軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1451話 魅惑のショーと魅惑のグッズ

「はぁー……すっ……ごく楽しかったねぇ」

「うん……すっ……ごく楽しかったぁー」

「すっ……ごいカッコよかったねぇ……」

「うん……あんなすっ……ごいショー、私初めて見たぁー」

「私も初めてですわ……すっ……ごい見応えでしたねぇー」

「ホンッ……トにすごいショーでしたねぇー……」

「いやー、人族が作る文化ってのは本当に大したもんだ」

ポーッと上気した顔で呟く五人の子供達とマキシ。

さすがにラウルはそこまで心酔していない風を装っているが、実はショーのクライマックス時には拳を高々と振るい上げて「うおおおおッ!そこだー!いッけーーー!」と子供達に混じって大声援を送るくらいには、夢中になって観劇していたようである。

約三十分の演劇ショーの後、前売り券を所持している観客を対象にレインボースライム戦士達のチェキ撮影会が行われた。

赤・橙・黄・緑・青・藍・紫、七色のレインボースライム戦士のうち、好きな色のスライム達を指名してツーショットのチェキ撮影をする子供達。

男の子に人気だったのは緑、青、藍の寒色系、女の子には赤、橙、黄色の暖色系が人気だった。

ライトは青、ジョゼは藍、イヴリンは赤、リリィは橙、ハリエットは黄色を選び、マキシは真っ先に紫のスライム戦士のもとに馳せ参じていた。

そしてラウルもちゃっかりとチェキ撮影会に混ざり、緑のスライム戦士と仲良く撮影していた。

「七体のスライム戦士が合体して、巨大ロボ?に変身するところがすごかったよね!」

「悪者のゴーレム怪人をパンチ一つで倒すスライムロボ、すっごくカッコよかったー!」

「てゆか、スライムってあんな風に合体できるんだね!」

魔法で撮影してらもらった絵写真を眺めながら、ショーの見所や感想を話し合うイヴリン達。

特にラストバトル、巨大化したゴーレム怪人を迎え撃つべく七体のスライム戦士が合体して巨大ロボ化し、一撃でゴーレム怪人を叩きのめした場面は、イヴリン達だけでなくその場にいた観客全員が立ち上がって歓声を上げていた。

ちなみにスライム戦士の巨大ロボは、頭が赤、胸が橙、腰が黄色、右腕が緑、左腕が青、右足が藍、左足が紫という、何ともカラフルな合体だった。

見所満載の戦隊ショーに、未だ興奮冷めやらぬ級友達。その横で、ライトもニコニコ笑顔で頷いている。

前世での人生を足せばとっくにアラフォーを過ぎたライトだが、こうした観劇ショーを観るのはワクワクするし純粋に楽しいと思う。

しかもそれが仲の良い級友達とともに来ているのだから、楽しさ倍増である。

こうして大盛況のうちに幕を閉じたレインボースライム戦隊ショー。

ショーの観劇の後は、お約束のグッズショップチェックである。

売店の中はたくさんの人達で混雑していて、こちらも大盛況だ。

ライト達も早速買い物を始めたのだが、グッズをチェックするライトの名を呼ぶ者がいた。

「あら、ライト君じゃなーい」

「……あッ、スライム飼育場のお姉さん!こんにちは!」

「こんにちはー♪」

ライトに声をかけてきたのは、スライム飼育場で受付嬢をしている女性職員、ジュリアだった。

ジュリアは会計所を担当していて、会計客がちょうど途切れたところで客の中にライトがいるのが目に留まったようだ。

思わぬところで顔見知りに会えたことに、ライトが嬉しそうにジュリアの前まで駆け寄った。

そんなライトにジュリアもニッコリと微笑みながら、優しい口調で語りかける。

「レインボースライム戦隊ショー、どうだった?」

「すっごく楽しかったです!もしかしてこのスライム戦隊ショーも、スライム飼育場が開催してるんですか?」

「そそそ、団体としては別なんだけどね。経営母体が同じだから、スライムに対する警備員兼売り子として私達も毎回駆り出されるのよー」

「出張ですかー、連休中のお仕事お疲れさまですー」

「いえいえ、これも私達の仕事の一つですので。ちなみにロルフは舞台裏で大道具兼監視員をしているわよー」

系列団体に出張で仕事に来ているジュリアに、ライトが労いの言葉をかける。

何とも律儀で子供らしからぬライトに、ジュリアがフフフ、と嬉しそうに微笑む。

スライム飼育場でのジュリアはいつもピシッとした制服を着ていて、蘇芳色の長い髪を後ろで一つにまとめていて『出来る女性オーラ』が半端ないのだが。今日は売店の売り子をしているせいか、ラフな私服のワンピースの上に団体関係者用と思われる縦縞のレインボーカラーのエプロンを着用し、長い髪も緩めの三つ編みにしていて笑顔も柔らかな印象だ。

そして、ライトがスライム飼育場で懇意にしているロルフもスライム監視員として駆り出されているらしい。

公国生誕祭で観に行くスライムショーにも、ロルフとジュリアは毎回スライム監視員として派遣されているが、今回のロルフは舞台側の裏方なのでライトと顔を合わせることはなかった。

