軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1475話 穏やかなひと時を破る大群

その後ライト達は畑の島に移動し、バーベキューの準備を始めた。

レオニスがログハウス内に置いてあるバーベキュー台を出して組み立て、ラウルが野菜を切っている間にライトは天空樹の島にいるラーデを迎えに行った。

ユグドラエルの根元で、大勢のドライアド達に囲まれてゴロ寝するラーデ。

この島は巨大な天空樹の拠点だけあって、実は何気に広大な面積を誇る。

そこでのドライアド達とのかくれんぼは、ラーデにかなりの疲労をもたらしたようだ。

くったりと寝そべっているラーデに、ライトが空中を飛んだままクスクスと笑いながら声をかけた。

「ラーデ、お疲れさま。ドライアドさん達とのかくれんぼは、どうだった? 二十人以上を探すのは大変だったでしょ?」

『うむ、実を言うとかなり疲れた……だが、こうして小さき者同士で戯れるというのも良いものだな』

「フフフ、たくさんの友達ができて、皆と楽しく遊べて良かったね」

『そうか……これが『遊ぶ』ということなのだな……』

ライトが上から手を伸ばし、寝そべっていたラーデを抱っこする。

ラーデが邪皇竜メシェ・イラーザに侵される前、皇竜として本来の姿だった頃には誰かと遊ぶことなど一度もなかった。

それもそのはず、ラーデは全ての竜の祖であり絶対的な崇敬を集める存在なのだから。

皇竜メシェ・イラーデの前では、誰もが頭を垂れ跪き傅く。

彼の目の前で恭順の意を示す者はいくらでもいたが、その横に立とうとしたり対等であろうとする者は皆無だった。

だが、今のラーデは可愛らしいぬいぐるみサイズで、威厳などというものとは程遠い。

その愛らしい見た目のおかげで、ドライアド達もラーデに対して気負うことなく存分に遊べたのだ。

「今から畑の島で、皆でお昼ご飯のバーベキューをするんだ。ラーデもいっしょに食べようね」

『うむ。ドライアド達もともに行くのか?』

「ううん、バーベキューは火を使うからドライアドさん達は来ないって、パラスさんが言ってた。だから、ドライアドさん達を誘うなら三時のおやつの時だね」

『相分かった。では、ドライアド達よ、また後でな』

『『『いってらっしゃーーーい』』』

まだ寝転んでいるドライアド達が、ライトに抱っこされたラーデに向けて手を振る。

天使や二人の女王達はそこまで火を怖がることはないが、木の精霊であるドライアドや天空樹ユグドラエルにとって火は天敵。無理してライト達に付き合わせる必要はない。

バーベキューの後のおやつの時間をともに過ごす約束をしたラーデ。

そのままライトに抱っこされながら、畑の島に向かっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトがラーデとともに畑の島に降り立つと、そこでは既にパラス達が野菜を焼き始めていた。

十台のバーベキュー台に、たくさんの天使達が群がりながらそれぞれ野菜を焼いている。

そのうちの一台に、誰よりも率先して野菜を焼くパラスがいた。

普段は凛々しい麗人が、バーベキュー台でいそいそと野菜を焼く姿はなかなかに愛らしい。

そしてパラスの横には、レオニスと野菜が焼き上がるのを待つ光の女王と雷の女王がいる。

それぞれ手に皿を持ち、ワクテカ顔で今か今かと焼き野菜を待つ二人の女王。これまた滅多に拝めない激レアな姿である。

十台のバーベキュー台の中で最も輝いている激レアな場所に、ライトが破顔しつつ駆け寄っていった。

「光の女王様、雷の女王様、ラーデを連れてきました!」

『ご苦労さま。ラーデ様も、ようこそいらっしゃいました』

『うむ。其方らとこうして会うのも久しぶりだな』

『ラーデ様、ドライアド達とかくれんぼをなさっていたのですってね? あの子達はかくれんぼの名人だから、ラーデ様でも探すのに一苦労なさったのでは?』

『うむ……天空樹のもとに広がる森林は、我が思っていた以上に広大であった……』

まだ顔を合わせていなかったラーデと二人の女王が、挨拶とともに和やかに会話をしている。

そしてラーデとドライアド達のかくれんぼ話に、二人の女王が楽しそうに笑っている。

『さあさあ、そしたらラーデ様も私達といっしょにお野菜を食べましょ!』

『うむ。今日は久しぶりにたくさん動き回った故な。我もたくさん食べて、栄養を摂らねばな』

『そうですとも。ラウルの作る野菜だけでなく、パラス達天使が育てた野菜も食べてくださいね』

『おお、それは是非とも食べねばな』

ラーデを出迎えた二人の女王が、カタポレン産野菜だけでなく天空島産野菜も猛プッシュしている。

それを聞いたパラスが「ラーデ様!我らが丹精込めて作った野菜を是非ともご賞味くだされ!」と言いながら、ますます張り切って野菜をトングでひっくり返し続ける。

そしてラーデは、バーベキュー台の向こうにある畑を眺めながら呟く。

『前は気づかなかったが、この島で野菜を育てているのだな』

「はい。ここはもとは我らの鍛錬場だったのですが。我ら天使は滅多に使わなかったのと、ここ天空島でもヴィー様とグリン様のために野菜を作りたくてですね。島の約半分をレオニス達に開墾してもらい、野菜栽培を始めた次第です」

