作品タイトル不明
第1383話 ケセドの朝市
青龍の名付け会議他様々なことをライトとレオニスで話し合った翌日。
二人はラウルとともに、三人で青龍と風の女王が待つフラクタル峡谷に向かった。
ライト達が青龍に用意した真名と愛称を早速伝えに行くという話をしたら、ラウルもいっしょについていきたい、と申し出てきたからだ。
ラウルも青龍から鱗をもらったし、彼なりに恩義を感じて青龍とより仲良くしていきたいと思っているのだろう。
三人はまず冒険者ギルドの転移門を使い、コルルカ高原最寄りの街ケセドに向かう。
本当は、コルルカ高原奥地の鷲獅子生息地に設置された転移門を使って移動してもいいのだが。ケセドから行くよりも距離的にかなり遠いのと、ラウルが「ついでにケセドでエヴィパ肉を買いたい」と言うのでケセドルートでのお出かけとなったのだ。
朝早くにラグナロッツァの屋敷を出たライト達。ケセドの街の朝市で先に買い物を済ませるためだ。
毎週日曜日に行われるという朝市は、エヴィルヴァイパーの肉や皮、骨などを買い付けに来る他の街の商人やケセドの民で賑わっていた。
「おおー、なかなかに盛況だねー」
「冒険者ギルドの受付嬢の姉ちゃんの話によると、エヴィパ肉を求めて近隣の街からも仕入れに来る商人が結構いるんだと。他にもエヴィパの皮で革製品を作る職人や、骨を用いた工芸品なんかも人気があるらしい」
「へー、そうなんだー。ぼくも小物作り用にエヴィパの皮を買っていこっかなー」
「俺もカイ姉達への土産に皮を買ってくか」
予想外の盛況ぶりに、ライト達が市場の中をキョロキョロと見ながら歩く。
ライト達にとっても初めてのケセド朝市で、何もかもが物珍しくて新鮮に映る。
しかし、それ以上に注目を集めてしまっているのがレオニスとラウルだ。
今日はコルルカ高原に出かけるため、何事が起きても対処できるよう二人ともフル装備で挑んでいる。
ケセドというこぢんまりとした街で、深紅のロングジャケットと漆黒の燕尾服という派手な出で立ちのイケメン二人が並んで歩けば、嫌でも目立ちまくるというものである。
しかし、ライト達は人目を気にすることなく買い物を楽しんでいる。
いや、厳密に言えばライトだけは周りの視線に気づいて『ぅゎー、すんげー目立ってるぅ……』と思ったものの、何も別に悪いことをしている訳でなし、気にするだけ損々!からのキニシナイ!精神を発揮することにしたのだ。
まずラウルは目的のエヴィパ肉の全部位を各10kgづつと爆買いし、ライトはエヴィパ皮の1メートルサイズの端切れを五枚、レオニスはエヴィパ皮の反物を三つ購入した。
今回骨は買わなかったが、実はこのエヴィパ骨も印章や彫刻素材としてかなり人気が高い品だという。
街の外で出食わせば危険で獰猛なエヴィルヴァイパーも、素材としてはかなり優秀な部類なのだ。
そうして先に買い物を済ませたライト達。
街の外に出て、フラクタル峡谷に向かって一気に飛んでいった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ライト達がケセドの街を出てから、約三十分程でフラクタル峡谷の辻風神殿に到着した。
青龍の鱗によってライトが飛行能力を得て以降、辻風神殿までの行き来の時間がどんどん短縮できている。これは実に喜ばしいことだ。
これはやはり、空中を飛ぶことでコルルカ高原の複雑な地形に一切左右されることなく一直線で目的地に向かえる、というのがかなり大きい。
三人が辻風神殿の上空に着き、神殿前の河原に降り立つ。
すると、神殿の中からすぐに風の女王と青龍が出てきた。
『レオニス、ライト、ラウル、ようこそいらっしゃい!アナタ達が来るのを、それはもう首を長くして待ってたのよ!』
『レオニス君、ライト君、ラウル君、おはよう。レオニス君にはこないだ会ったばかりだけど、ライト君とラウル君は久しぶりだね』
ライト達の来訪を心から歓迎する風の女王と青龍。
特に風の女王など、レオニス目がけてバビューン!と勢いよくすっ飛んできたくらいだ。
きっと例の件―――青龍の名付けのことで、本当にレオニスの再訪を心待ちにしていたのだろう。
そんな風の女王達に、ライト達も挨拶する。
「風の女王様、青龍、こんにちは!ご無沙汰してます!」
「俺もここに来るのは久しぶりだな。風の女王も青龍も変わりなく過ごしているようで何よりだ」
ライト達の挨拶に続き、レオニスも風の女王達に話しかける。
「風の女王、青龍、おはよう。今日は例の件、青龍の名付けをしに来たぞ」
『えぇえぇ、それをずーっとずーーーっと待ってたのよ!ささ、外での立ち話で聞くのも何だから、神殿の中に入りましょ!』
「ぉ、ぉぅ……」
待ちに待ったレオニスの嬉しい報告に、風の女王が花咲くような笑顔でレオニスの手を両手で掴み引っ張る。
そして辻風神殿に向かって手を引く風の女王に、レオニスがぐいぐいと引っ張られながら連れられていく。
「フフフ、風の女王様、すっごく嬉しそうだねぇ」
「それだけ待ち侘びてたんだろ。何てったって青龍のための新しい名前だもんな」
『ンもう、風の女王ってばせっかちなんだから……』
喜び勇んでウッキウキな様子の風の女王と、それに軽く振り回されるレオニスの微笑ましい光景に、ライトやラウルは心和む。
そして青龍もまた照れ隠しのための苦笑いをしつつ、ライト達とともに笑顔で風の女王とレオニスの後を追って辻風神殿に入っていった。