軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1658話 風の女王とゼスの願い

ラウルが辻風神殿でレオニスを見つけて合流し、炎の中級精霊とともに炎の洞窟で起きている異変について説明していった。

一通り話を聞いたレオニスが、すぐに炎の中級精霊に問いかけた。

「そいつらの見た目とか強さ、目的なんかは分かるか?」

『悪イ人間、最近、ヨク、洞窟ニ、来テタ……見タ目ハ、大キイ、男ト、細イ、男、小サイ、女ト、大キイ、女……剣ヤ、盾、魔法ヲ、使ウ。強サハ、ヨク分カンナイ、ケド……蜂ヤ、キノコデハ、全ク、相手ニ、ナラナカッタ』

「マンティコアもすぐに倒せてたか?」

『ウン……魔法デ、固マッテ、剣デ、真ッ二ツニ、サレテタ……』

「そうか……」

侵入者の見た目や強さなどを聞いたレオニスが、しばし思案する。

蜂=クイーンホーネットやキノコ=獄炎茸が足止めにもならないのはまぁ仕方がない。もとよりそこら辺は雑魚寄りなので、四人組パーティーで連携を取れれば問題なく対処できるだろう。

しかし、マンティコアまで瞬殺となると話は変わってくる。

マンティコアは炎の洞窟の固有魔物で、獅子と山羊と竜、三つの頭を持ち背中に竜の翼が生えている魔物で、エビルキマイラや暗黒の魔獣の色違いコピペである。

(注:本来のマンティコアとは尾が蠍なのだが、BCOでは手抜きコピペ優先だったのでエビルキマイラの色違いのままデータ流用されていて、尾も蛇のままとなっている。)

