思うんだけど。もう一つのあのルビーっぽいのが問題でさ」

「何だ、あれはルビーじゃないのか?」

「うん。見た目は限りなくルビーに似せてるけど、とんでもない!その正体は、邪竜の水晶体だよ」

「何ッ!? ……そりゃまた本当にとんでもねぇもんが出てきたな」

「でしょでしょ? 出処が知れるってもんだよねーぃ」

侵入者達の遺留品の中にあった、ルビーと思しきもの。

宝石かと思いきや、実は邪竜の眼球から採取した水晶体だというではないか。

邪竜の素材をもとにした装備品類など、間違っても一般の武器防具屋で売買できるものではない。

ピースが言うように、その出処は必然的に闇ギルドなどの裏世界ということになるのである。

「ピース、魔力の残滓の方はどうだ?」

「ンーーー……タンク特有のヘイトを稼ぐ固有スキル、炎の女王ちゃんの身体を貫いたっていう氷魔法の残滓がかろうじて捉えられたくらいかな」

「そこから分かる情報はあるか?」

「昨日話したカミラってやつ。そいつも氷魔法を使える稀有な魔術師だったようでね。そいつで間違いないと思う」

この最奥の間に残る魔力の波長を、ピースは確実に捉えていた。

その結果、一番最初に身元が割れたのは魔術師のカミラだった。

ピースの話によると、魔術師の中でも氷魔法を扱える者は極少数だという。

確かに水魔法を使える者は多いが、氷魔法はその水をさらに凍らせるというもう一段階手間があるため、余程魔力量が多い者でないと習得すらできない難物なのである。

「そのカミラってやつの追放後の足取りは分かるか?」

「さすがにそれは、魔術師ギルドでも分かんない。素行不良で放逐されたやつのその後なんて、誰も興味ないし」

「そりゃそっか」

「でも、当時住んでた場所や出身地なんかは分かるからね。そっち方面でも一応調べてはいるよ」

「調査結果が出たら、俺にも教えてくれ」

「らじゃー」

侵入者のうちの一人、カミラ。

魔術師ギルドに在籍していた当時の住居や出身地の調査は既に着手しているらしい。

さすがはピース、魔術師ギルド総本部マスターという肩書は伊達ではない。

そうして最奥の間での現場検証を進めていくレオニスとピース。

事件から二日経過した今、ここで得られる情報は然程多くはない。

しかし、闇ギルドという正体不明の敵を相手取るからには、どんな些細な情報でも入手しておきたいところだ。

「さて……現場検証はこれくらいにするか」

「そうだねー。これ以上ここでできることはないだろうし」

「そしたら遺留品を片付けて、皆でおやつにでもするか」

「賛成ーーー♪」

レオニスの提案に、ピースが両手を上げて大賛成している。

ピースは炎の洞窟の事件現場を検証するという名目で今日ここに来ているが、目的の半分くらいは『炎の女王ちゃんとフラム君に会いたい!直接会って、お見舞いとか元気づけたりしたい!』というのもあるのだ。

そしてレオニスの発した『おやつ』という言葉に、ピースだけでなくフラムも反応した。

『レオニス君、おやつにするの? ボク達もいっしょにおやつしてもいい?』

「もちろんだ。つーか、フラムや炎の女王を除け者にして、俺達だけおやつにする訳がないだろう?」

『そうだよね!レオニス君がそんな意地悪する訳ないもんね!』

レオニスの快諾に、フラムがとても嬉しそうに喜んでいる。

そしてすぐさま炎の女王に声をかけた。

『炎の女王ちゃん!レオニス君が美味しいものをくれるってー!』

『おお、それはようございましたな』

『美味しいものを食べて、ボクも炎の女王ちゃんももっと元気にならないとね!』

『昨日もライトからたくさんの美味しいものをもらいましたが……』

『それはそれ、これはこれ!美味しいものをたくさん食べて、もっともっと強くならなくっちゃ!』

美味しいものは別腹!どれだけ食べても問題ナッシング!と言い切るフラムに、炎の女王も苦笑いしている。

BCOではレイドボスだった朱雀のフラムは、美味しいものを食べると経験値を得てレベルアップする。

今のフラムにはそうした知識はないが、本能的にそれを理解しているのかもしれない。

「そういやフラムと炎の女王宛てに、アレクシスから預かってるもんがあってな」

『預かってるもの? てゆか、アレクシスって誰?』

「アレクシスってのは、プロステスの領主で……って、ここら辺の小難しい話はまた後で説明するが……フラム、口を開けな」

『??? あーーーん』

空間魔法陣を開きながら、何やらガサゴソと中を漁るレオニス。

フラムがレオニスの言葉に従い、あーーーん☆と素直に口を開いた。

そうして間もなくのうちに、フラムの口に何かがポイー、と放り込まれた。

それは、プロステスの一大名産品、熱晶石だった。

『……ッ!!何か、すんごーく美味しい!』

「これは熱晶石っていってな。プロステスで夏の間に作る熱の魔力の塊だ」

『魔力の……(もくもく)……塊……(もくもく)……』

レオニスに口の中に放り込まれた熱晶石を、フラムは飴玉のように口の中で転がして味わう。

炎の洞窟の主達の災難を知ったアレクシスが、涙ながらに『お二方に!ぜひとも!これを食べていただきたい!』とレオニスに熱晶石を山ほど託したのだ。

『ねぇねぇ、レオニス君。炎の女王ちゃんにもこれを食べさせてあげてもいい?』

「もちろん。ほれ、炎の女王も口を開けな」

『??? 』

謎のアイテムなど、本来なら口にする訳ないのだが。

他ならぬフラムの勧めとレオニスが出してきたものとあらば、炎の女王に拒否するという選択などない。

そうしてフラム同様、熱晶石を口に放り込まれた炎の女王の顔が綻ぶのに時間はかからなかった。

『……おお、これはまた何という心地良き魔力か……』

「この熱晶石は、もともと炎の洞窟から漏れ出る熱気や魔力を結晶化させたものだからな。炎の洞窟の主であるあんた達には、特に合う魔力回復剤になると思うぞ」

『うむ、これは是非ともフラム様にたくさん食べていただきたい!』

「フラムだけじゃなくて炎の女王、あんたもな。一昨日に受けた身体の傷やダメージは、見たところ完全に治ったっぽいとはいえ、用心するに越したこたないからな」

『そうだな……フラム様のためにも、妾も元気に生きて長生きせねばな』

「そゆこと」

レオニスの言葉に、炎の女王が小さく笑いながら頷く。

炎の女王の横にいたフラムは、もっと大きく頷いている。

炎の洞窟の安寧には、両者が健やかでいなければならない。

そしてその安寧を守るためにも、何としても人族の欲望や害悪をこの洞窟から遠ざけなければ―――

仲睦まじい炎の洞窟の主達を見守りながら、レオニスとピースは改めて心に誓うのだった。