軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1291話 奇妙な友情と激闘へ駆り立てる意欲

その後ライトはコヨルシャウキと話を詰めて、休憩時間を二回に分けることにした。

前座の星霊群2000体討伐の後に一時間休憩、本番のコヨルシャウキとの決戦決着後に六時間、仮眠込みの休憩を取る。

本当はSP回復の点で言えば、星霊群との戦いの後に長めの休憩を取る方が良いのだが。コヨルシャウキとの激戦のほうが全てにおいてキツく、心身の回復に長時間を要するのだ。

そして、ビースリーの前座と決戦を繰り返していくうちに、それぞれの戦いに要する時間も短縮されていった。

前座の星霊群2000体討伐は、初回は完了までに一時間位かかっていたが、五回目も過ぎると三十分程度で終了するようになった。

コヨルシャウキとの決戦も、初回では何と十二時間以上は戦っていたが、五回目の戦いでは三時間半で終結した。

これは、戦闘不能状態に陥る回数が十回以上から三回前後までに激減したのが主な要因である。

ちなみにライトが戦闘不能状態から自然回復のみで復帰する場合、約一時間を要する。

コヨルシャウキとの戦いにおいて、一回も戦闘不能状態にならなければ戦闘に要する時間はもっと短縮されるだろう。

だが、今のライトにはまだそこに至るだけの力は得られていない。むしろ三回程度の死にかけで済んでいるだけでも十分御の字だった。

そしてライトが死にかけ状態からHP自然回復を待つ間、手持ち無沙汰のコヨルシャウキはライトの横で常に話しかけながら快癒を待つようになった。

コヨルシャウキから痛烈な一撃を食らい、一気にHPが0になってしまったライト。

吹っ飛ばされた先で、そのまま仰向けになってピクリとも動けないライトの横に、コヨルシャウキが悠々と歩きながら来てしゃがみ込む。

『何じゃ、ヒカルよ。三度目の休憩か?』

「はい……てゆか、これは、休憩じゃ、なくて……死にかけてる、だけですって……」

『おお、そうか。だが、安心せよ。此方の領域には完全なる死は存在しない故な。どれだけ死にかけようとも、本当に死ぬことはない』

「……そんな……無茶、言わないで、くださいよ……こうして、死にかけるのだって、イヤですよ……痛いもんは、痛いし……血が減れば、目眩だって、するし……」

『何ッ!? それはいかん!血を作る食事を心がけよ!』

「……そういう、問題、じゃなぁーい……」

HP自然回復待ちの度に、このようなのほほんとした会話がライトとコヨルシャウキの間で交わされていた。

こうした交流により、ライトとコヨルシャウキの間には奇妙な友情が少しづつ芽生えていった。

だがしかし、双方に仄かな友情が芽生えたところで、両者ともにビースリーを中断するという選択肢はない。

それはそれ、これはこれ。コヨルシャウキはイベント終了時間までライトを鍛え上げる気満々だし、異空間の支配者であるコヨルシャウキが戦いを終わらせる気がなければ、ライトにはなす術もない。

