軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1579話 主役達への贈り物・その三

クロエ達のプレゼントがライトとユグドラツィに渡された後、プレゼントを渡す三番手に立候補したのはオーガ族代表のラキだった。

ラキが間を置かずにレオニスに声をかける。

「レオニスよ、ここに来る前に預けた例のものを出してもらえるか?」

「はいよー」

ラキに請われたレオニスが、空間魔法陣を開いて何かを取り出した。

それは、オーガサイズの巨大な徳利二本だった。

「これまでのナヌス達やココ殿達の贈り物とは、比ぶべくもない粗品なのだが……ライト、ツィちゃん、もし良ければ、受け取ってもらいたい」

「これは……お酒か何かですか?」

「惜しい、半分正解で半分ハズレだ」

「?????」

出てきたのが徳利の形状をしていたから、てっきりその中身は酒かと思ったライトだったのだが、どうやらそうではないらしい。

「これは我らの秘伝の酒を使ったものでな。我らはただ単に『秘薬』と呼んでいるのだが。この秘薬は、秘伝の酒を元の量の半分になるまで煮詰めることで、体力増強の効果を持つ液体になるのだ」

「あー、だから『半分正解で半分ハズレ』なんですね」

「そういうことだ」

ラキの説明に、ライトが得心している。

原材料がラキの達オーガ族の秘伝の酒だから、ライトが推察したお酒というのは正解。

だが、煮詰めればアルコール成分は飛んで酒ではなくなり秘薬になる。そういう意味では不正解、という訳だ。

「ラキさん達も、普段からこれを飲んで体力増強してるんですか?」

「いや、日常生活している分にはあまり使わないな。ただし、狩りに慣れない若者が里の外に出る時などは、外敵に備えて服用する。他にも行商に出て長旅をする者達も、いざという時のために常備する品だ」

