軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1205話 激闘の一夜の後の夜明け

闇の女王とクロエを見送ったライト達。

結局その後、ピースを含めて四人で畑の島のログハウスに泊まることにした。

皆草臥れ過ぎて、転移門が空くのを待つよりもう畑の島のログハウスで寝たかったのだ。

いや、本当ならピースも魔術師ギルドマスターとして、ディランのように早々にラグナロッツァに帰還し、諸々の報告などをしなければならないところなのだが。

ピース曰く「もうムリ……これ以上続けて働いたら、ピィちゃんマジで 死(チ) んじゃう……一回ちゃんと寝かせて!」「小生の行き先はホセ君も知ってるし。帰るのは明日でいいよね?うん、いいよ!ハイ、決まり!」ということらしい。

実際ピースはレオニスが援軍要請に現れる直前まで、アクシーディア公国生誕祭の出店の売り子や収支の決済等々ずっと働き詰めだった。

これ以上扱き使ったら、本人が言うように本当に過労でポックリと死んでしまうかもしれない。なのでレオニスも、無理にでも帰れ!とは言えなかった。

光の女王や雷の女王、パラスにはレオニスが「俺達、今日はあのログハウスに泊まっていくから、また明日な」とちゃんと挨拶をしてから別れた。

ユグドラエル、ドライアド達への挨拶はまた翌日改めてすることにして、四人でフラフラとログハウスに入っていく。

玄関で靴を脱ぎ、ベッドのある二階までヨタヨタと上るライト達。ひとまず四人はそれぞれマントやジャケット、ローブだけ脱ぎ始めた。

ちなみにレオニスは、それまで抱っこしていたメシェ・イラーデを一旦ベッドに置いてから、深紅のロングジャケットをもそもそと脱いでいる。

そしてそのまま四人とも、ベッドにぽすん……と倒れ込むように寝てしまった。

ただし、ラウルだけがその直後にムクリ……と起きた。

「……あ、そういやマキシ達もこっちに呼ばなきゃな……」

ラウルは一旦寝かけたベッドから下りて、神殿の島にいるマキシとアラエル、天空樹の島にいるウルス、フギン、ムニンを呼びに行く。

まずは神殿の島に向かったラウル。ラウルの姿を見たマキシが、とても心配しながらラウルに駆け寄った。

「ラウル、大丈夫!? さっきあっちの方向で、ものすごい光が起きたのは見たけど……」

「ああ、心配は要らん。俺達の勝ちだ」

「そうなんだね!良かったぁ……」

ラウルの口からもたらされた勝利の報に、マキシやアラエルが心底ほっとしたような顔で安堵している。

二羽は神殿の島で、天使や竜達の怪我の治療や瘴気の浄化などの後方支援に徹していたので、戦いの最前線の様子など全く分からなかったのだ。

ただし、天空樹の島にいたウルスとフギン、ムニンは天空島側の勝利を知っていた。ユグドラエルが、ライト達が身に着けていた各分体を通して勝負の行方を見守っていたのだ。

「ラウル殿!邪皇竜メシェ・イラーザ討伐、実に目出度い!」

「本当にお疲れさまでした!」

「我らも天空島の周辺を警戒しつつ、邪竜の島を見ていましたが……あの途轍もない魔力は、圧巻としか言いようがありません!」

興奮気味に捲し立てる三羽の八咫烏達。

ラウルは苦笑いしつつ、マキシ達五羽をログハウスに連れ帰った。

一人と五羽で二階に上がると、そこには既にベッドの上で寝ているライトとレオニス、そしてピースがいた。

背中を丸めてちょこん、と寝ているライトに、思いっきり斜めで大口を開けながら文字通り大の字になって寝ているレオニス。レオニスのお腹の上にはメシェ・イラーデがうつ伏せ姿で乗っかっていて、そちらもまたぐっすりスヤァ……と寝ている。

そしてピースは何故か頭と足の位置が逆になっていて、枕を抱っこして寝ていた。

三人の性格がよく表れている寝相に、ラウルは小さく笑いながら床に毛布を出して八咫烏達の寝床を作っていく。

毛布を縦に丸めて棒状にしたものを二本用意し、それを輪っか状に繋げて床に置いただけの簡単な寝床。

これを手早く五つ用意し終えたラウルが、マキシ達に声をかける。

「さ、マキシ達の寝床も作ったぞ。簡単なやつだが、今日はこれで勘弁な」

「そんなことないよ!ラウルだって疲れてるだろうに、僕達のためにありがとう!」

「ラウル殿、我らにまで心を砕いていただき感謝する」

「この丸い寝床、私は好きですよ? 先日の目覚めの湖で泊まった際に、これと同じものをライト殿に用意していただきましたが……実に寝心地が良くて、ぐっすり眠れたことを今でも覚えています」

