軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1247話 金鷲獅子が持つ能力

その後レオニス達は、コルルカ高原奥地を懸命かつ隈なく捜索しまくった。

だが、一時間経っても未だに発見の合図の信号弾はどこからも打ち上がらない。

コルルカ高原は赤茶けた土が剥き出しになっていて、木がところどころに生えてはいるものの、森のように大量の木が生い茂っている訳でもない。

金鷲獅子が身を隠せそうな場所はあまりないはずなのだが、一向に見つからないとはどういうことだろうか。

一方ラーデとともに行動しているラウルは、捜索開始後三十分が過ぎようとする頃、ラーデに声をかけながら一旦空中に留まった。

「ラーデ、すまん、一旦止まってくれ」

『ぬ? どうした?』

「魔物除けの呪符が切れる頃だから、追加の呪符を発動させる。そのついでに、一度ここら辺一帯の魔力を探ってみる」

『分かった』

ラーデを呼び止めてから、ラウルはまず空間魔法陣を開いて手持ちの魔物除けの呪符を発動させた。

そしてその後、その場で目を閉じ精神を集中させる。

金鷲獅子が持つであろう強大な魔力を、ラウルの魔力探知能力で感知しようとしているのだ。

そうして三十秒程経過し、ラウルはため息とともに目を開いた。

「……ダメだな。ご主人様や他の鷲獅子達が飛んでいるのが分かるくらいで、金鷲獅子と思しき魔力はここら辺にはない」

残念そうに呟くラウル。

ラウルの優れた魔力探知能力は、これまでにも氷の洞窟の隠し部屋発見などで役立ってきた。

そんな万能執事の凄腕能力を以ってしても、金鷲獅子は見当たらないという。

そしてラウルは、ふとラーデに問うた。

「なぁ、ラーデ。ラーデは金鷲獅子と友達だったんだよな?」

『ああ。頻繁に会ったり常に傍にいた訳ではないが、それでも顔を合わせればそれなりに会話をする仲ではあった』

「そっか……ラーデ、お前なら金鷲獅子の居所とか、あるいは居そうな場所は分かるか?」

何か少しでも金鷲獅子捜索のヒントはないか、という思いでラーデに問うたラウル。

その問いに、しばし考え込んでいたラーデ。

はたとした顔で口を開いた。

『ああ、そういえば……その昔、 亜奴(あやつ) はかくれんぼが得意なのだ!と高笑いしつつ言っておったことがあったな……』

「かくれんぼ……この高原には、隠れる場所とかあまりなさそうだがなぁ」

『いや、亜奴の言うかくれんぼとは文字通りの意味ではない。亜奴のその特異な能力にある』

「特異な能力……?」

ラーデの話に、ラウルが不思議そうな顔をしている。

かくれんぼ、と聞いてラウルは普通にお遊びのかくれんぼを想像したラウルだったが、どうやらそうではないらしい。

『亜奴は認識阻害能力を持っていてな。一度亜奴が本気で気配を消すと、普通の者ではまず見つけることができなくなるのだ』

「何だって? それじゃ俺達がいくら探しても見つけられんって話になるじゃないか」

『いや、そんなことはない。実際に亜奴がどの程度隠れ果せるのか、我も興味が湧いたのでかくれんぼを挑んでみたことがあったが、三日後に見つけることができたからな』

「ええええ……三日もかかったんか……」

ラーデのとんでも経験談に、ラウルは愕然とする。

かくれんぼに丸三日も費やすというのも然ることながら、皇竜がそこまでしなければ金鷲獅子を見つけることができなかったことに驚愕を禁じ得ない。

確かにそこまでいくと、もはやかくれんぼのレベルではなく金鷲獅子が認識阻害能力を持っていると考える方が妥当だ。

「もしかして、金鷲獅子は普段から認識阻害能力を使ってどこかに隠れているのか?」

『いや、普段はそんなことをわざわざする必要はない。何故なら亜奴は金鷲獅子、コルルカ高原全域を統べる中空の覇者だからな』

「なら、今すぐ見つからない理由は何だ? これだけ大勢の鷲獅子騎士やご主人様が、堂々と空中を飛び回って探しているってのに……」

ラウルはそこまで呟いて、はたとした顔で止まる。

そう、ここまで大々的に他所者が侵入してきたというのに、金鷲獅子の動きが全くないのはおかしいことに気づいたのだ。

今ラウル達は、雑魚魔物や普通の鷲獅子対策として魔物除けの呪符を使っている。

だがこれは、鷲獅子の王である金鷲獅子には通用しない。金鷲獅子のような高位の存在には、魔物除けの呪符など効かないのである。

だから、普通に考えたら侵入者に対して金鷲獅子は何らかの行動を取るはずなのだ。

例えばそれは威嚇だったり急襲だったり、あるいは対話を求めたり等何らかの形で侵入者達の前に姿を現すはず。

それが未だにないということは、やはり金鷲獅子の身に深刻な事態が起きているとしか思えなかった。

「やはり金鷲獅子の身に何か起きていて、それで身動きが取れないでいるから認識阻害能力を使って身を隠している、と考えるのが妥当か」

『多分な。……というか、我の力が万全であれば、金鷲獅子の魔力を感知して探し出せるのだが……今の矮小で非力な我には、この広大な高原全域を瞬時に探索する力はない』

ラウルの推察に、ラーデが俯きながら同意する。

今の非力な自分では探索の役に立たないことが、ラーデにとってものすごく残念なようだ。

目に見えてしょんぼりと気落ちしているラーデに、ラウルはその頭をそっと撫でながら声をかける。

「心配すんな、俺が必ず金鷲獅子を見つけてみせるから」

『……其方なら、亜奴の認識阻害能力を打ち破れるというのか……?』

「ああ、任せとけ。プーリアの魔力探知能力は皇竜にも引けを取らんってことを、ラーデに見せてやる」

ラウルの頼もしい言葉に、ラーデは思わず俯いていた顔を上げる。

そこにはラーデの頭を優しく撫でながら、ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべるラウルがいた。

一介の妖精、しかもカタポレンの森の片隅でずっと引きこもり続ける妖精族が皇竜に引けを取らぬなどと、実に不遜甚だしい。

しかし、一見不遜にしか思えないラウルの言葉には、気落ちするラーデへの励ましと己を鼓舞する意図があった。

徐に空間魔法陣を開き、アークエーテルを取り出してグビグビと飲むラウル。

あっという間に一本飲み干し、空瓶と蓋を空間魔法陣に放り込んで閉じる。

「さ、今から少しづつ移動しながら魔力探知するぞ。ラーデは俺の近くにいて見てろよ、俺が必ず金鷲獅子を見つけだしてやるからな」

『ああ、是非とも期待している』

ラウルの頼もしい言葉に、ラーデも晴れやかな表情でラウルを見つめる。

そうしてラウルは虱潰しに魔力探知を繰り返し、これはと思う魔力を見つけたのは、四枚目の魔物除けの呪符を使用してからすぐのことだった。