軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1470話 楽しい楽しい風魔法テスト

水魔法のテストでライトが作った透明な雲による霧雨を、目覚めの湖の仲間達が大喜びで水遊びを楽しんだ。

その持続時間、約七分。水の女王達が湖でキャッキャとはしゃいでいる間、ライトはレオニスやラウルのもとに戻り、水魔法談議に花を咲かせていた。

「ライト、水を縄状にするウォーター・バインドはやってみたか?」

「うん、たまーに水で輪っかを作って遊んだりしてるよー」

「そっか、なら試しにそれをここでやってみせてくれ」

「はーい」

レオニスのリクエストに、ライトがその場で実践してみせる。

ライトが右手人差し指を垂直に立てて、空中でくるりと水平に動かして輪を作る仕草をした。

すると、指から50cmくらい上のところに直径3cmくらいの縄状の水が出現し、輪っかが出来上がった。

他にももっと大きな水の輪を作ってカウボーイよろしく投げ縄風に投擲してみたり、水魔法の近似種である氷魔法で氷の 鏃(やじり) を作って攻撃魔法風に飛ばしたり。

敷物の上で胡座で座りながら見ていたレオニスとラウルが「おおー、器用なもんだな」「さすがは小さなご主人様だ」と感心しながら拍手をしている。

そうしているうちに、ライトが作った透明な雲が全て霧雨に代わり雨が止んだ。

ライト謹製霧雨を、最後の一滴まで堪能し終えた水の女王達。次々と小島に戻ってきた。

『あー、楽しかった!』

『ねぇ、ライト君、また次に会えた時でいいからあの雨を降らせてよ』

『ボクもまたあの雨に当たりたーい☆』

『うんうん♪ あの雨を浴びて、何だかとっても力が漲ってきた気がするもんねー♪』

皆大満足な様子で、早速ライトに次もあの雨を降らせて!とおねだりしている。

ライトが作ったあの雨の、一体どこがそんなに気に入ったのか。ライト自身さっぱり分からない。

だが、目覚めの湖の仲間達がこれ程喜んでくれるならライトも悪い気はしない。それどころか、アクア達にはいつも世話になってるんだから、これくらいのお願いは叶えてあげなくっちゃね!と思う。

なのでライトは「うん、いいよ!」と快く答えていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトとアクア達が仲良く話していると、レオニスがライトに話しかけた。

「さて、そしたら最後のテストをするか」

「うん!最後の風魔法では、何をすればいいの?」

「そうだなぁ……生活の中で風魔法を使う場面ってーと、洗濯物や髪の毛を乾かしたり、弱めの風を操ってゴミを集めて掃除に用いるくらいだが……ライトはいつもどんな時に風魔法を使ってるんだ?」

「えーとねぇ、ぼくの場合はやっぱりカタポレンの森の中で使うことがほとんどかな。森の中の移動とか、朝の魔石回収の時に飛んで移動してるんだ」

地水火風、四大属性の最後のテストは風魔法。

ライトの風魔法の実力を見極めるためには、何をしたらいいかをレオニスが考えている。

故にライトの普段の生活の中で使う風魔法を尋ねた訳だ。

そしてその答えは『カタポレンの森の中で飛び回っている』―――間違ってもそれは普通の九歳児がすることではない。実に人外ブラザーズに相応しい答えである。

ただし、それを聞いているレオニスは当の人外ブラザーズ兄だし、ラウルももはやライトが飛び回る姿を見慣れてしまっているので何とも思わないのだが。

しばらく考え込んでいたレオニスが、ふとニヤリ……と笑う。

「そしたらライト、俺とまた追いかけっこするか?」

「え"ッ!? レオ兄ちゃんと追いかけっこ!? するするー!!」

レオニスが選んだ風魔法のテストは『飛行能力を使った空中追いかけっこ』。

このサイサクス世界で空を飛ぶ方法はいくつかあるが、単身で飛ぶなら風魔法を駆使するのが最も手早い。

しかも長時間飛べばそれだけ魔力を消耗するし、勢いをつけて加速するにも魔力が要る。さらには飛ぶ方向をコントロールするのだって神経を使う。

そうした耐久力やコントロール力を見るのに、空中追いかけっこは最適!という訳だ。

そしてこのレオニスの提案に、ライトが飛び上がって喜ぶ。

ライトがレオニスと追いかけっこをするのは、今年の四月にコルルカ高原の金鷲獅子アウルムを訪ねた時以来。

あの時も結構な応酬を見せたが、三十分の追いかけっこで勝利を手にしたのはレオニスだった。

その時のリベンジ戦というのもあるが、ライトにとっては純粋に 強者(レオニス) を相手に繰り広げる追いかけっこがものすごく楽しかったのだ。

「じゃあじゃあ、何分やる!?」

「そうだな、あんまり長く続けてアクア達を放ったらかすのも悪いしな……ここは十分くらいで」

『え? 僕も追いかけっこに混ぜてくれないの?』

「「え"???」」

追いかけっこを何分の間続けるかを話し合うライトとレオニス。

レオニスとしては、ライトと二人だけで空をビュンビュン飛び回って他の者達を放置するのは忍びない、と思ったのだが。

何とそこでアクアが追いかけっこに混ざる気満々なことが判明した。

ウッキウキな様子で『レオニス君とはいつも追いかけっこしてるけど、ライト君とするのはこれが初めてだよね。楽しみだなー!』と張り切るアクアに、ライトとレオニスはただただ呆気にとられている。

