軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1562話 素材集めと素材作り

ライトが転職神殿で楽しい一日を過ごし、レオニスが東のオーガの里近辺で大活躍した翌日以降は、しばらく平和な日が続いた。

と言っても、ライトは濃縮ギャラクシーエーテル作りの材料集めに日々奔走していたのだが。

翌日の午前中に単眼蝙蝠狩り、午後はノーヴェ砂漠でサンドキャンサー狩り。

その翌日には午前中は螢光花、紫牙蘭、暗黒花、赤棘花等の植物系魔物の採取、午後は聖魔の泉、黄泉路の池、巌流滝等の水場巡りで水の採取。

頻繁に行く水場には、ヴァレリアにもらった瞬間移動用の魔石を近くに埋めていつでも移動できるようにしてある。

そのまた翌日には、転職神殿で暗黒蜂や砂漠蟹、荒原鷹などの解体作業にも勤しんだ。

ミーナやルディ、レアに手伝ってもらう解体作業はものすごく捗り、何よりとても賑やかで楽しかった。

これら一連の作業は、全てギャラクシーエーテル作りのため。

ギャラクシーエーテル五百個を作り上げるには、各材料一つにつき最低でも千個以上、物によっては数万個も用意しなければならない。

途方もない必要量は、数字を見るだけでも目眩がしそうである。

しかし、今のライトは非常にご機嫌だ。

何しろ今は夏休みなので、日が明るいうちは自分の好きなことを好きなだけできる。

普段は土日にしかできないクエストイベントの材料集め、そのための遠出だって可能だ。

ラグーン学園での学園生活も楽しいが、やはり好きな時に好きなだけ冒険できるのは良いなぁ、とライトは心から思う。

そうして充実した日々が過ぎた、とある日のこと。

この日のライトは、一切遠出せずにラグナロッツァの屋敷の自室で作業をしていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「♪もぅーーー、ひぃーーーとつ、寝ぇーーーるぅーーーとぉーーー、たぁーーーんーーーじょーーーおぉーーーびぃーーー♪」

ラグナロッツァの屋敷のライトの部屋から、それはそれはご機嫌なライトの替え歌が聞こえてくる。

夏真っ盛りのこの時期に似つかわしくないメロディーだが、一番大事なのはそこではない。

この日は八月十一日。そう、ライトの誕生日の前日なのである。

この日のライトが何故全く遠出せずに、自室に引き篭もって作業しているのかと言えば、ひとえに十歳の誕生日という明日を無事迎えるため。

今日ノーヴェ砂漠や【呪われた聖廟】なんかに出かけて、万が一にも怪我をしたり不測の事態に陥る訳にはいかないのだ。

こういう時には、一歩も家から外に出ないに限る!のである。

しかし、魔物狩りに出かけないからといって、することが何もない訳ではない。

ライトが鼻歌交じりで何をしているのかというと、それは『ぬるぬる作り』と『ねばねば作り』である。

ギャラクシーエーテル作りに必要な材料の中には『茶色のぬるぬる』『黒色のねばねば』『緑のねばねば』がある。

これらをライトは『茶色のぬるぬるの素』『緑のねばねばの源』『黒色のねばねばの源』を用いて作らなければならない。

いや、本来ならそれらは各色のスライムを倒して得るものなのだが。このサイサクス世界では、スライム飼育場の売店で粉末状で売られていて簡単に入手できる。

魔物狩りをせずとも、お金を出して材料が入手できるなら絶対にその方が安全だし、こんな便利なアイテムを使わない手はない。

ただし、いくら安全であっても完全に楽ちんできる訳ではない。

『茶色のぬるぬる』は2000個、『黒色のねばねば』は1000個、『緑のねばねば』に至っては5000個も作らなければならない。

これまた気が遠くなるような量だが、そこはライトも手慣れたもので、一回につき200個分の分量で作っている。

特大のバケツを使い、一度に200個分のぬるぬるやねばねばの材料を入れて、粘りが出てくるまでとにかく練り続ける。

最初のうちは木刀などで撹拌していたが、今日はそれも面倒なので右腕や左腕を突っ込んで、自分の手で直接掻き回している。

その方が満遍なく撹拌できて、粘り具合も肌で感じ取ることができるからだ。

その結果、出来上がりが早くて品質も良い仕上がりになることに気づいたのである。

そうして自分の腕で撹拌し続けること約五分。

出来上がったものをバケツから取り出して、そのままマイページのアイテム欄に放り込む、というか流し込む。

そうすると、マイページの方で『○○のねばねば 200個』と自動的に換算してくれるのだ。

もちろんマイページから出す時には、1個単位で数量指定して取り出せる。なかなかに有能なマイページである。

この日のライトは、特大バケツ相手に何度もえっちらおっちらとぬるぬる作りやねばねば作りに勤しんだ。

その回数、何と四十回。使用した水の量は2000リットルにも及んだ。

材料投入からマイページ収納まで、一回あたりの作業時間が七分程度。

違う色の作成作業に移る前に腕をよく洗ったりもしたので、そうしたロスタイムを加味すると約五時間作業し続けたことになる。

今日のうちに作っておきたい全てのぬるぬる、ねばねばを作り終えたライト。

右腕にへばりつく緑のねばねばを、濡れたタオルで繰り返し拭いてからベッドに倒れ込んだ。

「はーーーッ!ひとまずこれで、ギャラクシーエーテルのぬるぬるとねばねばは全部作ったぞー!……って、すんげー疲れた……」

ふとライトが窓の外を見ると、空がほんのりと茜色を帯びてきている。

午前中はスライム飼育場に出かけてぬるぬるやねばねばの買い出しをし、昼食をカタポレンの家でラウルやラーデとともに食べてからの作業だったので、もうすっかり夕方になっていた。

「はーーー……明日はとうとう冒険者登録できるんだ……」

「このサイサクス世界で冒険者になれるなんて、夢みたいだけど……夢じゃなくて現実なんだよな」

「現実だからこそ、死んだらお終いだもんな。いくら俺が勇者候補生であっても、BCOみたいに死なないキャラな訳じゃないし。油断も慢心も絶対にしないように気をつけなくっちゃな」

ライトはベッドの上で仰向けに寝転がりながら、まだ十歳の小さな己の手をじっと見つめる。

明日になれば、いよいよ冒険者登録ができる。

待ちに待った瞬間が、あと半日後に迫ってきているのだ。

「……そしたら今日はいつもより早くに寝て、朝イチでディーノ村の冒険者ギルドに行こうっと!」

ライトが勢いよくベッドから飛び起きた後、自室を飛び出して転移門がある旧宝物庫に向かう。

今日は早く晩ご飯を食べて、早くお風呂に入って、早く寝なくっちゃ!と今から意気込むライト。

彼の長年の夢が叶う時が、すぐそこまできていた。