軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1236話 ライトの疑問と思わぬ答え

ライトがカタポレンの家に戻ると、レオニスとラウルがまだ開拓作業をしていた。

伐り倒したばかりの大木を右肩に担ぎながら、家の横の空き地に出てきたラウルとばったり出食わしたライト。

元気よく帰宅の挨拶をする。

「ただいまー!ラウル、まだ伐採してるんだね、お疲れさま!」

「おう、おかえりー。この手の作業は、ご主人様に手伝ってもらえるうちにガンガン進めたいからな」

「そうなんだ、レオ兄ちゃんを扱き使う気満々だねwww」

「そりゃそうだ。人族の諺にだってあるだろう?『立ってる者はご主人様でも使え』ってな」

「プププ……ラウルってば物知りだねぇ」

「お褒めに与り光栄だ」

人族の諺『立ってる者は親でも使え』をもじりながらシレッと宣うラウルに、ライトがクスクスと笑う。

確かに今ラウルがやっている作業、ラーデの居場所を作るための開拓はかなりの重労働だ。

今回の場合、大きく成長するであろうラーデのためにかなり広大な敷地を平らに 均(なら) しておかねばならない。

そのためにまずは木を伐り倒し、根を掘り起こして兎にも角にも平らな土地にする。

そして伐り倒す木の本数は、ざっと見積もって百本以上。この数をラウル一人でやるのはさすがにキツい。

いや、決してやってできないことではない。ラウルならきっと、時間をかければいつかやり遂げるだろう。

だがしかし、何もラウル一人で開拓しなければならないということはない。

というか、そもそもラーデの後見人に指名されたのはレオニスだ。

なればこそ、ここはレオニスに頑張ってもらわねば!となるのは当然の流れである。

「……っと、そろそろ昼飯の時間か。今日は天気もいいし、皆で外で食べるか」

「そうだね!そしたらぼくはレオ兄ちゃんとラーデを呼んでくるから、ラウルは敷物や食べ物の準備をしててね!」

「了解ー」

ラウルの案に、ライトが破顔しつつ賛同する。

そして家の北側で開拓作業をしているレオニスとラーデを呼ぶべく、ライトがタタタッ、と駆け出していく。

ちなみに今日の天気は快晴だが、一月なのでそれなりに空気は冷たい。

だが、ライト達は氷の女王の加護を得ている。そのため極寒の環境でも『ンー、ちょっと肌寒いなー』程度にしか感じない身体になっているのだ。

ラウルがピクニックよろしく敷物や昼食を用意している間に、ライトがレオニス達を連れて戻ってきた。

「ラウル、ただいまー!」

「おう、おかえりー。大きなご主人様もラーデもお疲れさん」

「もう昼飯の時間か、早ぇけどずっと木を伐ってたら腹減ったわ」

『我も頑張って枝集めに勤しんでいたら、なかなかに空腹になってきた』

ライトとともに、家の横の平地に戻ってきたレオニスとラーデ。

午前中ずっと木の伐採に没頭していたせいか、二者ともかなり空腹のようだ。

そんなレオニス達を迎えるラウルは、敷物の上にたくさんのご馳走を出していた。

サンドイッチにおにぎり、氷蟹のクリームコロッケバーガーにペリュトン肉の唐揚げに卵焼き等々、ピクニックに相応しい豪華ラインナップがずらりと並ぶ。

そこに飲み物や取皿、箸、おしぼりを人数分出せば、お昼ご飯の準備は万端だ。

敷物の上に座り、手を拭いた後顔や首を拭うレオニスを見て、ラーデがそれを真似ようとするもなかなか上手くできない。鋭い爪を持つその手でおしぼりを扱うのは、かなり難しいようだ。

