軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1489話 実は似た者同士

北の天空島の畑の島を飛び立ち、天空樹の島に移動したライト達。

ユグドラエルの根元に降り立つと、ユグドラエルの背後や上部、根元などありとあらゆるところから多数のドライアドが現れた。

『ああーーーッ!ラウルーーー!』

『皆無事だったのねーーー!』

『ぴええぇぇん!怖かったよーーー!』

『『『うわーーーん!!』』』

「………………」

一人のドライアドがラウル達を見つけた途端、至るところこらわらわらと現れるドライアド達。皆号泣しながら、ラウル目がけて猛突進してきたではないか。

そうしてラウルは、あっという間にドライアド塗れになってしまった。

天空竜の突然の襲来に、きっとドライアド達も恐怖と不安でいっぱいだったのだろう。

いつもなら、レオニスが「おちびちゃん達、うちのラウルが窒息しちまうから剥がすぞー」とか言いながら、ライトとともにドライアド達を引き剥がすところなのだが。

さすがに今日ばかりは、本気で号泣しながらラウルにしがみつくドライアド達を無理矢理退かすのは忍びない。

ライトもレオニスも、そしてまとわりつかれているラウル自身も黙ってドライアド達の好きなようにさせていた。

ドライアド達の相手はラウルに任せて、レオニスがユグドラエルに声をかける。

「エルちゃん、大丈夫か?」

『ええ、貴方達のおかげでこの通り無事ですよ』

「そっか、そりゃ良かった」

ユグドラエルの元気そうな声を聞いて、その無事を心から安堵するライト達。

するとここで、リンドブルムに抱っこされていたラーデが娘の腕からするっ、と抜け出してユグドラエルに話しかけた。

『エルよ、此度は我が不始末で其方達に多大な迷惑をかけたこと、心よりお詫びする。本当に申し訳ない』

『そうですね……確かに今回のことはとてもびっくりしたし、ドライアド達もこのようにすっかり怯えてしまいました』

『返す言葉もない……』

『ですが……ラーデもあまり気に病まないでください。こうして皆無事で、怪我一つなく問題解決できたのですから』

『そう言ってもらえるとありがたい』

申し訳なさにひたすら縮こまるラーデに、ユグドラエルは詰ったり責め立てることなくラーデを許す。

もし今回のことで怪我人や死者が出てしまったら、それこそ取り返しがつかない事態になっていただろう。

しかし、幸いにもそうなってはいない。

だからこそ、ユグドラエルはラーデを許すことができたのだ。

そしてここで、リンドブルムが前に進み出てユグドラエルに声をかけた。

『原初の神樹ユグドラエル、お初にお目にかかります。私はそこにいる皇竜が第二子、リンドブルムと申します』

『ラーデの娘さん、でよろしいですか?』

『はい。我ら皇竜が実子に性別はありませんが、男女どちらの姿にもなれますし、その辺りはひとえに個々の好みで生きておりますので』

『そうなのですね。男女の区分が曖昧というのは、私達神樹も同じなのですよ。それでもやはり、性格や言動は男女のように二つに分かれているのですが』

『まぁ、本当に私達と似ているのですね!』

『ええ。もしかしたら、私達は似た者同士かもしれませんね』

思わぬところで共通点を見つけたユグドラエルとリンドブルム。

リンドブルムはフフフ、と可愛らしい笑みを浮かべ、ユグドラエルも枝葉がサワサワと揺らして喜んでいる。

しかし、リンドブルムの方は和やかな話ばかりしてはいられない。

笑顔から一転、真面目な顔になりユグドラエルに謝罪した。

『この度はそこにいる愚弟、サマエルの愚行で北の天空島の皆様方にご迷惑をおかけしましたこと、姉である私からもお詫びいたします』

『まぁ、貴女まで謝らずともよいのですよ』

『いいえ、そうは参りません。こんな無愛想で無鉄砲ですが、私にとっては唯一人の可愛い弟なのです。弟の不始末は姉たる私の不始末。監督不行届をお詫びしなければならないのです』