ライトの魔力テストだというのに、そこに第三者でしかも水神であるアクアが混ざってもいいもんなの?と思わなくもないのだが。

だがしかし、追いかけっこと言えばアクアのことを真っ先に思い出すくらいには、アクアは追いかけっこが大好きだ。

水中空中問わず、常にレオニスと追いかけっこをしては負けたり勝ったりを繰り返しているアクア。

そんなアクアが『追いかけっこ』という言葉を聞いて、黙って見過ごせるはずがない。

最初のうちは呆気にとられていたライトとレオニスだったが、どちらからともなくフフッ、と笑った。

「うん、そうだね、アクアも追いかけっこしたいよね!」

『うん!今日は僕が勝つよ!』

「いやいや、俺だってそう簡単に負けてやらんぞ?」

勝つ気満々のアクアに、ライトは嬉しそうに微笑みレオニスは早くも負けず嫌いを発揮している。

「じゃあ、ぼくとアクアとレオ兄ちゃんの三人で追いかけっこね!何分にする?」

『僕は日が暮れるまででもいいし、何なら朝までやってもいいよ?』

「バカ言え、たかが魔力テスト一つのためだけにそこまでできんわ……よし、そしたらこないだと同じ三十分勝負にするか」

「三十分ね、分かった!」

次なる課題、追いかけっこの時間は三十分に決まった。

途中アクアがとんでもない無茶振りをしていたが、さすがにそれはレオニスに速攻で却下されていた。

「よし、じゃあまずは俺が鬼な。あと、もし俺がアクアを先に捕まえてもライトを追っかける役は止めんからな。そもそもこれは風魔法の魔力テストなんだから、最後まで気を抜くなよ」

「うん!」

「そしたらラウル、俺がスタートしてから三十分経ったらこの狼煙に火を付けて教えてくれ」

「はいよー」

「あ、あと、ライトは魔力回復のエーテルを飲んでもいいが、飲んだ種類と本数はきちんと覚えておけよ」

「はーい!」

「さて、と。そしたら俺も準備運動…………ン?」

風魔法の魔力テスト、追いかけっこの要点をテキパキと決めてラウルやライトに指示を出すレオニス。

そして自分も身体を動かす準備をしようとしたレオニスに、何故かアクアが熱い視線を送っていた。

「『………………』」

しばし無言で見つめ合う両者。

アクアの『僕にも何かかける言葉、あるよね?』という、謎の期待感に満ち満ちた眼差し。

いつもクールなアクアが、誰の目にも明らかなくらいにその瞳をキラキラに輝かせることは珍しい。

その純粋な眼差しに根負けしたレオニス。ふぅ……と小さくため息をついた後、アクアに声をかけた。

「アクアは…………うん、時間がくるまで目一杯追いかけっこを楽しんでくれ」

『はーい♪』

レオニスからの言葉を聞けて満足したアクアが、右前肢をピッ☆と上げて意気揚々と返事をした。

大好きな追いかけっこを、大好きなライトと大好きなレオニスとともに三人でできる喜びに、アクアは終始ご機嫌だ。

「じゃ、ライトとアクアが飛んでから十秒後に俺もスタートするからな。始めるぞ!」

レオニスの掛け声を聞いた瞬間、ライトとアクアがそれぞれ別方向にバッ!と勢いよく飛んだ。

それからレオニスは十秒数え、とりあえずアクアが飛んだ方向に飛び出していった。

一方小島の敷物の上で事の推移を見守っていた水の女王やウィカは『アクア様ー、頑張ってー!』『ライト君もアクア君も、レオニス君もガンバー☆』と応援し、ラウルは右手に懐中時計を持ちながら「相変わらずご主人様達は元気が有り余ってるな」と呟いている。

そしてラウルは徐に立ち上がり、両腕を真上に上げて背伸びをした。

「ンーーー……さてと、そしたら俺も二十分ほど湖底で貝採りしてくるか」

『あら、追いかけっこの時間を計るんじゃないの?』

「今回は勝ち負けの勝負じゃなくて、三十分目一杯追いかけっこをする魔力テストだからな。俺の役目は三十分後に狼煙を上げて時間を知らせるだけだから、それまでは自由時間だ」

『それもそうね。そしたら私も、ラウルの貝採りにいっしょについていっていい?』

「もちろん。ココちゃんや闇の女王が目覚めの湖に遊びに来た時に、食べさせてやる魚や貝を選んで採っておかんとな」

『うん!』

三十分の自由時間を得たラウル、早速目覚めの湖の貝を採りにいくという。

そんなラウルに水の女王が同行を願い出たのは、ラウルと同じ目的だったようだ。

一旦敷物を片付けてから、イードの背に乗って湖底に向かうラウルと水の女王とウィカ。

こうしてライト達は空中追いかけっこ組と貝採り組に分かれ、それぞれ時間になるまで楽しく過ごしていった。