軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1422話 命の洗濯

心ゆくまでバーベキューを楽しんだライト達。

次はティファレト名物の温泉を堪能する番だ。

アイギス三姉妹が借りたコテージには、風呂が二ヶ所ある。コテージ内一階と裏庭側の露天風呂だ。

どちらも天然温泉でそれぞれ二つの浴槽があり、その中間を高い塀で区切られている。男湯と女湯で分けて入れるように、という配慮であろう。

悪天候の場合は室内の温泉に入るところだが、幸いにして今日は雲一つない快晴だった。ならばここは、野外の露天風呂一択だ。

風呂上がりの着替えは各自用意し、バスタオルやフェイスタオルはラウルが用意して各人に手渡す。

ライトはお風呂の中で飲めるようにぬるぬるドリンク薄黄色を持参し、ラウルとアイギス三姉妹は桶に徳利を入れて湯船に浮かべる、いわゆる『湯船酒』を用意した。

それを見たライトが「あッ、それいいな!ぼくもそうしたい!」と言い、ぬるぬるドリンク薄黄色を急遽徳利に移して桶に入れて『湯船ドリンク』にしていた。

さらにはレオニスまでもが「それ、いいなー」と羨ましがり、

マキシはライト達と、他の八咫烏達はアイギス三姉妹とともに温泉に入る。

八咫烏の姿なら男女の性別云々など気にしなくてもいいかもしれないが、一応ここは『郷に入っては郷に従え』ということで男女別に分かれている。

ちなみにフォルとラーデは、問答無用でセイとカイに拉致られた。

フォルはもともと女の子だから問題ないが、ラーデはその口調と声のトーンからして男だと思うのだが。

しかし、今のラーデは何しろ見た目がぬいぐるみのようなチビドラゴンなので、アイギス三姉妹も風呂をともにするのに抵抗がないのだろう。

「ぼく、温泉に入るの初めて!」

「あー、そういやそうか。ライトが生まれてからこっち、一度も温泉旅行なんてしたことなかったしな」

「俺も温泉なるものに入ったことは一度もないな。どんなものか楽しみだ」

「そうだねー。八咫烏の里やプーリアの里の近くには、温かい水が湧く泉って見たことないもんねー。僕もすっごい楽しみ!」

脱衣所で服を脱ぎながら、ワクテカするライト。

ライトはサイサクス世界に生まれついてから一度も温泉に入ったことがないし、ラウルとマキシもライト同様温泉初体験である。

そうしてコテージ内の脱衣所から外に出る扉を開き、裏庭に出ると―――そこには広々とした露天風呂があった。

「おおお……すっごーい!お風呂が大きーい!」

「おー、こりゃかなり豪華な作りだな」

サイサクス世界で初めて目にする露天風呂の湯煙。

しかも岩で囲まれた風呂はとても大きく、一度に二十人以上入っても余裕で浸かれそうだ。

予想以上に豪華な露天風呂に、ライト達のテンションは弥が上にも上がりまくる。

湯に浸かる前に、まずは手桶で身体に湯をかけてから温泉に入る。

湯の温度は気持ちぬるめで、これなら多少長湯しても上せる心配はあまりなさそうだ。

湯船に浸かり、ふと空を見上げるライト。

空には満天の星が輝いていた。

「ふぃー…………気ぃー持ちいーいねぇー……」

「ああ……こんなにのんびりとした時間を過ごせるのは、久しぶりな気がするな」

「夜空を見ながら入る風呂というのは、何とも風流なものだな」

「カタポレンの森の中では、決して味わえない気持ち良さだね……」

ライトは湯船ドリンクをコップに入れてちみちみと飲み、レオニスは両腕を大きく広げながら露天風呂の縁の岩に凭れかかる。

ラウルは湯船酒をお猪口に注ぎ優雅に飲み、マキシは八咫烏の姿で湯船にプカプカと浮きながら、ただただずっと星空を眺めている。

沁み入るように静かに風呂に浸かる男湯側だが、塀の向こうの女湯側はなかなかに賑やかだ。

セイやメイの「はぁぁぁぁ、生き返るぅぅぅぅ♪」「この温泉の美肌効果で、目一杯お肌を磨くわよー!」というウキウキ声が聞こえてきたり、他にも「アラエルさん、後で身体を洗ってあげるわね」「じゃあ私はムニンちゃんとフォルちゃんの背中を流すわ!」「あッ、セイ姉さんってばズルい!なら私は、トリスちゃんとミサキちゃんとラーデ君を担当するわ!」等々、アイギス三姉妹の姦しくも楽しげな会話が続く。

「……カイ姉達も、心から温泉を楽しんでいるようで何よりだ」

「だねぇ。アイギスは大人気ブランドで仕事もたくさん受けているから、カイさん達もいつもすっごく忙しく働いてるしねぇ」

「年一の旅行くらい、ゆっくり骨休めさせてやらんとな」

「ホントホント、僕から見てもカイさん達は働き過ぎだと思うもん。でも、本人達は『好きなことをしてるだけだから全然大丈夫!』と言ってるけどね」

塀の向こうから聞こえてくる楽しそうな話し声に、レオニスはくつくつと笑い、仕事上でもアイギス三姉妹と付き合いのあるライトとマキシはカイ達の多忙さに触れ、ラウルはアイギス三姉妹を労う。

するとここで、メイの大きな声が飛んできた。

「レオー、ライトくーん、ラウルさーん、マキシくーん!皆、温泉を楽しんでるー?」

「おー、もちろん楽しんでるぞー」

「はーい!とっても気持ち良いお湯ですよねー!」

「おかげさまで楽しませてもらってるぞー」

「皆さんのおかげで、生まれて初めて温泉というものに入りましたー!ありがとうございまーす!」

「それは良かったわー!」

メイの朗らかな問いかけに、ライト達も口々に応える。

カイ達に誘われなければこうして温泉旅行に出かけることもなかったし、そもそもアラエル達がライト達のもとに来なければお誘いすらなかった。

この奇跡の巡り合わせに、ただただ感謝しかない。

湯船でライトがちゃぷちゃぷと顔を洗ったり、ラウルが手で腕や肩を擦ってはぬるぬる美肌効果を堪能する。

ラウルもマキシも神樹の枝の腕輪をしたままなので、もしかしたらユグドラツィも分体を通して温泉気分を味わっているかもしれない。

するとここで、レオニスが身体を洗うべく湯船からザバッ!と立ち上がった。

湯から上がろうとするレオニスに、ライトも湯から立ち上がりながら声をかけた。

「あ、レオ兄ちゃん、ぼくが背中を流してあげる!」

「お、いいのか? そしたら遠慮なく頼もうか」

「うん!その次はラウルとマキシ君の背中も流してあげるから、待っててね!」

「おお、そりゃ光栄だ」

「そしたらライト君の背中は、僕が流しますね!」

「ありがとう、マキシ君!」

ライトとレオニスが風呂から上がり、洗い場で身体を洗い始める。

レオニスの広い背中をライトが一生懸命に洗い、その後ライトが宣言通りラウルの背中とマキシの黒い翼や身体を丁寧に洗って流す。

最後に人化したマキシがライトの背中を洗い、再び四人でのんびりと湯船に浸かった。

塀の向こうでは、相変わらずアイギス三姉妹と八咫烏女子達の賑やかな声が聞こえてくる。

彼女達の楽しそうな様子に、塀越しに声を聞いているライト達の心まで和んでくる。

満天の星空という絶景の下で浸かる天然温泉の湯は、日々多忙を極めるライト達の心と身体を癒やしていった。