「まぁ、フギンがそう言うくらいならとても良い寝床なのね!」

ラウルの心遣いに、マキシ他八咫烏皆が挙って礼を言ったり喜んだりしている。

そしていそいそと寝床に入り、ぽすん、と毛布の輪っかに収まるマキシ達。程なくしてうつらうつらと船を漕ぎ始めた。

まずウルスが十秒程度で陥落し、続いてムニン、フギン、アラエルと次々に眠りに落ちていった。

八咫烏達は基本的に皆早寝早起きなので、徹夜すること自体不慣れなのだ。

そんな家族達の様子を見ながら、フフフ、と小さく笑うマキシ。

そしてマキシがラウルを見上げながら話しかけた。

「ラウル、本当にありがとうね。ラウルも疲れたでしょ? 早くベッドで寝てね」

「おう、ありがとよ。マキシもお疲れさん、ゆっくり休んでな」

やるべきことを全てやり終えたラウル。マキシに労われつつ、ささっと着替えてベッドに寝転がる。

ログハウス二階が静寂に包まれる中、窓のカーテンの隙間からほんのりと明るい光が差し込む。外は既に夜明けを迎えつつあるようだ。

ラウルはレオニスやピースに比べたら、まだそこまで疲れているつもりはなかった。

レオニスのように最前線で出突っ張りで戦っていた訳でもないし、ピースのようにログハウスで缶詰になって呪符を描き続けていた訳でもない。

だが、最後の最後で闇の女王の頼みを受けてクロエを暗黒の洞窟に迎えに行ったのが、結構効いていたようだ。

ラウルは窓から差し込む光をぼんやりと眺めながら、気づかぬうちに微睡みに落ちていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトがふと目を覚まし、ンーーーッ……という声を漏らしながらベッドの上で両腕を上げて身体を伸ばす。

そしてのっそりと起き上がり、周囲を見回すとベッドの上には誰もいない。

床の八咫烏が五羽ともスヤッスヤに寝ているが、レオニス、ラウル、ピースの姿は見当たらなかった。

皆もう起きて外にいるのかな?と思いつつ、ライトはマントを羽織り一階に下りて外に出る。

するとそこには、一人懸命に畑の水遣りをするパラスがいた。

ログハウスからライトが出てきたことに、すぐに気づいたパラス。

トウモロコシの苗に木製バケツの水を遣りながら、明るい声でライトに話しかけた。

「おお、ライト、起きたか!おはよう!」

「パラスさん、おはようございますー」

「おはようと言っても、もうすぐ昼になるがな!」

ハッハッハ!と豪快に笑いながら、ライトにおはようの挨拶をするパラス。

確かに太陽はかなり上まで昇っていて、もう昼と呼んでも差し支えない時間であることが分かる。

「パラスさんも、昨日はずっと邪竜と戦ってて疲れたでしょうに……畑の水遣りとかしてて大丈夫なんですか?」

「何のこれしき!もちろん昨夜の戦いは激しいものだったし、全く疲れていないと言えば嘘になるが……それでもこの畑の水遣りだけは、毎日欠かせないものなのだ。何故ならこの畑で採れる野菜を、ヴィー様もグリン様もそれはそれは心待ちにしてくださっているからな!」

「そうなんですね……本当に、お疲れさまです」

勤勉実直なパラスの姿勢に、ライトは畏敬の念を込めながら改めて労いの言葉をかける。

パラスによると、パラス以外の他の天使達もまだ寝てて誰も起きていないらしい。昨夜の激闘を思えば、それも致し方ない。

だが、そんな中パラスだけはライトが起きるより少し前に起きて、一人黙々と水遣りをこなしていた。

それはひとえに、パラス達が作る野菜をいつも美味しそうに食べてくれるヴィゾーヴニルとグリンカムビのため。

パラスにとって、二羽の神鶏達に手ずから作った野菜を貢物として捧げることは、今や何にも替えがたい無上の喜びなのである。

そしてここでライトが改めてパラスに問うた。

「そういえば、パラスさん、レオ兄ちゃんやラウルがどこにいるか知りませんか? ログハウスの中にいないんですけど……」

「ああ、レオニスなら『ピースを人里に送ってくる』と言って、二人で出かけていったぞ」

「ピィちゃん、もう帰っちゃったんですね……」

一足先にピースが帰宅してしまったことに、残念そうに呟くライト。

そんなライトに負けず劣らず、パラスもまた残念そうに唸っている。

「我らとしても、大恩人であるピースに大したもてなしもできぬまま人里に返すのは、非常に残念なのだが……何しろ戦いが明けたばかりで、すぐに客人達をもてなすなどできようはずもなくてな。後日またピースも含めて、皆で宴でもしよう!と言ったら、二人とも嬉しそうな顔で頷いてくれたぞ」

「そうなんですね!もしこの畑の島で宴が催されるなら、その時はぼくもお手伝いしますね!」

「ああ、是非とも頼む」

パラスの思いがけない話に、ライトの顔が瞬時にパァッ!と明るくなる。

一冒険者であるレオニスはともかく、ピースは魔術師ギルドの現役マスター。立場的にも早々にラグナロッツァに帰り、諸々の報告をしなければならない。

実際ピースも天空島から帰る時は、どんよりとした空気を全身にまとっていたという。『えー、ヤダー、まだ帰りたくなーい』という心の声がダダ漏れ状態だったと思われる。

しかし、パラスの『後日改めて勝利の宴をしよう!その時は偉大なる魔術師殿も是非とも来てくれ!』という言葉を聞き、ピースは思いっきり破顔しつつ「うん!」と答えていたという。

そこで改めてピィちゃんの奮闘が褒め称えられて、少しでもピィちゃんが喜んでくれたらいいな……とライトは思う。

そしてパラスの話はさらに続く。

「ラウルはラウルで『エルちゃんとドライアド達に、お疲れさんの美味しい差し入れをしなきゃな』とか言いつつ出かけていったから、ラウルはエルちゃん様の島にいると思う」

「分かりました、ありがとうございます!そしたらぼく、エルちゃんの島に行ってみますね!」

「ああ、気をつけてな」

パラスから聞いた三人の行方を知り、ライトは明るい笑顔でパラスに礼を言う。

ライトはペコリ、と頭を下げてから、すぐに天空樹の島に飛んでいった。

何の予備動作もなく空を駆けていくライトを、パラスはのんびりとした顔で「おおー、あの幼子も自力で飛べるようになったのだな!」と呟きながら、軽やかにはためくライトのマントを眩しそうに見上げていた。