軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1225話 鷲獅子達との交流

鷲獅子騎士団との話し合いの場を持ち、今後協力体制を取ることを約束したレオニス。

その後しばらくの間、毎日鷲獅子騎士団の専用飼育場に通い詰めた。

それは宿舎内でのみ閲覧できる鷲獅子関連の資料を読み込んで勉強したり、猛特訓する気満々の鷲獅子騎士団員と交流したり、鍛錬場にいる鷲獅子達を観察したりして、彼らと慣れておくためだ。

しかし鷲獅子達は、最初の頃はレオニスを見る度に慌てふためきながらすっ飛んで端の方に逃げていった。

しかも一頭や二頭ではない、その場にいる鷲獅子達全員が漏れなく怯えているのだ。

あまりにも怯える鷲獅子達の姿に、レオニスがアルフォンソに尋ねる。

「なぁ、ここの鷲獅子達ってのは、かなりの人見知りなのか?」

「いや、そんなことはない。むしろ普段のこの子達は、外部からの訪問者が来たところで全く気にも留めないのだが……」

「なら、何で俺はこんなに避けられてんの?」

「……それは……」

鷲獅子騎士団団長であるアルフォンソですら、今まで目にしたことのない事態にただただ首を捻る。

ここの鷲獅子達は、例え竜騎士団の飛竜と同じ場にいても決して怯んだり威嚇することなどない。

常に堂々としていて、何者に対しても怯え逃げることなど一度もなかった。もちろん人族に対しても、それは一貫して変わらない。

なのに、レオニスにだけはそのような態度になることに、アルフォンソにはその理由が全く思いつかなかった。

アルフォンソはもちろんのこと、レオニスも知る由もなかったのだが。この時の鷲獅子達は、レオニス宅の新たなる居候メシェ・イラーデの強大な気配を敏感に感じ取っていた。

レオニス自身がとんでもなく強者なオーラをまとっている上に、レオニスの頭上から背後にかけて皇竜メシェ・イラーデのオーラがズモモモモ……と覆い被さる様は、さながら魔王降臨としか思えない。これでは鷲獅子でなくとも尻尾を巻いて逃げ出すというものである。

しかし、レオニスは懲りずに毎日鍛錬場に通い続けた。

レオニス自身も薄っすらと『ぁー、もしかしてこれ、ラーデが原因か?』と推測していたのだが、もしそうであればレオニス自身にはどうすることもできない。

ラーデとはこれから最低でも一年はカタポレンの森でいっしょに暮らしていくことになっているし、その後もラーデと良好な関係を続けていきたい。

ならば今後鷲獅子達とどう接していくべきか?となった時に、レオニスが出した答えは『鷲獅子達に慣れてもらう!』であった。

一見とんでもない脳筋ゴリ押し理論だが、レオニスに取れる手段はこれしかないので致し方ない。

そのためレオニスは、毎日鷲獅子騎士団専用飼育場に通っては鷲獅子達と触れ合う努力をしていた。

触れ合う努力といっても、傍から見たら『鷲獅子がレオニスに追っかけられて、必死の形相で逃げ続けている』ようにしか見えなかったのだが。

「よーし、今日は天気もいいことだし、あいつらと追いかけっこするか!」

「「「………………」」」

鷲獅子騎士団秘伝の資料を読み終え、椅子から立ち上がり背伸びしながら宿舎を出ていくレオニス。

レオニスが専用飼育場にいる間は、数人の団員がサポート役として近くに控えているのだが『 鷲獅子(あいつら) と追いかけっこをする』というレオニスの思考に、誰一人としてついていけない。

