軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第147話 帰宅

ディーノ村の冒険者ギルド転移門から、そのままカタポレンの森の家に転移し帰宅したライトとフェネセン。

転移門があるのはライトの部屋なので、そのまま荷物を下ろしたり部屋着に着替えているとレオニスが部屋の中に入ってきた。

「ライト、フェネセン、おかえり」

「あっ、レオ兄ちゃん!ただいまー!」

「レオぽん!たッだーいまー!」

レオニスがすぐに出迎えてくれたことが嬉しくて、ライトだけでなくフェネセンもレオニスに飛びついてハグをした。

「おうおう、二人とも元気だな!疲れてないか?」

「んー、疲れたは疲れたけど、それ以上にすっごく楽しかった!」

「吾輩もライトきゅんの護衛ちゃんとしたよ!氷の洞窟からツェリザークに帰る途中で邪龍の残穢に出くわしたけど、クレアどんと吾輩でしっかりライトきゅん護ったもん!」

「何っ、邪龍の残穢!?」

帰宅早々、邪龍の残穢などというとんでもない単語がフェネセンの口から飛び出してきたことに、レオニスは驚きを隠せない。

だが、その驚愕もすぐに収まる。

「……まぁな、クレアだけでなくフェネセンもいれば邪龍の残穢如きに遅れを取る訳はないが……」

「にしても、よくもまぁ邪龍の残穢なんつー珍しいもんに出くわしたもんだな……」

「ま、そこら辺は後でまた詳しく聞かせてもらうとして……」

コホン、と軽く咳払いをしつつ、チラッ、とライトとフェネセンを見ながらレオニスがニカッ、と笑いながら二人の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「じゃあ、今から皆でラグナロッツァの家に行くか。ラウルが飯作って、ライト達の帰りを首を長くして待ってるはずだから」

「うん!ぼく、お腹すいてきちゃった!」

「うん!吾輩もお腹ペコペコ!」

ふと窓の外を見ると、もう空はだいぶ暗くなっていた。

三人はラグナロッツァの屋敷に移動した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ラウル!ただいまー!」

ラグナロッツァの屋敷に着いて早々、ライトはラウルを呼ぶべく大きな声で帰宅を告げる。

ライトの期待通り、程なくして音も立てずに現れたラウル。

「おう、おかえり、ライト」

「フェネセンもライトの護衛お疲れさん」

「大きなご主人様も来たか、皆の分の晩飯できてるぞ」

「早速食堂いって食うか」

「「うん!!」」

ライトとフェネセンが元気よく答える。

四人は食堂に移動し、既にそこにいたマキシとともに皆で晩御飯を食べ始めた。

「ふーん、アルとシーナの方からライト達の方に向かって来たのか」

「アルとクー太、仲良く遊んだのか。そりゃ良かったな、アルもまた友達できて嬉しいだろう」

「テバブ30個!?あれ結構大きかったろ?……ライト以外の全員が10個近く食ったんか、そりゃしゃあねぇな……」

今日の出来事をレオニス達に話して聞かせるライトとフェネセン。

食事を食べ終え、そのまま食堂でのんびりと食後のお茶を楽しむ一同。

一息ついてから、皆へのお土産を出し始める。

「ラウルから頼まれていたツェリザーク名物の氷蟹、結構買えたよ!フェネぴょん、出してくれる?」

「うぃうぃ、ラウルっち師匠、ライトきゅんが選んだ氷蟹だぞー!」

食堂の大きなテーブルに、フェネセンの開いた空間魔法陣からどっさりと出てきて山積みになる氷蟹。脚20本に爪3個に胴体3個、〆て26個分。

個数として見ればそこまでではなさそうに感じるが、実際にはもとが魔物なだけにパーツのひとつひとつがかなり大きい。小さめの脚ですら1本の太さがレオニスの足より一回り以上大きいのだ。

甲殻などの食べられない部分もあるが、脚一本だけでもさぞかし食べ甲斐があると思われる。かにしゃぶならば、軽く10人前以上になるのではないだろうか?

