軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1399話 ガンヅェラにまつわる逸話

火の女王の依頼、死霊兵団の残骸を片付け終えたライト達。

その報酬をもらうべく、エリトナ山火口からマグマの中に入っていった。

火口入口から下に沈んでいくと禍龍ガンヅェラ、タロンの背の甲羅が見えてくる。

今日も熱々のマグマの中で、スヤスヤと気持ち良く眠っているようだ。

すると、火の女王がスススー……とタロンのお腹の下に潜り込んだ。

そしてしばらくして出てきた火の女王は、巨大な鱗を胸に抱えていた。

『ちょうど良いものがあった。ほれ、これがタロンの鱗の欠片だ』

「おおお、一枚一枚がでっけーな……これは、甲羅の鱗か?」

『そうだ。タロンは数十年に一度の頻度で脱皮するのだが、これはその脱皮した甲羅の鱗の部分だ』

「「脱皮!?」」

「 ……まぁな、タロンは亀と竜を足したような見た目をしてるもんな。普通の亀も脱皮するらしいし、タロンが脱皮してもおかしくはないか」

火の女王が発した『脱皮』という言葉に、レオニスとラウルがびっくり仰天してた後に納得している。

ガンヅェラは別名『禍龍』とも呼ばれ、ドラゴンの一種とされている。

確かにガンヅェラは全身が硬い鱗に覆われていて、長い尻尾や鋭い牙なども竜種の特徴として挙げられる。

しかし、ガンヅェラはただの竜種ではない。

背中が亀の甲羅のようにこんもりと盛り上がっている上に、短い四足で這う姿はまさに亀そのもの。

レオニスが先程言っていた『亀と竜を足したような見た目』というのは、誇張や比喩など一切ない事実なのである。

ちなみにライトは前世のBCOでもガンヅェラのことは『亀』と呼んでいたので、脱皮云々も全く違和感はなく驚きもしない。

というのも、ライトは前世の小学生時代にクラスで飼っていた亀の飼育係をしたことがあり、それ故に『亀は脱皮する生き物!』ということを知っていたのだ。

しかし、それとは全く別のことがライトは気になっていた。

「火の女王様、タロンの脱皮の皮にしては小さいようですが……先程仰っていたように、ところどころ剥げ落ちるような感じなんですか?」

『いや、いつもタロンは己の脱皮した皮を食べるのだ。寝ぼけながら食べる姿は、なかなかに愛いものだぞ?』

「何ソレ、見たい!」

火の女王だけが知る、ガンヅェラの脱皮にまつわる逸話。実に物珍しいその話に、ライトが目をキラッキラに輝かせて食いつく。

ガンヅェラが脱皮するというのは、BCOマニアであるライトですら初めて聞く話だ。しかもその脱皮した皮を自ら食べるとは、ライトのみならずレオニスやラウルまでもが「へー、そうなんかー」「休眠中の栄養補給にいいのかな?」等々呟き、興味が尽きないようだ。