そうして鍛錬場に出たレオニス。

最も近くにいた鷲獅子数頭に、右手を軽く上げながら気軽に声をかける。

「よ、サム、ステファン、ソーニャ」

「「「!?!?!?」」」

レオニスの姿を見た鷲獅子達が、ビクンッ!と飛び上がりながらレオニスを凝視する。

この三頭は、鷲獅子騎士団の中でも屈指の屈強さを誇るエース達だ。サムは騎士団長アルフォンソの相棒で、ステファンとソーニャも歴代副団長の騎獣として活躍している。

しかも三頭は血の繋がった兄妹で、特に仲睦まじいことで団内でも知られていた。

そして、他の鷲獅子はレオニスを見ただけですぐに逃げ出してしまうのだが、この三頭だけは他とは少し違っていた。

涙目で怯える妹のソーニャを、長兄のサムと次兄のステファンが身を挺して庇うようにレオニスの前に立ちはだかる。

サムとステファンはグルルルル……と牙を剥いて唸り、レオニスに対して思いっきり威嚇している。

それはまるで『俺達に何かしてみろ!タダじゃおかないぞ!』『この牙でお前の全身を噛み砕いてやる!』と言っているかのようだ。

その威嚇は凄まじく、団員達も二頭の剣幕にただオロオロするばかり。

しかし、当のレオニスは『あー、か弱い妹を守る兄ちゃんしてんだな、二頭とも立派な兄ちゃんだな!』としか思っていない。

鷲獅子達の必死の威嚇など全く意に介することなく、堂々と三頭に近づいていった。

「なあ、今日は天気もいいし、俺と遊ばないか?」

「グルアアアァァァ!」

「つーか、そんだけ元気なら運動がてら追いかけっこしようぜ!」

「ガオオオォォォッ!」

「よし、じゃあまずは俺が鬼な!」

サムやステファンの威嚇を他所に、サクサクと話を進めていくレオニス。

その間サムがレオニスに向けて口から業火を吐いたり、ステファンが風の刃で切りつけたりしているのだが。レオニスは微塵のダメージも負うことなくピンピンとしている。

これは、ひとえに属性の女王達からもらった加護のおかげだ。

しかし、攻撃したサム達にしてみればびっくり仰天だ。

それぞれ渾身の一撃を放ったはずなのに、傷一つつけられない上に当のレオニスはにこやかな笑顔のまま近づいてくるのだから、たまったものではない。

目がまん丸&点になっているサム達三頭に、レオニスが改めて追いかけっこのルール説明をする。

「今から俺が十数えるから、その間にお前達は好きなだけ遠くに逃げろ。十分間逃げ切ったらお前らの勝ち、十分以内にお前ら三頭全員捕まえたら俺の勝ちな」

「「「………………」」」

「あ、ジェフ、時間を十分図っててくれるか?」

「ぇ? ぁ、は、はい!分かりました!」

鷲獅子達にざっとルール説明をしたレオニス、後ろを振り返って鍛錬場の端でずっとボケーッとしている団員の一人、ジェフにタイム計測を依頼する。

ちなみに団員達は、ただボケーッとサボっていた訳ではない。

鷲獅子達の魔法攻撃を間近で受けてもピンピンとしているレオニスに、唖然呆然としていただけである。

そしてレオニスが、追いかけっこスタートのカウントダウンを開始する。

「十、九、八、七、六…………」

カウントダウンがどんどん進む中、サム達三頭は未だ動かない。

レオニスが言う追いかけっこというものが何なのか、イマイチ理解できていないようだ。

そんな三頭に、レオニスが改めて声をかける。

「……何だ、お前ら。逃げなくていいのか? それじゃ追いかけっこにならんぞ?」

「……ああ、空を飛ぶのもOKだぞ。とにかくお前らは、追いかけっこの鬼である俺から逃げきりゃいいんだ。簡単だろ?」

「さっきみたく魔法攻撃を仕掛けてくるのも全然アリだ。つーか、俺としてもお前らの実力を知っておきたいからな。全力でかかって来い」

最初のうちこそ穏やかな口調だったが、次第にその圧が強まっていく。

それまで鷲獅子達を怯えさせないよう、レオニスの方からなるべく消していた気配がどんどん顕わになっていった。

レオニスから発せられる凄まじい圧に、サム達三頭はジリジリと後退る。

「さぁ、続きを始めるぞ。……五、四、三」

「「「!!!!!」」」

レオニスがカウントダウンを再開して、三のところでサム達三頭は堪らず空に駆け出した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ピューッ!と慌てて四方に散らばる鷲獅子達を見ながら、レオニスが独り言を呟く。

