軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1431話 初めてのお外

日が落ちゆく空の下、クロエを迎えに行くライトとレオニス。

暗黒の洞窟に到着し、魔物除けになる闇の勲章をジャケットやマントの内側に忍ばせてから中に入る。

そうして最奥の間に辿り着くと、魔法陣の前にクロエと闇の女王が待ち構えていた。

『パパ、ライトお兄ちゃん、いらっしゃい!』

「ココちゃん、闇の女王様、こんばんは!」

『二人とも、よく来たの』

「二人とも元気そうで何よりだ」

ニコニコ笑顔でライト達を出迎えるクロエ。

口角はずっと上がりっぱなしで、頬に紅が差したように紅潮したにこやかな笑顔。しかもいつもはおとなしい蛇髪まで、主に負けないくらいにそわそわしたようにうねうねと蠢いている。

それだけライト達の来訪を、今か今かと心待ちにしていたのだろう。

そしてクロエが挨拶もそこそこに、レオニスに問いかけた。

『ねぇ、パパ、もうすぐ夜になるこの時間に、ここに来たってことは……もしかして、お泊まりのお出かけしていいってこと?』

「ああ、迎えに来るのが遅くなってすまない。ココ達さえ良ければ、今日は俺達が住む家に招待しようと思ってな。どうだろう、今日行けるか?」

ワクテカ顔のクロエの頭を、レオニスが優しく撫でる。

待ち望んでいたレオニスの誘いに、クロエが一も二もなく頷きながらガバッ!と後ろを振り返り、闇の女王に同意を求めた。

『もちろんよ!ママ、いいよね!?』

『もちろんですとも。以前から約束していたことですし、闇満ちる間ならば吾もお供できますからな』

『ヤッター!ありがとう、ママ!大好き!』

闇の女王のOKが出た瞬間、クロエがものすごく嬉しそうに闇の女王に抱きついた。

満面の笑みで抱きついてくるクロエに、闇の女王が小さく微笑みながらその頭を優しく撫でつつレオニスに声をかける。

『この通り、ココ様はずっとこの日を待ち侘びておられた。早速其の方らの家に行こうではないか』

「そうだな。家ではラウルとマキシがココ達のために、ご馳走を用意して待ってるからな」

『ホント!? じゃあ皆で今すぐ行こう!』

レオニスの言葉に、闇の女王に抱きついていたクロエがまたもガバッ!と振り返り嬉しそうにはしゃぐ。

そうして四人は暗黒の洞窟の最奥を出て、レオニスの家に向かっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

夕暮れ時の茜色に染まるカタポレンの森を、ライト達四人が飛んでいく。

飛行速度はクロエに合わせているが、それでもかなりの速さが出ている。

大蛇の身体を持つメデューサ族が空を飛ぶというのは、実に珍しい光景だ。

背中に生えた新しい黒翼を器用に動かし、一生懸命に飛んでいるクロエ。

その両脇で飛んでいるライトやレオニスが、クロエに話しかけた。

「ココちゃん、飛ぶことにはもう慣れた?」

『うん!洞窟の中で、毎日ママと飛ぶ特訓をしてたの!だから、ほら、見て、ココもちゃんと飛べてるでしょ?』

「すごいね!」

「飛べるようになってからまだ日も浅いのに、こんなに上手に飛べるなんて、間違いなくココは天才だな!」

『えへへ……』

手放しで褒めちぎる人外ブラザーズに、クロエが照れ臭そうにはにかむ。

クロエの誕生日に、レオニスとラーデの尽力で彼女は新しい翼を得た。

その日以来、クロエは暗黒の洞窟の中で懸命に空を飛ぶ練習をしていたらしい。

その甲斐あって、ライトたちが思っていた以上にクロエは飛行能力を使いこなせるようになっていた。

そして初めて自分の目で直に見る外の景色に、クロエは終始感動しっぱなしだった。

『うわぁ……洞窟の外って、こんなにたくさんの木があるのね……』

「闇の精霊を通して見る景色とは、やはり違うか?」

『うん。洞窟の中にいても外の景色は見れるけど、外の空気のひんやりとした冷たさとか匂いまでは分かんないから……』

蛇髪を靡かせながら、目を閉じ森の空気や魔力をその肌で感じるクロエ。

洞窟の外に出るのは、先日の邪竜の島討滅戦以来二度目のこと。

しかし、邪竜の島討滅戦の時は緊急かつ非常事態で、外の空気を楽しむどころではなかった。

それ故、クロエの初めてのお出かけは実質的に今回が初めてに等しい。

ゆったりとした気持ちで吸う外の空気は、洞窟の中では味わえない格別なもののようだ。

それから程なくして、カタポレンの家に到着したライト達。

一旦空中で止まり、レオニスが二つの家について解説を始める。

「ココ、下に二つの家があるのが分かるか?」

『うん、大きいのと小さいのがあるね』

「俺とライトが普段住んでいるのは、あの小さい方の家なんだが。ラーデの療養を引き受けるに当たり、家の周りを開墾して木を何本も伐ったんだ。ほら、あっちの方に開けた場所があるだろ? あそこをラーデの居場所用に開墾したんだ」