『………………』

真摯に謝るリンドブルムに、ユグドラエルは心の中で自分と姿を重ねていた。

ユグドラエルも六本の神樹の中で長姉という立場にあり、もし弟妹達が何か不手際を起こしたらきっとリンドブルムと同じことをするだろう。

リンドブルムの長姉としての姿勢に感銘を受けたユグドラエル。

彼女の後ろで未だ一言も発しないサマエルに向けて声をかけた。

『此度の騒乱の元―――サマエル、と申しましたか』

『はい。申し遅れましたが、私の名はサマエル。南の天空島の主にして、皇竜メシェ・イラーデが第三子にございます』

話しかけてきたユグドラエルに、サマエルは一応敬語を使いつつも素っ気ない答えを返す。

そのぶっきらぼうな姿は、どことなく神樹族の次男ユグドライアを彷彿とさせる。

もっとも、無愛想度はサマエルの方が何倍も上なのだが。

サマエルにも親近感を覚えたユグドライアが、ぽつりと呟く。

『貴方は家族に……善き父と善き姉に恵まれましたね』

『ッ!!!』

ユグドラエルの何気ない言葉に、サマエルがその目を大きく見開く。

サマエルは、自分のことは二の次でどうでもいいが、家族が褒められるのはものすごく嬉しく感じる。

今まさにユグドラエルに父と姉を褒め称えられて、サマエルの顔がみるみるうちに緩んでいく。

『ン……原初の神樹は、私が思うよりはるかに賢くて洞察力に優れているようですね』

『ウフフ、お褒めに与り光栄だわ』

『サマエル、お前ッ……天空樹に向かって何と罰当たりな……ッ……』

『いいのですよ、ラーデ。末子というのは可愛いものですよねぇ』

サマエルの不遜な物言いに、ラーデが顔を青褪めさせながらすぐに窘める。

そしてリンドブルムはサマエルの背後に回り、容赦なくヘッドロックで締め上げていた。

『ぐああぁぁッ……リ、リン姉様、苦ちぃ……』

『こンの、バカサミーがッ!温情をかけてくださった天空樹に、上から目線で何てこと吐かしてやがんのよッ』

『……ゥキュゥ……』

背後からリンドブルムにギリギリと締め上げられて、サマエルがぐったりとしている。

歯軋りしながら全力で締めつけるリンドブルムのヘッドロックは超強力で、さしものサマエルもものの数秒で陥落してしまったようだ。

『天空樹、本当にうちの愚弟が申し訳ございません』

『いいえ、私は大丈夫ですよ。むしろサマエルの方が、はるかに大丈夫ではなさそうですが……』

『このおバカには、後でまた謝罪させますので……どうかご寛恕くださいまし』

リンドブルムがサマエルにヘッドロックしたまま、ペコペコとユグドラエルに頭を下げている。

ずっとヘッドロックをかけられ続けたら、如何にサマエルであっても本当に命が危うそうだが。まぁ大丈夫だろう。

終始騒がしい周囲に、レオニスがはぁ……と小さくため息をつきつつユグドラエルに話しかけた。

「エルちゃん、今日はとんでもなく騒がしくてすまんな」

『大丈夫ですよ。この程度の騒がしさなど、騒がしいうちにも入りません。何せ私の周りには、いつも騒がしくて愛らしいドライアド達がいるのですから』

「違いないwww」

騒がしさならドライアドで慣れている、というユグドラエルの言葉に、レオニスがくつくつと笑う。

一方ドライアド達は、ラウルにしがみついて思いっきり大泣きしたおかげか、だいぶスッキリして落ち着いてきていた。

『ン? エルちゃん様、私達のことを呼んだー?』

『ええ。ドライアド達は皆可愛くていつも賑やかだ、という話をレオニスとしていたんですよ』

『えー、エルちゃん様に褒められたー?』

『私達も、エルちゃん様のこと大好きー♪』

『『『エルちゃん様ーーー♪』』』

さっきまで大号泣していたドライアド達、ラウルから離れて今度はユグドラエルに向かって突進していく。

そしてユグドラエルの幹にヒシッ!と抱きついたドライアド達。

いつ何時であっても、全身全霊で感情を表す彼女達のパワフルさは実に微笑ましい。

そして、ようやくドライアドの群れから解放されたラウル。

全身がドライアド達の涙や鼻水等々で、全身がぐっしょりと大変なことになっていた。

しかし、そこは万能執事のラウル。涼しい顔で事も無げに浄化魔法をかけて、瞬時に自身の身体を綺麗にしていた。

「おう、ラウル、おかえりー」

「ただいまー。……さ、そろそろカタポレンの家に帰るか」

「そうだな。じゃ、エルちゃん、またな」

「エルちゃん、さようなら!」

「また次に来た時に、美味しい水をたくさんご馳走するからな」

『ええ、いつでも皆で遊びにきてくださいね』

ラウルの復活を機に、ユグドラエルに別れの挨拶をするライト達。

カタポレンの家に繋がる転移門がある場所に移動し、ラーデ達とともに地上に移動していった。