軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1633話 支離滅裂な真実とレオニスの帰還

午前の優雅なティータイムよろしく、ユグドラツィの根元で美味しいお菓子やスイーツを楽しむラウル達。

ラーデはカタポレン産の巨大苺、サマエルはカットされたカタポレン産巨大桃を美味しそうに食べていて、ハドリー達は一口ドーナツや小さく切り分けられたアップルパイ、プチシュークリーム、キャラメルコーティングされたポップコーンなどを頬張っている。

ちなみにラウルは皆がスイーツを楽しんでいる間に、ユグドラツィの根元にツェリザークの雪解け水をバケツ五杯分かけたり、三頭の天空竜に巨大林檎を三個づつ与えたり等忙しなく動いていた。

幼いハドリー達は、美味しいものを好きなだけ食べた後、今度はサマエルや天空竜達のもとに寄って話しかけていた。

新顔のお客様のことが気になって仕方がないらしい。

『ねぇねぇ、お客様のお名前は何ていうの?』

『我はサマエル。偉大なる皇竜が第三子にして、南の天空島と天空竜達の主である』

『サマエル君ね!私はハナっていうの、よろしくね♪』

『僕はリィ、よろしくね』

『私はドロシー!』

『ボクは―――』

たくさんのハドリー達が、サマエルの周りにわらわらと群がりながら自分の名前を名乗りサマエルと友達になろうとしている。

サマエルは下半身が赤黒い大蛇で、背中には六枚の羽毛の翼を持っている。その異形の姿に加えて強者ならではの圧倒的なオーラが放たれていて、ものすごく近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。

しかし、ハドリー達がサマエルに怯える様子は微塵もない。

それどころか、サマエルより二回り以上も大きな天空竜に対しても興味津々で近づいていくハドリーもちらほらいるくらいだ。

自分に対して全く怯えることなく無垢な笑顔を向けてくるハドリーに、サマエルは目を細めながら微笑む。

やはりサマエルは、ハドリーのような小さくて可愛いものが大好きなようだ。

ただし、サマエルの目は黒目に赤い虹彩と金の瞳孔という非常に特殊な構造をしているので、傍から見たら軽く微笑むだけでも壮絶に怖い笑顔なのだが。

『ふむ、お前達は全員がそれぞれに名を持っているのか。その名付けは、一体誰がしてくれたのだ?』

『僕達の名前はね、全部ツィママが考えてくれたんだよー』

『ほう、名付け親は神樹であったか。良い名をもらえて良かったな』

『うん!ライトお兄ちゃんの話だとね、間違ってもレオパパに任せたらダメなんだってー。よく分かんないけど、大変なことになっちゃうんだってさー』

『あー、確かにラウルパパもそんなこと言ってたねー』

『だからライトお兄ちゃんが、前もってツィママに私達全員の名前を考えてねって言ってくれたのよねー』

ハドリー達全員がちゃんとした名前を持っていることに、サマエルが感心したように褒めている。

その流れで、ここにいないレオニスが何故かディスられているが。その内容は事実に基づく真っ当なものなので致し方ない。

するとここで、ユグドラツィへの水遣り他を終えたラウルが敷物の中に入ってきた。

ドカッ!と胡座で座り、まだ皿の上にいくつか残っていたプチシュークリームを指で摘んでパクッ!と頬張った。

『ラウルパパ、お疲れさまー』

「おう、ありがとうな。リィ達もおやつをたくさん食べたか?」

『うん!もうお腹いっぱいー』

『いつも美味しいものを食べさせてくれてありがとう!』

『ラウルパパ、大好きー♪』

プチシュークリームをもっしゃもっしゃと食べるラウルに、ハドリー達が嬉しそうに礼を言う。

ラウルの腿をよじ登って胡座の中に入ったり、膝の上で寝転んだり。まるでアスレチック遊具にたくさんの子供が群がり遊ぶような光景である。

そんなラウルに、サマエルが声をかけた。

『ラウル、先程ハドリー達からもらった卵のことなのだが。いくつか聞きたいことがある』

「おう、俺で分かることなら何でも答えるぞ」

『うむ、良い心掛けだ。して、あれらの卵はどうやって孵化させれば良いのだ? 卵の孵化とは、両親がその体温で何日も卵を温め続けて孵すものだが……お前の話だと、ダイコンなるものを卵に与えたと言っていたな? 私にはどうにもその意味が分からぬのだ』

「あー……そこら辺をどうするか、先にちゃんと説明して考えておかなきゃいけんよな」

サマエルの質問に、ラウルが難しい顔をしながら答える。

使い魔の卵の孵化は何しろ特殊過ぎて、その特殊性を知らない者達には想像もつかないのも当然である。

『そのダイコンなるものを、天空島にそのまま持ち帰るだけではダメなのか?』

「いや、絶対にダメって訳じゃないんだが、何しろ卵に与える食べ物を大量に用意しなきゃならないんだ。今ここにいるハドリー達を孵化させる時だって、卵一個につき二十五本の大根を使ったからな……さっきハドリー達からもらった卵は二十個以上あるから、大根を与えるにしても五百本以上は用意しなきゃならん」

『うぬぅ……確かにそれは少々時間がかかりそうだな』

ラウルが指摘する卵の孵化の問題点に、サマエルも渋い顔をしながら思案する。

しかし、それよりもっと重大な問題があった。

「でもって、ここが一番重要なんだが……これまでの経験から言うと、大根以外の食べ物を与えると卵から生まれてくるのがハドリー以外の種族になる可能性が高いんだよな」

『何ッ!? この卵はハドリーの卵ではないのか!?』

「ンー、何と言って説明すればいいのか……これはハドリーの卵であって、絶対にハドリーの卵って訳でもないんだよな」

『?????』

ラウルの一見すると支離滅裂な話に、サマエルの頭の上に無数の???が浮かぶ。

『ハドリーの卵だけど、ハドリーの卵じゃない』、ここだけ聞けばラウルの頭がおかしくなったのか?と思われても致し方ないところだ。

しかし、ラウルが言っていることは全て真実である。

『これがハドリーの卵ではないとするならば、一体何が生まれるというのだ?』

「実はそれもよく分かっていないんだが……以前オーガの里で、あれと全く同じ茶色い卵を見つけた時にパイア肉の塊を与えたら、黒い狼が生まれたんだ」

『黒い狼、だとぅ……何という摩訶不思議な卵なのだ……』

ラウルが語る経験談に、サマエルが目を丸くして絶句している。

サマエルが従える天空竜も卵生で、天空竜の番の雌が卵を生んで夫婦交代で卵を温めて孵化させている。要は卵生の一般常識に則った王道の孵し方だ。

そうした通常の卵生とは全く異なる孵化方法で、しかも与える食べ物によって生まれてくる種族が変化するなど、長い時を生きてきたサマエルですら想像を絶する事態である。

そんな話をしていると、何者かがこちらに近づいてきた。

森の中をザッ、ザッ、と歩いてくる音がする。

音がする方をラウル達じっと見ていると、木々の間から現れたのはレオニスとラキ。

そしてラキの右肩にヴィヒト、左肩にウィカが乗っていた。