そしてこのマンティコア、炎の洞窟の固有魔物の中では最上級の強さを持つ。

もちろんレオニスは得物の大剣一振りで屠れるが、レオニス同様一撃でマンティコアを倒せる者はそう多くはない。

ヴァイキング道場の四男で剣の達人でもあるバッカニアですら、四、五回は斬りつけないと倒せないであろう。

そんなマンティコアを、事前に魔法攻撃によるサポートがあったとしても真っ二つに斬って倒せるというのは聞き逃せない。

敵はかなりの手練と見ていいだろう。

もとより相手は四人組パーティー、決して油断はできない。

『アイツラ、ワタシ達、炎ノ精霊ヲ、狙ッテル、ミタイ……小サイ、子ニハ、見向キモ、シナカッタケド……コナイダハ、大キイ、子ガ、追ッカケラレテタ』

「大きな精霊……上級精霊狙いか」

『ウン……何カネ、『コッチ、オイデー♪』トカ、トッテモ、気持チ悪イ、声デ、寄ッテイクカラ、大キイ、子ハ、気味悪ガッテ、スグニ、炎ノ、中ニ、逃ゲチャッタ』

「そっか、捕まらずに無事逃げられてんなら良かったが……」

炎の中級精霊が語る侵入者達の狙いに、レオニスとラウルの顔がどんどん歪んでいく。

やはりそいつらの狙いは炎の精霊の捕獲で、その最終目的は【炎の乙女の雫】の確保なのだろう。

「で? そいつらがまた炎の洞窟に来たんだな?」

『ウン。デモ、今日ハ、イツモト、違ッテ……ワタシ達、洞窟ノ、中ニ、行ケナカッタ』

「何? それはどういうことだ?」

『エットネ? 何テイウカ、ソノ……見エナイ、壁ガ、目ノ前ニ、アッテ、洞窟ノ、中ニ、出ラレナイ、感ジ?』

「………………」

『デモ、ソレッテ、ソイツラダケジャ、ナクテ……人族ノ、集団ガ、炎ノ洞窟ニ、入ッテキタ、時ニ、ヨクアル、コト、ナンダケドネ』

「………………」

『ズット、出ラレナイ、訳ジャ、ナクテ、シバラク、スレバ、壁ノ、外ニ、出ラレル、ヨウニ、ナルケレド……』

「………………」

炎の中級精霊の話に、またも思案するレオニス。

彼女の話から察するに、それは人族が魔物除けの呪符を使った時の魔物側の反応だと思われる。

人族が使う魔物除けの呪符とは、呪符を使用してから三十分間だけ使用者の周囲に魔物を寄せつけないという効果を持つ。

魔物側からしたら『人族が目の前を通り過ぎても、透明な壁に阻まれて襲いかかることができない』という状態になっているとは、さすがにレオニスも初耳だった。

しかし、魔物側の視点に立つとそうなるんだろうな、というのはレオニスにも納得できる。

そして、何度も炎の洞窟に足繁く通っていたというならず者四人組が、今日はいつもと違って魔物除けの呪符を使用して炎の洞窟内部を闊歩しているという。

それを聞いたレオニスの中に、肌がざらつくような嫌な感覚が沸き起こり続けた。

「……よし、分かった。今すぐ転移門で炎の洞窟に行こう。ラウル、行くぞ」

「おう!」

レオニスという最も頼もしく強力な援軍を得られたことに、それまで固唾を飲んでいたラウルの顔がパァッ!と明るくなる。

レオニスが立ち上がり、風の女王とゼスに声をかけた。

「ゼス、風の女王、すまんな。もうちょいゆっくりしていきたかったんだが、そうも言っていられなくなった」

『ううん、そんなこと気にしなくていいよ』

「またライトといっしょに遊びに来るから、そん時はよろしくな」

『うん、僕達も楽しみにしてるよ』

律儀に帰りの挨拶をするレオニスに、ゼスが気遣っている。

するとここで、風の女王が思い詰めたような表情でレオニスに声をかけた。

『……レオニス、今から炎の洞窟に行くのよね?』

「ああ。炎の洞窟で今、何らかの異変が起こってるらしいからな。俺もラウルといっしょに様子を見てこなきゃならん」

『そしたら!ワタシも連れていってほしいの!』

「……何? 炎の洞窟に行きたいってのか?」

『ええ、そうよ!』

風の女王の要求に、レオニスが思わず彼女の顔を凝視しながら問い返した。

驚愕するレオニスに、風の女王がその理由を語る。

『だって……炎の洞窟には、ワタシの姉妹である炎のお姉ちゃんがいるでしょ? もし炎のお姉ちゃんが困っているなら、ワタシも皆といっしょに助けてあげたいの!』

「……それは……」

『ワタシは、風の女王になってからまだ二年くらいしか経ってなくて、本当に未熟な女王だけど……それでも!ワタシと同じ女王のお姉ちゃん達が困っていたら、助けたい!レオニス、お願い、ワタシもいっしょに連れてって!』

「………………」

キッ!と顔を上げてレオニスを見上げながら、炎の洞窟への同行を懇願する風の女王。

彼女の言い分は尤もで、レオニスもその気持ちが痛い程よく分かる。

属性の女王達にとって、他の属性の女王は家族同然の存在。

離れ離れでお互い一度も顔を見たことがなくても、属性の頂点である者同士の絆は本能レベルで持っているのだ。

そしてそれは、何も風の女王だけではない。

ゼスもまた同じ気持ちだった。

『レオニス君、僕からもお願い。僕と風の女王を、今から君達が赴く炎の洞窟にいっしょに連れていってほしい』

「何ッ!? バルトまで炎の洞窟に行きたいってのか!?」

『そりゃそうさ。だって炎の洞窟には、僕と同じ四神の朱雀がいるんでしょ? 炎の洞窟に危機が迫っているなら、僕だって朱雀を助けに行かなきゃならない』

「それは、そうかもしれないが……」

風の女王だけでなく、ゼスまでもが炎の洞窟への同行を求めた。

これにはレオニスも想定外過ぎて、思わず言葉に詰まる。

とりあえず、風と火は属性的に言えば相性は悪くない。

風は火の勢いを増すので、むしろ火属性の者達には風属性は歓迎される相手だ。

ただし、風属性の頂点である風の女王と青龍ゼスが炎の洞窟に出向くことで、洞窟内部の炎の勢いが増し過ぎて手がつけられなくなる可能性はあるが。

しかし、炎の洞窟の中で炎の勢いが増し過ぎたところで、レオニス達が害されることはない。

レオニスとラウルは火属性に関してまず無敵だし、辻風神殿の二人も業火渦巻く場所に飛び込んだところでどうなることもない。

それに、ゼスの言い分や気持ちも分かる。

ゼスだって、自分と同じ立場の神殿守護神達のことを実の兄弟姉妹のように思っている。

風の女王が炎の女王の危機を聞きつけて居ても立ってもいられないのと同じように、ゼスもまた朱雀のフラムの身を案じているのだ。

属性間の相性問題が起きなければ、俺達が四人で揃って炎の洞窟に向かったところでさしたる問題はなかろう……むしろ不審者の四人組を取り押さえるのに、風の女王とバルトは戦力になってくれるかもしれないな―――

レオニスがこう判断するのに要した時間は約三秒。

善は急げ!とばかりに、決断したレオニスは風の女王とゼスに声をかけた。

「分かった。そしたら俺達といっしょに炎の洞窟に行こう」

『ッ!!!ありがとう、レオニス!』

『僕からも礼を言うよ、レオニス君。本当にいつもありがとう』

「何、礼を言われる程のことじゃないさ。むしろあっちでいろいろ働いてもらうかもしれん」

『望むところよ!炎のお姉ちゃんを助けるためなら、何でもするわ!』

『僕もだよ。僕にできることなら何でもするから、レオニス君も遠慮なく言ってね』

「上等だ。すぐに行くぞ」

『『うん!!』』

結局レオニスは、風の女王とゼスの同行を認めた。

そして四人ですぐに辻風神殿を出て、神殿前にある転移門の魔法陣の中に入った。

レオニスが転移門の操作パネルを操作し、その間に風の女王がゼスの背中に乗り込む。

ゼスは本来の姿だと炎の洞窟では狭くなってしまうので、辻風神殿の中で過ごすためのサイズ(全長3メートル程度)をそのまま維持した。

そうしてレオニス、ラウル、風の女王、ゼスはフラクタル峡谷から炎の洞窟に瞬間移動していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

辻風神殿前から炎の洞窟に移動したレオニス達。

炎の洞窟の転移門は、最奥の間に設置してある。

というのも、この最奥の間が炎の洞窟内部で最も広い面積を有しているからだ。

風が吹くフラクタル峡谷から、炎の洞窟内部の最奥の間に移動したレオニス達の目に一番最初に飛び込んできたのは紅蓮の炎。

猛烈な勢いで渦巻く無数の豪火が、最奥の間全てを隙間なく埋め尽くしていた。