軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1571話 皆からの誕生日プレゼント

「やぁやぁ皆、こないだぶりだねー♪」

右手をひらひらと振りながら、空から降りてくるヴァレリア。

相変わらず口調だけはやたらと軽いが、やってることは歴とした人外行動である。

しかし、ライト達がそれに怯むことはない。

ライト達の目に映るのは、いつもと変わらぬヴァレリアなのだから。

『ヴァレリアさん、ようこそいらっしゃいました』

「ヴァレリアさん、待ってたんですよー!」

『きっとヴァレリアさんも来てくれると思ってました!』

『ヴァレリアさんの席も、ちゃんと用意してあります!』

真打ち登場!とばかりに遅れて現れたヴァレリアを、ライト達が次々に取り囲む。

嬉しそうな顔で自分の周りを取り囲むライト達に、ヴァレリアも「うん、いらっしゃいましたよー」「待たせちゃってごめんねー」「ミーナの期待を裏切る訳にはイカンザキだからねッ☆」「さすがルディだ!ヴァレリアさんは嬉しいよぅぉぅぉぅ」と全員に丁寧に答えている。

そして、最後にヴァレリアに話しかけたのはレア。

きゅるん☆とした上目遣いで、ヴァレリアの来訪を歓迎した。

「ヴァレリアお姉ちゃま……パパのために来てくださって、とっても嬉しいです」

キラキラと輝くような眼差しで、レアがヴァレリアを見つめる。

その反則的なまでに愛らしい笑顔に、思いっきり胸を射抜かれるヴァレリア。

仰け反るヴァレリアの、グハァッ!という小さな呻き声とともに、ドゴォーーーン!という効果音がどこからともなく聞こえてきた、気がする。

「な、何この破壊力……無垢なる草木の精霊の曇りなき 眼(まなこ) は、ヴァレリアさんには眩し過ぎるぅぅぅぅ!でも、お姉ちゃまと呼んでもらえて超嬉しーーー!」

『まぁ……ヴァレリアさんでもダメージを受けることがあるんですねぇ』

両手で胸を抑えながら蹲るヴァレリアを、ミーアが驚いたような顔で不思議そうに見つめている。

そんなミーアに、ヴァレリアが口を尖らせながら文句を言う。

「ミーア、何気にしどいこと言うね?」

『いえいえ、常に冷静沈着なヴァレリアさんにしては、とても珍しいことが起きたものだと思いまして』

「そりゃ仕方ないよー。だってレアのこの可愛さは、正真正銘反則レベルだもん!」

『フフフ、それは確かに』

懸命に抗議するヴァレリアに、ミーアがクスクスと笑いながら同意する。

そしてヴァレリアの胸を見えない矢で射抜いた当のレアは、何のことだかさっぱり分からずに笑顔のまま小首を傾げていた。

『さあ、ヴァレリアさんもお席に着いてくださいまし。ヴァレリアさんも、ライトさんのお誕生日を祝いにお越しくださったのでしょう?』

「もッちろん!こーんな楽しそうなパーティーに、この私が参加しないなんてあり得ないだろう?」

「『『はいッ!』』」

鼻高々でドヤ顔をするヴァレリアに、ライト達全員がニコニコ笑顔で賛同する。

ライト達の方からヴァレリアを呼びつけることは、ほぼ不可能に等しい。ヴァレリアの方から、予告なくライト達の前に姿を現すのが常だ。

しかし、そのタイミングを予測することならある程度は可能だ。