そんなラーデに、横に座っていたライトが手伝ってやっている。

「ラーデもお手伝いお疲れさま。レオ兄ちゃん達のお手伝いをするなんて、ラーデはとっても偉いねぇ」

『何、我のための寝床作りの一環なのだから、我こそが率先して働いて当然だ』

「うん、そう思えるラーデが一番偉いとぼくは思うよ」

『そ、そうか?』

「うん!」

おしぼりでラーデの手、特に爪の回りを念入りに優しく拭きながらラーデをべた褒めするライト。その褒められように、ラーデがちょっぴり照れ臭そうにしている。

実際ラーデは『皇竜』などと呼ばれるくらいだから、他者に 傅(かしず) かれて当然の存在だ。

なのに偉ぶったり傲慢な態度を取ることなく、ライト達とも円満な関係を築けているのは本当にすごいことだ、とライトは思う。

準備万端整ったところで、ライト達三人はパンッ!と両手を合わせる。

それに少し遅れて、ラーデも短い腕を胸の前に出して小さな手を合わせる。

「「「『いッただッきまーーーす!』」」」

冬の凛とした空気の中、ライト達は昼食を食べ始めた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

様々なご馳走を食べ終えて、デザートのチョコレートプリンも平らげたライト達。

山のようにあったご馳走達の殆どは、レオニスとラーデの胃の中に吸い込まれるようにして消えていった。

特にラーデはおしぼり同様、箸など上手く使えないので横にいるライトが甲斐甲斐しく世話を焼いていた。

美味しいものをたらふく食べて、大満足そうなライト達。

レオニスは食後の一休み、とばかりにゴロンと仰向けで寝転がる。

そしてラウルは空になった数多の皿を空間魔法陣に仕舞い込んでいる。

するとここで、ライトがラーデに話しかけた。

「ラーデ、このカタポレンの森での暮らしはどう? もう慣れた?」

『ああ。我が予想していたより存外良い待遇を得られて、とても満足している。この森に満ちる魔力も無尽蔵に湧いてくるし、これだけ大量かつ良質な魔力を日々取り込み続けていければ、一年と言わず半年もすれば元の力を取り戻すに至るだろう』

