軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1542話 七つ目の職業

使い魔三体と楽しそうに会話しているライトに、ミーアが改めて声をかけた。

『ライトさん、本日はどのようなご用件でいらっしゃったのですか? もしかして、四次職をマスターなさったのですか?』

「あ、はい、そうなんです!こないだようやく【獣魔拳帝】の習熟度がMAXになったんです!」

『それは素晴らしいですね。おめでとうございます』

「ありがとうございます!」

ミーアの祝いの言葉に、ライトが嬉しそうに破顔する。

ライトが闘士職に転職したのは、今年の二月末頃。

そこから五ヶ月と少しかかったが、何とか六個目の四次職をマスターすることができた。

これは、過日ライトが七夕イベント『七夕・笹魔人を倒して神寄の短冊を集めよう!』をすることを決意し、精力的にこなしたことが大きい。

イベント開催期間の二週間の間、土日休みはもちろんのこと平日の朝と夕方も寸暇を惜しんでササニシキ村の笹魔人を倒し続けた。

そのおかげで、四次職の超困難な職業習熟度上げがかなり捗ったのだ。

もともとは気分転換のために選択した季節限定イベントだったが、そのついでに【獣魔拳帝】の習熟度上げにもなって本当に良かった!とライトは思う。

『ライトさん、次は何の職業に転職するか、もう決めてあるのですか?』

「それがまた悩ましいところなんですよねー……」

ミーアの問いかけに、ライトが悩ましげに唸る。

BCOには六つの職業があり、最終職業である四次職は光系と闇系に各一種類づつある。

ライトは六つの職業を一通り着手したので、七つ目の四次職に何を選ぶかをずっと迷っていた。

そんなライトに、ミーナ達も話に加わってきた。

『主様は、MPがとても多いんですよね?』

「うん、転職でレベルリセットしてレベル1になってもMP5000以上あるよ」

『ならば、魔法使いを極めてみては如何ですか? それだけ大量のMPがあるなら、魔法系スキルも使い放題でしょうし』

「そうだねー……」

ミーナのなかなかに鋭い助言は、ライトも一理あると思う。

前世でBCOを遊んでいた時のライトは、物理至上主義者だった。

魔法スキルは外しやすいけど、物理系必中スキル【手裏剣】なら絶対に攻撃を外さないし!