ヴァレリアが突然現れるのは、大抵がこの転職神殿内でヴァレリアの気を引きそうな何かしらが起こった時。

そして今日のライトの誕生日パーティーは、絶対にヴァレリアの興味を引くこと請け合いだ。

だからこそ、ヴァレリアのための椅子を早々に用意したのである。

ミーアの催促に従い、ヴァレリアがいそいそと空席に座る。

その空席は、今日の主役であるライトの右隣で、反対側にはミーアが座っている。

自分のために用意された椅子に座るのが、ヴァレリアはとても嬉しいようだ。

「おおー、たくさんのご馳走が並んでるね!これって、ミーナ達がお使いで拾ってくるヤツだよね?」

「そうですそうです。BCOではHPやMPを回復するアイテム扱いだったけど、ここでは普通に食べることもできますよー」

「だよねー。私もチョコレートケーキとかおはぎなんかを食べたことあるし、ワインやお屠蘇を飲んだこともあるけど、どれも普通に美味しいよねー」

「ぼくはまだ未成年なんで、お酒は飲めませんけどねー」

「そりゃ残念ー。十年経ってライト君が二十歳になったら、私といっしょにお酒を飲もうねー」

「はい!」

テーブルの上にズラリと並ぶご馳走。

それらが全てBCO由来のアイテムであることを、ヴァレリアは即時看破した。

さすがはヴァレリア、このサイサクス世界を誰よりも知り尽くしている魔女だけのことはある。

そうして早速ヴァレリアも、ライト達とともにご馳走を食べ始めた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

美味しいものを食べながら、和やかに会話をするライト達。

ライトはこの後にももう一件、ユグドラツィのもとでレオニス達との誕生日パーティーを控えているため、桜餅やみたらし団子などの軽くて小さなものを中心に食べている。

するとここで、ヴァレリアがライトに問いかけた。

「あ、そういやライト君、今年で十歳になるんだよね?」

「はい、そうです」

「そしたら、冒険者ギルドに冒険者登録はしてきたのかい?」

「もちろん!あ、ギルドカードとタグプレートももうもらってきたんですよ、見ます?」

「見せて見せてー!」

今日のもう一つのビッグイベント、冒険者ギルドでの冒険者新規登録。

その成果であるギルドカードとタグプレートを、ライトがアイテムリュックからいそいそと取り出して皆に見せた。

『主様、これは何ですか?』

「これはね、冒険者ギルドが発行したぼく個人のギルドカードだよ。これを持つことで、ぼくは冒険者としての活動ができるようになったんだ」

『パパ様は、勇者候補生と冒険者の両方で活動していくのですか?』

「う、うん、まぁね……勇者候補生の方は基本的に秘密で、BCOを知る人以外には話せないことなんだけど。冒険者なら、サイサクス世界では誰でもなれる職業だからさ。普段はラグーン学園に通って、主に学園が休みの日に時々冒険者として活動していく予定。勇者候補生の方は……まぁ、追々、ね」

ルディの質問に、ライトが目を泳がせながらゴニョゴニョと言い募る。

本当は「勇者になんて、絶対になんねーよ!」と大声で叫びたいところなのだが。ヴァレリアやミーアの前で、声を荒げながらそんなことを言い放つ訳にもいかないので、ここはグッと堪えている。

