軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1393話 騎士団の新たなる伝統の誕生と黄金週間の予定

三年生になったライトの初めての週末土日が無事終わり、再び平穏無事な平日が始まった。

ライトはアウルムのブラッシングをしたラウルから大量の抜け毛を譲ってもらい、それはもう大喜びしていた。

アウルムは体長20メートルを超す巨躯なので、一回のブラッシングで大量の抜け毛が取れる。これをマキシに預け、アイギスで糸に加工してもらうのだ。

マキシの話によると、このアウルムの抜け毛を受け取ったカイ達が「まぁ、何て美しい黄金色なの……」「こんなに綺麗な金色の毛は、私達でも初めて見るわ……」と、うっとりしながらしばし見惚れていたとのこと。

そしてアウルムの毛は、フォルやアル達の毛よりも細く靭やかなのに長さはその何倍もあるので、毛糸よりも極細の金糸にすることが可能だということがカイ達の試行錯誤により分かった。

アウルムの抜け毛に、幻獣カーバンクルのフォルや銀碧狼のアル親子のような幸運効果や魔力アップ効果などあるかどうか不明だが、金鷲獅子の毛ならそれなりに霊験あらたかそうではある。

それに、万が一特筆するような劇的な効果は得られずとも、アイギス三姉妹を魅了する程の美しい毛ならそれだけで値千金というものだ。

ライトはこの金糸をもっとたくさん貯めて組紐にして、ミサンガやお守り、その他いろんなアクセサリーを作りたいな!と考えている。

そしてこのアウルムの抜け毛は、今後もライト達からだけでなく鷲獅子騎士団から度々持ち込まれることになる。

鷲獅子騎士達はコルルカ高原に足繁く通い、その度にアウルムの身体をブラッシングしてあげているからだ。

ライトからアイギスへ毛糸加工に出すという話を聞いた鷲獅子騎士達。

一番最初こそライト達に託したが、その後はブラッシングした当人がアイギスに加工依頼を出すようになった。

そうして金糸に生まれ変わったアウルムの毛で、ハンカチに刺繍を施したり飾り紐を作って剣につけるのが鷲獅子騎士団内で大流行しているのだとか。

ちなみにそのハンカチへの刺繍や飾り紐作りも、アイギスが受注している。

また、鷲獅子騎士達はアウルムの毛だけでなく、相棒の鷲獅子達の抜け毛も糸化するようになったという。

それまで彼らは、鷲獅子の抜け毛を糸に加工するなどという方法を思いつきもしなかったので、ブラッシング後は普通にゴミとして捨てていたのだが。こんな素晴らしい活用方法を知り、ならば相棒の抜け毛も何かに使えるのでは!?と考えたのだ。

そうして出来上がった鷲獅子の毛は、主に飾り紐や房飾りにして鷲獅子騎士達の身の回りを彩るワンポイントアクセサリーとなっている。

鷲獅子騎士や竜騎士のような、いわゆる『騎獣使い』を職とする者は乗り込む相棒との密な連携、そして互いに心を通わせることを常に求められる。

そうした意味でも、相棒の抜け毛アクセサリーは相棒を身近に感じることができて、今後の鷲獅子騎士達の必須アイテムとなっていった。

さらにはこの『相棒の鷲獅子の体毛で作ったアクセサリーを身に着ける』というのが鷲獅子騎士の慣習となり、騎士団全体の伝統的なしきたりとして定着していくのは、そう遠くない未来の話である。