するとここで、少し離れた場所にいるラウルがライトに声をかけた。

「おーい、ライトー、こっちにいいもんがあるぞー」

「あ、うん、今行くー!お姉さん、また後でお会計よろしくお願いしますね!」

「ええ。ここでしか売っていない品もあるから、ゆっくりお買い物を楽しんでねー」

「はーい!」

小さく手を振るジュリアに、ライトはペコリ、と一礼してからラウルのもとに駆けていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうしてジュリアと一旦分かれ、ラウルと合流したライト。そこにはマキシもいて、二人して一つの商品を指差している。

ラウル達が指差す商品を見て、ライトの目がこれでもか!というくらいに輝き始めた。

「ふぉぉぉぉ……こ、これは……」

「な? これ、すっごくいいよな?」

「うん、すっごく欲しい……これ、絶対に買う!」

ライトが瞠目しながら見つめている品、それは『人をダメにするクッション』である。

大きさはカタポレンのコテージに置いてあるものと同じくらいで、縦縞のレインボーカラーが見目鮮やかな逸品だ。

現物を触ってみると、むっちりとした手応えと沈み込む感触が何とも心地良い。このクッションに座ったら、間違いなく全身を優しく包み込まれてしばらくは動けなくなるだろう。

そしてこのクッション、何とこのイベントだけの限定品らしく、商品解説のポップに『限定七個』と書かれているではないか。

しかしここには五個しかなく、どうやら既に二個は売れたらしい。

五個しかないイベント限定品という謳い文句は、ライトの購買意欲を刺激しまくることこの上ない。

だが、唯一の問題はそのお値段。

クッションの棚に貼られていた値札を見ると、何と1500Gもするではないか。

クッション一つに15000円とは驚愕だ。前世のライトだったら、絶対に手出しせずにスルーを貫く値段である。

ライトは七色のクッションの前で悩み始めた。

「うーん、一個1500Gかぁ……結構いいお値段だね……今ぼくが持っているお小遣いだと、一個買うのが精一杯だなぁ」

「そしたら残りの四つは、俺とマキシが二個づつ買おう」

「え、いいの?」

お高いクッションの前で悩むライトに、ラウルとマキシが手を差し伸べた。

思わぬ救いの手に、ライトがびっくりしながらラウルの顔を見つめた。

そんなライトに、ラウル達がクッションを触りながらその理由を語る。

「もちろん。俺達もこのクッションの魅力はよーく知ってるからな」

「ええ!僕もこのクッションが是非とも欲しいです!」

「つーか、これを五個買えば俺達三人の分だけでなく、ご主人様とラーデへの土産にもなるだろ?」

「!!!!!」

二人の言葉、特に『レオニスとラーデへの土産にもなる』というラウルの言葉に、ライトの目が大きく見開かれる。

先日のクロエのお泊まり会で、コテージに置いた『人をダメにするクッション』は人魔問わず魅了した。

その心地良さはライトやラウル、マキシだけでなくレオニスとラーデも知っているだけに、彼らへの土産にしたいと思うラウルの気持ちはライトにも十分理解できた。

「そうだね!これを買っていけば、レオ兄ちゃんもラーデもきっとすっごく喜んでくれるよね!」

「そうそう。あのご主人様は時々働き過ぎなところがあるからな。このクッションで少しくらい堕落させてやるのもいいだろ」

「ププッ……ラウル、そんなこと言うとレオ兄ちゃんに怒られるよ?」

万能執事の何とも不遜な物言いに、思わずライトが噴き出している。

確かに今この場にレオニスがいたら「何だとぅ? ラウル、お前、この俺に仕事をサボらせようってのか? あァン?」とか言いながら、ラウルの頭を問答無用でヘッドロックしそうだ。

しかし、そんなことで引き下がるラウルではない。

シレッとした顔で事も無げに口を開く。

「そしたらライトが俺を擁護してくれ。ライトの言うことなら、ご主人様も引き下がるだろ」

「フフフ、そうだね。レオ兄ちゃんが過労で倒れちゃ困るもんね」

「そうそう。小さなご主人様よ、俺達のためにも擁護を頼んだぞ」

「うん、任せてー!」

レオニスの怒りの矛先を逸らせ!と無茶振りするラウルに、ライトがくつくつと笑う。

実際のところ、あの体力お化けのレオニスが多少のことで過労になるとは誰も思っていない。

しかし、世の中何が起こるかなんて誰にも分からないのも事実。

特にレオニスは、世界最強の金剛級冒険者という肩書が持つ多大な責任を負わねばならない場面にも時として出食わす。

そうした時に、強制的に身体を休めさせるようなアイテムがあってもいいかもしれない。

たかがクッション、されどクッション。

レオニスの身を案じる思いは、ライトだけでなくラウルやマキシも同様に持っているのだ。

「じゃ、この五つのクッションは俺とマキシが先に会計しておくから、ライトはイヴリンちゃん達と他の土産を見てきな」

「うん!ぼくが出す分のお金は、後で渡すからよろしくね!」

「おう、任せとけ」

「いってらっしゃーい」

クッションの会計を引き受けてくれたラウルとマキシに、ライトが笑顔で級友達のもとに駆け出していく。

ラウルでさえも両腕で抱える、超巨大なクッション。

普通なら一個持ち帰るだけでも大変だが、空間魔法陣持ちのラウルがいれば全く問題はない。

級友達が楽しそうにスライムグッズを選んでいる輪の中に、ライトも飛び込んでいく。

ライトが級友達と合流したのを見届けたラウルとマキシは、ライトとの約束通り巨大クッション五個全てを購入するために会計所に向かっていった。