「そんなに貴重なものを、ぼくにくれるなんて……ありがとうございます!」

「いや何、ライトも此度レオニスと同じ職に就くと聞いたのでな。より強靭な身体作りのために役立ててくれ」

「はい!」

ラキ達オーガからの思いがけない贈り物に、ライトがペコリ、と頭を下げて礼を言う。

そんな礼儀正しいライトを見て、ニルがニコニコしながら横にいるレオニスに話しかける。

「いやー、ライトはほんに礼儀正しい子よのぅ。角なしよ、お主に似なくて本当に良かったのぅ」

「うるせーよ」

ニコニコ笑顔でライトを絶賛し、レオニスをディスるニル。

ディスられたレオニスが口をへの字に曲げて文句を言うが、基本的にはライトを褒め称える言葉なので抗議まではしないようだ。

そんなレオニスが、ニルではなくてラキに問うた。

「ライトに良いものをくれてありがとうな」

「うむ。心ばかりの品だが、今後のライトの冒険者?としての活動に役立ててもらえたら幸いだ」

「……で? ツィちゃんへのプレゼントも、これと同じものなのか?」

「そうだ」

レオニスが持った疑問は『ライトにくれた秘薬を、ユグドラツィにも贈るのか?』ということ。

この秘薬が体力増強の効果に優れているなら、今日冒険者になったばかりライトにプレゼントしてくれるのは分かる。

しかし、それを神樹にまで贈るのは何故なのか。

神樹に体力増強剤など不要だし、それ以上に変な副作用が起きたらマズい、とレオニスは考えたのだ。

そんなレオニスの疑問に、ラキが冷静に答える。

「実は我らも今まで知らなかったのだが、この秘薬にはもう一つ効果があることが先般分かってな」

「もう一つの効果? 何だ?」

「良い機会だから、ここで実践して見せよう。レオニス、ここに一杯の水を用意できるか?」

「水を出せばいいのか? ちょっと待ってな」

ラキの要請に、レオニスが即時応える。

空間魔法陣から木製バケツを一つ取り出し、レオニスが初級水魔法を唱えてバケツの中に水を満たしていく。

「これでいいか?」

「ああ。そしたらその水に、秘薬を足して混ぜてくれ。……そうだな、レオニス、お前の片手で一掬い程度の量でいい」

「了解ー」

レオニスが出したバケツにほぼ満杯に満たされた水に、ラキ達オーガの秘薬を適量投入してよくかき混ぜる。

その作業をレオニスがしている間に、ラキがユグドラツィやラウルに声をかける。

「ツィちゃん、良ければこの特製の秘薬水?を味見してみてくれ」

『味見、ですか? ……分かりました』

「ラウル先生、すまぬがレオニスが作った秘薬水をツィちゃんの根元にかけてやってくだされ」

「了解」

ラウルがレオニスからバケツを受け取り、出来上がったばかりの秘薬水をユグドラツィの根元に少しづつ、ゆっくりとかけていく。

真夏の暑い空気の中、神樹の根元にかけられた水はあっという間に地面に染み込んでいった。

『これは……何とも美味なる味わいですね』

「おお、ツィちゃんにも気に入っていただけたか!」

「ツィちゃん殿のお気に召したか!誠に重畳!」

ユグドラツィから美味評価をもらえたことに、ラキとニルが破顔する。

すると、早速ラウルがユグドラツィにあれこれと質問をし始めた。

どうやらラウルは、先程ユグドラツィが飲んだ秘薬水の味や効能が気になるようだ。

「ツィちゃん、一体どんな味なんだ?」

『もちろんただの水と違って、何だか、こう……幹の内側から、力が漲ってるような?』

「ツェリザークの雪や、氷の女王の氷槍なんかともまた違うのか?」

『ええ、かなり違いますね。ラウルやレオニスがくれるツェリザークの氷雪は、魔力を満たしてくれるもの。今の水は、魔力とは異なる質の力が湧いてきます……こんなことは、私でも初めてのことですが……幹回りが1cmくらいは大きくなった気がします』

「幹が1cmも増えたのか!?」

ラウルの質問欄に、ユグドラツィが戸惑いながら真摯に答えている。

以前ユグドラツィは、エリクシルを薄めた水を飲んで『身長が1メートルは伸びた!』と言ったことがあった。

今回は身長ではなく横、胴回りが増えたというではないか。

このものすごい効果に、ラウルだけでなくその場にいた全員が驚いている。

「そんなすげー効果があるとは……オーガの秘薬はとんでもねー効果があるんだな」

「ツィちゃん達神樹に良き効果をもたらせたなら幸いだ」

『ねぇねぇ、そのお水、僕達も飲んでいい!?』

「いや、ちょっと待った、まだ小さいハドリー達の身体にはキツいかもしれんからやめとけ」

『むぅー……すぐに大きくなれるかと思ったのにぃー』

オーガの秘薬水に興味津々のハドリー達。

しかしレオニスが慌ててそれを止める。

大木であるユグドラツィですら、すぐに1cm太った?のだとしたら、小さなハドリー達に秘薬水を飲ませたらとんでもないことになるかもしれないからだ。

『皆、先程の秘薬水は後できちんと検証してから飲みましょうね。これは貴方達の身体を考えてのことなのですから、ね?』

『はぁーい』

『そうよね、ツィママの言う通りよね!』

『ワタシ達がいきなり巨大になったら、皆困るもんね!』

ユグドラツィの説得に、最初は落胆していたハドリー達もだんだんと前向きになる。

そしてユグドラツィがラキとニルに、改めて礼を言った。

『ラキ、ニル、このように素晴らしいものを私にももたらしてくれて、本当にありがとう』

「何の、ツィちゃんの役に立てたら幸いだ」

「うむ!我らオーガ一同、森の守り神たるツィちゃん殿を心より敬愛しておる。これからも末永く我らをお見守りくだされ」

『はい。貴方達オーガの繁栄を、私も心より願っております』

ユグドラツィからの礼に、ラキとニルが嬉しそうに笑っていた。