軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1411話 レオニスの別行動の理由

久しぶりにカイ達アイギス三姉妹との食事を楽しんだ翌日。

この日から、待ちに待った黄金週間の始まりである。

ライトはラウルとフォル、そして五羽の八咫烏とともに朝の九時十五分頃には既に翼竜牧場に入っていた。

集合時間は午前九時半になっているが、人数追加による籠の変更の可否を検討してもらわなくてはならないので、こうした手続きがある時は早めに現地入りしておくのが吉なのである。

ちなみに今回マキシ達は、全員文鳥サイズで旅行に来ている。

本当はマキシだけでも人化した姿で参加してもいいのだが、それだと乗車賃等も一人分として加算しなければならないし、何より鳥の姿でいるならその方が楽だから!という理由で文鳥サイズとなっている。

そして、今朝はレオニスはおらず、ライト達と別行動になっている。

何故かというと、今回の旅行にラーデも連れていくことにしたからだ。

昨晩カイ達と別れてレオニスが帰宅してから、ラーデのことをどうするか話し合ったライト達。

カタポレンの森でのんびり留守番でもいいのだが、三泊四日の旅行となるとさすがにその間ずっと放置というのも可哀想だ。

幸い今回カイ達と泊まるのは、他人の目を気にせず過ごせる貸し切りコテージ。

それならラーデも連れていっても大丈夫だろう、という皆の判断により、ラーデの旅行参加が決定したのだ。

ただしここで一つ、別の問題が発生する。

それは、ティファレトまでの移動手段が翼竜籠である、ということ。

全ての竜の祖である皇竜メシェ・イラーデを、籠の運び手である翼竜が何事もなく受け入れてくれるか?と問われれば、答えは絶対に『否!』である。

今年の公国生誕祭の時に、ライトがラウルとともに参加した翼竜牧場のイベント『翼竜わくわくふれあい広場』では、ライトが持つ竜族関係の特殊称号のせいで翼竜がものすごく萎縮してしまい、その場で平伏してしまったくらいだ。

ライト相手でさえそれだったのだから、皇竜そのものが目の前の至近距離に現れたら―――翼竜達は、あまりの畏れ多さに速攻で気絶してブッ倒れかねない。

そうした事態が起こる可能性は非常に高く、ライト達も簡単に予想できたのでレオニスだけ別行動を取ることになった。

ラーデとともに冒険者ギルドの転移門で移動することにしたのだ。

そのために、昨晩はラーデ用の隠密魔法を付与したアクセサリーを急遽作ることになった。

ライトが持つ銀碧狼の毛糸で作ったブレスレット風ミサンガに、金鷲獅子アウルムの刺繍糸を縫い込んだリボン、これにマキシが練習作として作り溜めていた各種宝石類が使われたチャームに隠密魔法を付与した。

手持ちのものだけで作った急拵えだが、なかなかに良い品ができた!と皆満足していた。

そしてライトとラウルが翼竜牧場の建物に入ると、受付にいたナディアが来客にすぐに気づいて元気な挨拶をする。

「おはようございまーす!……あらー、ラウルさんにライト君じゃないですかー!」

「ナディアさん、おはようございます!」

「おはよう、ナディア」

「ライト君は公国生誕祭以来ですねぇ」

「はい!ご無沙汰してます!」

「そして今日はまた可愛らしい文鳥さん達がたくさんいらっしゃいますねぇ♪ 新しくペットを飼われたんですか?」

「いいえ、この子達は黄金週間の間だけ知人から預かってるんです」

「そうなんですかー。黒髪黒猫耳の私にも負けないくらい、艶やかな黒色が素敵な子達ですねぇ♪」

「ありがとうございます!」

ライト達と和やかに挨拶を交わすナディアの、黒髪ショートの頭に生えた黒い猫耳がピョコピョコと動く様が何とも愛らしい。

ライトとの久しぶりの再会を喜んだ後、ナディアがラウルに向かって声をかけた。

「今日はどうなさいましたか? もしかして、ビッグワームの顎を引き取りにいらしたんですか?」

「いや、今日は全く違う要件できたんだ。アイギスのカイさんが、今日の十時にティファレト行きの便を三名で予約しているはずなんだが―――」

ナディアの問いかけに、ラウルが今日の要件を伝える。

カイ達の旅行にライト達も同行することになったこと、そのためカイ達が予約した便で同行するために翼竜籠の大きさを変更したいこと、もし大きいサイズの空きがなければ別の手段を講じるので対応できなくても問題はない等々。

それらを聞いたナディアが、手元にあった資料ファイルをパラパラと捲り始めた。

「えーとですねぇ、まずは翼竜籠のご契約者様がいらした時に改めて確認するとして、今空いていて交換できる籠と追加の翼竜があるかどうかだけでも先に調べておきますねー」

「手間をかけてすまんな」

「いいえー、これが私の仕事ですからー。どうぞお気遣いなくー」

早速仕事に取りかかるナディア。

まだ幼さの残る可愛らしくも若い女の子だが、仕事面はとても優秀だ。

そうしてナディアはしばらくファイルとにらめっこしていたが、つい、と頭を上げてラウルに声をかけた。

「籠の変更と翼竜の追加はできそうですね」

「おお、そりゃ良かった。大人一人と子供一人の乗客追加も含めると、料金の変更はいくらになる?」

「少々お待ちくださいねー、ティファレト行きの便で計算しますー」

「よろしくな」

ラウルの問いかけに、ナディアは今度は料金変更の差額計算をし始めた。

そして二十秒程度で答えを出した。

「ティファレト行きの便、お子様一人2500G、大人一人5000G、籠のサイズ変更差額が7500G、締めて15000Gとなります」

「15000Gか、承知した。その差額は俺の方から出すから、カイさん達には請求しないでおいてくれ」

「分かりましたー」

ラウルとナディアの交渉がまとまったところで、翼竜牧場に新たな客が来た。

建物の中に入ってきたのは、カイとセイとメイ。アイギス三姉妹だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