とりあえず、モンスターは全部【手裏剣】でブン殴っときゃなんとかなるっしょ!という、レオニスを上回る程の典型的な脳筋だったのだ。

だが、今のライトは文字通り『MPお化け』であり、体質的には魔法使いや魔術師寄りである。

潤沢なMPがあれば、魔法系攻撃スキルを思う存分放つこともできる。

前世では全く見向きもしなかった魔法職だが、今世では極めてみてもいいかもしれない―――ミーナの言葉を受けて、ライトもそう考え始めていた。

「……よし!そしたらミーナの言う通り、魔法職を極めようかな!」

『主様、素晴らしいですぅー!』

『パパ様、どの魔法職を極めるのですか?』

「そうだなー……ここはやっぱ、魔法攻撃スキルをたくさん覚えられる魔術師系かなー」

魔法職を極める決心をしたライトに、ミーアが改めて質問をする。

『魔術師系というと……以前ライトさんがマスターしたのは、光系の【魔導大帝】でしたよね?』

「はい。なので、今回は闇系の方を習得しにいきます!」

『分かりました。では、祭壇の方に行きましょうか』

「はい!」

進む道を決めたライトに、ミーアが優しく微笑みながら手を差し伸べる。

ライトはミーアの白くて嫋かな手を取り、二人で祭壇の前に立った。

『転職すると、レベルが1にリセットされます。所持金、装備品、アイテム、スキル、職業習熟度はそのまま持ち越されますので、ご安心ください』

「はい」

『どの職業に転職なさいますか?』

「【魔術師】でお願いします!」

転職時にミーアが必ず述べる注意事項、これを聞いた後に職業選択が問われる。

その選択に従い、ミーアが祭壇に祈りを捧げるとライトの職業が変更されるのだ。

ミーアが祈りを捧げた直後、ライトは己の身の内に流れる大きな力のうねりを体感する。

物理的な力に漲っていた【獣魔拳帝】から【魔術師】への転職は、強大な力の鎖から解き放たれる代わりに膨大な魔力の渦が湧き起こるような感覚だ。

『転職の儀は無事完了いたしました』

「ありがとうございます!」

マスターした四次職から、別の職業の一次職に転職を終えたライト。

息つく間もなく、ミーアがライトに問いかける。

『【魔術師】の次は、どちらを選択なさいますか?』

「【妖術師】でお願いします!」

先程ライトが選択した【魔術師】は、魔術師系の一次職。

一次職は各職業一つづつあり、二次職で光系と闇系に分岐していく。

ライトは魔術師系一次職を既に習得済みなので、一次職の次の段階である二次職にすぐに転職できる。

そして、今回ライトが選んだのは【妖術師】。魔術師職の闇系二次職である。

この【妖術師】をマスターしたら、三次職の【大魔導師】もしくは【死霊術師】を選び、最終的には魔術師闇系四次職【魔人ノ王】を目指すのだ。

「はーーー……ぼくの職業マスターの修行も、これでようやく半分ですね」

『そうですね。十二種類の四次職のうち、六種類をマスターした訳ですから、ちょうど折り返し地点ですね』

「まだあと六つもあるんだー……しかも、まだ取りきれていない三次職もたくさんあるし」

転職の儀を終えて、ふぅー……と深いため息をつくライト。

ミーアの言う通り、四次職だけで見ればここが折り返し地点。

しかし、二次職からさらに分岐する三次職は全二十四種類。

それら全てをマスターしなければ、BCOの職業システムを極めたことにはならないのである。

まだまだ長い道のりに、思わずため息が出るライトにミーアが微笑みながら励ます。

『フフフ、四次職だけでなく全ての職業を完全網羅してこその勇者ですものね』

「アハハハハ……でもぼくは、勇者にはなりませんけどね?」

『ええ、ライトさんの人生はライトさんがお決めになること。でも……将来勇者にはならずとも、ライトさんが勇者候補生であることに変わりはありませんから。ここにいる私達は皆、これからもずっとライトさんを陰に日向に支えていくつもりです』

「……ありがとうございます……」

勇者という言葉に過剰反応気味なライトだが、ミーアがそれに反論したり諌めることはない。

今のミーアには、ライトが勇者になってもならなくてもどちらでもいい。

勇者候補生という資格を持つライトを支える―――それこそが、転職神殿の専属巫女ミーアの取るべき道であり使命なのだから。

そして、いつにも増して穏やかで優しい空気をまとうミーアに、ライトが照れ臭そうに礼を言う。

これまでミーアさんには、何度も勇者扱いされてきたけど……やっと諦めてくれたのかな? だとしたら嬉しいな!

だって俺、勇者なんて器じゃねーもん。俺みたいな小心者が勇者なんぞに祭り上げられたら、そりゃ世も末ってもんだ!

そんなことをつらつらと考えていたライトだったが、ふと とあること(・・・・・) を思い出し、ミーアに話しかけた。

「さて……そしたらもうそろそろ あの人(・・・) が来ますかね?」

『ええ、おそらくは間もなくいらっしゃるかと思いますよ』

「ですよねー!」

ライトの呟きに、ミーアが小さく笑いながら同意する。

二人ともそれが誰とは言わないし、具体的な名前も挙げてはいないが、二人が考えている人物は間違いなく同じであろう。

いつもならここで、ライトの背後から「ヤッホー☆」とか言いながら出てくる『あの人』。

しかし、いつものドッキリを警戒したライトがしばらくキョロキョロと周囲を伺うも、こういう時に限って出てくる気配がない。

そのうち諦めたライトが、改めてミーアに声をかけた。

「じゃあ、あの人がいつ現れてもいいように、今からお茶の支度をしときましょうか」

『そうですね』

今度はライトの方からミーアに手を差し出す。

それはまるで淑女をエスコートする紳士のようだ。

今はまだ幼くて小さな紳士だが、将来はきっと全てにおいて優れた本物の紳士となるだろう。

日々 直向(ひたむ) きに努力し続けてきたライト、その姿をこの転職神殿で間近で見てきたミーナだからこそ確信できる。

二人は手を繋ぎながら祭壇を下り、ミーナ達が待つテーブルの方に歩いていった。