軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1569話 転職神殿の兄弟姉妹達の絆

カタポレンの家の自室から、転職神殿に移動したライト。

転職神殿の中には、ミーアとレアがいた。

『あッ、パパ!こんにちは!』

『まぁ、ライトさん、ようこそいらっしゃいました』

「レア、ミーアさん、こんにちは!」

ライトを見つけて真っ先にすっ飛んできたレアに、レアの後を小走りで追いかけてきたミーア。

ライトは自分の胸に飛び込んできたレアを抱っこしながら、ミーアにも挨拶をした。

そしてキョロキョロと何かを探すように、ライトがしばし周囲を見回している。

「あれ? ミーナとルディはお出かけ中ですか?」

『ええ。しばらく前から、ライトさんへの誕生日プレゼント探しに勤しんでおりまして。今日も『主様の喜びそうなものを見つけるぞー!』『パパ様のお誕生日を祝うに相応しいアイテムを拾ってくるぞー!』と、それはもう意気込んで出かけました』

「ぁー……そういえば前回ここに来た時に、ミーナとルディがそんなことを言ってましたね……」

嫋かな笑みを浮かべながら、ここにいない弟妹のことを話すミーア。

すると、ライトの腕の中で抱っこされているレアも、ライトの顔を見上げつつ話しかけた。

『私も!パパのお誕生日のプレゼントを探してます!でも、ミーア姉様が一人ぼっちになってしまってはいけないので、ミーナお姉様とルディ兄様と交代でお留守番してるのです!』

「そっか。レアもミーナもルディも、皆とても良い子で偉いね」

『はい!私達は皆、パパのことが大好きですから!』

一生懸命に自分も頑張ってアイテム探しをしていると主張するレアに、ライトが嬉しそうに微笑みながらレアの頭を優しく撫でる。

レアもミーナもルディも、ミーアと血の繋がった本当の兄弟姉妹ではない。種族もバラバラだし、そもそも転職神殿専属巫女であるミーアとレア達ライトの使い魔では担う役割からして全く違う。

しかし、転職神殿という鄙びたこの場所で四人が仲良く思い遣りを持って暮らしているのは、ライトにとってもとても嬉しいことだ。

『ライトさん、今日はいつまでいられるのですか?』

「お昼になる少し前には、帰らなきゃならないんですけど……あと四時間もあれば、ミーナ達も一度帰ってきますよね?」

『そうですねぇ……二人とも朝早くから出かけたので、もう少ししたら帰ってくると思います』

「じゃあ、ミーナとルディが帰ってくるまで待たせてもらおうかな。……あ、そしたら待っている間に幻の鉱山に行っておこうかな!」

ミーナとルディが帰ってくるまで待つことにしたライト。

せっかく誕生日当日に転職神殿に来れたのだから、ライトとしてもミーナ達に何としても会っておきたい。

それは、決してミーナ達のプレゼントが欲しい!という訳ではない。

自分のためにアイテム探しを頑張ってくれている健気なミーナとルディに、直接礼を言って褒めてあげたいのだ。

しかし、ここで何もせずにただボケーッ……と待つのは能がない。

待ち時間を有効活用できるような、何か良い手はないものか……と考えたライト。そこで思いついたのが『幻の鉱山に行く!』であった。

その最たる理由は、拘束時間が短いことが大きい。

幻の鉱山は、特殊アイテム『幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョン』を使用して『幻の鉱山』という異空間に移動する。

そして移動した先でもツルハシを使用し、様々な鉱物を採掘できるのだが、幻の鉱山に滞在できる時間は三十分。

三十分程度なら、いつ帰還するか分からないミーナ達を待つ間の暇つぶしにもってこいだよね!という訳である。

「ミーアさん、ぼく、今から幻の鉱山に行ってきますね!」

『幻の鉱山というと、以前ミーナを助手に連れていったアレですか?』

「そうですそうです、鉱物や鉱石が三十分間採り放題になるアレです」

『分かりました。』

ライトが幻の鉱山に行くと宣言し、早速マイページを開いてアイテム欄から『幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョン』をいそいそと取り出す。

すると、ライトが幻の鉱山行きの準備をしている間に、ミーアがレアに声をかけた。

『そしたらレア、貴女の出番ですよ』

『私の出番、ですか?』

『そうです。ライトさんは今から『幻の鉱山』という場所に出かけて、たくさんの鉱物を拾うお仕事をなさいます。レアはライトさんといっしょにお出かけして、鉱物を拾うお手伝いをしてくるのですよ』

『パパのお手伝いができるのですか!?』

優しく語りかけるミーアの言葉に、レアがつぶらな瞳を大きく見開きながら歓喜している。

レアはこれまで、ライトのために何か役に立てるようなことはまだ一度もできていない。

そんな自分が、ようやくパパのために働くことができる!そう思うと、レアの胸は躍るばかりだ。

興奮気味に頬を紅潮させて喜ぶレアに、ミーアが微笑みかける。

『ええ、そうですよ。今ここには、ミーナもルディもいませんからね。ライトさんのお手伝いができるのはレア、貴女を於いて他にはいないのです』

『分かりました!私、お手伝いをいっぱい頑張ります!』

『お手伝いだけでなく、ライトさんの護衛もよろしくお願いしますね』

『お任せください!パパのことは、私が絶対に守ります!』

ミーアから託された重大な任務に、レアがフンス、フンス!と鼻息も荒く張り切っている。

幻の鉱山には敵モンスターは涌かないし、戦闘要素も一切ないので護衛など全く必要ないのだが。

そこはレアのやる気に水を差すことのないよう、ライトも敢えてわざわざ指摘するような野暮なことはしない。

「レア、ぼくのお手伝いと護衛をよろしくね!」

『はい!パパのお役に立てるよう、全身全霊全力で頑張ります!』

「フフフ、ありがとうね。そしたらレア、ぼくの背中とか足とかどこでもいいから、くっついててくれる?」

『はい!』

ライトの改まった挨拶に、レアも元気よく返事を返す。

そしてライトの指示に従い、レアがライトの右足をギュッ!と抱きしめるようにくっついた。

幻の鉱山行きが準備万端整ったライト。幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョンを真上に振り被りながら、ミーアに声をかけた。

