軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1391話 感動の対面

アウルム達と別れ、コルルカ高原奥地を後にしたライト達。

行きと同じように、帰りもかなりの速さでバビューン!と飛んでいく。

さっきまで激しい運動をしていたのに、何事もなかったかのようにピンピンとしているライトとレオニス。

そんな人外ブラザーズに、ラウルが心配そうに声をかける。

「ご主人様達よ、あれだけ激しい追いかけっこをしてたのに、疲れてないのか?」

「ン? あの程度で疲れてたら、カタポレンの森の警邏なんてできねぇぞ?」

「ぃゃ、そりゃご主人様はそうかもしれんが……ライトは大丈夫なのか?」

「うん!ぼくも毎朝魔石の回収に回る時に、修行も兼ねてずっと飛んで移動してるからね!このくらい何ともないよ!」

「さいですか……このご主人様達は、本当に人族とは思えんな……」

ラウルの心配などどこ吹く風で、全く平気なライト達。

それを見たラウルが半ば呆れつつ脱力している。

そして風の女王を背に乗せたゼスは、ご機嫌な様子でライト達とともに空を飛び続けていた。

『アウルム君は、本当にすごいよね。僕も百年ほど河原で孤独に過ごしたけど、彼のように魔力を奪われ続けた訳ではないからね……それでも生きることを諦めず、絶対に屈服しなかった彼の強さは本物だ。僕の苦労なんて、苦労のうちにも入らないことを実感したよ』

『バルト様の苦労だって、アウルム君の苦難に引けを取らないと思います!本当に反省しなければならないのはワタシです!』

『フフフ……風の女王は、僕には甘いのに自分に厳しいねぇ』

ひたすらゼスを肯定し続ける風の女王に、ゼスも嬉しそうに笑う。

ゼスにとってアウルムは、ライト達の次にできた友達。

しかも金鷲獅子という、神殿守護神とはまた違った高位の存在。

アウルムが発する高貴なオーラと朗らかな性格は、初めて会ったばかりのゼスをいとも簡単に魅了した。

そんな出会いをもたらしてくれたレオニスに、ゼスが改めて礼を言う。

『レオニス君も、今日は本当にありがとう。レオニス君から勧められたご近所付き合いは、とても良いものになりそうだよ』

「おお、そうか、そりゃ良かった!俺も話を進めた甲斐があったってもんだ」

『やっぱりレオニス君の言うことに間違いはないよね。これからも、僕達のことを正しく導いてね』

「おう、任せとけ!」

ゼスから礼を言われたレオニスが、ニカッ!と笑いながら快く応える。

その人懐っこい笑顔は、まるで全てを包み込んでくれる春の陽射しのように眩しかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうしてライト達がコルルカ高原奥地を飛び立ってから、一時間ほど過ぎた頃。

レオニスがふととあることを思い出し、ゼスに話しかけた。

「あ、バルト、そういや一つ、お前に伝えなきゃならんことを思い出したんだが」

「ン? 何だい?」

「前に、他の神殿守護神に会いたいって言ってただろう? それはバルトだけじゃなく、他の神殿守護神も同じ気持ちらしくてな。俺達が住むカタポレンの森の目覚めの湖にいる湖底神殿の神殿守護神アクアがな、辻風神殿でバルトが生まれたって聞いて、是非とも会いたいって言ってたんだ」