『そんな訳で、言っちゃ悪いがこれはタロンの食べ残しのようなものなのだが……それでも良ければ、持っていくがよい』

「食べ残しだなんて、とんでもない!ありがたく頂きます!」

火の女王が抱えていたタロンの鱗をライトに渡した。

その鱗は半畳程の大きさがあり、ライトが今までもらった水神の鱗や青龍の鱗よりはるかに大きい。

そして、見た目に違わずずっしりとした重さを感じる。

ガンヅェラの甲羅の鱗だけあって厚みも30cm程あり、しかも触った感じでは硬さもかなりありそうだ。

ライトはそれを大事そうに受け取り、早速アイテムリュックに仕舞い込む。

そして火の女王が再びタロンのお腹の下に潜り込み、レオニスとラウルの分の鱗も持って出てきた。

まずレオニスに一枚、それからラウルにも一枚、それぞれにタロンの鱗を渡した。

「おお、俺達の分までくれるのか。ありがとう、こんな貴重なものをもらえるなんて思ってもいなかった」

『何、其方らも先程まで骸骨どもの後始末に働いてもらったからの』

「火の女王、これは普通の食材として食えるのか?」

『ぃゃ、妾にはそこまでは分からぬ。タロンは美味しそうに食しておるがの』

ライトのおかげで、思わぬお宝を手に入れたレオニスとラウル。

レオニスは火の女王に礼を述べたが、何とラウルは火の女王に食材として使えるかどうかを問うたではないか。

このとんでもない質問に、レオニスがびっくり仰天顔でラウルを見つめながら問い質した。

「え、何、ラウル、お前、この鱗を普通に食う気満々なの?」

「いや、だってタロン自身がこれを食うって話だったろ? だから、普通に食えるもんなのかどうか気になったんだ」

「だからって、お前……この硬い鱗を一体どうやって食うつもりだよ? そもそもタロンは、このエリトナ山の神殿守護神だぞ? マグマの熱でも溶けんものが、煮たり焼いたりする程度で食えるはずねぇだろ? つーか、神殿守護神からもらった鱗をバクバク食うなんて、罰当たりにも程がある」

「そっか、そう言われりゃそうだな。火の女王、不躾なことを聞いてすまなかった」

『うむ、気にするな。ただ、こんなに硬いものを食して腹を壊しても妾は関知せぬぞ?』

レオニスに諌められて納得したラウルが、火の女王に向けて謝っている。

確かにレオニスの言う通りで、神殿守護神の鱗はとても貴重なものだ。それをありがたがりこそすれ、食材として見るなど不敬極まりない。

料理バカもここに極まれり、といった様相だが、火の女王が怒る様子は一切ない。素直に謝るラウルに、火の女王はただクスクスと笑っている。

『さて、妾からの褒美は渡した故に、次は我が妹から褒美を受け取らねばなるまい』

『そうですね。では、火の姉様とはここでお別れですが……今日もとても楽しゅうございました』

別れの時が近づいてきたことに、炎の女王が寂しそうな顔で火の女王に礼を言う。

すると、火の女王が炎の女王をそっと包み込むようにその胸に抱いた。

『何の、妾の方こそレオニス達を連れてきてもらって助かった。其方には礼を言わねばなるまい』

『そんな!火の姉様のお役に立てたというだけで、妾は本望にございます!』

『フフフ、我が妹はほんに可愛いことを言うてくれるの』

炎の女王の頭を愛おしそうに撫でる火の女王。

姉からの抱擁と礼の言葉に、妹である炎の女王が頬を赤らめている。

相変わらず仲睦まじい火の姉妹。しばし互いにギュッ……と抱きしめ合っていたが、どちらからともなくその身を離し、ライト達の方に向き直った。

『では、炎の洞窟に戻るとしよう。汝らも全員手を繋ぐようにな』

「はい!」「「おう」」

エリトナ山に来た時と同じように、ライトが炎の女王とレオニスと手を繋ぎ、レオニスはライトとラウルと手を繋ぐ。

そうして横並びで一つの列になり、火の女王に向けて改めて別れの挨拶をした。

「火の女王様、とても貴重な鱗をいただき本当にありがとうございます!」

『何、其方らの働きに応えただけだ。妾にできる礼なら何でも言え、とも言うたしの』

「火の女王、先程話した転移門の件でまた近いうちにここを訪ねると思うが、よろしくな」

『ああ。其方らの行き来がより容易くなるなら、妾に否やはない。よしなに頼むぞ』

「もしまた死霊兵団が来たら、火の精霊を通してすぐに俺達に伝えてくれ。そしたら俺達も撃退に加勢するし、骸骨の後片付けも手伝うから」

『うむ、次からはそうしよう。頼りにしておるぞ』

ライト達三人が、火の女王に向けて感謝の言葉と別れの挨拶を交わす。

そして最後に、炎の女王が名残惜しそうに火の女王に話しかけた。

『火の姉様、これからもどうぞお元気で……万が一何か起きた時には、レオニス達だけでなく妾にもお教えください。妾も姉様のお力になりたいのです』

『ああ、もちろん其方の力も宛にしておる。其方ももし何か異変が起きたら、すぐに妾に知らせるがよい。可愛い我が妹に仇なす不届者がおったら、妾が直々に成敗してやる。……フラム様、どうぞ我が妹のことをよしなにお頼み申します』

「ピィッ!」

互いの身を思い遣り、火の女王がフラムに向けて深々と頭を下げる。

真摯にお願いする火の女王に、炎の女王の横にいたフラムが両翼を高々と上げて応えている。

それはまるで「うん!任せてー!」と言っているかのようだ。

そうして皆それぞれに火の女王に別れの挨拶を済ませ、炎の洞窟に戻っていった。