軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1491話 様々な未知の体験

天空島から帰還し、カタポレンの家の敷地内にあるコテージに入ったライト達。

ラウルが早速晩御飯の支度をする間、レオニスはマキシを呼ぶためにラグナロッツァの屋敷に行ったり、ライトは好奇心旺盛なリンドブルムやサマエルの相手をしていた。

『食事、だと? 我ら高位の存在にそんなものは必要ない』

『まぁねー、確かに私達は良質な魔力さえあれば、別に飲まず食わずでも生きていけるからねー』

「そうなんですねー、羨ましいなー。てゆか、そのための魔力はどうやって摂取してるんですか?」

『??? そりゃもちろん、呼吸で摂取するのよ? 私達は呼吸することで、空気中に漂っている魔力を体内に摂取してるのよー。でも、気が向いた時には魔物を丸ごと食べちゃうこともあるけど』

食事の摂取に関して、あれこれと会話しているライト達。

やはりリンドブルムやサマエルも基本的に物理的な食事は不要らしく、魔力さえ摂取できれば生きていけるという。

生きていくために一日三食を摂らねばならない人族からしたら、ものすごく羨ましい話だ。

しかもそれは、ただ息を吸うだけで魔力を摂取できるのだとか。

人間が呼吸で酸素を身体に取り込むのと同じようなものなのかもしれない。

しかし、このカタポレンの森で暮らして半年経つラーデは、食事を摂ることの楽しさを既に知っている。

それをリンドブルム達にも知ってもらうべく、ライトはラーデき話を振った。

「でも、美味しい食事は魔力回復に役立つし、何より心を豊かにしてくれるんですよ。ね、ラーデ?」

『うむ。我もここに療養に来てから初めて知ったのだがな。美味なるものを口から飲み込んで身体に取り込むと、目に見えて身も心も回復していくものなのだ』

『ンまぁー、パパンがそう言うならホントのことなんでしょうねー』

『フン……父上はお優しいから、後見人に忖度してそう言っておられるのだろう』

ライトの期待通り、ラーデもうんうん、としたり顔で頷いている。

そんなラーデの反応に、リンドブルムは興味深そうに肯定し、サマエルは疑ってかかっている。

なかなかに疑り深いことだが、サマエルの性格を考えると致し方ないことかもしれない。

そうして程なくして食事の準備が整い、マキシやフォルも合流して一堂でテーブルに着いた。

両手をパチン!と合わせ、レオニスの「いッただッきまーーーす!」という掛け声に客人姉弟以外の全員が「いッただッきまーーーす!」と復唱する。

そして皆早速ラウル特製のご馳走を食べ始めた。

『ねぇねぇ、これはナぁニ?』

「えーとですね、こっちの茶色いのはペリュトンの唐揚げで、この黄色いのはフライドポテト、そのまん丸なのはタコ焼きという食べ物です。指で摘んで食べてもいいですよー」

『良い匂いがするわねー……よし、私も食べちゃおーっと!』

『リ、リン姉様、本当に大丈夫ですか!?』

『サミー、アンタも腹括っていっしょにいくわよ!ほら、横にいるパパンをご覧なさい!』

『ち、父上ェ……』

人族との食事など、今まで一度も見たことがないリンドブルムとサマエル。

勝手が分からず素直に聞くリンドブルムに、ライトが懇切丁寧に教えている。

ちなみにリンドブルムとサマエルに振る舞ったメニューは、全てラウルの配慮によるものだ。

唐揚げやフライドポテトにタコ焼きならば、箸やフォーク、ナイフ、スプーンといった食器類を使わずに、直接手で摘んで食べることができるからだ。

ラーデの前にも同じメニューが並べられていて、唐揚げやタコ焼きを手で器用に掴んではヒョイ、パク、ヒョイ、パク☆とモリモリ食べている。

それを見たリンドブルムが、ラーデを真似て唐揚げを摘んで口の中に放り込んだ。

『……(むぐむぐ)……ンまッ!思ったより美味しいわ!』

『そうであろう、そうであろう。ラウルが作る食事は全てが絶品だからな』

「お褒めに与り光栄だ」

『どれどれ、こっちの黄色いのは……ン、これも美味しいー♪ アナタ、ラウルっていったっけ? パパンが褒めちぎるだけのことはあるわ、アナタの料理はとても美味しいわね!』

