軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1529話 真夏のネツァク

プロステスとツェリザークの梯子という、実に濃密なスケジュールをこなした翌日。

ライトはレオニスとラウルとともに、ネツァクの街を訪れていた。

本日の行き先はノーヴェ砂漠。

その目的はいくつかあって、まずは砂の女王とジャッジ・ガベルのガベリーナに会うこと。

砂の女王とガベリーナには、今年三月下旬に初めて会って以来、まだ一度も再会していない。

そのため、ライトが夏休みの間に親睦を深めておきたい相手の中に、砂の女王とガベリーナも含まれていた。

そして二つ目は、砂の女王達とラウルを引き会わせること。

前回はライトとレオニスの二人だけで出かけたので、ラウルはまだ砂の女王とガベリーナに一度も会ったことがない。

だから今回はラウルも同行して、砂の女王達と知己を得ておこう!という訳である。

冒険者ギルドの転移門を使い、ネツァクの街に移動したライト達。

ここネツァクはノーヴェ砂漠の最寄りの街なので、夏の暑さはアクシーディア公国の中でも屈指を誇る。

冒険者ギルドネツァク支部の建物から出ると、ギラギラとした真夏の日差しが容赦なく地上に降り注いでいた。

「ぅゎー……まだ午前十時前なのに、すっごく暑いねぇー」

「直射日光だけでなく、ノーヴェ砂漠の熱い空気も流れ込んでるからな」

「プロステスとはまた違う暑さだよな」

まだネツァクの街の中だというのに、茹だるような暑さに辟易するライト達。

といっても、ライト達の装備には温度調節機能がついているのでまだマシなのだが。

その後ネツァクの街の外に出て、ノーヴェ砂漠に入ったライト達。

夏のノーヴェ砂漠は、まさに焼けつくような暑さに満ちていた。

「とりあえず、ネツァクの街が見えなくなるまで飛ぶぞ」

「はーい」

「おう」

レオニスの呼びかけに応じ、三人はノーヴェ砂漠の上空を結構な勢いで飛んでいく。

本当はノーヴェ砂漠に入ったら、砂の女王からもらった砂の勲章を空に掲げて呼べば女王達の方から会いに来てくれるのだが。さすがにネツァクの街が見える範囲でそれをする訳にはいかない。

なので、もう少しノーヴェ砂漠の中に入り、人目がつかないところで呼び出すつもりなのだ。

ライト達がノーヴェ砂漠の上空を飛び始めてから、十分くらい経過しただろうか。

ここら辺まで来れば、誰もいないだろ!というところでレオニスが下降し始め、ライトとラウルもそれに続き地上に降りた。

そしてレオニスが徐に空間魔法陣を開き、砂の勲章を取り出して高く掲げながら叫んだ。

「砂の女王、ガベリーナ、見えるか!俺だ、レオニスだ!もし俺達の姿が見えていたら、ここに来てくれ!」

雲一つない、眩しい空に向かって砂の女王達に呼びかけるレオニス。

それから十秒くらい経ってから、突如地面が揺れだした。

ゴゴゴゴ……という地鳴りのような音がするが、それは単なる地震ではない。

ライト達の前の砂が隆起したかと思うと、巨大な城―――ガベリーナが現れた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