「じゃ、ミーアさん、いってきます!」

『お気をつけていってらっしゃいませ』

「もしミーアやルディの方がぼくより先に帰ってきたら、ちょっとだけ待っててくれるように言っといてくださいね!」

『畏まりました。ご武運をお祈りしております』

ライトが真上に振り被ったツルハシを一気に下ろし、何もない空間を一刀両断で切り裂く。

次の瞬間、ライトとレアの姿は転職神殿の敷地内から消えて、幻の鉱山と呼ばれる異空間に移動していた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトとレアが幻の鉱山に出かけてから三十分後。

二人は採掘を終えて、無事サイサクス世界に戻ってきた。

『ライトさん、レア、おかえりなさい』

「ミーアさん、ただいまです!」

『ミーア姉様、ただいま戻りましたー!』

ミーアの出迎えに、ライトとレアが破顔しつつ帰還の挨拶をする。

ライト達を出迎えたのは、ミーア唯一人。まだミーナとルディはお使いから帰ってきていないようだ。

『ライトさん、幻の鉱山でたくさんのアイテムを得られましたか?』

「はい!おかげさまで、いつもと変わらないくらいたくさんの鉱物が採れました!ていうか、レアが本当によく頑張ってくれて、すっごく助かりました!レア、本当にありがとうね」

『えへへ……パパのために、すっごく頑張りました……』

レアの働きを大絶賛するライトに、レアが照れ臭そうに微笑む。

ライトのレアを絶賛する言葉は、決してお世辞や御為ごかしではない。本当にすごい働きぶりだったのだ。

レアは草木の精霊。その能力を活かし、幻の鉱山の地面から複数の蔓を生やし、ライトがツルハシで削り出した鉱物を素早く拾い上げて、ライトが地面に置いたアイテムリュックに次々と収納していったのだ。

異空間の、しかも鉱山の地面に植物の蔓を生えさせることができるとは、ライトも全く予想していなかった。

さすがはBCOの使い魔だけのことはある。

『レア、ライトさんのためによく頑張りましたね』

『はい!パパに喜んでもらえて、とっても嬉しいです!』

ミーアが 末妹(レア) の頑張りを褒め称える。

長姉(ミーア) の褒め言葉は、レアにとってものすごく嬉しいこと。

ライトの役に立つだけでなく、ミーアにまで褒めてもらえたことにレアの笑顔はいつにも増して輝いている。

するとここで、転職神殿の敷地内に誰かが入ってきた。

それは、お使いに出かけていたミーナだった。

『ただいまでーす!……って、あれ!? 主様がいらっしゃる!?』

「あ、ミーナ、おかえりー」

『主様、いらしてたんですねー!イヤーン、そうと知っていれば今日はお出かけしなかったのにー!』

「ごめんね、ぼくも今日は来れないと思ってたんだけど……今日のお昼まで自由時間ができたから、急いでここに来たんだ」

『主様が謝ることなどありません!お誕生日の当日なのに、ここにも足を運んでくださるなんて……すっごく嬉しいです!』

ライトの来訪に、驚きつつも喜ぶミーナ。

今日はまだ会えないと思っていたライトに会えたのだ、ミーナが小躍りしそうな程に喜ぶのも無理はない。

そしてミーナの帰還から間を置かずに、ルディも帰ってきた。

『ただいまでーす!……って、あれ!? パパ様がいらっしゃる!?』

「あ、ルディもおかえりー」

『パパ様、いらしてたんですねー!うわーん、そうと知っていれば今日はお出かけしなかったのにー!』

「アハハハハ……ルディもミーナと同じことを言うんだね」

先程帰還したばかりのミーナとほぼ同じことを叫ぶルディに、ライトが苦笑いする。

ミーナとルディ、血の繋がりこそないものの言動がコピペ並みに似通うのは、姉弟としての絆の深さの証か。

そこに笑顔のミーアが帰還した弟妹を労う。

『ミーナ、ルディ、おかえりなさい』

『ミーアお姉様、ただいまです!』

『ミーア姉様、ただいま戻りました!』

『ライトさんがこうして今日、わざわざここを訪ねてきてくださったのですから、早速皆でライトさんのお誕生日をお祝いしましょう。ミーナとルディも、お茶の準備を手伝ってくださいね』

『『はい!』』

ライトの誕生日を祝おうというミーアの提案に、ミーナとルディが一も二もなく快諾する。

二人ともお使いから帰ってきたばかりで、それなりに疲労も溜まっているだろうに。

しかし、今の二人に疲れなど微塵もない。

ライトの十歳の誕生日を、この転職神殿でライトとともに祝える―――その喜びだけで、ミーナとルディは疲れなど吹っ飛んで歓喜に満ち溢れていた。

ルディが収納魔法で仕舞っていたテーブルを取り出し、人数分の椅子も取り出してテキパキと置いていく。

ミーナも同じく収納魔法からティーポットやティーカップを取り出し、人差し指を立てて空中に水の球を出してお湯に熱してお茶を淹れる。

ミーアはルディが取り出したテーブルクロスをいっしょに敷いたり、ライトがアイテムリュックから出したお茶菓子を人数分の皿に取り分けたりしている。

そうして転職神殿でのライトの誕生日を祝うパーティーが始まっていった。