軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1231話 由緒正しい名家の血筋

ナヌスの里を後にしたライト達。

次に目指すはナヌスのご近所、オーガの里である。

オーガの里には新年にラウルの料理教室と挨拶に訪れて以来だ。

毎回毎度アポ無し訪問なのだが、それが理由で訪問を断られたり厭われることはないので問題はない。

オーガの里に入ると、オーガの人々が次々にライト達に声をかける。

「お、レオニスじゃねぇか!今日も腕相撲するか!?」

「あら、ラウル先生、次のお料理教室はいつ開催なさいますか?」

「皆、族長のところに来たのか?」

気軽に声をかけてくるオーガ達に、レオニス達も「今日はもう負けたから勘弁してくれ」「そうだな、近いうちにまた来るわ」「そうそう、うちに新入りが入ったから顔見せがてら来たんだ」等々、律儀に答えている。

その中の子供の一人が、ラウルに抱っこされているラーデを見て不思議そうに問うた。

「ねぇ、ラウル先生が抱っこしているそれは、ナぁニ?」

「こいつはラーデという名前で、カタポレンの家にしばらく居候することになったんだ。だから近所のオーガの皆にも紹介しておこうと思ってな、今日はここに来たんだ」

「へー、そうなんだー!」

「わー、可愛い子だね!」

初めて見るラーデの物珍しさで、ライト達の周りにはあっという間に子供達が群がってきた。

レオニスやラウルと大差ない背丈のオーガの子供達に囲まれて、ラウルの腕の中のラーデはびっくりしたような顔で戸惑っている。

『こ、ここの子供達は、我のことを怖れぬのか?』

「ン? あー……オーガ族は魔法関連はからっきしだから、ラーデの魔力とかあんまり分かってねぇんじゃねぇか? その分腕っぷしの強さは随一だがな」

『そ、そうなのか……そういう種族的特性があるのであれば、この反応も当然か……』

キラキラとした目でラーデを見つめるオーガの子供達。

子供達のみならず、大人達もラーデに対し全く物怖じしないのは、ラウルが解説した通りである。

その間にも子供達は「ねぇ、ラウル先生、その子は男の子? 女の子?」「ていうか、何て種族の子?」「僕も抱っこしたい!」等々、ますますラーデに群がってくる。

するとそこに、オーガ族族長のラキが現れた。

オーガの里の人達が、ライト達の訪問をラキ宅に知らせに行ったようだ。

「皆、よく来たな」

「よう、ラキ。今日も突然訪ねてきてすまんな」

「何を今更。そんなの昔っからではないか」

「違ぇねぇwww」

「「ワーッハッハッハッハ!」」

顔を合わせて早々、ふんぞり返りながら高笑いするレオニスとラキ。

相変わらず脳筋族同士の友情は健在である。

そして一頻り高笑いした後、レオニスがラキにラーデの紹介を始めた。

「今日はこのラーデを、オーガの里の皆に紹介しに来たんだ」

「ほう、ラウル先生が抱いておられる赤い子供か?」

「ン、まぁ、厳密に言えば子供じゃないんだがな」

レオニスの紹介に、ラキもラウルの方を向いてその腕の中にいるラーデをじっと見つめる。

しばし無言でラーデを見つめていたラキだったが、徐にその口を開いた。

「ふむ……ライトよりもさらに小さな身体なのに、ただならぬ覇気を感じるのは何故だ?」

「おお、ラキには分かるか。こいつは皇竜メシェ・イラーデといってな、全ての竜の祖なんだと」

「何ッ!? 竜の祖だとッ!?」

ラキがラーデから感じ取っていた、ただならぬ空気。

それは真の強者だけが察知することのできる、覇気と呼ばれる特別なオーラである。

その理由をレオニスから聞かされたラキが驚愕している。

「この近辺には竜はおらんので、竜というものがどのようなものなのか我には全く分からなかったのだが……確かに言われてみれば納得だ」

「ぁー、まぁな、ここら辺には竜なんていねぇもんな。……でも、竜という種族がいるってことは知ってたんだな?」

「ああ。我の父や祖父などは、行商の折などに何度か竜と出食わしたことがあるらしい。確かニル爺も竜と出会った話をしていたことがあったな」

「へー、そうなのか」

ラキの言い分に、レオニスも納得する。

実際ライトやレオニスが住むカタポレンの家の周辺には、竜族に属する魔物や生物は全くいない。

故に、ラキ達オーガ族が竜のことをあまりよく知らないのも無理はなかった。

そしてここで、ラキがラーデに向かって改めて挨拶を始めた。

「皇竜メシェ・イラーデ、初めてお目にかかる。我はラキ、オーガ族族長を務めておる」

『オーガ族の族長か。丁寧な挨拶痛み入る。我は皇竜メシェ・イラーデ。今は縁あって、ラーデという名でレオニス達のもとで暮らしている。よろしくな』

「ああ。レオニスやライト、そしてラウル先生の知己なら我にとっても友である。こちらこそよろしくな」

レオニスやラウルの三倍近い巨躯を誇るラキが、小さなラーデに対し恭しく挨拶をしている。

今のラーデからしたら、ラキは山と見紛う程に大きな存在。

だがしかし、ラーデが怯むことはない。むしろライト達を介して新たな縁を得られることに感謝しかない。

そして初顔合わせの挨拶を無事済ませたところで、ラキがレオニスに提案した。

「こんなところで立ち話も何だ、せっかくなら今日はニル爺の家に行くか? ニル爺ならきっと竜の話を聞けるだろう」

「おお、そりゃいいな!ニル爺の家なんて行ったことねぇから、そっちの方も楽しみだわ」

「では我が案内する故、皆で行くか」

「おう、よろしく頼むわ」

ラキの提案に、レオニスは即時乗っかる。

ニルが知る竜の話にももちろん大いに興味があるが、それ以上にニルが住む家にも興味津々のレオニス。

ニルの家に向かって歩き出したラキの後を、ライト達はついていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その後ラキの案内で、ニル宅に辿り着いたライト達。