「そっか、それは良かった!」

ラーデがカタポレンの森での暮らしに満足していることを知り、ライトも花咲くような笑顔で喜んでいる。

だが、その喜びの顔は程なくして曇る。

「でも……ラーデの身体は思う程大きくなってないよね? 本当は魔力が足りてないんじゃない?」

『いや、そんなことはない。それどころか、順調過ぎるくらいに魔力を糧にできている』

「ホント?」

『ああ、本当だとも。何なら今ここで、それを証明してみせよう』

ライトの顔が曇ったのは、ラーデの身体が思う程大きくなっていないからだ。

カタポレンの森の家に来た当初こそ、一日に10cmくらい大きくなっていたのだが。ライトの目には、ある日を境に身体の成長が止まったように見えていた。

今のラーデの身長は50cmくらいで、外見だけで言えばチビドラゴンにしか見えない。

これでは、ラーデが力を取り戻すのにかなり時間がかかるのではないか?とライトが心配するのも無理はなかった。

しかし、ラーデはライトの心配を即座に否定し、突如ふわりと飛んで敷物の外に出た。

そして敷物から少し離れたところで、ラーデの身体がブワッ!と大きくなった。

「「「!!!」」」

ラーデの身長が大きくなったことに、ライトだけでなくレオニスやラウルも目を見張りながら驚いている。

それもそのはず、地に足をつけて立つラーデの背丈は300cmくらいあり、レオニスやラウルの身長をとっくに越していたのだ。

その姿に、ライトはびっくりしつつも感嘆する。

「ホントだ……ラーデ、すっごく大きくなってるね!」

『だろう? なので心配は要らぬ』

「そっか、ホントに良かった!……って、じゃあ、どうして今まで小さいままで力を抑えていたの?」

「それはだな……」

ラーデの本当の姿と成長を見たライト。

再び喜ぶと同時に疑問も湧いてくる。

ラーデは元の力を取り戻すため、魔力を体力に変換して身体を大きくする、と言っていた。

だからこそ、ライトもラーデの身体が大きくならないことを心配していたのだ。

そのことを素直に尋ねられたラーデ。何故かモジモジしながらその答えを口にした。

『大きな身体だと、其方達の家の中で暮らせぬであろう?』

「うん、確かにもうレオ兄ちゃん達よりはるかに大きいし、頭が天井につくだけじゃなくて尻尾とかもあちこちぶつけて痛そうだけど……」

『であろう? ……それにな、我は其方達とともにする食事や風呂が結構気に入っているのだ』

「「「…………」」」

照れ臭そうにそっぽを向きながら、身体を小さいままにしていた理由を明かすラーデ。

思いもよらぬ理由を聞き、ライト達三人はしばし言葉に詰まる。

そう、ラーデはただ大きくならなかったのではない。小さな身体のままの方が、ライト達とともに暮らすのに便利だ、ということに気づいてわざわざそうしていたのだ。

それは、来たるべき巣立ちの時を迎えるまでは、ライト達といっしょに過ごしたいというラーデの意思表示に他ならない。

そのことを瞬時に察したライト。即座に立ち上がって、嬉しそうにラーデの身体に抱きついた。

「そうだったんだね!ぼくもラーデといっしょに、これからもずっと家の中で過ごしたいな!」

「だな。今はまだ冬で外も寒いし、まだ寝床も完成してねぇからな。しばらくは家の中で過ごせる大きさでいてくれるとこちらとしてもありがたいかな」

「ああ、何も慌てて元の姿を取り戻す必要は、今のところないもんな」

大喜びでラーデに抱きつくライトの言葉に、レオニスもラウルも頷きながら同意している。

ライト達はマキシを含めた四人で、ラーデの今後について話し合ったことがある。

その結果出した方針の一つが『余程の事情でもない限り、ラーデをラグナロッツァの屋敷には連れていかない』ということだ。

何故なら、ラーデをラグナロッツァに連れていくのはリスクしかないからだ。

ラグナロッツァの屋敷はカタポレンの家の何倍何十倍も大きいので、向こうに行けばラーデももっとのびのびと過ごせるだろう。

だがしかし、首都ラグナロッツァには数多の人間がいる。

そしてその中には、皇竜メシェ・イラーデの気配を敏感に察知する者もいるだろう。

そしてそうした者達が善人である保証などどこにもない。

もし悪人に目をつけられたら厄介なことになる―――これが、ライト達がラーデをラグナロッツァの屋敷に連れていかないと決めた理由の最たるものであった。

そして、カタポレンの森の中にいる分にはそうしたリスクはほぼない。

頭をぶつけそうな天井もないし、尻尾をぶつけそうな廊下もない。

やはりラーデには、このカタポレンの家の傍でのびのびと過ごしてもらうのが一番の最善策なのだ。

「じゃあ、今日の夜もいっしょにお風呂に入ろうね!」

『ああ。あの風呂というものは、外で掻いた汗を流すのに一番良い方法だからな』

「そしたら今日は、俺がラーデの背中を流してやろう」

『うむ、頼むぞ。さすがの我も、己の背中を流すことはできぬ故な』

ラーデが結構気に入っているという風呂に、今日もいっしょに入ろう!というライトに、早速レオニスも乗っかる。

そして大小二人のご主人様達の楽しそうな会話に、ラウルも入ってきた。

「なら俺も、向こうで晩飯食った後にマキシといっしょにこっちの風呂に入りに来るか」

「それいいね!皆で入るお風呂って楽しいもんね!」

「俺達がこっちに来るまで、風呂入るの待っててくれよ?」

「もちろん!今日は五人でお風呂だー!」

皆で風呂に入る約束に、ライトは飛び上がらんばかりに喜ぶ。

そしてそのテンションのまま、ライトが嬉しそうにレオニス達に宣言する。

「そしたらぼくも、たくさん汗を掻くために午後は開拓のお手伝いするね!」

「ハハハ、そりゃ頼もしいな。小さなご主人様が手伝ってくれりゃ千人力だ」

「ならライトには、土魔法の練習も兼ねて伐った木の根っこの除去を頼むとするか」

「うん、任せて!」

汗を掻くために伐採の手伝いをする!というライト。

風呂に入るための理由付けとしては、かなりおかしいような気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!

風呂一つでここまで大喜びできるライトに、レオニスやラウルはもちろんのことラーデもまた嬉しそうに微笑みながらライトを見つめていた。