「度重なるお褒めの言葉、誠に光栄だ」

父に倣い、目の前のご馳走をモリモリ食べるリンドブルム。

ラウルの作るご馳走は、リンドブルムにも気に入ってもらえたようだ。

ご馳走の作り手であるラウルのことを褒めるリンドブルムに、ラウルも平静を装ってはいるが嬉しそうだ。

そして唐揚げやフライドポテトをペロリ☆と平らげて、タコ焼きにも手を伸ばし始めた。

もちろんタコ焼きも美味しくて、リンドブルムはあっという間に自分の分を食べ尽くした。

そして横の席にいるサマエルをちろり、と見遣る。

『あら、サミー、食べないの? 食べないならお姉ちゃんがもらっちゃうわよ?』

『!?!?!? た、食べないとは言ってません!父上が食べておられるものを、私が食べてみない訳にはいかないでしょう!』

『ならちゃちゃっと食べなさい。でないとホントに私が食べちゃうからね?』

サマエルの前の皿に、リンドブルムがスススー……と手を伸ばす。

しかし、サマエルは別に『人族の作るものなぞ、絶対に食べない!』とは言っていない。

むしろラーデが食べているものなら、サマエルも毒見しておかなければならない!と思っている。

なので、サマエルは慌てて自分の皿を腕で囲い込み、食いしん坊の姉の魔の手から食べ物を守る。

そしてサマエルが慌ててタコ焼きを掴み、ポイッ!と口に放り込んだ。

次の瞬間、サマエルの顔がパァッ☆と輝いたのは言うまでもない。

弟もまた姉に負けないくらいの勢いで、タコ焼きや唐揚げ、フライドポテトを瞬時に平らげた。ラウルの料理はサマエルの口にも合ったようで、何よりである。

フライドポテトの最後の一切れを食べ終えたサマエル。

それまで無我夢中で食べていたが、食べるものがなくなったことで正気を取り戻し、ハッ!とした顔になる。

そして慌てて咳払いをしながら、何やらゴニョゴニョと言い訳をし始めた。

『ンッ、ゴホンッ……ぁー、皇竜たる父上が食すにあたり、これらは及第点であることを認めよう』

『サミー、アンタ、すっごい偉そうねぇ……』

『ぬ? 私は皇竜メシェ・イラーデの第三子にして、リン姉様の弟なのですから実際に偉いですよ?』

『それはそうだけど……』

サマエルのとんでもなく上から目線の評価に、リンドブルムが呆れたように呟く。

しかし、家族以外の他者をナチュラルに見下すサマエルがラウルの料理を認めた―――これは何気にすごいことだ。

それは、この場にリンドブルムやラーデがいるせいかもしれないが、それでもこのサマエルは心にもない世辞やおべっかなどは絶対に言わない。

つまりサマエルは、ラウルの料理を美味しいと本当に思ったからこそ素直に認めたのである。

そうして晩御飯を食べ終えた後、ライト達は挙って風呂に入った。

ここでもサマエルは『風呂? 何で私がそんなもんに付き合わねばならんのだ?』と速攻で拒否していた。

だが、ラーデはもちろんリンドブルムまで『私もパパンといっしょに行くー♪』と言い出したので、慌てて『え"ッ!? 父上だけでなくリン姉様まで行くのですか!? ならば私もお供します!』と発言を翻した。