『ほう、神鶏達のために畑を作って野菜を育てておるのか。神鶏達も果報者だな』

「とんでもない!我らの方こそ果報者です!ヴィー様やグリン様が、我らが作った野菜を美味しそうに食べてくださることこそ至上の喜びなのですから!」

バーベキュー台で野菜を焼きながら、にこやかな笑顔でラーデと会話を交わすパラス。

天空島の畑では、今の時期はトウモロコシやトマトを主軸に常時十種類前後の野菜が栽培されている。

天使達が毎日アクアの泉の水を与えながら、ドライアド達に授けてもらった植物魔法もせっせとかけているので、畑一面に見事な成果が出ているのが一目で分かる。

「ラーデ様も、きっと我らの作った野菜を気に入ってくださるはず。美味しいだけでなく、栄養価も抜群に高いのですぞ?」

『そうなのか?』

「はい。ヴィー様もグリン様も、我らの作った野菜を食べて日々大きく成長なさっておられますからな!」

『おお、それはすごい。神鶏達の成長を促すほどのものならば、我もここで其方らの野菜を腹いっぱい食べればすぐにでも元の姿を取り戻せるやもしれんな!』

「是非とも試してみてくだされ!」

天空島産野菜の素晴らしさを、これでもか!というくらいにアピールするパラス。自信に満ちた彼女の笑顔が眩しく輝く。

天空島産野菜に神殿守護神をも成長させる程の栄養価があるならば、殆どの魔力を失って小さくなったラーデの身体にも良い効果が期待できそうだ。

レオニスがラーデに渡した皿の上に、パラスがせっせと焼き上がった野菜を乗せていく。

その皿にライトが極弱の風魔法を使い、適温に冷ましてやる。

そうしてラーデが齧りついたトウモロコシは、とても香ばしくて甘かった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

こうして和やかなバーベキュータイムを過ごしたライト達。

皆お腹いっぱい食べて、実に満足な顔をしている。

時刻は午後二時を回り、バーベキュー台で使った炭も冷めてきたところで片付けを始めた。

「パラス、この炭も畑の肥料になるから捨てずに土に混ぜるといいぞ」

「何ッ、そうなのか!? それはいいことを聞いた、これからはバーベキューの度に使う炭も畑の肥料に回すことにしよう!」

「そうそう。畑の肥料になってゴミも減らせるとか、一石二鳥でいいよな」

「全くだ!」

片付けの傍ら、ラウルからもたらされた有用な情報にパラスが速攻で食いつく。

これまでバーベキューで使用していた炭は、バーベキュー終了後に細かく砕いてから天使達が畑の島から地上に向けてそのまま捨てていた。

しかし、それが畑の肥料になるなら絶対に見逃せない。

この新情報に、パラスが感心しつつラウルを褒め称える。

「しかし、ラウルは本当に物知りなのだな!」

「いや、これはうちの小さなご主人様が教えてくれたことなんだ」

「そうなのか? ライトはラウル以上に博識なのだな!」

「ああ。うちのご主人様達は、大小どちらも偉大なんだぜ?」

「本当にな!」

ラウルを褒め称えるパラスに、ラウルがすぐさま情報源がライトであることを明かす。

とある日に交わしたライトとの会話の中で、ライトが『ラグーン学園の図書室の本で読んだんだけどね? バーベキューとかで使う炭って、畑の肥料になるんだよー。だからラウルも、炭火料理なんかで炭を使った時はゴミに捨てずに、細かく砕いて畑の土に混ぜるといいよー』とラウルに教えたのだ。

もちろんこれは、ライトの前世の家庭菜園知識によるものである。

これまでずっとゴミとして捨てていたものが、野菜作りの助けになるならこれ程良いことはない。

うちの小さなご主人様は、本当に聡明だよな!とラウルはつくづく感服する。

この有益な情報を、野菜作りの同志であるパラスにも早速伝授し、喜びを共有したラウル。実に嬉しそうな笑顔である。

パラスはパラスで、速攻で他のバーベキュー台を片付けている天使達に「使った炭は一ヶ所にまとめてとっておくように!」と伝えていた。

そうして穏やかな時間が過ぎていき、そろそろ皆でおやつタイムにしようか、と思っていたその時。

天空島上空を巡回していた天使達が、慌ててた様子で畑の島に飛び込んできた。

「敵襲だーーー!」

緊縛した様子で叫ぶ天使の声に、畑の島にいた者達全員が一気に緊張する。

その中で、いち早く反応したのはレオニスだった。

「何が起きた!」

「て、天空竜が……天空竜の大群がこちらに向かって来ています!」

「天空竜の大群だとッ!? 何頭いる!?」

「少なく見積もっても、百は超えるかと!」

「「『『ッ!!!!!』』」」

緊急事態を知らせてきた天使の言葉に、ライト達が凍りつく。

天空竜が最近この天空島の近辺を彷徨いている、という話は二人の女王から聞いていた。

だが、その天空竜が百を超える数の大群となって現れたとなれば事態は深刻だ。

何を目的として現れたのかは分からないが、一頭でも強力な天空竜が大群を成して襲来してきた。これはもはや立派な威圧行為である。

そしてそれは、戦争を辞さない覚悟をも持っているという脅迫めいた意思を感じる。

しかし、ここで手を拱いている訳にはいかない。

レオニスは未だ固まっている周囲に檄を飛ばした。

「ラウルはライトとラーデを連れて、ひとまずエルちゃんのところへ避難しろ!エルちゃんにも天空竜襲来を知らせるんだ!」

「分かった!」

「光の女王と雷の女王は、グリンちゃんとヴィーちゃんとともに天空竜の群れの前に向かえ!まずは奴等の目的を探るべく交渉だ!俺もいっしょに行く!」

『『ええ!』』

「パラス達天使は、この天空島周辺で待機しててくれ!エルちゃん達の防衛と守備を頼む!」

「承知!」

テキパキと指示を出すレオニスに、全員が我に返り力強く頷く。

そうして各自行動を始め、ライトとラウルはラーデとともに天空樹の島に向かい、レオニスは二人の女王と神鶏達とともに天空竜の群れの前に飛んでいった。