軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1433話 ライトの素朴な疑問

レオニスやライトが、身振り手振りで語る様々な冒険譚。

それを聞くクロエや八咫烏母娘達は、都度驚いたり笑ったりハラハラドキドキしたりしていて、コテージの中はずっと大盛り上がりである。

しかし、どんなに楽しくても睡魔にはなかなか勝てないものだ。

ふとライトが気がつくと、八咫烏母娘達は人をダメにするクッションに埋もれてうつらうつらと船を漕ぎ始めていた。

「あ、アラエルさん達、もう眠そう」

「お、ホントだな。アラエル、ムニン、トリス、ミサキ、皆もう上で寝るか?」

「……フニャムニャ……」

「……(スゥスゥ)……」

「……(スヤァ)……」

「……ラウルちゃんのご飯、美味ちぃね~……」

レオニスの問いかけに、四羽とも寝息や寝言を漏らしている。

目も全員完全に閉じられており、すっかり寝てしまったようだ。

そんな家族達を見ながら、マキシが皆に謝る。

「皆さん、母様達が先に寝てしまってすみません。僕達八咫烏は、いつも夜になると各々の巣で早々に眠りにつくものでして……」

「ううん、そんなのマキシ君が謝ることじゃないよ」

『そうよ!昼起きて夜寝る種族なら、それは当たり前のことだもの!』

マキシの謝罪に、ライトやクロエが懸命にフォローしている。

そんな和やかなやり取りを見て、レオニスが小さく笑いながら徐に立ち上がった。

「そしたら、アラエル達を二階のベッドに連れていって寝かせてやるか。ライト、ラウル、マキシ、手伝ってくれ」

「うん!」「おう」「はい!」

レオニスの呼びかけにライト達もすぐに立ち上がり、八咫烏母娘達をそっと抱き上げた。

ライトはミサキ、レオニスはムニン、ラウルはトリス、マキシはアラエル。

気持ち良く寝ている彼女達を起こさないよう、ゆっくりとした動きで抱き抱える。

「ココ、闇の女王、少し待っててくれるか?」

『えー、せっかくならココも二階のお部屋を見たーい』

「そっか、なら俺達の後についてきてくれ。ただし、寝ているアラエル達を起こさないように、おしゃべりは小声でな」

『……(コクコク)……』

ぐっすりと寝ているアラエル達を気遣うレオニスの言葉に、クロエもすぐに応じて声を出さず首を縦に降って応える。

そうして皆で二階に上がり、階段から一番近い部屋に入った。

部屋の中にある二つのシングルベッドの上に、アラエルとムニン、トリスとミサキをそれぞれ置いて寝かせる。

今は黄金週間で五月初旬。時期的にはそこまで寒くはないが、それでも朝晩はまだ若干冷えるので四羽に毛布を一枚かけてやった。

ライト達が八咫烏母娘をベッドに寝かしている間、クロエと闇の女王は二階の部屋の作りを興味深そうに眺めている。

『へー、パパ達はこの台の上に寝転んで寝るの?』

「そうだよー。ココちゃんは、いつもどんな風にして寝てるの?」

『ココはねぇ、神殿の床でこんな感じで寝てるよー』

ライトの問いかけに、クロエが自分の寝る姿勢を実践してみせる。

下半身の大蛇の部分で 蜷局(とぐろ) を巻いてから、その上に上半身を凭れかけている。

確かにそれは、蛇の習性としては正しい寝方であろう。

「それだと床が冷たくて、身体が冷えたり痛くなったりしない?」

『ンー、特にそう感じたことはないけど……そもそも洞窟の中はずっと暖かくて、寒いとか感じたことないし。でも、この台の上で寝る方が気持ち良さそうとは思うかなー。ただ、この台だとココにはちょっと小さそうだけど』

ひそひそ声で話を続けるライトとクロエ。

八咫烏母娘を寝かせ終えたので、ライト達は再び一階のリビングに戻った。

そしてクロエが再び人をダメにするクッションに飛び込む。

ボフンッ!と勢いよく飛び込む様から、クロエがそのクッションを如何に気に入っているかがよく分かる。

それを見たレオニスが、ラウルにこっそりと耳打ちした。

「ラウル、あのクッションと同じものを二つ、また買ってきておいてくれ。金は後で渡す」

「了解ー」

レオニスの指令に、ラウルが詳細を尋ねることなく引き受ける。

それはきっと、クロエと闇の女王にプレゼントするものなのだろう、ということがラウルにもすぐに理解できたからだ。

八咫烏母娘達が脱落し、少しだけ広く感じるリビング。

その後も再びライト達とクロエ、闇の女王とのおしゃべりで盛り上がっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ココはいつも、闇の精霊の目を通してどんな景色を見ているんだ?」