前族長らしく立派な家で、ラキ宅よりも大きな家に見える。

「ここがニル爺の家だ」

「おおー、すげー立派な家だな」

「ニル爺は、血筋で言えばオーガ族で最も由緒正しい名家だからな」

「そなの!? 俺、そんなん初めて聞いたわ」

「何だ、レオニス、知らなかったのか? ニル爺の家はな、族長を何人も輩出してきた名家中の名家なのだ」

「へぇー……ニル爺が名家のお坊っちゃんだったとはなぁ、そりゃ知らなんだぜ」

ニルが名家の出だというラキの話に、特にレオニスが驚いている。

オーガ族といえば『力こそ全て!』が大原則の種族であり、その長を務める者は『最も力の強い者がなる』という、実に単純明快な掟によって決められる。

そんなオーガ族でも、由緒正しい家柄などというものが存在することにレオニスは驚いたのだ。

とはいえ、確かに今にして思えばニルの風貌や佇まいは常に凛としていて、育ちの良さが垣間見える。

オーガ特有の豪快さの中にも気品を感じさせる言動は、名家に生まれついた故のものだったのだと思えば納得である。

「おーい、ニル爺、いるかー?」

「…………はーい、少しお待ちになってねぇー」

玄関に入って中に呼びかけるラキの声に、少し遅れて女性の声が返ってきた。

そしてすぐに、奥から老婆のオーガが出てきた。

「あらまぁ、ラキ坊、ようこそいらっしゃい」

「ルネ婆様、久しいな。ニル爺はいるか?」

「さっき『腰が痛いー』とか言って布団に寝転んでいたから、今からちょっと起こしてくるわね」

「ああ、頼む」

ラキから『ルネ婆様』と呼ばれた年配のオーガ。その人こそニルの妻である。

オーガ族特有の小麦色の肌に生成色の髪で、目尻の皺や頬のほうれい線はそれなりの年齢を感じさせる。

しかし、柔和な笑みとおっとりとした言動は気品があって、ニル同様に高貴な家の出であることを窺わせるものだった。

そしてしばらく待っていると、奥からのっそりとニルが出てきた。

音や話し声こそ玄関まで聞こえてこなかったが、きっとルネに叩き起こされたのだろう。

右手で背中の腰辺りをトン、トン、と叩きながら玄関に出てきたニル。

渋い顔でラキに声をかけた。

「何じゃ、ラキ。せっかく昼寝を堪能しておったというに……というか、お主がうちに来るなど珍しいこともあるものよのぅ」

「ニル爺こそ、昼間から寝転んでいるとは何事だ。大方また子供達相手に本気の鬼ごっこでもして、腰を傷めたんだろう」

「何故それを知っておる……ギックリが再発したのは昨日だというに。さては我が家に間者でも放ちおったか?」

「ニル爺のしそうなことなどお見通しだし、うちの子達からもその話は聞いている。というか、何故に我がニル爺の家にわざわざ間者を潜らせなきゃならんのだ……」

昼寝を邪魔されたことにブチブチと文句を言うニルに、ラキも負けじと言い返す。

以前にもニルは子供達相手に鬼ごっこをしてギックリ腰になった、という話を聞いたことがあるが、どうやら今回の昼寝もそれが原因らしい。

きっと昨日もその時のように、子供達に向かって『オーガの韋駄天と呼ばれし我が疾走、とくと見るが良い!』とか言って散々走り回ったのだろう。

それだけ大騒ぎしていれば、その日の晩にラキの耳に入るのも当然である。

漫才の掛け合いのような会話をしていた二者だったが、ラキの方が先に我に返り今日の用件を切り出した。

「ニル爺よ、今日は新たな客人をお連れしたのだ」

「新たな客人? ……おお、角なしの鬼にライト、それにラウル先生もおられるのか!」

ラキの言葉に、ニルもようやくラキの後ろにいたライト達の存在に気づいた。

途端に笑顔になったニルに、ライト達も挨拶をする。

「ニルさん、こんにちは!」

「よう、ニルさん。腰を傷めたって、大丈夫なのか?」

「ニル爺ェ……ライトは名呼びでラウルは先生呼びだってのに、俺のことは未だにその呼び方かよ……」

にこやかに挨拶するライトに、ニルのギックリ腰を気遣うラウル。

レオニスだけは、スーン……とした顔で【角なしの鬼】呼びについて文句を言っているが、ニルはキニシナイ!とばかりに話を続ける。

「皆、よく来てくれたな!ささ、こんなところで立ち話も何だ、狭い家だが上がって茶でも飲んでいってくれ!」

「ありがとうございます!お邪魔しまーす」

「オーガ族にとっては、これでも狭い家なのか?」

「ラウル先生、あれはニル爺の冗談なので真に受けないでくだされ……」

「くッそー、ニル爺め……今度は俺が鬼ごっこの相手をしてやるから、覚悟しやがれ」

ニルの誘いに、四人とも応じながら家に上がっていった。