そして後日、鷲獅子騎士団でのそうした話を聞きつけた竜騎士団がものすごく羨ましがったという。

しかし彼らが乗る飛竜には、糸加工できるような羽毛は生えていない。故に紐作りや刺繍への加工は絶対に不可だ。

これを悔しがったディラン達が、苦難の末に生み出したのは『自然に剥げ落ちた飛竜の鱗でアクセサリーを作る!』であった。

鷲獅子騎士団と竜騎士団は何かと対抗心を燃やす間柄であるが、今後も良きライバルとして研鑽していってもらいたいものである。

そうしてのんびりとした三年生の日々を過ごすライト達。

とある日の朝には、早くも黄金週間のことが話題に上っていた。

「ねぇねぇ、そういえばもうすぐ黄金週間よね!皆は何か予定入ってるの?」

イヴリンの無邪気な問いかけに、ライト達が次々と答えていく。

「僕は、今年も従兄弟と『五月病御祓いスタンプラリー』に回る予定ー」

「私も去年と同じく、プロステスの伯父様達とともに首都観光する予定ですの」

「私もいつも通り、お店の手伝いよーーー……」

皆が皆、今年の黄金週間の予定を楽しそうに語る。

そんな中、リリィだけは相変わらず頬を膨らませてむくれていた。

ラグナロッツァでも指折り数える人気宿屋の看板娘だけに、こればかりは如何ともし難い。

そして最後に、ライトの口から彼の黄金週間の予定が放たれた。

「えっとねぇ、ぼくはレオ兄ちゃんが今年も鑑競祭りのオークション出品するから、それをいっしょに観に行く予定なんだー」

「え"、ライト君、また鑑競祭りの出品者側になるの!?」

「うん。何かね、こないだラグナ官府の人がレオ兄ちゃんのところに出品を頼みに来たらしくてね? しゃあないからまた何か出してやるかってことになったみたいなんだよねー」

「「「………………」」」

ライトの話に、イヴリン達は全員絶句していた。

…………

………………

……………………

ライト達が黄金週間の予定話に花を咲かせている日から、約二週間程前のこと。

ラグナロッツァのレオニス邸に、ある人物がレオニスとの話し合いを求めて訪ねてきた。

「ごめんくださーい……この屋敷の主である、レオニスさんはご在宅でしょうか?」

「えーと……どちら様だ?」

「あ、執事の方でいらっしゃいますか? 私はこういう者でして」

見慣れない人物の訪問に、ラウルが執事として玄関先で対応している。

その者がラウルに差し出してきた名刺には『魔術師ギルド 鑑定課主任 ティモシー・ベローニ』とある。

ティモシーが差し出した名刺を見ながら、ラウルが問うた。

「魔術師ギルド? うちのご主人様は冒険者ギルドの所属だが、魔術師ギルドが一体何の用事があるんだ?」

「あ、今回私は魔術師ギルドの職員としてではなく、ラグナ官府が主催する鑑競祭りのオークション部門担当者として参りました」

「あー、去年の黄金週間にご主人様が出たというあのオークションか?」

「そうですそうです」

ティモシーの答えに、ラウルがはたとした顔で納得している。

確かに去年、レオニスは黄金週間の目玉イベントの一つである『世界のお宝発掘!鑑定&競売祭り』、通常鑑競祭りで人生初の出品者側として出場していた。そのことはもちろんラウルも知っている。

「そのオークションの担当者が、うちのご主人様に一体何の用だ? 今年もオークションに出品するなんて話は、今のところ全く聞いていないが」

「ええ……実はそのことで、是非ともレオニスさんにご相談したいことがありましてですね……」

「生憎ご主人様は、今ノーヴェ砂漠に遠征中だ。数日は戻ってこないぞ?」

「えッ、そうなんですか!?」

ラウルの言葉に、ティモシーがガビーン!顔でショックを受けている。

そう、この時レオニスはライトとともに砂の女王探しのためにノーヴェ砂漠に遠征中で不在だった。

数日は戻らないと聞いたティモシー、「……ぃゃ、締め切りが過ぎても問題ないよな……」「レオニスさんなら、審査にだって時間はかからんはずだし……」等々ぶつくさと呟いている。

ティモシーの様子からするに、何が何でもレオニスとのアポが取りたいようだ。

「……では、レオニスさんがご帰宅なさったら、お伝えしていただけますでしょうか?」

「何だ?」

「『今年も是非とも【乙女の雫】を出品していただきたい!』と……」

「……ぁー、去年出品したという【乙女の雫】の話か?」

「はい……」

その後ティモシーが語った話によると、レオニスが去年出品した【水の乙女の雫】と【火の乙女の雫】、この二点がそれはもう大反響を呼びまくったという。

確かにこの二つは去年の鑑競祭りの目玉となり、オークションで大いに盛り上がった。落札価格も2000万Gと3000万Gという超高額となり、ラグナロッツァ孤児院の立て直し資金が目的だったレオニスはもちろんのこと、ラグナ官府側も手数料でウハウハだったはずだ。

