軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1329話 ブルーム四姉妹の名

ドラリシオの群生地内の北の里に、新たな泉を作り終えたライト達。

水の味見もして皆大満足していると、アクアがレオニスに声をかけた。

『ねぇ、レオニス君。この泉にも固有の名前は要るかな?』

「ン? そうだなぁ……一応あった方がいいとは思うが」

『じゃあ、何て名前にしようか? 『アクアの泉』は既に天空島にあるし、それ以外の名前を考えなくっちゃね』

アクアがレオニスに問うたのは、新しい泉の名前問題。

水神であるアクアが作った泉なのだから、名無しという訳にもいかないだろう―――そう考えたレオニスが、適当なことを口にした。

「ここはドラリシオの群生地だから、『ドラ池』とかでいいんじゃね?」

『ドラ池か、うん、分かりやすくていいね。じゃあ、それでいこうか』

「「「………………」」」

レオニス案『ドラ池』。

そのあまりのダサさにライト達は言葉を失うが、アクアは特に問題視することなく普通に受け入れている。

そしてアクアが、ここに居合わせているドラリシオ達にも新しい泉の名を広めるために宣言した。

『皆、この泉は『ドラ池』という名前になったから、これからそう呼んでね』

「「「「ハイ!」」」」

『『『………………』』』

アクアの言葉に、ブルームやチルドレンは何の疑いも持たずニコニコ笑顔で承諾している。

もっとも、レディー達は微妙な顔をしていたので、やはりレオニスの名付けセンスに疑問を持つ者はいるようである。

そしてここで、アクアがこの場にいる最高権力者であるレディー達にも話しかけた。

『おそらく今この瞬間もマザーがここを見ているだろうけど、レディーである君達にも一応言っておくね。このドラ池は、砂漠で生まれ落ちて傷ついたブルーム達のために作ったものだ。だからその所有権、泉の水を使う権利はブルーム達にあることは、君達にも分かるね?』

『もちろんです』

『結構。これからドラ池の水を使ったり飲んだりする時には、必ず先にブルーム達の許可を得てね。もちろん怪我をしたり弱ったドラリシオのために使う分には、許可なんて取らなくても何の問題もないけど。間違ってもここからブルーム達を追い出すなんてことは、絶対にしないように』

