軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1370話 二度目のビースリー対戦

その後星海空間でコヨルシャウキとビースリー対戦をし続けたライト。

六回目のボス戦を終えて、地に倒れたコヨルシャウキが弱々しい声でライトに話しかける。

『これで……今日の、ビースリー戦は……お開き、か……?』

「ハァ、ハァ……そうですね……ぼくも、もうそろそろ、あっちに、帰らなきゃ、ならないんで……」

『そうか……では、此方も、すぐに戻って、来る故……ここで、少し、待っておれ……ともに、向こうに、帰ろうぞ……』

「分かりました……じゃあ、コヨルシャウキさんが、復活するまで……ぼくは、お風呂に入ったり、ステータスチェック、でもしながら、待ってますね……」

『うむ……すまぬな……』

辿々しいコヨルシャウキの声に、ライトもゼェハァと疲れきった声で応える。

そうしてライトとの死闘により、血みどろのズタボロになったコヨルシャウキの身体がスーッ……と消えていった。

もちろんライトもコヨルシャウキの返り血でドロドロだが、二十分の休憩の合間に毎回コヨルシャウキに浄化魔法をかけてもらっている。

今も血みどろでベタベタという凄惨な状態だが、これで今日のビースリー戦は終了なのでサイサクス世界に帰る前にちゃちゃっと風呂に入ることにした。

ライトはシルバースライムの入浴にも使う巨大桶をアイテムリュックから取り出し、水魔法と火魔法を駆使してお湯を張り、入浴して返り血を洗い流す。

この星海空間でもう何十回と木桶風呂に浸かっているので、準備も入浴も全てが素早く手慣れたものだ。

洗髪まで終えて風呂から上がり、バスタオルで身体を拭いて風呂のお湯や巨大桶をアイテムリュックに仕舞うライト。

一通り片付けしてから、風魔法で髪の毛を乾かしつつマイページを開く。

「おおー、ここで六回戦っただけでレベル128にまでなってる!そしたら職業習熟度の方はどうなってるかな?」

「……おおお、昨日【破壊闘士】になったばかりなのにもう38%になってる!すげー!」

「やっぱビースリーの戦闘効率はすげーなー。地上の雑魚魔物狩りだけだとこうはいかないもんなー。…………って、これでドロップする報酬が良ければ言うことなしなんだけどなぁ」

ピッ、ピッ、と慣れた手つきでマイページを操作し、各種ステータスデータを見ながらライトは一喜一憂する。

まず大喜びしているのは、レベルアップの早さと職業習熟度の進捗が顕著なこと。

特に職業習熟度の進捗の早さは、ライトにとってとても嬉しいことだ。

ライトは昨日まで、ノーヴェ砂漠でサンドキャンサー目当ての魔物狩りを数日に渡り続けていたので、現在の闘士職の闇系二次職【格闘家】をマスターしていた。

そして今日、コヨルシャウキとビースリー対戦するに当たり、ライトは闘士職闇系三次職【破壊闘士】になりたてほやほやの状態で戦いに挑んでいた。

その結果、体感時間で十時間弱、サイサクス世界時間で五時間もしないうちに三次職の三分の一もの職業習熟度を得たのだ。

これは実に驚くべき成果である。

一方で暮れなずんでいるのは、ビースリーのボス戦で獲得する報酬のこと。

ここまで五回のコヨルシャウキ戦をこなしてきて、ライトが得た報酬内容は以下の通りである。

・ハイポーションダース 2個

・ハイエーテルダース 1個

・エネルギードリンク(1本)1個

・スペーススーツ・アーム 1個

ちなみにこの報酬開封の儀には、全てコヨルシャウキも立ち会っている。

報酬の宝箱を開けて、これら大ハズレの報酬が出てくる度に二人の耳には『チーーーン☆』という美しくも虚無に満ちたおりんの音色が鳴り響いていた、ような気がする。

しかし、どれ程ライトがズンドコに落ち込んでもコヨルシャウキだけはめげない。

『あー、その、何だ……次いくぞ、次!』という、どこかで聞いたような台詞で懸命にライトを励ます。

ライトはその言葉を聞く度に、内心で『何それ、一体どこの破壊神だよ!?』というツッコミが喉まで出かかる。

しかし、それと同時に『……まぁね、この世界の破壊神もコヨルシャウキも生みの親が同じだし。台詞が似るのも仕方ないか』とも思うので、何とか口には出さずにその都度懸命に堪えていた。

報酬箱から大ハズレのアイテムが出てくる度に、ライトはがっくりと項垂れる。

とてもじゃないが、ハイポーションやハイエーテルの十本二十本では回復するにも到底足りない。

特に今回はバトルにかける総時間を十時間まで、と決めてあるので前回のようにのんびりとHPの自然回復を待ってなどいられないのだ。

今回のビースリー対戦六回のうち、ライトは全部で十一回戦闘不能に陥ったが、その全てをエクスポーション使用によりHP全回復し、十数秒のうちに戦線復帰していた。

今のライトはHPMPともに六千を超える。そのHPが0になった時、HPを満タンにするためにはエクスポーションだと八個消費する。

また、戦闘不能状態から完全回復する以外に、まずは戦闘不能状態に陥らないように心がけていたので、それこそ湯水のようにエクスポーションや回復スキルをバンバン使用していた。

そのおかげで、戦闘不能状態から回復する時間ロスこそ大幅に減らせたものの、今回消費したエクスポーションは五百本を超えた。

そして回復スキルもガンガン使用したので、その回復スキルを使うためのMP回復のアークエーテルも三百本は消費した。

回復剤だけで考えたら、致命傷レベルの大出血大赤字である。

もー、ホンット、回復剤の消費量が半端ない……レベルアップや職業習熟度の大量獲得効果がなけりゃ、こんなんやってらんねーよ……

エネドリだって、今日だけで十本は飲んじゃったし……報酬にエネドリ一個出てきたけど、これじゃ全ッッッ然足りない!

