軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1481話 見えない何かとライトの行方

その後ライト達は三手に分かれて、巨大な山の捜索を始めた。

木々は疎らに生えているものの、密集してはいないので視界は然程悪くはない。

ラウルとパラスはスタート地点の反対側でかち合うも、特に目につくものは何も見つけられなかった。

「おお、ラウル、そっちはどうだ!?」

「特にこれといったものは見つけられなんだ。パラスの方はどうだ?」

「私の方も特に何もなかったし、生き物がいる様子は全くなかったな」

「そうか……じゃあ、山頂に向かってもう何周か回ってみるか」

「分かった」

その後ラウル達は再び二手に分かれて、螺旋を描くように下から上に向かって探索を続けた。

さすがに2000メートル級の山相手に、一周二周程度では全てを目視確認しきれないからだ。

そうして巨大な山を、ラウル達は七周か八周ほど回っただろうか。

山頂についた二人の目に飛び込んできたのは、巨大な火口だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「「………………」」

中央の天空島の一番大きな島、そこに聳える山の頂きで見つけた巨大な火口を見下ろしながら、ラウルとパラスはしばし無言で空中に佇む。

その火口はとても大きくて、直径100メートルはありそうだ。

また、火口と言ってもエリトナ山のようにマグマが滾っているのではなく、黒い穴がぽっかりと空いているだけのように見える。

この大きな黒い穴を見下ろしながら、ラウルが先に口を開いた。

「これは……この奥に、ラーデの子達がいるのか?」

「うむ……山の周辺にはそれらしき洞穴や洞窟などは一切なかったし、そう考えるのが妥当だろうな」

「だよな…………いや、それよりもライトはどこにいった?」

底が見えない火口をしばし眺めていた二人だったが、ラウルがはたとした顔になり慌てて周囲をキョロキョロと見回す。

ライトはこの天空島に到着後、山頂に向かって飛んでいったのだからこの火口もすぐに見つけたはずだ。

それに、ラウル達が山の周辺を何周もぐるぐると回るのに比べて、ライトの上下周回探索は最短で一回、多くて三周もすれば十分事足りる。

なのに、何故ライトは一番分かりやすい山頂でラウル達の到着を待つことなく、ここにいないのか。

その答えは、自ずと二人の中に湧き上がっていた。

「まさか……ライトのやつ、一人で先にここに入っていったのか!?」

「うぬぅ……そうとしか考えられんな」

「ったく……しゃあない、今すぐ追うぞ」

「ああ!」

ライトが先に入っていったであろう火口に、ラウルとパラスも続けとばかりに入ろうとした、その時。

何か見えない壁のようなものに阻まれて、侵入できずに跳ね返されてしまった。

「「!?!?!?」」

立った状態で足から入り下に降りていこうと思ったのに、どうしたことかそこから先に進めないではないか。

まるで火口に蓋をしたかのように見えない何かに阻まれ、火口の上で呆然と立ち尽くすラウルとパラス。

すると、我に返ったパラスが何度も両足でダン!ダン!と踏みつけ始めた。

しかし、何度踏みつけてもびくともしない。パラスが力一杯足で踏みつけているにも拘らず、だ。

ジャンプしながら踏みつけても、何十メートルの高さから勢いをつけて蹴っても、正座しながら握り拳でガンガン叩きまくっても、何をどうしても火口の中に入ることができなかった。

この異常事態に、パラスが喫驚しながら叫ぶ。

「これは一体、どういうことだ!?」

力技のゴリ押しを試みたのに、その全てを完璧に跳ね返されてしまったパラス。

ゼェハァと息を切らしながら、透明な地面の上にへたり込んでいる。

その一方でラウルは、パラスの奮闘を見ながらとあることを思い出していた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

それは、ラグナロッツァのビースリー勃発未遂事件が起きた時のこと。

旧ラグナロッツァ孤児院に出現した謎の亀裂に入っていったライトを、レオニスが必死に引き留めようとしたという。

だがその時のレオニスも、見えない壁に阻まれてコヨルシャウキがいる異空間側には入り込めなかったのだ。

あの時のご主人様も『見えない壁のようなものに弾かれて、指一本すら向こう側に入り込むことはできなんだ』とか言ってたよな……

それとかなり似たような状況だが、もしかしてこれもその時と同じ類いのものなのか?

ということは、これはライトのあの 秘密(・・) に関係することか?

だとしたら……俺達にはどう足掻いても、絶対に入れないやつなんだろう……

ラウルが冷静に現状分析をしながら、パラスがぺったりと座り込んだ透明な地面の上に降り立つ。

そしてその場にしゃがんで、地面をノックするように右手でコン、コン、と軽く叩いてみた。

確かにそこには地面や壁のような何かがあって、そこから先の下への侵入を阻んでいる。

試しにラウルが透明な地面に向けて火魔法や土魔法を放ってみたが、何かが溶けたり隆起したりといった変化は微塵も起こらない。

ラウルが透明な地面に直接手で触れてみても、この地面自体に魔力は一切感じられない。結界のように、何者かが魔力を用いて築いた障害物でないことは確かだ。

もしこれがあの時———ラグナロッツァのビースリー勃発未遂事件でレオニスが遭遇したものと同じならば、ここに入る資格があるのは勇者候補生であるライトだけ、ということになる。

そしてラウルのこの考えが正しければ、ラウルとパラスは何をどうしたってこれ以上先には進めないだろう。

当代随一の金剛級現役冒険者であるレオニスですら破れないものが、ラウルとパラスに破れるとは到底思えないからだ。

それに、ラウルとパラスは勇者候補生ではない。

コヨルシャウキがレオニスのことを『勇者候補生ではない』と断じて星海空間への侵入を許さなかったように、この中央の天空島の山頂火口もまた勇者候補生という資格を持たないラウル達の侵入を断固拒否しているのだろう。

これら諸々の状況を推察したラウル。

はぁ……と小さくため息をついた後、パラスに声をかけた。

「パラス、しばらくここで様子を見よう」

「何ッ!? そんな呑気なことを言ってていいのか!?」

「呑気なつもりはねぇが、今の俺達じゃこの中に入れないのは事実だろ」

「うぐッ……そ、それはそうだが……」

食ってかかるパラスに、ラウルが冷静に論破する。

ラウルが唱える正論に、パラスはぐうの音も出ない。

「それに、ライトがここに入って行ったかどうかもまだ確定じゃない。もしかしたら、まだ島の下の方を見て回っている最中かもしれんしな」

「ン……そう言われれば、確かにそうだな……」

「だろ? だから、ここで少し様子見だ。もしライトが下の方を探索していたら、ここで待っていればそのうちこの山頂に戻ってくるだろうしな」

「うむ、分かった」

ラウルの説得に、パラスも納得したので大きく頷きながら同意する。

ライトのあの秘密のことは伏せながら、パラスを説得して待つことに成功したラウル。さすがは万能執事である。

巨大な山の火口の上に立ちながら、眼下にある火口の奥を見遣るラウル。

一片の光も宿さない暗闇は、果てしない底なし沼のようだ。

あまりにも深い暗闇を見ていると、自分まで吸い込まれそうな気がしてくる。

しかし、ラウルはその暗闇から目を逸らすことなくじっと真下を見据え続けている。

『ライト……無事帰ってこいよ……』

パラスの手前もあり言葉には出さないが、ラウルは心の中でライトの無事の帰還を強く願うばかりだった。