軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1407話 アイギスでの再会と初顔合わせ

ラグナロッツァの屋敷を出て、再びアイギスに戻ったマキシ。

店の表には既に『閉店』という札がかけられて鍵も閉められているので、マキシは裏口から中に入った。

裏口すぐにある作業場にはまだカイがいて、マキシが来たことにすぐに気づいた。

「あら、マキシ君、おかえりなさい。お母さんやお姉さん達は、もうこちらにいらしてたの?」

「はい!今、全員僕の肩に留まっています」

「まぁまぁ、そしたら私達もお客様達をおもてなししないとね。そしたらマキシ君、一の客間で待っててもらえる? セイやメイも呼んでくるわ」

「分かりました!」

カイは作業用エプロンを外しながら、マキシに客間で待つように伝える。

マキシはカイの指示に従い、一の客間と呼ばれる部屋に向かった。

そこは基本的に大貴族向けの客間で、複数ある客間の中で最も広くゆったりとした作りの部屋だ。

といっても、華美な装飾や調度品などはなく、至ってシンプルな作りの部屋なのだが。

一の客間に入ったマキシが、肩にいる家族達に声をかける。

「母様、姉様、ミサキ、ここでは元の大きさに戻っていいですよ。お店ももう入口を閉めてあるから、他の人が入ってくる心配もないですし」

「分かったわ」

「ンキョッ!と」

マキシの言葉に、四羽の八咫烏達が一斉にマキシの肩から離れて元の大きさに戻った。

そしてソファに座ってゆったりと寛ぐ四羽の八咫烏達。皆むっちりムチムチまん丸体型で、パッと見では誰が誰だか見分けがつかない。

しかし、血の繋がった家族であるマキシにはちゃんと区別がついている。

母のアラエルに向かって、マキシが問うた。

「母様、人化の術はもう慣れましたか?」

「そうね、半日くらいは人化した姿を維持できるようになったわ」

「ムニン姉様やトリス姉様、ミサキはどう?」

「私はまだミサキや母様ほどは長く保てないわ」

「私もまだまだね。朝に人化の術で変身しても、お昼までは保たないの」

「ワタシはねぇ、朝から寝るまで人化していられるようになったよ!でも、次の日は疲れちゃって人化できなくなっちゃうから、ワタシもまだまだなんだけどね」

「そっか、皆頑張ってるんですね!」

母や姉達、妹の頑張りを聞いたマキシの顔が綻ぶ。

八咫烏が人里で活動するためには、少なくとも丸一日以上は人化の術を保てるようになることが必須条件だ。そしてそれは、長く保てれば保てる方が良い。

すると、ここでミサキがマキシに問うた。

「ねぇねぇ、マキシ兄ちゃんはどれくらい人化していられるの?」

「ンーとねぇ、僕の場合、今は十日くらいなら続けて人化していられるよ」

「十日も!? マキシ兄ちゃん、すごい!」

「そ、そうかな? でも、人里でずっと暮らしていこうと思ったら、これくらいはできないとね」

「ワタシももっともっと頑張らなくっちゃ!」

事も無げに発したマキシの答えに、ミサキだけでなく他の三羽まで目を丸くして驚いている。

二羽の会話に刺激されたのか、ムニンやトリスまでマキシの人化の術の話を聞いてきた。

「ねぇ、マキシ、寝ている間はどうしてるの? 人化の姿を解いて、八咫烏の姿で寝てるの?」

「もちろん寝ている間も、ずっと人化したままでいられますよ。ただし、レオニスさんのお屋敷にいる間はその必要もないので、寝る時は元の姿に戻って寝てますけどね」

「そしたら、沐浴なんかはどうしてるの?」

「沐浴というか、人里では『お風呂』という温かい水に浸かるのが一般的ですね。そもそも人族は僕達のような羽根や翼がないので、砂浴びではなくお湯に浸かって身体の汚れを落とすんです」

「「「「………………」」」」

ムニンやトリスの質問にもテキパキと答えるマキシ。

どの答えも八咫烏達の想像をはるかに超えるもので、ムニンやトリスだけでなくアラエルやミサキまでぽかーん……としている。

「そ、そうなのね……私達もモクヨーク池で水浴びはするけれど、温かい水?というのが今一つ想像できないわ……」

「温かい水というと、真夏のモクヨーク池よりも温度が高い、ということよね?」

「というか、寝ている時もずっと人化していられるなんて……すごいわね」

「マキシ、ホントにすごいわ!姉さん、貴方のことを尊敬するわ!」

マキシの人化の術のレベルの高さに、心底驚嘆し絶賛するムニンとトリス。

一方ミサキは「そのお風呂?というの、ワタシもやってみたーい!」の好奇心旺盛さを遺憾なく発揮している。

そんな中、マキシの横にいたアラエルが両翼を伸ばし、マキシの頬をそっと包んだ。

「マキシ、貴方もこの人里で、一生懸命に頑張ってきたのね……」

「……はい。僕はこのラグナロッツァという人里で、ラウルやレオニスさん、ライト君とともにずっと生きていく、と決めましたので」

「貴方は私の……いいえ、八咫烏一族の誇りよ」

「母様、ありがとうございます。僕も……父様と母様の子に生まれてくることができて、本当に良かったと思っています。母様、無能と蔑まれてきた僕を見捨てることなく育ててくださって、本当に……本当にありがとう」

アラエルの大きな愛に包まれて、マキシも母の身体をぎゅっ……と抱きしめる。

マキシの眦が薄っすらと滲み、しばし両者は無言で抱きしめ合っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうしてしばらくして、マキシ達の気持ちも落ち着いてきた頃。

一の客間の扉がコン、コン、と二回ノックされた後にアイギス三姉妹が入室してきた。

早速三者三様の挨拶が飛んでくる。

「マキシ君とご家族の皆様、お待たせしてしまい申し訳ございません」

「ムニンちゃん、トリスちゃん、お久しぶりね!」

「お母様と双子の妹ちゃんは初めましてよね!マキシ君、改めてご家族を紹介してくれる?」

「はい!」

アイギス店主として礼儀正しく接するカイに、以前職場見学で会ったことごあるムニンとトリスに明るく話しかけるセイ、そして初めて会うアラエルとミサキと一刻も早く触れ合いたいメイ。

彼女達の優しくも賑やかな挨拶に、マキシも喜びながら応じる。

「こちらが僕の母アラエル、そして妹のミサキです。母様、この人達は僕がいつもお世話になっているカイさん、セイさん、メイさんです」

「まぁまぁ、我が息子マキシがお世話になっております。私はアラエル、八咫烏一族族長の妻でマキシの母でございます」

「ワタシはミサキです!マキシ兄ちゃんの恩人さん達にお会いできて、とっても嬉しいです!」

初対面同士をそれぞれ軽く紹介するマキシに、アラエルとミサキも嬉しそうに応じる。

礼儀正しくも穏やかなアラエルに、自由闊達でハキハキとした明るい物言いのミサキ。彼女達を見たセイとメイは「キャーーー!何て可愛らしいんでしょう!」「さすがマキシ君のお母様と妹さんね!」と大喜びし、カイもまたはしゃぎこそしないがニコニコと穏やかな笑みを浮かべていた。