このサイズならば、一本2500Gという値段も頷けるというものだ。

「うおっ!こりゃまたたくさん買ってきたな!」

「おお、これはかなり鮮度も良さそうだ、劣化しないうちに仕舞っておかんと」

「しかし、あればあるだけ買ってきてくれとは頼んだが、いいのか?こんなにたくさん買ったなら相当な値段になっただろうに、金は足りたのか?」

ラウルは目の前に現れた大量の氷蟹に驚きつつ、若干ホクホク顔になりながら早速自分の空間魔法陣に収納し始める。

そして、思った以上に氷蟹が確保できたことを喜びつつも、そのあまりの量の多さにライトの懐具合の心配もする。

「うん、大丈夫だよ。レオ兄ちゃんからもらったお土産代で何とか足りたから」

「そうか、ならいいが……」

「あ、こっちは氷蟹とは別に、向こうで売ってた調味料類ね。ラウルはお料理好きだから、こういう調味料も好きそうだと思って」

「おお、ありがとう。こりゃライトの期待に応えてやらなきゃならんな、これからますます美味いもの作ってやるから期待してな」

「「わーい、やったぁ!」」

「「……ん??」」

ラウルからの嬉しい反応に、ライトだけでなく何故かフェネセンも両手を上げて万々歳状態で大喜びしている。

その反応に、思わず反射的にフェネセンの顔を見るライトと、これまたライトの反応に反射的にライトの顔を見返すフェネセン。

互いに横にいるライトとフェネセン、万歳したまま顔を90度真横に向けて双方しばしきょとんとしたまま無言で顔を見合わせ続ける。

「「…………」」

「……ぷぷッwww んもー、フェネぴょんてば食いしん坊なんだからぁー」

ライトの方が先に噴きだし笑いした。

これからいつ終わるとも知れぬ、長き旅路に出るフェネセン。そんな彼が、ラウルの美味しい料理をこれからも食べ続ける気満々なのがライトにはたまらなく嬉しかった。

そしてその喜びは、ライトのみならずレオニスやラウルも同様に感じていた。

「うん、吾輩食いしん坊!美味しいもの大好き!特にラウルっち師匠の作るものは全部大好物よ!」

「じゃあこれからも、ラウルにはたくさん美味しいごちそうを作ってもらって皆で食べようね!」

「うん!そしてまたラウルっち師匠の秘蔵の食材、全部空っぽにしちゃうぞー!」

「「おー!!」」

ライトとラウルが拳を高々と上げて、機嫌良く気勢を上げる。

それを見たラウル、若干焦りだす。

「えッ、ちょ、待ッ、フェネセン、お前がそれ言うと冗談に聞こえんからやめろ」

「ラウル、心配するな。フェネセンが旅の休憩で戻ってきた時には、きっと世界中の珍しい食材を手土産に持ってきてくれるはずだから」

「えッ、ちょ、待ッ、レオぽん、吾輩に土産を選ぶセンスなど求めてはイカンザキよ?」

「おお、そうか。フェネセンはこれから世界中を旅して回るんだもんな、料理の師匠として弟子の目利きを期待して待ってるぞ!」

「えッ、ちょ、待ッ、ラウル、レオ兄ちゃんまであんまりフェネぴょんいじめちゃダメだよ?」

フェネセンに御自慢の食材庫を空にする宣言をされて焦るラウルに、心配ないと言いつつその矛先をさり気なくフェネセンに向けるレオニス。

レオニスに向けられた矛先に焦るフェネセンに、ニヤリと笑いつつキラッキラに輝く爽やかな笑顔で期待を寄せるラウル。

そのラウルの笑顔を見て、ラウルとレオニスのフェネセンいじりを焦りながら慌てて窘めるライト。

「ううう……吾輩の身を案じてくれるのは、やっぱりライトきゅんだけなんだぁー。ライトきゅん、ありがとーぅ!大好きー!」

「ううん、ぼくだけじゃなくて皆もフェネぴょんのこと心配してるし、大好きだからねッ!」

ヒシッ!と抱きしめ合う、ライトとフェネセン。

その姿は、感動的ですらある。

周囲はそれを、やれやれ、といった空気で少しだけ笑いながら眺めている。

「でもさ、フェネぴょん……」

「ン?ライトきゅん、なぁに?」

ライトの言葉に、何事かと小首を傾げつつ尋ねるフェネセン。

「実はぼくも、フェネぴょんからの世界中のお土産、ちょっとだけ期待してるからね!」

Σガーン! ←フェネセン

「でもって、天空島とか古代遺跡とか海底神殿とか、珍しいところ行く時には絶対にぼくも連れてってね!」

Σガガーン! ←フェネセン

「特に天空島は絶対だよ!いっしょに行くって、前にも約束したよね!忘れないでね!」

Σガガビーン! ←フェネセン

レオニスやラウル以上に過大な期待をライトから寄せられていることを知り、都度落雷ショックを受けるフェネセン。

最後の方はもう、どこぞのムンクの叫びの如き阿鼻叫喚顔である。

「ううう……ライトきゅんからの期待が一番大きかった件」

「そうだぞ、フェネセン。うちのライトの期待に応えて、世界中の珍しい土産を揃えてきてくれよな!」

「俺も氷蟹以上に珍しい品物待ってるからな!弟子の目利きに期待しているぞ!」

「……フェネセンさん、頑張ってくださいねぇ……」

一番最後のマキシだけがフェネセンに同情的な表情をしながら、フェネセンの肩をポンポン、と優しく叩く。

だが、ここにいる全員が知っている。

今の一連のこのやり取りは、その全てが『フェネセンが皆のもとに帰ってくる』という前提ありきの会話であることを。

世界中の食材や珍しい手土産なんかよりも、それを持ち帰ってくるフェネセン自身が無事であることが何よりの土産なのだ、という思いが込められていることを。

皆が皆照れ屋なのか分からないが、表立って口にはせずともそうした思い遣りの心から来る言葉が交わされる。

この日のラグナロッツァの屋敷には、温かな笑い声が絶えることなく響き続けていた。