皆それぞれにそこそこ大きなキャリーケースを持っており、キャスターの音がゴロゴロと鳴っている。

その音に振り返り、カイ達が来たことに気づいたライトが真っ先にカイ達のもとに駆け寄った。

「カイさん、セイさん、メイさん、おはようございます!」

「おはよう、ライト君」

「おはよう!まぁ、もうラウルさんといっしょに来てたの? 早いわねぇ」

「ライト君、おはよう!…………あら? レオがいないわね? トイレ?」

ライトと朝の挨拶を交わすアイギス三姉妹。

ここにレオニスがいないことにすぐに気づいたようだ。

「えーとですね、レオ兄ちゃんはちょっとした事情がありまして、冒険者ギルドの転移門でティファレトに移動することになりました」

「事情? 何かあったの?」

「それはまた籠の中でお話しします。……あまり人前で話せないことなので」

「……そう、分かったわ。レオちゃんもティファレトに来てくれることに変わりはないのよね?」

「はい、それはもちろん変わりません!レオ兄ちゃんとはティファレトで合流することになってるので!」

「なら問題ないわ」

苦笑しつつレオニスの不在理由をその場で告げないライトに、カイも深くは聞かずに笑顔で承諾する。

皇竜のことは、あまりどころか大っぴらに話せることではない。

少なくともナディアや他の乗客がいるこの場では絶対に話せないし、話すならせめて翼竜籠の中、完全個室状態になってからである。

そしてカイの方も、そうした何らかの事情があることをすぐに察してくれた。

そもそもレオニスは現役最強冒険者なので、自分達のような一般人に対して軽々に話せないことも多々あるだろう、ということくらいはカイにもすぐに理解できたのだ。

するとここで、それまで受付カウンターにいたラウルがカイ達のもとに来た。

「よ、カイさん、セイさん、メイさん、おはよう」

「おはよう、ラウルさん」

「あーッ!フォルちゃんもいるー!」

「キャーッ!フォルちゃん、お久しぶりー♪」

カイ達に朝の挨拶をしたラウルそっちのけで、セイとメイが久しぶりに会うフォルに速攻で夢中になっている。

ちなみに昨日の晩餐時にはフォルはいなかった。最近のフォルは、お使いでのお出かけ以外にも夜はラーデといっしょにのんびり過ごしたりするのがお気に入りなのだ。

ラウルの左肩にちょこん、と乗っていたフォルに向けて、メイが両手を伸ばし『こっちに来て来て♪』アピールをしている。

その手にフォルが「フィィ?」と小首を傾げながらも、ヒョイ、とメイの手に飛び移る。

フォルもアイギス三姉妹とは何度も会っていて懇意にしているので、その手が安全なものだと分かっているのだ。

そしてラウルはカイに向かってティファレトへの旅費のことを話し始めた。

「今翼竜牧場の受付で聞いてたんだが、籠のサイズ変更と俺達の追加乗車は可能だそうだ」

「まぁ、それは良かったわ」

「追加でかかる費用は、俺とライトの乗車賃と籠の変更差額で合わせて15000Gだそうだ」

「15000Gね、分かったわ」

ラウルの話を聞いたカイが、肩から斜めに掛けた小さなバッグに手をかける。

早速財布を取り出そうとするその手に、ラウルが大きな手をそっと添えて止めた。

「その差額分は俺達が出すから、カイさんは受付で俺達の追加の話だけをしてきてくれ。その分の金は、うちのご主人様から先に預かっているからな」

「……そうね、そしたらここはラウルさんのお言葉とレオちゃんの厚意に甘えることにしましょうか」

「是非ともそうしてくれ。ここでカイさんに金を出させたら、俺が後でご主人様に怒られちまう」

「フフフ、ラウルさんが叱られないためには私も協力しなくっちゃね」

「そゆこと」

一度は財布に伸ばしかけた手を、ラウルの制止により止めたカイ。

ラウルの立場を思えば、ここでカイが支払いを強行するのは良くない。

レオニスから託されたラウルの立場がなくなるし、何よりレオニスの厚意を踏み躙ることになる。

カイは基本的に頑固者だが、他者の立場や思い遣りを無視する愚か者ではない。

強く出る時は出て、甘えるべき時はちゃんと甘えることができる女性なのだ。

「じゃあ、私は受付で話をしてくるわね」

「よろしく頼む」

早速カイが旅行の代表者として受付カウンターに向かっていく。

その後カイの説明によりライトとラウルの乗車追加が認められ、発生した追加料金をラウルが支払うことでライト達は無事ティファレト行きの便で出立することができたのだった。