『ンーとねぇ、森の中だと大きな熊さんが散歩してるところとか、同じく大きな蛇さんと熊さんが殺し合いしてるところとか?』

「ぉ、ぉぅ、何気に物騒だな……」

『うん。あ、でもね、ココは砂だらけのところでたくさんの星が綺麗に輝くお空がお気に入りなの!』

自分達が話すばかりじゃつまらん!とばかりに、今度はクロエの話を聞くライト達。

するとここで、ライトがクロエに問うた。

「人が住む街はあまり見ないの?」

『夜の人里って、見ててもあまり楽しくないのよね。色のついた水を飲んで言い争いしたり、喧嘩を始めたりするから』

「そ、そうなの……それは確かに見てても面白くないね……」

『でしょでしょ?』

ライトの質問に、クロエが小さくため息をつきながら残念そうに答える。

クロエが見たそれは、主に夜の酒場でのワンシーンと思われる。

確かに酔っ払い同士が絡む場面など、ろくなものではない。

しかし、クロエがはたとした顔で付け足した。

『あ、でもね? こないだ見た人里は、夜のお空に大きなお花がたくさん咲いてて、すっごく綺麗だったの!』

「大きなお花?」

『うん!それは、すーーーっごく大きなお花でね? 咲いたらすぐに消えちゃうんだけど、赤や青、黄色に桃色、金色や銀色の花びらがたくさんお空に広がるんだよ!』

「あー、それは打ち上げ花火だね」

クロエが語る夜空に咲く花。それは間違いなく打ち上げ花火のことである。

毎年一月中旬に催されるアクシーディア公国生誕祭でも、最終日には祭りを締め括る盛大な打ち上げ花火が上がる。

クロエが見た花火が公国生誕祭のものかどうかは分からないが、確かにそれは人里で見られる最も美しい夜景の一つであろう。

するとここで、今度はレオニスがふとクロエに問うた。

「そういやココは、闇の精霊だけでなくマードンの目を通しても外の世界を見れるんだったよな?」

『うん』

「マードンが見る景色ってのは、どんなもんなんだ? あいつなら昼間も活動できるから、闇の精霊ではなかなか見られない昼の景色も見れるんじゃないか?」

レオニスの問いかけに、何故かクロエが渋い顔をしている。

『……ンー……アイツ、昼も夜もぐーすか寝てるばっかで、アイツの目を通して見た景色で面白いと思ったことはほとんどないんだよねー……』

「そ、そうなんか……その様子だと、全然役に立ってなさそうだな?」

『うん……アイツ、態度だけじゃなくて図体もデカいでしょ? だからあの姿のままで人里に潜り込むのも無理だし。でもまぁね、ココ達の近くにべったりまとわりつかれても困るから、外で好きなようにさせてるけど』

「「「「………………」」」」

半ば呆れたように言い捨てるようなクロエの口調に、ライト達が言葉を失う。

クロエの洗脳により、廃都の魔城の四帝配下から解放されてクロエの下僕となったマードン。

天空島で起きた邪竜の島討滅戦では、少しばかりクロエの役に立っていたようだから、その調子で普段も役に立っているのかと思いきや。全くそんなことはなかったようだ。

その話の流れで、ライトはとあることを思い出してクロエに話しかけた。

「あ、そういえばぼく、ココちゃんに一つ聞きたいことがあるんだけど」

『ナぁニ?』

マードンの話で少し不貞腐れたような顔をしていたクロエ。

大好きなライトの質問に、打って変わって表情が明るくなる。

そんなクロエに、ライトは単刀直入に質問した。

「ぼく達はココちゃんの加護をもらってるけど、そんなぼく達でもココちゃんの目を見たら石化するの?」

「「「『『………………』』」」」

ライトの思いがけない質問に、リビング内は瞬時に静まり返った。