そうしたライトの配慮?を知ってか知らずか、ヴァレリアも「

うんうん、そうだよねー。ライト君はまだ学生だもんねー」と頷きながら、ハロウィンイベントアイテムの一つであるパンプキンパイを頬張っていた。

そしてライトが取り出したタグプレートを、ヴァレリアが目を細めながら眺め呟く。

「このタグプレート、久しぶりに見るけど……昔からちっとも変わってないんだねぇ」

「え? ヴァレリアさん、もしかしてタグプレートを持ってるんですか?」

「うん、持ってるよ。と言っても、私が持ってるのは魔術師ギルドの方だけど」

「えッ、マジですか!?」

「マジマジ」

誰に言うともなく呟いたヴァレリアの何気ない言葉に、ライトが思いっきり食いつく。

ヴァレリアは日頃から自分のことを話すなど滅多にないので、彼女が魔術師ギルドのタグプレートを持っているなど初耳だ。

思いがけない新情報に、ライトが興奮気味におねだりした。

「ヴァレリアさんのタグプレート、見たいです!」

「ダーメ。そんなん見せたら、私の登録年月日まで見せちゃうことになるでしょ。てゆか、ライト君? 君、まさか……私の歳を知りたい!とか言うんじゃなかろうね?」

「あッ、そ、それは……はい、ごめんなさいです……」

「うむ、分かればよろしい」

ギロリ!と睨みつけるヴァレリアの凄まじい圧に、ライトはあっさりと引き下がった。

確かにヴァレリアの言う通りで、タグプレートにはギルドに登録した年月日が刻まれる。

それだけではない、登録した場所や本名も記載される。

それを見たいとねだるのは、即ちヴァレリアの個人情報を曝け出せ!と迫るに等しい行為に他ならない。

もっともヴァレリアの場合、個人情報云々以前にただ単に年齢バレしたくないだけのような気もするが。

そしてライトの方も、女性の年齢を暴くなどという愚行は絶対にしない。

特にヴァレリア相手にそんなことをしようものなら、彼女との今後の付き合いに多大な悪影響が出てしまうことだろう。

ライトにはこれからもヴァレリアの助言は絶対に必要だし、ヴァレリアの地雷を踏み抜いて嫌われる訳にはいかないのだ。

ライトの理解を得られたことに、フフン☆と満足げに頷くヴァレリア。

どうやらそこまで機嫌を損ねるには至らなかったようで、ライトも内心で安堵している。

機嫌が直ったヴァレリア、今度はミーナやルディに声をかけた。

「あ、ねぇねぇ、ミーナ達のお使いの成果はここにあるだけなの? お使いのアイテムって、食べ物以外にも多少は出るよね?」

『あ、はい、一応あります!』

『今から出しますねー』

ヴァレリアの催促に、ミーナ達がはたとした顔で応じる。

二人は早速収納魔法を開き、それぞれいくつかのアイテムを取り出した。

『私達には、これがどういったアイテムなのか、よく分かりませんが……』

『パパ様のお役に立てそうですか?』

ミーナ達がおそるおそるといった表情でライトの顔を覗き込んでいる。

一方でライトは、明らかに目を輝かせていた。

「おお、これは……幸運のお守りに、ハゲ運まである!?」

「あ、こっちはCP箱!わーい!CP箱なんて、見るのも久しぶりだー!」

「そこにあるのは、スキル書!? うん、スキルはいくつあってもいいよね!」

「うおお、 古(いにしえ) の禁呪だ!コヨルシャウキさんとのビースリー訓練の時に使おうっと!」

大はしゃぎしながら、ミーナ達の成果を喜ぶライト。

エネルギードリンクやエクスポーションなどの定番アイテムの他にも、かなり貴重なアイテムが複数見受けられるようだ。

大事な主が大喜びしているのを見て、ミーナ達もホッ……とした顔をしている。

そしてミーナ達に、ミーアやヴァレリアが労いの言葉をかける。

『皆、ライトさんに喜んでもらえて良かったですね』

『はい!あれから毎日ずっと、何回もお使いに出かけた甲斐がありました!』

『パパ様のお誕生日のプレゼント、こんなに喜んでもらえて嬉しいです!』

『レアも頑張って良かったです!』

「ホントホント、君達全員、かなーりアイテム運がいいね。これは君達のご主人様であるライト君の日頃の行いの良さと、ライト君を慕う君達の思いの強さのおかげかな?」

『『『はい!!』』』

二人の姉からの労いに、ミーナ達の顔が花咲くように綻ぶ。

ちなみにCP箱はミーナが、スキル書や『古の禁呪』と呼ばれるドーピングアイテムはルディが、そして『激運のお守り』(通称:ハゲ運)はレアが拾ってきたらしい。

それらの成果の主を知ったライトが、全員を手放しで褒め称えていた。

するとここで、ヴァレリアが動き始めた。

彼女もまた収納魔法を開き、何やらガサゴソと漁っている。

「さて、そしたら私からもライト君に何かプレゼントしないとね」

『そうですね、私も一応用意してあるんですよ』