上等だ、コヨルシャウキの気が済むまで付き合ってやろうじゃないか―――ライトもそう腹を括っていた。

それに、実際この戦いでライトのレベルがメキメキと上がり続けていったのも事実。

ビースリー突入前は、ライトのレベルは38だった。

それが、ビースリーの戦いの五回目終了直後には何と125にまで上がっていたのだ。

星霊群との戦いの前に、マイページでステータスチェックをするようになったライトも、このレベルアップぶりには毎回びっくり仰天である。

そして報酬の宝箱開封の儀は、星霊群との戦いが終わった後の一時間休憩の間にするのが定番となった。

何故かというと、コヨルシャウキも報酬の中身を都度知りたがるようになったからである。

六回目のビースリー決戦の前に、五個目の宝箱開封の儀に挑むライト。

ライトの背後には、おとなしく正座をしながら神妙な面持ちで開封を待つコヨルシャウキがいる。

そして、五個目の宝箱から出てきた報酬は―――

「ああッ!五個目でこれが出るなんて!ラッキーーー!」

『おおッ、その様子だと何か良いものが出たのだな!?』

「はい!見てください!これは『ルジェアの星屑の翼』といって、このイベント限定品の中でもレア中のレアなアイテムです!」

ライトが興奮気味に叫びながら、宝箱から取り出したのは『ルジェアの星屑の翼』。

青くてキラキラ光る、蝶々の羽のような翼型のアクセサリーである。

左右四枚づつの翼が大きく広がっていて、翼全体をまとうほんのりとピンク色に光るオーラが何とも美しい。

早速ルジェアの星屑の翼を装備するために、マイページを開いて一旦アイテム欄に入れるライト。

BCO由来の装備品は、マイページの装備欄で装備することができる。

武器類ならただ手に持つだけで装備できるが、鎧やアクセサリーなど装着に手間取る品の場合はマイページ経由で装備した方が早くて楽ちんなのだ。

念願のルジェアの星屑の翼を装備したライト。

それはまるで天使のように、背中から直接蝶々の羽のような翼が生えていた。

ちなみにBCOのアクセサリー類は、他の装備の邪魔になったり干渉しないようホログラムのような霊体物質でできている。

そのためライトが着用しているマントをすり抜けて、ぱっと見ではマントから羽が生えているようにも見える。

そして、このルジェアの星屑の翼を初めて見たコヨルシャウキ。

青とピンクの見目鮮やかな美しい色合いに、思わず『ほぅ……』という感嘆を漏らす。

『戦いも五回目にして、ようやく戦利品と呼べる極上の品が出たのは重畳至極。この先も、もっと良い品が出るといいのぅ』

「はい!…………って、二回目はハイポーションダース、三回目はハイエーテルダース、四回目はスペーススーツの腕でしたけどねー…………」

「『………………』」

これまでのビースリー決戦報酬の惨敗ぶりを振り返るライト。

ズズーン……と落ち込むライトの目は、半ばどころかほぼ死にかけている。

ファッションやルジェアの星屑の翼以外にも、それなりに良い報酬はそこそこあるはずなのだが。ライトが引き当てるのは、いつも最底辺のハズレ報酬ばかり。

あまりにも無惨な結果に、二人の耳に同時に『チーーーン☆』という美しくも虚無に満ちたおりんの音色が鳴り響いた、ような気がする。

このお通夜状態は、ライトにとって非常に良くない空気だ。

激しい死闘を繰り返し行うには、どうしても戦う意欲、モチベーションを維持し続ける必要がある。

そのモチベーションアップに最も効果を発揮するのが、戦いの成果である報酬なのだ。

その報酬がハズレアイテムばかりでは、 勇者候補生(ヒカル) のやる気が失われてしまうことに、コヨルシャウキは気づいていた。

二回目と三回目、そして四回目の報酬開封の儀の時など、ライトの身体は毎回しばし石と化していた。

非常に居た堪れない空気が三回も続いた時、基本的に物事に動じないコヨルシャウキですら『……これはマズい……』と内心焦った程だ。

そうした好ましくない空気の再来を防ぎ払拭するべく、コヨルシャウキの方から先にライトに声をかけた。

『ぁー、コホン……しかし、今回はとても良いものが出たのであろう?』

「あ、はい……引き運が弱いぼくにしては、早くに良いものが出た方だと思います!」

『ならばこれからは、もっともっと良いものが得られるはず。それを糧に、ますますの成長と飛躍を遂げるのだ』

「……頑張ります!」

ハズレ報酬の落胆から意識を逸すために、コヨルシャウキが厳かな声でライトを励ます。

その力強い励ましに、それまで目が死にかけていたライトの瞳に再び光が宿る。

コヨルシャウキの励ましには、ぶっちゃけ何の根拠もない。

彼女が報酬の中身を検めたり入れ替えられる訳でもないし、この先どんな報酬が出てくるかなんて、それこそ 創造神(うんえい) の中の人だって分からないだろう。

だが、『どうせこの先も、ハズレばかりなんだ……』とネガティブになるよりは、根拠がなくても『きっと良いものが来るはず!』とポジティブ思考でいる方がいいに決まっている。

時が来るまで出られない空間に閉じ込められているのだから、どうせならここで過ごす間は希望を持って前向きでいる方が精神衛生上もよろしいはずだ。

『……さて、報酬も良い物が出たことだし。そろそろ此方との六回目の戦いを始めようぞ』

「分かりました。ぼくはこの『ルジェアの星屑の翼』をつけて戦いますね!」

『うむ。勇者候補生たる者、中身だけでなく見た目の美しさに気を配るのも良いことぞ。…………では、参るぞ』

「はい!!」

六回目の戦いを促すコヨルシャウキに、ライトも力強い声で応じる。

痛いのも血みどろになるのも嫌なことに変わりはない。

だが、破格のレベルアップは悪くないし、イベント限定品である激レアアイテムも入手できた。

ここまで来たら、レベル200を目指してもいいかも!それに、このイベントの限定武器も二種類あるはずだし、それ狙いでもうちょい頑張ってみよう!

ライトはそんなことを思いながら、コヨルシャウキとの激闘に身を投じていった。