そうしてライト達とともにコテージの風呂に入ったリンドブルムとサマエル。

リンドブルムは言動や身体つきこそ女性寄りだが、その実態は男でも女でもない両性具有種。なので、男女混浴という意識はライト達の中には全く起きなかった。

コテージの風呂はラグナロッツァの屋敷並みに広々としていて、人族なら二十人くらいは余裕で入れる広さだ。

まずは身体を洗い、今日散々外で掻いた汗を流す。

レオニスがラーデの身体を洗い、ラウルがマキシの身体を洗う。

その間にライトがレオニスやラウルの背中を流し、最後にレオニスがライトの背中を流してやった。

そして今日の天空島での諸々の出来事、その疲れを癒やすべく湯船に浸かるライト達。もちろんその中にはラーデも含まれていた。

プールよろしく湯船の中でちゃぷちゃぷと泳ぐラーデに、リンドブルムは嘆したように、サマエルは困惑したようにじっと眺めている。

『パパンってば、ここでの療養ですっかり馴染んでいるようねぇ』

『ああ、父上、何とお労しい……このような小さな風呂如きに満足してしまわれて……』

『サミー、そんなこと言わないの。今のパパンの身体には、逆にこのくらいの大きさの方が合っていていいのだから』

『……はい……それもそうですね……』

リンドブルムに窘められて、またもしょぼんとするサマエル。

サマエルも、ラーデにとって今の環境が最善だというのを、頭では分かっているのだ。

ただ、 感情(こころ) の方ではなかなか受け入れられないだけなのだ。

するとここで、それまで湯船で優雅に泳いでいたラーデがサマエルのもとに来た。

そしてサマエルの腕の中にすっぽりと収まり、ふぅ……と一息つく。

『サマエルよ、お前にも心配をかけ続けて本当にすまなかった』

『いいえ……父上がこうして無事戻ってきてくださっただけで、私は嬉しいのです……』

『我もいつか、本来の姿を取り戻すことができたら……その時こそ、其方達のいる天空島に戻る故。もう少し待っていてくれ』

『いつまでも……いつまでもずっと、父上のお帰りを……お待ちしております……』

湯船の中でラーデを抱っこしているサマエルが、ラーデの後ろから肩越しにそっと頬ずりする。

何百年もの間、ずっと待ち侘びていた父との再会と抱擁が己の腕の中で実現していることに、サマエルは喜びを隠せない。

もっとも、身体の大きさが逆転していて父を抱っこする側になってしまったのは、サマエルにとっても完全に予想外だったが。

風呂から上がった後は、リビングでのんびりタイムだ。

皆で互いに風魔法で髪の毛や羽根を乾かし合い、その後リビングに置いてある『人をダメにするクッション』に埋もれて至福の時を過ごす。

「ぁーーー……ホンット、このクッション気持ちいいー……」

「ホントになー……俺、今日はもうここで寝るわ……」

「そりゃいいな……俺もそうするわ……」

「ラウルも、レオニスさんも、こんな、ところで、寝ちゃ……ダメですよぅ……(スヤァ」

人をダメにするクッションにすっぽりと包まれたライト達が、次々と眠りの海に誘われて陥落していく。

ライト達だけでなく、天空島に出かけていないマキシまで寝落ちしてしまっているのはご愛嬌である。

そしてこの人をダメにするクッションは、リンドブルムとサマエルにもガッツリと効いていた。

『……(スヤァ)……』

『はぁー……これはクセになるわねぇー……』

『ぐぬぬぬぬ……このような、悪魔の如き、誘惑に……私は、負ける、訳、には…………(スヤァ』

ラーデ達が包まれているのは、黄金週間のレインボースライムショーで入手したレインボーカラーの人をダメにするクッション。

むっちりとした手応えと沈み込む何とも心地良い感触に、ラーデのみならずサマエルまでもが速攻で陥落してしまった。

そうしてリビングには静寂が訪れ、皆の静かな寝息だけが微かに響く。

そんな中、最後まで起きていたのはリンドブルム。静かな魔の森に満ちる魔力が何とも心地良い。

そして自分の横で眠る父と弟の安らかな寝顔を、嬉しそうな瞳でしばし見つめた後、彼女も程なくして眠りに落ちていった。