「えッ!? ミーアさんやヴァレリアさんまで、ぼくに誕生日プレゼントをくれるんですか!?」

「もちろんさ!誕生日パーティーに手ぶらで来るほど、私は間抜けではないよ? ねぇ、ミーア?」

『ええ。ライトさんのお誕生日ですもの、私達だってお祝いしたいのです』

「……ありがとうございます……」

ヴァレリアとミーナ、二人の心遣いにライトが感激してる。

使い魔であるミーナ達だけでなく、ミーアやヴァレリアからもプレゼントをもらえるとは、正直ライトは夢にも思っていなかったのだ。

『では、私から先に行かせていただきますね。私のは本当に大したものではないので、ライトさんのお気に召すかどうか分かりませんが……』

「そんな!ミーアさんがくれるものなら、ぼくは何だって嬉しいです!」

『うふふ、ライトさんは本当にお優しいですねぇ』

ミーアが照れ臭そうに笑いながら出してきたのは、刀緒だった。

茶色の組紐の先に金糸の房が二つ付いていて、渋さの中にも絢爛さを感じさせる逸品だ。

それを見たライト、息を呑むように見入っている。

「すごい……綺麗な飾りですね……」

『以前ライトさんに見せてもらった、ガンメタルソード、ですか? ライトさんが新たに得た武器に合うよう、作ってみたのですが……どうでしょうか?』

「すっごく嬉しいです!早速ガンメタに付けてみますね!」

ライトが刀緒を握りしめたまま大急ぎで席を立ち、テーブルから少し離れたところでマイページを開いてガンメタルソードを取り出した。

そしてガンメタルソードの持ち手のところに、いそいそと刀緒を括りつける。

ミーアの作った刀緒を付けたガンメタルソードは、格好良さが何杯も増した気がする。

「うわぁ……すっごくカッコいい……」

『気に入っていただけましたか?』

「もちろんです!このガンメタルソードといっしょに、一生大事にします!」

『うふふ、それは私にとっても光栄なことです』

心から喜んでいるライトに、ミーアも嬉しそうに微笑む。

聞けばこの刀緒、ヴァレリアに頼み込んで材料を買ってきてもらって、ミーアが手ずから作ったのだという。

巫女さんが作ったハンドメイドアクセサリーだと思うと、霊験あらたかでご利益がすごくありそうだ。

「ミーア、ライト君に喜んでもらえて良かったねぇ」

『はい。これも全て、ヴァレリアさんのおかげです』

「いやいや、私は頼まれた材料を買ってきただけに過ぎないさ。……さて、そしたら大トリは私かな!」

さっきから収納魔法を漁っては「あれ、コレじゃない」「ン、コレも違う」とぶつくさ言いながら、ライトへのプレゼントを探していたヴァレリア。

やっと本命を見つけたようで、収納魔法から一枚の紙のようなものを取り出した。

「私からのプレゼントは、これだよ」

「こ、これは……ッ……」

ヴァレリアがライトに手渡したもの、それは『エネルギードリンク1グロス』と書かれたチケットだった。

このエネルギードリンク1グロス、以前にもヴァレリアから譲り受けたことがある。

それ一つでエネルギードリンクが144本も得られるという、正真正銘スペシャルなアイテムである。

そしてこのエネルギードリンク1グロス、先日の七夕イベントでエリクシル獲得を優先したために泣く泣く諦めたアイテムてもあった。

それをまさか、誕生日プレゼントとしてもらえるとは思っていなかったライト。

輝くような笑顔でヴァレリアに礼を言う。

「ヴァレリアさん、ありがとうございます!グロスをもらえるなんて、すっごく嬉しいです!」

「フフフ、喜んでもらえて私も嬉しいよ。というか、私がライト君にしてやれることなんて、これくらいしかないけどね」

「そんなことないです!ヴァレリアさんには、いつも助けてもらってますもん!」

「うんうん、ライト君は本当に謙虚で良い子だ。だからこそ私も、ライト君のことを応援したくなっちゃうんだよねー」

超貴重なアイテムをもらえて大喜びするライトに、ヴァレリアも満足そうに笑う。

ライトはライトで、ヴァレリアからの応援を本当に嬉しく思う。

このサイサクス世界で、ライトが本当に心を許せる相手というのは実は少ない。

それはひとえに、ライトが持つ勇者候補生という特殊な立場故。今でこそレオニスやラウル、マキシもライトが勇者候補生であることを知った。

それでもまだライトは、BCOの全てをレオニス達に話せてはいない。この秘密を埒内の者達相手に全て明かすには、まだまだ時間がかかるだろう。

ライトの秘密である勇者候補生という特殊な事情は、それ程に重たいものなのだ。

その点ヴァレリアやミーア達は、ライトが勇者候補生であることを最初から知っている。

いつもは誰にも言えないBCOの話も、彼女達なら心置きなく話すことができる。

この掛け替えのない仲間達との交流を、これからも大切にしていこう―――ライトは改めて心に誓ったのだった。