突如ライト達の目の前に現れた、巨大な建造物。

その威容に、初めて見るラウルはもちろんライトとレオニスも感嘆しながら見上げている。

「これが、砂の女王の住む神殿か……ご主人様達から話に聞いてはいたが、実際に目の当たりにするとすげーな……」

「だよねー。こんな大きな建物が砂漠の下にいるなんて、誰も思わないよねー」

「前回俺達は、問答無用で巨大な手に鷲掴みされて拉致られたが……まさか今回も、あのデカい手にとっ捕まるんじゃねぇだろうな?」

ライトとラウルはただただガベリーナを見上げ、レオニスはガベリーナの巨大な手を警戒してキョロキョロと周囲を見回している。

前回の出来事―――突然ガベリーナの手にむんず!と捕まえられたことを、何気にレオニスは根に持っているようだ。

すると、ガベリーナの一階の出入口と思しき玄関?から、砂の女王が出てきた。

『レオニスー、ライトー、久しぶりー!』

真上に上げた右手をブンブンと振りながら、笑顔でライト達のもとに駆け寄る砂の女王。

前回初めて会った時には10メートルを超える巨体だったが、今回は160cmくらいの普通サイズだ。

「砂の女王様、お久しぶりです!」

「元気そうで何よりだ」

『ホーント、久しぶりねぇ。もうちょっと早くにまた遊びに来てくれると思ってたのにー』

「すまんな、俺達も何かと忙しいんだ。もとより俺達が住む家は、ここからかなり遠いところにあるんでな」

『別にいいのよー。こうしてちゃんと来てくれたんですものー』

ライト達の来訪を、心から嬉しそうに出迎える砂の女王。

ライト達と再び会える日を、砂の女王は首を長くして待っていたようだ。

そして砂の女王が、ラウルの方に視線を遣りつつレオニスに問うた。

『あら? 新しいお客さんもいるのね?』

「ああ、こいつはラウルと言って、俺達の仲間であり家族だ。今日は女王達にラウルのことも紹介しておきたくてな、連れてきたんだ」

『そうなのねー。貴方達の仲間だというなら、私も信用するわー』

見知らぬ新顔、ラウルを見ながら微笑む砂の女王。

そんな砂の女王に、ラウルが一歩前に出て自己紹介を始めた。

「砂の女王、お初にお目にかかる。俺の名はラウル、プーリアという妖精族だ。訳あって人族のご主人様達といっしょに暮らしている」

『まぁ、貴方、妖精さんなのー? 私、妖精さんって初めて会うかも!』

「何だ、砂漠には妖精はいないのか?」

『うん、残念なことにいないのよねー。私の仲間である砂の精霊なら、たくさんいるんだけど。精霊と妖精って別物だしねー』

「それもそうだな」

ラウルが妖精だと聞き、何気にワクテカ顔の砂の女王。

確かにこのノーヴェ砂漠は、もともと生息している固有種自体がかなり少ない。

砂の女王の配下の砂の精霊ならいくらでもいるだろうが、このノーヴェ砂漠に住むに適した妖精はまずいないだろう。

するとここで、レオニスが会話に割って入った。

「前に俺達がここに来た時に、皆でいっしょにお茶会しただろう? あの時に出した美味しい食べ物は、全部こいつが作ってるんだ」

『まぁ、そうなの!?』

「ああ。他の属性の女王達も、こいつが作るお茶菓子には滅法目がなくてな。どこでも大好評なんだ」

「お褒めに与り光栄だ」

ラウルを紹介するレオニスの言葉に、砂の女王の顔がパァッ!と明るくなる。

『じゃあ、早速今からお茶会しましょうよ!私ももっと他の姉妹の話を聞きたいし、ガベリーナも待ってるわ!』

「そうだな、俺の方からも話したいことがあるし、中でゆっくりお茶にするか」

「賛成ー!」

砂の女王の提案に、レオニスだけでなくライトも同意する。

日中のノーヴェ砂漠はクッソ暑いが、ガベリーナ=神殿の中は外の気温の影響を受けない。

ゆっくり話をするなら、他でもないガベリーナの中でお茶をするのが一番安全で確実だ。

ちなみにレオニスが砂の女王達を呼んだ時、ライト達に向かってアビスソルジャー他魔物達に取り囲まれかけていた。

だが、ガベリーナの登場とともに、他の魔物達は一切出てこなくなった。

さすがに生きた神殿、ガベリーナの前でまで襲いかかることはないようだ。

そうしてライト達は、砂の女王とともにガベリーナの中に入っていった。