エクスポやアクエの大量消費はまだ我慢できる、だってマイページのショップでいくらでも買い足せるし。でもエネドリは非売品だから、ショップじゃ買えねぇんだぞ!?

だからエネドリの大量消費は洒落なんないんだって!これ、マジでどーにかならんの!?

ライトがそんなことをつらつらと考えていると、ライトの目の前にコヨルシャウキが現れた。

それは100メートルを越す本来の姿。どうやら完全復活したようだ。

『勇者候補生よ、待たせたの』

「あ、コヨルシャウキさん、おかえりなさーい。早速ですけど、ぼくの装備品に浄化魔法をかけてもらえますか?」

『うむ、お安い御用ぞ』

がっくりと項垂れていた頭をパッ!と上げたライト、コヨルシャウキに早々に浄化魔法を頼んでいる。

もちろんコヨルシャウキがその頼みを厭い断ることなどない。むしろ他者が堂々と自分を頼ってくれることが嬉しく思えるコヨルシャウキである。

傍から見れば何ともお気軽なやり取りだが、それはライトとコヨルシャウキが対等な関係を築けていることの証でもある。

ライトの望みを叶えるべく、コヨルシャウキがライトの装備品スペースに浄化魔法をかけた。

そうしてライトの全ての装備品が綺麗になった後、コヨルシャウキがライトに向けて声をかけた。

『さあ、勇者候補生よ、本日最後の報酬開封といこうではないか』

「はーい、そしたら箱を開けますねぇー」

報酬開封をねだるコヨルシャウキに、ライトも応じてマイページのアイテム欄から報酬箱を取り出した。

『さて、今度は何が出てくるかのう?』

「何かいいもん出てくるといいんですけどねぇー…………あッ!」

報酬箱を開封したライト、その声音は諦念に満ち満ちている。

だが次の瞬間、半目だったライトの目が大きく見開かれた。

「エネルギードリンクダースだ!」

『おお、それは良いものなのか?』

「はい!エネルギードリンクはSP回復アイテムなんですけど、それがダース、つまり十二本セットになったアイテムなんです!」

『おお、そのような貴重な品を得られたのだな!実に喜ばしいことだ!』

「ええ、おかげさまでエネドリ不足の危機にはならずに済みそうです!」

『重畳、重畳』

明るい笑顔でエネルギードリンクダースの出現を大喜びするライトに、コヨルシャウキも何故かふんぞり返りながら喜んでいる。

ライトが今日使ったエネルギードリンクは十本。

ここでエネルギードリンクダースが出てきたのは、ライトにとって本当に嬉しいことだった。

はぁー、ここでエネドリダースが出てくれて本当に良かった!でなきゃ俺、心が折れてしまったかもしれん……

黒字というにはあまりにささやか過ぎるけど、それでもエネドリ三本は増やせた勘定だしな!

終わりよければ全てよし、じゃないが。エネドリ三本も増えりゃ御の字だ!

ライトはそんなことを考えながら、今出てきたばかりのエネルギードリンクダースをいそいそとマイページのアイテム欄に仕舞い込んだ。

そして徐に立ち上がり、コヨルシャウキに声をかけた。

「さ、そしたらコヨルシャウキさん、ぼくといっしょにサイサクス世界に帰りましょう!」

『そうだな。本当ならもっともっと其方を鍛えてやりたいところだが。最初から『今日は六回まで』と決めておったものな』

「そうですそうです、前回のように何十回も対戦できませんからね!」

『相わかった』

ライトの言葉に、コヨルシャウキが頬の鈴を指で押して身体のサイズを小さくしていく。

そうしてあっという間にレオニスサイズになったコヨルシャウキ。右手をそっとライトの前に差し出す。

『勇者候補生よ、今日も良き戦いぶりであった。其方の成長の早さには、此方も驚嘆しておる』

「これも全て、コヨルシャウキさんとヴァレリアさんのおかげですよ!」

『うむ、勇者候補生であるのに謙虚なのもまた良きことにて。今後もますます研鑽を励むのだぞ』

「分かりました!次はいつになるか分かりませんけど、またよろしくお願いしますね!」

『全て此方に任せよ。強き勇者候補生を育て上げる、それこそが此方の使命であるからな』

ライトの勇敢さを褒め称えるコヨルシャウキに、ライトも照れ臭そうに微笑みながら握手を交わす。

そうしてライトはカタポレンの森の家へ、コヨルシャウキは地底世界へ戻っていった。