『分かりました!』

アクアの注意喚起に、カティア達レディーも大きく頷きながら同意する。

アクアが懸念したのは、ブルーム達の居場所を奪われること。

ドラ池の水は皆が大絶賛するだけに、その価値は計り知れない。

一方でブルームはドラリシオの中で最も地位が低い。

そう、立場の弱いブルーム達からドラ池を不当に取り上げようとする動きが出てもおかしくないのだ。

そうさせないために、アクアが先んじてマザーやレディー達に釘を刺したのである。

するとここで、四体のブルーム達がアクアに改めて礼を言う。

「アクア君、私達のためにありがとうございます!」

「アクア君、本当ニ、ありがとウ!」

「この恩ハ、いつカ、必ズ、返すネ!」

「アクア君、大好キ!」

小さな妹ブルーム達がアクアの前肢にヒシッ!と抱きつき、何と姉ブルームもアクアの首っ玉に抱きついた。

いつも控えめな姉ブルームだったが、妹ブルーム達の素直で奔放な感謝の表現の仕方に触発されたようだ。

そんな人懐っこいブルーム達に、アクアも嬉しそうにしている。

『どういたしまして。これは、君達があのノーヴェ砂漠で一生懸命頑張って生き延びてきたご褒美だよ』

「うン!」

「素敵ナ、ご褒美、もらえテ、とってモ、嬉しイ!」

「畑の皆、早ク、元気ニ、なるト、いいネ!」

ブルーム達が本当に嬉しそうにしている中、アクアが何気なく呟く。

『うーん、この子達に名前がまだないのは不便だなぁ……ねぇ、カティアさん、レナータさん、ミレイユさん、ブルーム達はマザーからの名前はまだもらえないんだよね?』

『え"ッ!? あああアクア様!私達のことをさん付けで呼ぶなんて、恐れ多いです!』

『そうです!ここは全員等しく呼び捨てにしてください!』

『ええ、 そこだけは(・・・・・) レオニスを見習ってですね!是非とも呼び捨てでお願いします!』

『……そう? 君達がそう言うならそうするけど……』

アクアの問いかけに答えるより前に、レディー達が大慌てで自分達の呼び方の是正を求めている。

確かに水神であるアクアからさん付けで名を呼ばれた日には、あまりの畏れ多さに萎縮してしまうだろう。

それはカティアだけでなく、レナータやミレイユも同じ。如何にレナータ達が脳筋族であっても、さすがにその程度の感性は持っていたようだ。

『ていうか、話を戻すけど。このブルーム達にも、ドラ子ちゃんやドラ恵ちゃん、ドラ代ちゃんのように、僕達が名前をつけてもいい?』

『え、ええ……ドラ子達のように、正式な名ではなく幼名ということなら問題ないかと』

『そうですね、アクア様がこの子達の名を必要とするのでしたら、愛称という形でそれぞれに呼び名をつけるのもよろしいかと愚考いたします』

改めて本題に戻ったアクアの問いかけに、カティア達が戸惑いつつも肯定する。

ドラリシオにとって名付けとはとても大事なもので、全てのドラリシオはマザーから名を賜る。個別の名をもらうということは、マザーから一人前と認められた証なのだ。

しかし、水神たっての頼みとあらば、無碍にする訳にもいかない。

そこで捻り出したのが、先日レオニスが言っていた『幼名』。

マザーから正式な名を賜る前の幼名ということにしておけば、問題ないでしょう!という訳である。

レディー達の許可を得たアクア、満足そうに頷きながら何故かレオニスの方に向き直る。

『ありがとう、そしたらこの子達に何て名前をつけてあげよう? レオニス君、何か良い案はある?』

「ン? ぁー、そうだなぁ……ブルームだから『ブル子』『ブル恵』『ブル代』なんてのはどうだ?」

『うん、それ、いいね』

「「「………………」」」

またも適当な名付けをするレオニスに、ライト達は言葉を失う。

しかし、アクアは全く気にせず別の問題点を指摘した。

『でも、それだと一人足りないよ? その三つは小さい子達用としても、一番大きいお姉さんの方はどうするの?』

「あー、なら姉ちゃんの方は『ブル美』だな。で、『ブル子』はこの中で一番背がちっこいお前、『ブル恵』は髪の毛の蔓が一番短いお前、『ブル代』は手の花の先端が黄色寄りのお前な」

『ブル美ちゃん、ね。うん、分かりやすくていいね』

「「「………………」」」

姉ブルームの名前候補だけでなく、『ブル子』『ブル恵』『ブル代』の名もさっさと割り当てていくレオニス。

あまりにも適当に思えるが、即断即決はレオニスの美点の一つでもあったりする。

そしてアクアもアクアで、レオニスの意見に異を唱える気配すらない。あれよあれよという間に話がサクサクと進んでいってしまう。

この即断即決コンビに、もはや誰も口を挟むことなどできなかった。

『君はブル子ちゃんね』

「私、ブル子!」

『こっちの君は、ブル恵ちゃんだよ』

「私ハ、ブル恵!」

『そして君は、ブル代ちゃん』

「私ハ、ブル代!」

『お姉さんはブル美ちゃんね』

「私の幼名は、ブル美ですね!アクア君、皆に素敵な幼名を与えてくださってありがとうございます!」

レオニスが捻り出した珍妙な名を、ブルーム達がアクアから賜ったものとして大喜びしながら復唱している。

四体のブルーム達の実に嬉しそうな表情は、それがお世辞などではなく本当に心の底から喜んでいることが分かる。

如何にそれらが素っ頓狂な名前であろうとも、当事者達が満足しているのだから外野があれこれと水を差すのは野暮というものだ。

事も無げに珍名を次々と生み出すレオニスに、それに対して何の疑問を持つことなくすんなりと受け入れるアクアの度量の大きさ。

そして恩人&恩神からもらった名を喜ぶブルーム達の花咲く笑顔に、ライト達は苦笑いしつつも温かい眼差しで見守っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

新しい泉作りという大仕事とブルーム達の名付けを終えたライト達。

ブルーム達の見舞いという本来の目的も達成できたので、ひとまず帰ることにした。

カティア達レディーやドラトリオ、そして新たに誕生したブル四姉妹がアクア達を見送るために、ドラリシオの縄張りが薄れる辺りまでついてきていた。

先頭を歩いていたカティア達が歩を止め振り返り、改めてライト達に向けて挨拶をした。

『アクア様、今日は私達の妹達を見舞うためにご足労いただき、本当にありがとうございました』

『しかも療養のための泉まで作ってくださって、本当にありがとうございます!』

『今後もブルーム達の看病を一生懸命すると誓います!』

『ありがとう。大きなお姉ちゃんである君達にそう言ってもらえると、僕としてもとても心強いよ』

アクアに礼を言うレディー達に、アクアもまた柔らかい笑みを浮かべながら応える。

そしてレディーに続き、ドラトリオもアクアに声をかけた。

「アクア様、またお会いできて嬉しかったです!」

「ブル美達の姉妹の看病、私達も頑張ります!」

「この里にまた来てくださいね!ブル美達だけでなく、ドラ代もドラ恵もドラ子も皆アクア様のお越しをお待ちしております!」

『ドラ子ちゃんもドラ恵ちゃんも、ドラ代ちゃんも、皆本当に優しくて良いお姉さんになったね。これからも頑張ってね』

「「「はい!!」」」

アクアに褒められたドラトリオ。満面の笑みでアクアを見つめる。

そして最後はブル四姉妹が挨拶をした。

「アクア君、レオニス、本当にありがとう」

「ラウル、マキシ、烏のオ兄チャン、ライト、また来てネ!」

「今度ハ、私達ガ、皆ノ、ところニ、遊びニ、行くからネ!」

「皆、大好キ!」

アクアだけでなく、他の面々にも声をかけるブル四姉妹。

その人懐っこい笑顔と優しい心根に、ライト達も思わず綻ぶ。

「カティア、レナータ、ミレイユ、ブル美達のことをよろしくな」

『任せといて!』

「療養畑のお仕事、頑張ってね!」

「「「うン!」」」

「アクアが作ってくれた水を飲んで、お前達も大きくなれよ」

「「「うン!」」」

「八咫烏の里はここから近いから、是非とも皆で遊びに来てくれ」

「シア様や警備隊の者には、俺達からも言っておくッスからね!」

「よろしくネ!」

『君達の百体の姉妹が、早く良くなることを願っているよ』

「アクア君の恩に報いるためにも頑張ります」

レオニスはレディー達に、ライトやラウルや八咫烏兄弟はブル四姉妹にそれぞれ励ましの言葉をかける。

そして最後にアクアとブル美が固い握手を交わし、ライト達は大小様々なドラリシオ達に見送られながらドラリシオの群生地を後にした。