軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1580話 主役達への贈り物・その四

誕生日パーティーにお呼ばれしたご近所さん達が、次々とライトやユグドラツィにプレゼントを渡していく中、ラキ達オーガ族の次に手を挙げたのは、水の女王だった。

『はいはーい!次は私とアクア様の番よ!』

右手を高々と挙げて前に進み出る水の女王。

皆が心尽くしの品を贈る様子を見て、自分達の出番が待ちきれなくなったようだ。

『今日ここにお呼ばれすることになってから、ライトと神樹のツィちゃんに何を贈り物にすればいいか、ずっとアクア様とお話ししてたんだけど。まずはライトに、これをあげるわ!』

水の女王が自分のおへそ辺りに両手を突っ込んで、何やらガサゴソと漁っている。

これは、水の女王は自分の体内をポケット代わり、つまりは空間魔法陣のように使っているためだ。

彼女は水の化身、その身体は無限の水でできている故にできる芸当である。

そして彼女がお腹から取り出したのは、超巨大な宝珠だった。

『ジャジャーーーン☆ ライト、レオニス、よーく見なさい。これが私の超本気を出した傑作よ!』

「そ、それは……【水の宝珠】、ですか?」

『ライト、正解♪』

「それにしちゃ、かなりデカくねぇか……?」

『そうね。これは言わば【水の超宝珠】的な感じ?』

水の女王が出してきた【水の宝珠】。

それはかつて、レオニスがラグナ神殿で真っ二つに折れた聖遺物【晶瑩玲瓏】を復元する際に、魔力補充策として水の女王から譲り受けたアイテムである。

しかし、その時に使わせてもらった宝珠とはまるでサイズが違う。

前回もらった【水の宝珠】は、レオニスの手のひらにちょうど収まるサイズだった。

だが、たった今水の女王がライト達の前に差し出してきた宝珠は直径20cmくらいあって、人の頭程の大きさがある。

前回の品と比べて、ぱっと見ただけで幅が倍以上もあることにライト達がびっくりするのも無理はない。

明らかに度肝を抜かれているライトとレオニスを見て、水の女王が満足そうに語る。

『レオニス、前に私は言ったでしょう? あの時作った宝珠よりも、もっともっと大きなものを作ってみせるって。……そう、これはね、私が水の女王としての名誉挽回して誇りを取り戻すための試練でもあるのよ!』

「ぉ、ぉぅ、そうか……」

天高く掲げた拳にグッと力を込めて握りしめながら、並々ならぬ闘志を燃やす水の女王。その姿はまるで、どこぞの覇王もしくは拳王を彷彿とさせる世紀末的オーラを感じさせる。

【晶瑩玲瓏】復元の際に【水の宝珠】だけでは魔力量が足りず、他の宝珠まで使われたことが水の女王は余程悔しかったらしい。

そして水の女王は、クルッ!とライトの方に向き直り話しかけた。

『ライトが持つ魔力量が膨大なことは、こないだの魔力テスト?を見学していた私達もよーく知ってるわ。そんなライトにこそ、この【水の超宝珠】を持っていてほしいの。だって貴方達、話を聞いてるといろんなところで無茶ばっかりしてるんだもの』

「うぐッ……そ、それはー……否定しません……」

『でしょー? だからね、ライトもいつか必ずこの【水の超宝珠】を使う日が来ると思うわ。その日まで、これを大事に持っててね。きっとライトの役に立つはずよ』

「……ありがとうございます!」

水の女王の心遣いに、ライトが感激の面持ちで礼を言う。

フッフーン☆というドヤ顔で未来予想を語る水の女王の、何と愛らしいことよ。

そして彼女の予想はきっと当たるだろう。

それはつまり『【水の超宝珠】を使わなければならないような場面に陥る』ということになるのだが、冒険者になるという選択をした以上、これからのライトの人生はますます波乱万丈になっていくに違いないのだから。