『ああ、そうね。ラーデ君も元気を取り戻したら、すっごく大きな身体になるもんね!』

「そゆこと。でな、その伐った木で新しく建てたのが、あのデカい方の家なんだ。今日はあっちの建てたばかりのデカい家の方で、ココ達と過ごそうと思ってる」

『そうなのね!あのおうちでパパ達とお泊まりできるなんて、すっごく嬉しい!』

「じゃ、早速行くか」

『うん!』

ライトとレオニスが普段住む家と、開墾により出た伐採木で新たに作ったコテージ。

その二軒の違いを聞いた後、四人はコテージのある方に下りていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

コテージの玄関前に立つライト達。

レオニスがレディーファーストよろしくドアを開けて、クロエに向けて声をかけた。

「さぁ、どうぞ。この家は、クロエには少々狭いかもしれんがな」

『大丈夫よ!……お邪魔しまーす……』

レオニスに開けてもらった扉から、おずおずと中に入るクロエ。

クロエの身長はもはやレオニスをとっくに追い越しているが、コテージの玄関扉は大きめに作ってもらってあるので、それなりの体躯のクロエでも多少屈むだけで十分通ることができる。

コテージの中に入ると、早速奥の方から大人数が客人を迎えるために出てきた。

ラウルにマキシ、ラーデに八咫烏母娘、総勢七名でのお出迎えである。

「よう、ココちゃんに闇の女王、いらっしゃい」

「ココちゃん、こんばんは!ようこそ来てくださいました!」

『闇の娘に闇の女王よ、よく来た』

「ココ様、闇の女王様、ご無沙汰しております」

「お二方とも、お元気そうで何よりです!」

「ココちゃん達に会えて、とっても嬉しい!」

たくさんの者達から歓迎を受けて、クロエが嬉しそうに口を開く。

『ラウルお兄ちゃん、マキシ君、ラーデ君、そして八咫烏の皆、こんばんは!ココも皆に会えて、すっごく嬉しい!』

「さぁ、ここで立ち話も何だ、あっちで皆で飯を食おうじゃないか」

「ココちゃん達のために、ラウルがたくさんのご馳走を用意してくれたんですよ!」

『うん、すっごく良いニオイがするー……』

キッチンのある方に行こうと促すラウルとマキシに、クロエも鼻をスン、スン、とさせながら匂いを嗅いでいる。

するとここで、クロエのお腹の辺りから『ぐーきゅるるるる……』という腹の虫の声が鳴り響いたではないか。

クロエの腹の虫も、ラウルのご馳走の匂いに釣られて出てきたらしい。

思いの外大きく鳴り響いた腹の虫に、クロエが両手で頬を押さえながら困惑している。

『イヤーン、初めてお外で飛んだからすっごくお腹が空いちゃったみたい……』

「そりゃいい、今日はお腹いっぱいになるまで食ってくれ」

「そうそう、ココはまだまだ育ち盛りなんだからな。ラウルのご馳走を食って、たくさん栄養を取って、もっともっと大きくならなきゃな!」

『ぇー、ココ、もうこれ以上大きくなんてならなくていいよぅ……あんまり大きくなり過ぎると、神殿やこのおうちの中にも入れなくなっちゃうもん』

たくさん食べてもっと大きくなれ!と言うラウルやレオニスに、クロエは頬を押さえたまま恥ずかしそうに否定する。

確かに今以上に大きな体格になったら、このコテージや暗黒神殿の出入りにも支障をきたしそうだ。

しかし、そんなクロエの心配をライトが打破する。

「そんなことないよ!ココちゃんなら、そのうち身体の大きさだって変えられるようになるし!ね、闇の女王様、そうですよね?」

『ああ、ライトの言う通りぞ。故にココ様が心配なさることは一つもございません。レオニス達の言うように、たくさん食べてたくさん大きくなってくだされば、身体の大小を変えることなど造作もないことになりしょう』

『ホント!? なら、パパやママの言う通りにする!たくさん食べて、たくさん大きくなって、小さくなれるように頑張るわ!』

ライトと闇の女王の助言に、クロエの顔がパァッ!と明るくなる。

まだ生後一年程度のクロエには、身体のサイズを自在に変えるには至らない。

しかし、クロエが成長してより大きな力を得れば、そのくらいのことは簡単にできるようになるだろう。

するとここで、今度はレオニスのお腹から『ぐきゅるるる……』という音が聞こえ、さらにはライトのお腹まで『ぐーーー……』という音が鳴ったではないか。

あまりにもタイミングの良過ぎる腹の虫の大合唱?に、ラウルが大笑いする。

「何だ、ご主人様達もそんなに腹減ってんのか?」

「おう、今日は一日中森の警邏してたからな、そりゃ俺の腹もすっからかんになるってもんだろう」

「うん、ぼくも何だかお腹空いてきちゃった!」

「よしよし、そしたら皆で俺が作った美味い飯をたらふく食ってくれ。ご主人様はともかく、ライトとココちゃんは育ち盛りだしな」

『うん!ココ、ラウルお兄ちゃんの作るお料理、すっごく大好き!』

「お褒めに与り光栄だ」

三匹の腹の虫に催促されて、ご馳走が待つテーブルに向かうライト達。

クロエやライトが待ちに待った、コテージでの初めてのお泊まり会が始まっていった。