しかし、反響は良いことばかりではなかった。

世にも稀な稀少品【乙女の雫】を手に入れ損ねた貴族や豪商達のクレームや陳情がものすごく寄せられた、とティモシーは言う。

「あの後、ラグナ官府の担当部署に『次も【乙女の雫】は出るのだよな?』『何ッ、分からんだと!? そんなことは許さん、次はうちが必ず手に入れるんだ!』等々、【乙女の雫】に関する問い合わせがものすごかったらしくてですね……ぃぇ、私自身は本来は魔術師ギルド所属なので、そんなことになっているとはつい先日まで知らなかったんですが」

「でもって、今年も私が鑑定係としてラグナ官府に派遣されたんですが。そこで関係者全員に泣きつかれましてね……『今年も是非とも【乙女の雫】を出品してもらいたい!』『でないと私達の明日はない!』とまで言われまして……」

「というか、実際私の目から見ても、今年は他の出品物でめぼしいものがほとんどなくてですね……このままではオークションの盛り上がりにも欠けてしまう、という危惧感は私にも感じ取れましたので……失礼を承知で、今年もレオニスさんにオークションへのご出場を依頼しに参った次第です」

終始項垂れつつ話すティモシーに、ラウルも「ぉ、ぉぅ、そうか……」と答えることしかできない。

ティモシーのげっそりと憔悴しきった顔は、派遣先のラグナ官府で本当に苦労してきたのだということが窺える。

「ぁー、そういうことなら仕方がない、ご主人様が帰還したら伝えるだけは伝えておこう」

「あ、ありがとうございます!」

「ただし、一応用件を伝えるってだけで、ご主人様がオークションに出品するかどうかはまた別問題だぞ?」

「もちろんそれでも構いません!是非ともご検討の程よろしくお願いいたします、とレオニスさんにお伝えください!」

ラウルの言葉に、ティモシーが嬉しそうにラウルの手を取り感激している。

執事(ラウル) に向けて何度も頭を下げつつ、用件を伝え終えたティモシーがレオニス邸を後にする。

そしてその数日後に、ライトとともにラグナロッツァに帰還したレオニスにラウルがこのことを伝えると、レオニスは「しゃあないなぁ……一度ラグナ官府に行って話を聞くだけ聞いてくるか……」と言い、結局は二度目のオークション出品を決めることになったのだった。

……………………

………………

…………

「へー、去年のオークションってそんなに盛り上がってたんだねー」

「確かにプロステスの伯父様達も、それはもう盛況だったと仰っていましたわ」

「一個だけで2000万Gとか3000万Gになるなんて、意味分かんない」

「やっぱり僕も、将来は冒険者になろうかな……」

去年の鑑競祭りの話を聞いたイヴリン達が、それぞれに感想を漏らす。

特にジョゼなど、将来の進路まで決まってしまいそうな雰囲気だ。

これは、万年平子爵家に生まれついた嫡男故の悲哀からくるものか。

ジョゼが冒険者に向いているかどうかは、今のところまだ分からない。

頭脳的には冷静沈着な性格なので、体力を今よりもっとつけて基礎魔力が多ければ不可能ではなさそうである。

しかし、ライトがそれを口にすることはない。

冒険者稼業とは、大金を手にする夢もあるがその分大きな危険も伴う。

自分(ライト) は父親や育ての親が冒険者だから、その後を追って冒険者を目指すが、決して裕福ではないとはいえ貴族の家に生まれた 子供(ジョゼ) がそれを目指すのはリスクが大きいと言わざるを得ない。

故にライトは気軽にジョゼの後押しをできないのだ。

ライトはジョゼの呟きに「ぁー、うん、でも冒険者っていいことばかりじゃないからね? 生命の危険に晒されることも多いし、ぼくの父さんも早くに亡くなっちゃったし……」と答えるに留めていた。

そんなライト達の会話に、リリィが構うことなく割り込んできた。

「てゆか、今年も皆で観に行けるようなイベントないのー?」

「そうねー、去年は皆でサーカスショーを観に行ったよね!」

「今年もサーカスショーはあるのでしょうか? あれば是非とも私も観に行きたいですわ!」

「うんうん、リリィもまた絶対にサーカスショーを観に行きたーい!」

「そしたら僕も、ショーのチラシを集めておくよ」

「よろしくね、ジョゼ!」

長期休暇特有のイベントを求めるリリィに、イヴリンやハリエットも話に乗ってきた。

もちろんジョゼも話に乗り、チラシを集める係に立候補した。

今年もまた楽しい催し物が目白押しであろう黄金週間に、ライト達子供の心は早くも鷲掴みにされていた。