軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1576話 賑やかな交流

オーガ族と暗黒神殿組が仲良く話しているその横で、ナヌスや目覚めの湖の仲間達もそれぞれ楽しく過ごしていた。

ナヌスは五人のハドリーに囲まれ、談笑している。

『おじちゃん達が、あの綺麗な石の結界……ツィママを守る結界を作ったんですって?』

「おお、そうだとも。ツィちゃん様はな、少し前にとても悪い奴に襲われて、とても辛い目に遭われたのだ。もう二度とそんなことにならぬよう、ツィちゃん様を守る結界を皆で作り上げたのだ」

『おじいちゃん達、すごーい!』

『ツィママを守ってくれて、ありがとう!』

「ふぉっふぉっふぉっ、同じカタポレンの森に住む者同士、助け合っていかんとな!」

「ツィちゃん様は我らが森の守り神。幾久しく壮健でいていただかなかればな!」

ハドリー達から尊敬の眼差しで見つめられるナヌス達。

長老のパウルやハンスなどは、まるで実の孫達と接するかのようにご機嫌である。

ちなみにハドリーは背丈がナヌスより少し大きいくらい。

他の種族に比べたら目線が近いので、双方ともにより一層親近感が増すようだ。

そんなナヌス達の横では、目覚めの湖の仲間達と別のハドリー五体が交流している。

『ねぇねぇ、アナタ達からはものすごーく甘い匂いがするんだけど……どうして?』

『うんうん、とーっても甘くて美味しそうなニオイがするよね!』

『そうなの? それはどうしてだろうね? 僕達は、自分の匂いなんて分からないけど……』

『アクア様、この者達は草木の精霊なんですって。草木の精霊なら、きっと美味しい水の匂いや水の良し悪しが分かるのではないかしら?』

アクア達から良い匂いがする、というハドリー達。

その言葉にアクアは小首を傾げ、水の女王が名探偵ばりの推察をしている。

実際に彼女の推察は正解で、水神アクアと水の女王、そして 水の精霊(ウィカ) が醸し出す清冽な水の気配をハドリー達は『甘くて芳しい香り』と捉えたのだ。

そんな水の女王の名推理に、ウィカもうんうん!としたり顔で頷く。

『きっと、ううん、絶対にそうだよ!だってこの子達は、ボクの 後輩(・・) だもの。だから、とーっても優秀なんだね☆』

『『後輩???』』

『そそそ、ボクの後hモゴゴゴゴ』

同じ使い魔の後輩に当たるハドリーの優秀さを、我が事のようにドヤ顔で誇るウィカ。

そんなウィカの横にシュバッ!と現れて、その口を思いっきり抑えつけたのはライトだった。

「ウィ、ウィカ君? 君、何だかとーーーってもお腹が空いてそうだね? このジャイアントホタテのお刺身、美味しいからいっぱい食べてよ!ね? ね?」

『……(コクコク)……』

たくさんの新鮮なジャイアントホタテの刺身を、ライトに口に詰め込まれたウィカ。

ニコニコ笑顔で大いに焦るライトを上目遣いに見ながら、反射的にコクコクコクコク!と高速縦振りで頷いている。

確かにライトの二番目の使い魔であるウィカからしたら、ハドリー達は後輩に当たる。

しかし、そんなことをここで大っぴらに明かされても困る。

故に美味しいモノで口を塞いじゃえー!という訳である。

そんな挙動不審な一人と一匹を、アクアと水の女王は不思議そうに眺めていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その後も賑やかな交流があちこちで繰り広げられた。

メデューサ族を初めて見るのが珍しくて、クロエにくっつくハドリー。特に下半身の大蛇部分がひんやりしていて、暑い夏の熱気を紛らわせてくれる心地良さだ。

そのあまりの気安さに、黒水晶の中で控えている闇の女王が怒り出すのではないか?とユグドラツィがハラハラしていたが、そんなことは全くなかったようだ。

他にも、レオニスより三倍は大きいオーガ族の逞しい上腕二頭筋を珍しそうに触りまくるハドリー達。

ラキの二の腕にハドリーが五人ぶら下がっても全然平気で、キャッキャとはしゃぐハドリー達はまるで鉄棒にぶら下がって遊んでいるかのようである。

そしてライトが涼を取るために作った霧雨を、目覚めの湖の仲間達とともに気持ちよく浴びるハドリー。

その霧雨は風に乗ってユグドラツィの幹や枝葉にもかかり、ユグドラツィまでもがその恩恵を受けてうっとりとしている

何しろここにはハドリーが十六体もいるので、全ての客人のもとに何体かのハドリーがくっついていた。

幼子特有の遠慮の無さに、ユグドラツィが『これ、ハロルド、そんなにペタペタと人様の身体を触るものではありませんよ』『ドロシー、それは食べ物ではありませんよ!?』『ああッ、ドナート!ナヌスの方々のお髭で三つ編みするんじゃありません!』等々、休む間もなくずーっとハドリー達を注意していた。

『ぅぅぅ……皆様方、うちの子達が無礼ばかり働いて、本当ーーーにすみません……後でよーく言い聞かせておきますので、何卒ご容赦ください……』

しおしおと項垂れるような口調で客人達に謝るユグドラツィ。

ハドリー達の不始末は、彼ら彼女らが母と慕う自分に責任がある、と思っているようだ。

そのせいか、ユグドラツィの枝葉が全部下を向いて、ショモショモ……という何とも物哀しい葉擦れの音が聞こえてくる。

如何にも責任感が強い彼女らしい謝罪に、客人達が笑いながら応える。

「いやいや、何のこれしき!ツィちゃん様が謝るようなことではござらん!なぁ、ラキ殿?」

「うむ。このように愛らしき草木の精霊達、その戯れも実に可愛らしきもの。目くじらを立てて怒ることなどあり得ぬ」

『そうよそうよー。きっとこの子達は、全員が将来立派な精霊に成長するわ!だって、アクア様や私が出すお水をたーーーくさん飲んだんですもの!』

『ココも、小さなお友達がたーくさんできて、すーっごく嬉しい♪』

誰一人としてハドリーの無礼を咎めたりしない。

それどころか、寛大な笑顔で見守ってくれている。

客人達の寛容さに、ユグドラツィはただただ感謝しかない。

『皆さん、本当にありがとうございます……このように素晴らしいご近所さんに恵まれた私は果報者です』

先程まで下を向いていたユグドラツィの枝葉が、だんだんと上向きになっていきワシャワシャと軽快な音を立てる。

風もないのに聞こえてくる軽やかな音は、ユグドラツィの心が軽くなった何よりの証。

心優しい神樹の愛らしさに、ライトだけでなくその場にいた全員がほっこりと和んでいた。