「あッ、何だよ、結局お前らもやる気満々じゃねぇか」

空高く駆ける鷲獅子達の羽ばたく姿に、レオニスはニヤリ……と口角を上げながら笑う。

そして地面を蹴り、自身も大空に駆け出していく。

「……よし、まずはステファンからいくか」

三頭の中で、僅かながら飛行速度が一番劣るステファンをレオニスは真っ先に標的に挙げた。

鷲獅子達の飛行速度の優劣など、傍から見たら全然分からないし、団員達ですらそこまではっきりと把握してなどいない。

だがレオニスの目には、彼らが持つ能力や特性の差異がはっきりと見えていた。

そしてレオニスは宣言通り、開始三分後にステファンを捕まえて鍛錬場の地面に連行した。

背中から胴体に腕を回してガッシリと掴んで離さないレオニスに、ステファンはしおしおと萎れている。

レオニスがステファンを地面に置くと、そのままペタリ……と伏してしまった。

その後開始五分にはソーニャ、七分を少し過ぎた頃にはサムが捕まえられて、ステファン同様に連行されてしまった。

三頭ともぐったりと寝そべっている横で、レオニスがエクスポーション片手にグビグビと飲み干している。

「はー、いい運動になったな!」

「「「…………」」」

「つーか、お前ら、鷲獅子騎士団のエースと言われるだけあって、魔法攻撃の威力とかすげーな!飛ぶ速度にしたって、ドラゴン達にも引けを取らんし」

「「「…………」」」

「やっぱグリフォンってすげーんだな!こりゃ野生のグリフォンに会うのがますます楽しみになってきたぜ!」

「「「…………」」」

レオニスは三頭に高い評価をしつつ、一頭づつ身体をポンポン、と軽く叩くように撫でる。一人上機嫌のレオニスに、サム達三頭はもはや威嚇する気力すら残っていない。

サムやステファンはもちろんのこと、末妹のソーニャとて懸命に頑張っていた。

双眸をギラつかせながら猛スピードで追いかけてくるレオニス、その恐ろしさに抗うべく三頭は持てる力を全て振り絞って攻撃を繰り出した。

サムは最も得意な火炎魔法を駆使し、巨大な火球や火柱を吐いてレオニスを攻撃しまくったし、ステファンも得意な風魔法で 敵(レオニス) を跳ね返そうとしたり、ソーニャは水魔法で巨大な水の塊を生み出し、その中にレオニスを封じ込めようとした。

しかし、そのどれもがレオニスには通じなかったのだ。

それらの魔法攻撃は、雑魚魔物ならば一撃で一掃できる程の威力。

なのにレオニスは、どんなに大きな火を当てても焦げもしないし、どんなに強い風を起こして斬りつけても傷一つつかないし、水の中に沈めても溺死どころか窒息すらしない。

自分達の持てる力全てを繰り出しても、この人間には一切通用しない―――そのことを身を以って理解した時点で、三頭の残された道は『ひたすら逃げるしかない』ことを悟った。

その後魔法攻撃は一切出さずに、全力疾走で逃げ切りを図るサム達だったが、そこでもレオニスの無尽蔵の体力の前には無力であった。

久しぶりの空の追いかけっこに、興が乗ってきたレオニスが「ワーッハッハッハッハ!やーっぱ全力の追いかけっこってのは楽しいなぁ!」と大声で笑う。

その狂気じみた姿に、もはやサム達は涙目で空中を逃げ回る始末である。

そして十分経たずに三頭とも捕まり、レオニスの勝利となった。

地面でへばる三頭の鷲獅子達もさることながら、その場にいた鷲獅子騎士団員達はただただ唖然としていた。

「俺達は一体、何を見ているんだ……?」

「金剛級冒険者ってのが、これ程までに桁違いで強いとは……」

「あれ、本当に人間か?」

先程まで目の前で繰り広げられていた壮絶な空中戦に、未だ信じられない様子の団員達。

何気に酷い言われようだが、鷲獅子と対等どころかはるかに上回る強大な力を目の当たりにすれば、その感想も致し方ない。

そしてこれ以降、鷲獅子達のレオニスに対する態度が徐々に軟化していった。

ここの鷲獅子達は人族に飼育されている身ではあるが、それでも弱肉強食の理による純粋な力の序列はある。

強い者が弱い者を従えて、弱い者は強い者に従う。そうした不文律が鷲獅子達の中にもあるのだ。

こうしてレオニスは、鷲獅子騎士団にいる全ての鷲獅子達と次第に仲良くなっていった。