軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1395話 雑魚魔物の遭遇率の法則

そうして迎えた週末の土曜日。

ライト、レオニス、ラウルの三人で、朝から冒険者ギルド総本部に向かっていた。

行き先はもちろんプロステス。炎の女王のお招きに応じ、炎の洞窟に行くのだ。

冒険者ギルドの転移門を使い、ラグナロッツァからプロステスに移動したライト達。

今日は街での買い物はせずに、そのまま街の外に出て炎の洞窟に向かう。

何故かと言えば、道中でラウルのお目当ての人喰いパイアを狩るためである。

「ご主人様よ、人喰いパイアはどのように狩ればいいんだ?」

「あれはイノシシ型の魔物だから、眉間や耳の後ろのこめかみ、心臓を狙うといい。首をスパッとちょん切るのもアリっちゃアリだが、血塗れになるのもめんどくせぇしな」

「そしたら雷魔法で気絶させればいいか?」

「ンー、あれは雷魔法はあまり向かないんだよな」

「何でだ?」

プロステスの街を出る前に、道中でラウルがレオニスに人喰いパイアを狩るコツやポイントなどを聞いている。

ラウルは人喰いパイア狩りに初めて挑むので、こうした事前学習が必要なのだ。

「人喰いパイアは、肉以外にも牙や皮も素材として買い取ってもらえるんだ。でな、強い雷魔法を使うと皮や毛が焦げて傷んで価値が下がるんだ。かといって、人喰いパイアは結構な巨体だから弱めの雷魔法だとあまり効かねぇし」