ライトは水の女王から受け取った【水の超宝珠】を、アイテムリュックに大事に仕舞う。

そしてライトは、水の女王にだけでなくアクアにも礼を言った。

「アクアも【水の超宝珠】作りを手伝ってくれたんでしょう? いつもぼく達のために、本当にありがとうね!」

『どういたしまして。だってライト君は、僕の生みの親だもの。僕がライト君のお手伝いや望みを叶えることは、極々自然なことさ』

水の女王の横にいたアクアの首っ玉に、ライトが思いっきり抱きつく。

この宝珠は、水の女王一人では作れない。

彼女の相棒である湖底神殿守護神、アクアの協力なくして作ることはできない品なのである。

ここまで大きな宝珠を作り上げるには、ものすごく大変だったに違いない。

後日レオニスがアクアに聞いた話によると、通常の宝珠作りの工程を五回も繰り返して巨大化させたのだとか。

そしてその都度水の女王は、力を使い切ってヘロヘロになっていたという。

勝ち気な彼女のド根性に、ただただ感服するしかない。

アクアの首っ玉に抱きつき、全身全霊で感謝の意を表すライト。

そんなライトの背中を、アクアが前肢でそっと包み込み優しく撫でる。

湖底神殿守護神と人族の子供の温かい交流に、レオニス達も心和んでいた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『さて!ライトに【水の超宝珠】をプレゼントしたから、次は神樹のツィちゃんへのプレゼントね!』

水の女王が、これまた張り切りながらユグドラツィを見上げる。

『これも、アクア様と話し合ったんだけど。ここに、私とアクア様で泉を作ろうと思うの。どうかしら?』

『まぁ……貴方達が作る泉というと、天空島に御座すエル姉様のところで作られた『アクアの泉』と同じもの、ですか?』

『そそそ。ここにはそうした水源は一つもないし、これを機にツィちゃん達専用の泉を新たに作ってもいいんじゃないかと思って』

『本当にありがたいことです……』

水の女王の提案に、ユグドラツィが感激している。

確かにユグドラツィのいる周辺には、目覚めの湖以外の水源はない。

これまで通り自然に降る雨だけでもやっていけるが、それでも敷地内に泉があれば断然心強いのは間違いない。

『今の私のもとには、十六体のハドリー達もいますし……貴方達が泉を作ってくれたら、私だけでなくこの子達もとても助かります』

『でしょでしょー? このハドリーちゃん達は、草木の精霊なのよね? だったらこの子達が成長していくのにも、アクア様が作る泉はすっごく役立つと思うわ!』

ユグドラツィの感謝の言葉に、水の女王が屈託ない笑顔で応える。

確かに二人の言う通りで、ここには今や十六体もの 草木の精霊(ハドリー) がユグドラツィとともに暮らしている。

そしてこのハドリー達は、ライト、レオニス、ラウルの手によって使い魔の卵から孵化して五ヶ月弱。

生後半年未満のまだまだ未熟な精霊であり、これからもっと大きく成長していくには良質な水が欠かせない。

そのためにも、アクアと水の女王がここに泉を作れば万々歳!である。

するとここで、何故かラキが水の女王に声をかけた。

「水の女王よ、泉を作るということは、もしかして地面を掘るなどの力仕事が必要なのではないか?」

『ン? もちろんそうよー。私達は今までに二回、泉を新しく作ったことがあるけど、その二回ともレオニス達に泉の器作りをしてもらったの。だから今回も、レオニス達に泉の器作りをお願いする予定よ』

「ならばそのお役目を、是非とも我らオーガ族にお任せいただけまいか」

『あら、貴方達も手伝ってくれるの? それは助かるわ!』

ラキの申し出に、水の女王の顔がパァッ!と明るくなる。

水の女王とアクアが泉を新しく作るには、泉を作る前にその器を作らなければならない。

その器作りを、今回もレオニスやラウル、ライトに手伝ってもらうつもりでいた。

しかし、器作りは何もレオニス達にしかできない仕事ではない。

ラキ達が携わることだって何も問題はない。

いや、むしろ力自慢のオーガが加わってくれれば、より大きくて頑丈な泉が早く出来上がるかもしれない。

このことに、レオニスが真っ先に反応した。

「おー、ラキも手伝ってくれるか、そりゃありがたい!」

「いや、感謝すべきはむしろ我らの方だ。我らの神樹への贈り物は、皆に比べて貧相だからな。ここで我らも泉作りに参加させてもらえるなら、我らにとってもありがたいことなのだ。なぁ、ニル爺よ?」

