軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1547話 東の里の四人のオーガ

怪しい大岩の対処を終えたレオニスが、この近くにある東のオーガの里に向かう。

最初のうちは空を飛んでいたが、相手を驚かせてはいけないと思い直し、地面に降りて森の中を普通に歩いていくことにした。

かなり高い上空から辺りを見渡した際に、ちらっと見えた東のオーガの里。

駆け足で向かえば、十分程度で到着するだろう。

ただし、ここで言う『駆け足』とは絶対に常人のそれではないのだが。

森の中を駆けながら、レオニスが頭の中で思案する。

レオニスは、ラキ達中央の里のオーガ族とは懇意にしているが、東のオーガの里に入ったことはない。

いや、過去にはレオニスの方から東のオーガの里を訪ねてみようと思ったことがあった。

それは、レオニスがこのカタポレンの森に住むようになってからしばらくしてのこと。

この広大なカタポレンの森の中の、どの辺りにどんな種族が住んでいるかをレオニスは把握しておく必要があった。

その実地調査の一環で、東のオーガの里にも立ち寄る予定だった。

しかし、レオニスが里に近づいた時に東の里のオーガ達に素気無く追い返されてしまったのだ。

「人族が一体何の用だ」

「我らがちょっと撫でただけで圧し折れるくせに」

「ひ弱な人間なんざ帰れ帰れ」

人族(レオニス) を見て、あからさまに見下してくる東の里のオーガ達。

東の里のオーガ達は、ラキ達中央の里のオーガ達とは若干姿が異なる。

体格はやや小柄で、成人男性の平気身長は約400cm。

肌は砂色、髪は青鈍色で全体的にモノクロカラーなのだが、瞳だけが赤系の蘇芳色でとても目立つ。

今のレオニスなら、先程のようなことを言われたら「何だとぅッ!?」とか言いながら食ってかかるところなのだが。

当時のレオニスはカタポレンの森の生態調査?に忙しく、一種族だけにあまり時間をかける余裕はなかった。

なので、当時は『あー、こいつらはこういう奴なのね、はいはい了解ー』とか思いながら早々に撤退した。

こいつらとどうしても仲良くなりたかったら、また後で来りゃいいや―――レオニスはそんなことを思いつつ、結局は今日までそれが実現していない。

というのも、東のオーガと仲良くなる前に中央の里のラキやニル達と懇意になっていったので、それで満足してしまったという側面も少なからずある。

レオニスはそんな過去の記憶を思い起こしながら、さて今回はどのようにして接触すべきかを思案していた。

前回みたいに追い返されたら、ニルの娘家族には会えない。

それでは目的達成できないので、何なら敢えて囚われの身にでもなって中に潜入した方が早いか?などと、なかなかに物騒なことを考えている。

するとここで、前方から人の気配と大きな足音が聞こえてきた。

東のオーガの集団である。

比較的若い年頃のオーガが三人と、それを率いる壮年の年長者の計四人の男性で固まって歩いている。

リーダーと思しき壮年のオーガは、その手に釘バットなような凶悪な鉄の棍棒を持ち、他の者も石斧や大きな頭陀袋を手にしている。

どうやら今から狩りに出かけるところのようだ。

こりゃちょうどいい、とばかりにレオニスがオーガ達に声をかけた。

「よう、今から狩りにお出かけか?」

「……何だ、貴様?」

「他所者が我らの縄張りで何をしている」

「これ以上先に進むことは許さん」

「俺らが見逃してやっているうちに帰れ」

敵意剥き出しでレオニスを睨みつける東のオーガ達。

この程度の威圧など、今のレオニスには通用しない。

レオニスは涼しい顔でオーガ達に話しかけ続けた。

「あー、すまんが俺もそう言われてハイ、ソウデスカ、と素直に帰る訳にはいかなくてな。今日は東のオーガの里に用事があって来たんだ」

「人族が我らの里に用事だと? 笑止。我らに人族の知り合いなどいないし、馴れ合うこともない」

「だろうなぁ」

レオニスに対し、他所者への不快感を隠すことなく威圧的な態度で出てくるオーガのリーダー。

三人の若者を庇うようにして、自らが矢面に立ちレオニスの前に立ちはだかる。

レオニスへの不躾な威圧はともかく、年若い者達の身の安全を図るその態度はリーダーとして好ましい。

レオニスもその男の意図は分かるので、あくまで穏やかな態度を崩さずにいた。

「あんた達が閉鎖的な種族だってのは、俺も一応知ってる。……だが、今日はそう簡単に引き下がってやらんぞ。中央の里の長老ニルの娘、ベスに会うまではな」

「「「「!?!?!?」」」」

レオニスの口から思わぬ言葉が飛び出してきたことに、四人のオーガ達の顔が喫驚に染まる。

「何故貴様が我が里の者の名を知っている!? 中央の里の長老の名まで出すとは……貴様、一体何者だ!」

「俺の名はレオニス、見た目通りの人族で中央の里では長老のニルや族長のラキとも懇意にしている」

「「「「…………」」」」

事も無げに語るレオニスの話に、四人のオーガ達は全員固まっている。

人族の分際でオーガと知己を得るなど、彼らでなくとも俄には信じ難いことだ。

しかし、中央の里の長老や族長の名前を違わずに言えている時点で、何らかの繋がりがあることは明白だ。

するとここで、リーダーが若者の一人に指令を出した。

「おい、ガイ達三人をここに連れてこい。こいつの話が嘘か本当か、あの三人に会わせればすぐに分かる」

「分かりました!」

リーダーの指示に従い、年若いオーガが全力で東の里に戻っていく。

ドスドスドスドス……というオーガの全力疾走を尻目に、オーガのリーダーがレオニスに向けて再び威圧的な視線を向けた。

「貴様はここで待っておれ。中央の里の者達に貴様を見せれば、貴様の騙りなどすぐに露呈するであろう」

「別にいいけどよ」

リーダーの目配せで、残った若者二人がレオニスを取り囲んだ。

事の真偽が判明するまで、不審者を逃すまいとする策なのだろう。

ジリジリとした真夏の暑い空気と、一触即発とまではいかないがかなり緊迫した重たい空気がレオニス達を包む。

先程東の里に駆け出していった若者が戻ってくるまで、重苦しい空気が続いた。