軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1490話 心の準備と約束を守るレオニス

天空樹の島にある転移門を使い、カタポレンの家に瞬間移動で帰宅したライト達。

その頃には空はすっかり茜色に染まり、日が暮れ始めていた。

カタポレンの家の見慣れた景色に、レオニスが思いっきり背伸びをしながら声を上げた。

「カーーーッ!さすがに今日は俺でも疲れたわ!」

「レオ兄ちゃんもお疲れさまー。ホント、疲れたよねー……てゆか、よく天空竜の群れの前に出てサマエルさんと言い争いできるね? ぼくにはとてもそんな度胸ないよ」

「ハハッ!バカ言え、あんな短時間でリンドブルムを引っ連れてきたお前にだけは言われたかねぇわ」

「うぐッ……そ、それは……」

レオニスを労いながら半ば呆れるライトに、レオニスが鼻で笑いつつ反撃する。

確かに度胸云々を言ったら、ライトだってレオニスと比べても何ら遜色ない行動力だ。

普通の子供は、伝説のドラゴンであるリンドブルムを探し出して連れてくるなんて芸当はできないし、何なら空だって飛べないものなのである。

しかし、ライトとしてもここで黙ってはいられない。

一体誰のせいで、わざわざ中央の天空島まですっ飛んでいってリンドブルムを引っ連れてくる羽目になったのか。

そう、それはひとえにレオニスが原因だからである。

「で、でも、それは仕方ないじゃん!だってそうしないと、レオ兄ちゃんとサマエルさんがガチバトルしそうだったし!」

「まぁな、お前とラウルのおかげでサマエルと戦わずに済んだわ。ありがとうな!」

「う、うん……分かって、くれれば、いいよ……」

ライトの反論にレオニスが素直に認め、ライトの頭をくしゃくしゃと撫でながら礼を言う。

ニカッ!と人懐っこい笑顔を浮かべながら礼を言うレオニスに、ライトが照れ臭そうにそっぽを向きながらゴニョゴニョと小声で呟く。

しかし、そんな仲睦まじい兄弟の和やかな空気を読まずにブチ壊す妖精がここに一人。

「そういやライト、あの中央の天空島での話なんだが。あの時火口の中で、一体何があったんだ?」

「「………………」」

ライト達の後ろを歩いていたラウルの爆弾発言により、二人の身体がその場でピシッ!と固まった。

せっかくライトだけでなく皆も忘れかけていたというのに、ラウルが寝た子を起こすようなことを口にしたせいで、その場にいなかったレオニスにまで説明しなければならない羽目になってしまったではないか。

しまった……という顔で頬を引き攣らせながら固まるライトに、レオニスが半目でジロリンチョ、とライトを横目に見つめている。

「ライト、お前……また何かやったんか?」

「え? あ? え? ちょ、ちょっと待って? ……そ、それは、その……実は、あの、 例の秘密(・・・・) に……思いっきり、関係してて……」

「「…………」」

レオニスの鋭いツッコミに、ライトがしどろもどろになりながら言い淀む。

ライトが言う『例の秘密』とは、言わずもがな勇者候補生のことを指している。

リンドブルムがいたのはBCOイベントの一つ『修験者の迷宮』であり、これをレオニス達にどう説明すればいいのか。

ライトには、BCOのことを伏せながら上手く説明できる自信が全くない。

そしてレオニスは、その例の秘密のことは自分達からはライトに聞かない、ライトから話してくれるまで待つ、という約束をヴァレリアと交わした。

ここまで言い難そうにしているということは、ライトはまだその秘密を明かす心の準備ができないことを表していた。

一度はツッコミを入れたが、あまりにも取り乱しまくるライトを見て早々に諸々を察したレオニス。

ふぅー……と小さくため息をつきながら、徐に口を開いた。

「……そうか。例の秘密に関係しているってんなら、俺の方からはもう無理には聞かんし、ライトもこれ以上言わなくていい」

「う、うん……まだ言えなくてごめんね、レオ兄ちゃん」

「何、お前が謝ることじゃないさ。これは、あの魔女との約束だからな」

レオニス達に全てを明かす勇気がライトにはまだなく、その申し訳なさにしょんぼりと俯く。

そんなライトを励ますべく、レオニスが再びライトの頭をくしゃくしゃと撫でた。

レオニスだって、ライトが何をしでかしたのか気になるだろうに。

かつて転職神殿で出会ったヴァレリアとの約束を守るために、それ以上追及することなく不問とした。

義理堅く誠実なレオニスの性格に、ライトはただただ感謝する。

そんなライト達のやり取りの後ろで、カタポレンの森を初めて訪れるリンドブルムとサマエルが物珍しそうにキョロキョロと周囲を見回していた。

ちなみにリンドブルムの両腕の中には、ラーデが抱っこされている。

それはまるで、美女がぬいぐるみを抱っこしているようにしか見えないが、これでも歴とした親子である。

『ここが、父上の療養している森ですか……』

『確かに辺り一帯、それなりに濃密な魔力に満ちているわね……これならパパンの療養にもってこいだし、属性の女王達が挙ってパパンにオススメしたというのも納得ねー』

『ですね……認めるのは悔しいですが、このように魔力が日々無尽蔵に湧き出る場所に留まられれば、父上の完全回復も早まりましょう』

天空島からカタポレンの森に降り立ったリンドブルムとサマエル。

この二者が地上に降り立つことなど、彼らの長い歴史の中でも数えるほどしかない。

故にカタポレンの森に降り立つのも、実はこれが初めてのことだった。

別名『魔の森』とも呼ばれるカタポレンの森。

その空気を肌で直に感じ取り、想像以上に魔力が溢れていることに二者は驚きを隠せないようだ。

そう、カタポレンの森が『魔の森』という二つ名を持つのも伊達ではないのである。

そしてここで、レオニスが後ろを振り向きラーデ達に声をかけた。

「おーい、ラーデ、もう日が暮れてきてるし、リンドブルム達の案内は明日でいいかー?」

『いいとも。今日は皆草臥れたであろうからな、ゆっくり休んで英気を養うのが良かろう』

「だよなー。よし、そしたら今日はさっきも言った通り、皆でコテージで過ごすぞー。ラウル、すまんが支度を頼むぞ」

「了解ー」

レオニスの呼びかけに、ラーデもラウルも快諾する。

ラウルがふわり、と宙に浮いたかと思うと、レオニス達を追い越し一番先にコテージに入っていく。

そしてライト達は、ラーデ達とともにコテージに入っていった。