「うむ!ラキよ、よくぞ言った!力仕事ならば、我らオーガ族に任せよ!」

ラキが泉作りの手伝いを申し出たことに、ニルも満足そうに大きく頷いている。

オーガ族の物理的な力の強さは 夙(つと) に有名であり、そんな彼らの腕力があれば泉作りも格段に早く作り上げられるであろう。

うむうむ!としたり顔で頷いてみせるニルやラキに、ユグドラツィが声をかける。

『貴方達の贈り物が貧相だなんて、そんなことはないのに……でも、貴方達の泉作りに参加したいというその気持ちが、私にとって何より尊いものです。ラキ、ニル、本当にありがとう』

「何の何の!ツィちゃんよ、我らの力仕事をとくとご覧あれ!」

「ニル爺の言う通りだ。して、水の女王よ、その泉は今すぐ作るのか?」

『そうねー、私としては今すぐ作るつもりだったけど……』

ラキの問いかけに、水の女王がしばし思案する。

そしてクルッ!とアクアの方に身体を向き直した。

『ねぇ、アクア様。オーガが泉の器作りを手伝ってくれるなら、予定していたものよりずっと大きな泉を作れそうですわよねぇ?』

『そうだね。せっかく作るなら、今まで作ったどの泉よりも大きくて立派なものを作りたいな』

『ですよねー!そしたらまた後日、改めて泉作りの計画を話し合う場を設けましょ♪』

アクアの同意を得た水の女王。

本当はここで今すぐ泉を作るつもりだったが、ラキの思わぬ申し出に予定が変わったようだ。

『ツィちゃん、誕生日の贈り物をすぐに渡せなくてごめんなさい。でもその分、より大きくてより立派な泉を作って差し上げるわ!』

『水の女王、貴女が謝る必要など何一つないのですよ。私達には貴女達の好意に感謝しかないのですから』

ユグドラツィの言葉に同意するように、ハドリー達が水の女王やアクアにまとわりつくように取り囲む。

『水の女王様、ホントにありがとう!』

『ここに泉ができるなんて、すっごく嬉しい!』

『水の女王様やアクア君が作るお水の元なんだから、絶ーーーッ対に、すーーーっごく美味しいお水よね!』

『想像するだけで、ヨダレが出そう……♪』

水の女王やアクアに礼を言いながらも、彼女達が作る泉の水の美味しさを今から想像してはうっとりとしているハドリー達。

植物の精霊だけに、良質な水=美味しいご飯!として認識されているようだ。

そして数体のハドリーが、ラキとニルにも声をかける。

『ラキおじちゃん、ニルおじいちゃん、私達にも手伝えることがあったら何でも言ってね!』

「ああ、頼りにしているぞ」

「うむ!可愛い孫達のためにも、儂も頑張らなくてはな!」

『ニルおじいちゃん、大好きー♪』

小さなハドリー達に囲まれて、人一倍ご機嫌なニル。

もう酒のアルコール成分は抜けているはずなのだが、いつにも増して陽気なニルの様子にラキがチクリ、と釘を刺す。

「ニル爺よ、張り切り過ぎて腰を痛めてくれるなよ?」

「ラキよ、そう思ったら儂の分まで多く働いてもらうぞ」

「うむ。では我はニル爺の分まで働くので、ニル爺にはオーガの里の年寄り代表として年寄り全員分働いてもらおう」

「それは……腰を痛めるどころの話ではなかろう……」

ラキの反撃に、ニルがしおしおと消沈している。

「ラキよ……お主、本当に鬼じゃのぅ……」

「我らはもとより鬼人族ではないか」

「む? それもそうじゃ」

「「ワーッハッハッハッハ!」」

しおしおとしていたニルに、速攻でツッコミを入れるラキ。

オーガが『鬼め!』と罵られたところで、それは単なる事実にしか過ぎない。

ラキ達は本当に鬼人族なんだから痛くも痒くもないし、そもそも罵詈雑言にすらならないのである。

漫才のようなノリツッコミに、ラキとニルが二人して高笑いしている。

そんな彼らの陽気な笑い声に、周りにいるライト達も大笑いしていた。