「そっか、そういうことなら納得だ。どうせなら他の素材も綺麗な状態で売って、少しでも稼ぎの足しにしたいもんな」

「そゆこと」

「他に何か弱点はあるか?」

「あれの弱点は鼻だ。鼻を殴ると怯むから、思いっきり鼻をぶん殴ってひっくり返ったところを剣や槍で心臓を一突きする。これが人喰いパイア狩りの定番だな」

「鼻だな、分かった」

事前学習を一通り終えたところで、街の出入口の門からプロステスを出たライト達。

今回は人喰いパイア狩りもする予定なので、魔物除けの呪符は使用しない。

そのせいか、街を出てまだ間もないうちから魔物に襲われ始めた。

このプロステス郊外には、人喰いパイアの他にも地方固有の魔物がいる。

狼型魔物のブラッドジャッカル、イモ虫型魔物のヘルワーム、ゴーレムの一種ロックゴーレムなどだ。

これらの魔物が、岩陰やら木陰から出てきてはライト達目がけて襲いかかってきた。

レオニスとラウルはそれらを軽くいなし、得物の大剣や風魔法で仕留めていく。

仕留めた魔物の回収はライトの担当だ。ライトが一旦アイテムリュックに収納しておいて、後で冒険者ギルドに戻る前にラウルやレオニスに渡すのである。

ヘルワームやブラッドジャッカルを倒しながら、ラウルがぶつくさと呟く。

「あー、人喰いパイアだけ出てきてくれりゃいいのに」

「そんな都合良く事は運ばんわな」

「そりゃそうだ。……お、やっと人喰いパイアが出てきたぞ」

「よし、そしたら心臓を刺すのは俺がやってやるから、鼻っ面を殴るのはラウルに任せるぞ」

「了解ー」

ようやくお目当ての人喰いパイアが出てきたことに、ラウルの目がキラーン☆と輝き闘志を燃やす。

そして打ち合わせ通りにラウルが勢いよく駆け出して、こちらに向かって突進してくる人喰いパイアの顔面中央、鼻に思いっきり拳を叩き入れた。

「フゴッ!?!?」

「おらァァァァッ!」

弱点の鼻を力いっぱい殴られて、もんどり打つ人喰いパイア。

ひっくり返って腹が露わになったところに、レオニスが高くジャンプして真上から心臓目がけて大剣をドスッ!と突き刺した。

レオニスの大剣は人喰いパイアの心臓を見事に貫通し、大剣を抜くと人喰いパイアの血飛沫が噴水の如き勢いで噴き出す。

その後人喰いパイアはしばらくジタバタと地面を転がっていたが、そのうち動かなくなった。

ピクリともしなくなった人喰いパイアを、ライトがササッ、とアイテムリュックに収納していく。

アイテムリュックには生命がある生き物は収納できないので、絶命してからでないと回収することができないのだ。

そうして炎の洞窟に向かう道中、ずっと魔物狩りを続けたライト達一行。

この辺りに出てくるのは全て通常モンスター、つまりは雑魚魔物ばかりなのでレオニスやラウルの敵ではない。

故に魔物を仕留めること自体は全く難しいことではないのだが、それにしてもひっきりなしに襲われることにレオニスが不思議そうに呟く。

「つーか、今日はやけに魔物が多いな、何でだ?」

「そうなのか? ま、人喰いパイアを狩りたい俺にしたらありがたいことだがな。それに、ご主人様ならこの程度の魔物など敵ではあるまい」

「そりゃそうなんだが……スタンピードの前兆って訳でもねぇよなぁ? それならもっと大量の魔物が涌いて、こんなもんじゃ済まんはずだし」

「俺はそこら辺のことは詳しくないし、全く分からんが……お、あっちに人喰いパイアが出たぞ。ご主人様よ、トドメ担当頼んだぞ」

「ぉ、ぉぅ、任せとけ」

今日はやけに魔物に襲われることを不思議がるレオニス。

しかし、レオニスの経験則ではスタンピードという程の遭遇頻度ではないらしい。

故にそこまで緊張感が張り詰めるでもなく、そのせいかラウルも危機感など持たずに、新たに現れた人喰いパイアに狙いを定めている。

そんなちゃっかりとしたラウルに、レオニスも小首を傾げつつ人喰いパイア狩りの手伝いを引き受けている。

この時レオニスやラウルはもちろん、ライト自身も気づかなかったことだが、実はこれには訳がある。

それは、この場に 勇者候補生(ライト) がいるせいで、魔物の出現頻度が通常より上がったのだ。

このサイサクス世界では、埒内の者達が街の外を歩いたとしてもそこまで魔物に出食わすことはない。

しかし、BCOではユーザーが一歩進む毎に魔物が一体出てきて、それを都度倒して素材やアイテムを得るようなゲームだった。

そして勇者候補生であるライトに対してだけは、BCOのシステムの根幹が呼び起こされて働くのか、とにかく雑魚魔物の出現率及びリポップ速度が一気に上がるのである。

とはいえ、魔物除けの呪符を使えばその効力はライト相手でもきちんと発揮されるので、然程問題ではない。

むしろ、素材集めをしたい場面などではそれなりに有益に働くだろう。

好きなだけ素材集めをした後、疲れたり一息つきたい時には魔物除けの呪符で休憩を取ればいいのだから。

そうしてライト達は魔物狩りをしつつ、炎の洞窟の入口に到達した。

「さて……ようやく炎の洞窟に辿り着いた訳だが。……洞窟内の魔物まで全部相手にする必要はねぇよな?」

「そうだな、炎の洞窟には人喰いパイアはいねぇし。他に狩りたい魔物がいなけりゃ、休憩がてらのんびり歩ける方がいいな」

「ラウル、お前ってホントに食材や肥料にならん魔物には全く興味ねぇよね……」

「当然だ」

レオニスが下した判断に、ラウルもさも当然といった様子で同意する。

実に現金な妖精に、レオニスが呆れつつ空間魔法陣を開き魔物除けの呪符を一枚取り出した。

「よし、ここからは魔物除けの呪符を使うぞ。先頭は俺、 殿(しんがり) はラウル、ライトは俺とラウルの間の真ん中な」

「はーい!」「おう」

この先は安全性を優先して魔物除けの呪符を使うことにしたレオニス。

早速呪符を真っ二つに破り、呪符の効力を発揮させた。

そうしてレオニス、ライト、ラウルの順で一列に並び、三人は炎の洞窟の中に入っていった。