軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1639話 白い狼の正体

「これ……狼っぽい、よな?」

「ああ……しかし、ラニとは全然色が違うが……」

『とはいえ、 顔貌(かおかたち) はラニにそっくりだな……』

茶色い卵から新たに生まれた、狼によく似た四つ足の獣。

てっきりラニと同じ黒い狼が生まれてくるものだと思い込んでいたレオニス達は、予想外のことに半ばフリーズしかけながら白い狼っぽい生き物を繁繁と眺め続けている。

身体の大きさはラニが生まれた直後とほぼ同じで、今のライトの身長より少し小さいくらい。

体毛は純白で瞳は深い青。黒い毛に赤い瞳のラニとは正反対だ。

しかし、そのつぶらな瞳や引き締まった四肢、尻尾の長さやもふもふ具合など、造形の観点から言えばラニと瓜ふたつだった。

レオニス達は戸惑っていたが、ライトだけは白い狼を見つめながら別のことを考えていた。

ライトには、この白い狼の正体に心当たりがあったのだ。

『これ……もしかして、黒妖狼のメスバージョンか? ……って、見た目全然黒くないけど』

『でも、顔つきや身体はほとんどラニと変わんないし……黒妖狼のもとになっている狗神? あれも確かオスとメスで色違いだったはずだし』

『とりあえず、この子のステータスと詳細鑑定をしてみるか……』

使い魔の卵から孵化した新しい使い魔の正体を知るべく、ライトは秘密裡に鑑定を実行した。

ライトが見たステータスと詳細鑑定は、以下の通りである。

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【名前】−

【種族】白妖狼

【レベル】1

【属性】地

【状態】通常

【特記事項】従属型使役専属種族第四十七種乙類

【HP】60

【MP】30

【力】6

【体力】7

【速度】6

【知力】5

【精神力】4

【運】4

【回避】7

【命中】8

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【白妖狼】

神秘的な青い目と白い毛を持つ狼。

狗神が呪縛から解き放たれた直後の姿である、とも言われている。

狗神の頃の気性の荒さは若干残るが、自分を解放し救い出してくれた者には終生変わらぬ忠誠を誓う。

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『……うん、やっぱりラニと同一の種族なんだな。ただし、種族名の方に色の名前も入っちゃってるから、若干種族名が異なるけど』

『多分ラニやこの子は、このサイサクス世界では『妖狼族』という種族として存在していて、オスなら毛色が黒で赤い目、メスなら白い毛に青目になるんだろう。使い魔の性差を一発で分かりやすく表現するのに、色違いコピペという視覚を利用する手法は最も簡単で確実だもんな。……ま、ここら辺はBCOでなくともゲーム全般における定番の手法な訳だが』

ライトが難しい顔をしながら思案していると、レオニスがライトに声をかけた。

「なぁ、ライトはこの白い狼をどう思う?」

「……え? ぁー、ンーとねぇ、多分ラニと同じ種族の子なんじゃないかな? 毛や目の色は違うけど、もしかしてメスなのかも」

「あー、その可能性もあるか……ラニはオスで黒だけど、こいつは白だからメスかもしれんってことだよな?」

「そそそ、そゆこと」

ライトが唱える説に、レオニスとラウルが納得したように頷く。

ライトはステータス閲覧によって得た情報、特記事項の『乙種』という記述から白い狼がメスであることを知っているが、それをそのままレオニス達に伝えることはできない。

ふんわりとした仮説を用いて伝えるだけで精一杯だが、レオニスも察しが悪い方ではないのできちんと伝わったようだ。

「そしたらさ、レオ兄ちゃん。この子のお腹が見えるように、ちょっと脇の下から抱っこしてみてくれる?」

「……こうか?」

「そうそう。……どれどれ…………うん、女の子だね!」

レオニスがライトの指示通りに、白妖狼を縦状になるように抱っこし直す。

ライトは白妖狼の下腹部をモショモショと 弄(まさぐ) りつつ、思惑通り タマ(・・) を見つけられなかった後高らかに女の子宣言をした。

ライトの打った一芝居『タマがあれば男の子、なければ女の子』という、実に単純明快にして誰でも理解できる理論で白妖狼の性別を明かしたのである。

するとここで、これら一連の動きを見ていたサマエルが口を開いた。

『……で、結局この白いのは、どういった生き物なのだ?』

「この子はオーガの里にいるラニと同じ種族だろう」

『そうなのか? これはあの狼とは全く異なる白い毛なのに、か?』

「ああ。ラニは男の子だから黒い毛をしていて、この子は女の子だから白い毛、ということのようだ」

『ふむ、性別によって毛の色が異なるのか……それは興味深い』

白妖狼を抱っこしているレオニスが、サマエルに対してライトの仮説をそのまま説明している。

BCOの使い魔に限らず、性別により色が異なる特徴を持つケースは普遍的に存在する事象であり、サマエルが日々囲まれて暮らしている天空竜達にだってオスとメスで違う特徴がいくつかある。

そのためサマエルもこの説に納得しているようだ。

するとここで、レオニスがサマエルに向けてズイッ!と白妖狼を差し出した。

白妖狼の脇の下から持ち上げているので、てろーんと縦長になった白妖狼のお腹がサマエルに丸見え状態である。

「ほれ、サマエル、抱っこしな」

『わ、私がか?』

「そりゃそうだろう。だってサマエル、お前がこの天空島で新しい仲間を迎えたいって望んだんだろ? だったらお前が一番真っ先に抱っこしてやるのが筋ってもんだろう。……あ、俺のこの抱っこは性別判定のためのもんだからノーカンな?」

『………………』

レオニスの正論に、サマエルが何も言い返せずにいる。

サマエルがもたもたしている間に、レオニスがさらにズズイッ!と白妖狼を近づけてきた。

その見えない圧に屈するかのように、サマエルがそっと両手を伸ばして白妖狼を受け取った。

「生き物を抱っこする時は、お尻に手を添えて支えてから腕全体で抱えてやるといいぞ」

『こ、こうか?』

「そうそう、上手だ」

おっかなびっくりといった様子で白妖狼を受け取ったサマエルに、レオニスがあれこれとレクチャーをする。

レオニス自身はペットを飼った経験などないが、ライトを赤ん坊の時から育てた経験ならある。

未婚なのに育児経験を経たレオニスならではのアドバイスである。

一方でサマエルに抱っこされた白妖狼は、サマエルの腕の中でおとなしくしている。

そして白妖狼がふとサマエルの顔を見上げたかと思うと、身体を伸ばしてサマエルの頬をペロッと舐めた。

『……おおお……』

白妖狼からの親愛の表れを受けたことに、サマエルの頬がほんのりと赤らむ。

南の天空島で初めて生まれた天空竜以外の新たな仲間に、感動に打ち震えるサマエル。

両者の温かい絆を、ラーデはもちろんライト達も微笑みながら見守っていた。