『え? それホント?』

「もちろん。こんなことで嘘ついたって何にもならんだろう?」

レオニスの話に、ゼスが目を丸くしながら驚いている。

そんなゼスに、レオニスがさらに驚くべき情報を伝える。

「アクアがいる目覚めの湖には水の女王がいて、アクア自身もアープという名の水神なんだ」

『へー、そうなんだ。水神かぁ、まさに水の女王を守る守護神に相応しいね』

「そうそう。でな、アクアは水神だから、水場なら世界中のどこにでも瞬時に移動できるんだ。だから、俺達がアクアを水越しに呼べばすぐに来てもらえるぞ」

『そうなんだ!……ということは、もしかして……辻風神殿のすぐ傍に流れている川にも、来てもらえる……ってこと?』

「そゆこと」

『ンまぁぁぁぁ、何て素敵なの!?』

レオニスとゼスの会話に、何故か風の女王まで感激している。

そう、現状ではゼスの方からカタポレンの目覚めの湖に移動するのはかなり厳しいが、アクアがフラクタル峡谷に移動するのは然程難しいことではない。

何しろアクアは水神アープ。彼が加護を与えたライトやレオニス、ラウルが水越しにアクアに呼びかければ、どれ程距離が離れていてもその声は必ずアクアに届く。

そしてアクアはその呼びかけに応じ、瞬時にライト達のもとに移動することができるのだ。

『そういうことなら、少しでも早く辻風神殿に戻らないと!バルト様、ワタシの力も使ってくださいまし!』

『ありがとう、風の女王。よーし、そしたらもっと飛ばすとしようか!レオニス君、ライト君、ラウル君、皆僕の背中に乗って!』

「おう」「うん!」「了解」

風の女王が申し出た助力を、ゼスが躊躇うことなく受け入れる。

ゼスは基本的におっとりとしていてせっかちではない方なのだが、今この時だけは一刻も早く辻風神殿に帰りたいらしい。

ゼスの呼びかけにライト達は即時承諾し、早速三人がゼスの背中に乗り込んだ。

『皆、僕の背中に乗ってくれた?』

「おう、全員乗ったぞ」

『そしたら今から一気に全速力で飛ぶからね、万が一にも落っこちないよう僕の 鬣(たてがみ) にしっかりと捕まってて!』

「うん!」

『……行ッくよーーー!』

ライト達三人と風の女王をその背に乗せたゼスが、猛スピードで一気に空を駆ける。

そのスピードは凄まじく、それまで飛んでいた速度の倍以上は加速していた。

しかし、そんな猛スピード下であっても、ライト達が振り落とされることはない。

ゼスは風を司る青龍、大気を操ることに長けた四神の一柱だけに、彼がその気になれば空気抵抗すら無にすることも可能なのだ。

顔や身体に受ける風はそよ風程度にしか感じないのに、眼下の景色は猛烈な勢いで流れていく。

その摩訶不思議な光景に、ライトは「うわーッ、すごーい!」と歓喜し、レオニスとラウルは「おお、こりゃすげーな……」「さすがは青龍、飛ぶことにかけては世界一の腕前だな」とひたすら感心していた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうしてライト達がゼスの背中に乗ってから、約二十分が経過した。

目の前に辻風神殿が見えた瞬間、ゼスが飛ぶ勢いを少しづつ落としていく。

「お、もう辻風神殿に着いたんか!?」

「バルトの飛ぶ力って、本当にすごいね!」

本当ならあと一時間はかかる距離を、その三分の一の二十分にまで短縮したことにライト達が心底度肝を抜かれている。

そんなライト達に、風の女王が誇らしげに言い放つ。

『バルト様とワタシが力を合わせれば、このくらいどうってことないわ!ねー、バルト様?』

『うん。風の女王が力を貸してくれたおかげで、早くおうちに帰ることができたよ。本当にありがとうね』

『エヘヘ……バルト様のお役に立つためなら、風の女王としてこの程度のことはできて当然ですわ!』

ゼスにお礼を言われた風の女王、もじもじしながらはにかんでいる。

そうしてゼスは辻風神殿前の河原に降り立ち、時間が惜しい!とばかりに背中にいるレオニスに話しかける。

『レオニス君、早速だけど湖底神殿の守護神を呼んでくれる?』

「おう、いいぞ」

ゼスの頼みに、レオニスが早々に背中から降りてストッ、と河原に降り立った。

そしてフラクタル峡谷を流れる川に近づき、水辺から川の水面に向かって大きめの声で呼びかけた。

「おーい、アクア、聞こえるかー? 聞こえたら、こっちに来てくれー」

レオニスがアクアに向けて声をかけた後、数瞬の時間が流れる。

それは時間にして約十秒。それまで静かに流れていた川の水面に、突如水紋が浮かび上がってきた。

そしてその水紋の中心から、アクアが現れた。

『レオニス君、呼んだー?』

「おう、呼んだぞー」

『……って、ここはどこ?』

「ここはフラクタル峡谷、青龍のバルトがいる辻風神殿の前だ」

『ッ!!!』

見慣れない場所に呼び出されたアクア、しばしキョロキョロと周囲を見回す。

そんな彼の目に飛び込んできたのは、澄んだ青色をした一頭の東洋型の竜。

それが青龍であることにアクアが気づくのに、然程時間はかからなかった。

『えーっと……君が、辻風神殿で生まれたという青龍?』

『うん。僕の名はバルト、よろしくね』

『バルト……良い名前だね。僕はアクア、湖底神殿に住む水神アープだよ。こちらこそよろしくね』

『僕は青龍で、君は水竜。属性こそ風と水で違うけど、竜という括りでは仲間だね』

『そうだね。僕と君は神殿守護神仲間というだけでなく、竜としても仲間だ。二つも同じ要素を持つなんて、これはもはや奇跡的な運命と言っても過言ではないね』

バルトとアクアが向かい合わせになり、お互いが軽く自己紹介をする。

そして彼らの共通点である『神殿守護神』と『竜族』、二つも同じものを見つけて双方喜び、どちらからともなく顔を近づけて親愛の証である頬ずりを交わしていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「遠く離れた兄弟の再会……ううッ、何て感動的なんだろう……」

「全くだ……兄弟姉妹ってのは、どんなに遠く離れていても思い合うもんだもんなぁ……」

『本当にねぇ……まさか、バルト様と他の神殿守護神がこんなにも早く出会えるなんて……』

「アクアもバルトも、守護神仲間に会うことができて、本当に良かったねぇぇぇぇ」

「ああ、俺も貰い泣きしちまうぜ……頼れる兄弟ってのは、本当にいいもんだよなぁ」

『バルト様、本当に本当に良かったですねぇ……』

滝の如き涙をダバダバダーと流す人外ブラザーズ。どうやらバルトとアクアの感動の対面に、二人して思いっきり貰い泣きしているようだ。

そしてその中に何故か風の女王も加わって、エグエグと泣いている。

人外ブラザーズとともに、感情を抑えることなく涙=【乙女の雫】をポロポロと流す風の女王。胸の前で両手を組み、ただただ咽び泣く。

ゼスの喜びを我が事のように捉え、歓喜の涙を流す風の女王は本当に心根の優しい女王である。

そして、相変わらず感動の対面に弱くて涙脆いライトとレオニスに、ラウルが無言のまま空間魔法陣を開いてタオルを差し出した。ちなみに風の女王の涙は固形の雫となるので、彼女にタオルは出していない。

ライトとレオニス、二人揃ってぐしゃぐしゃになった顔をタオルでぐしぐしと拭っている。

涙で顔をぐしゃぐしゃにした大小二人の主人に、無言でテキパキとタオルを差し出す―――さすがラウル、今日も完璧なる万能執事である。

風属性の頂点と水属性の頂点、二体の守護神が初めて顔合わせをした奇跡の瞬間だった。